アンチテーゼ
「アンチテーゼ」とは・「アンチテーゼ」の意味
「アンチテーゼ」とは、ある主張を否定するための主張を意味する、ドイツ語「antithese」が元となった哲学用語。英語での綴りは「antithesis」。ヘーゲルが唱えた弁証法(対立する意見を元にして新たな見解を確立する方法)における3つの構成要素(テーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ)の1つであり、アウフヘーベン(止揚)へ至るための足がかり。Yahoo!知恵袋やSNSなどでは「アンチ〇〇」が「アンチテーゼ」の略称として使われることがあるが、これはアンチテーゼが持つ本来の意味とは異なる。「アンチ〇〇」という語は皮肉や反語に近い別の語として捉えるべきであろう。「アンチテーゼ(antithese)」という語は、主題・命題を表す「these」の頭に反対語を示す「anti」が付いた語である。「these」の対義語として「反定立」あるいは「反対命題」と訳されることが多い。
弁証法における「アンチテーゼ」は、ある問題に対する肯定的主張に特定の否定的判断や命題を主張することである。例えば「人は誰もが猫好きである」という「テーゼ」に対して、「猫は攻撃的である。ゆえに、猫好きでない人は存在する」と主張することが「アンチテーゼ」だ。ただし、「アンチテーゼ」は「テーゼ」への反対や批判の主張でなければならず、個人的な批判意見や単なる否定は「アンチテーゼ」とは呼ばない。つまりは、「人は誰もが猫好きである」に対して「私は猫が嫌いだ」と個人的な意見を主張するのは「アンチテーゼ」ではない。これは単なる「アンチ」であるといえるだろう。
修辞学(弁論や演説技術を学問として体系化したもの)においても「アンチテーゼ」は用いられる。この場合「対照法(たいしょうほう)」もしくは「対句法(ついくほう)」と訳されるのが一般的だ。対照法とは、相反する事物を並べることで、両者の違いや状態を明確にする手法である。「Man proposes: God disposes.(人が計画し、神が決める。)」は最も知られた対照法の例であろう。ほかにも「Art is long, and Time is fleeting.(芸術は長く、時間ははかない。)」や「Love is the antithesis of selfishness.(愛はわがままのアンチテーゼ)」などが対照法としての「アンチテーゼ」の例として挙げられる。
対句法は、表現が類似するものを並べることで印象を強くする手法だ。似た部分や異なった部分がはっきりと捉えられるようになるため、文意が伝わりやすくなる効果が期待できる。「雨ニモマケズ、風ニモマケズ(宮沢賢治「雨ニモマケズ」)」「沖には平家、船を一面に並べて見物す。陸には源氏、くつばみを並べてこれを見る。(作者不明「平家物語」)」「Veni, vidi, vici(来たり、見たり、勝てり)」などが、対句法としての「アンチテーゼ」の例として挙げられる。
「アンチテーゼ」の熟語・言い回し
現代社会へのアンチテーゼとは
現代社会の考え方や社会体制、あるいは当たり前だと一般的に思われていることなどに対する、反発的なリアクション・風刺・問いかけなどを指す言葉である。世論で二分されるような考え方や社会批判を含む意見を語る場合に使われることが多い。映画・小説・音楽といった分野においても「現代社会へのアンチテーゼ」は用いられる。(自分では打破することが難しい)社会的な不満・葛藤・悩みをテーマにした作品、従来的とは言えないタイプの作品、反体制的な作品などは、「現代社会へのアンチテーゼ」と表現されることがある。
アンチテーゼを唱えるとは
「アンチテーゼを唱える」とは、主論となるテーマに対して、反論を主張することである。しかし、会話などで「アンチテーゼ」が使われる場合は、単なる反語や皮肉を意味して使われていることが多い。そのため、「アンチテーゼを唱える」という語もまた、単純に「反対意見を口にする」あるいは「主論への皮肉を言う」という意味で用いられるケースが多い。
「アンチテーゼ」の使い方・例文
・彼女は常にアンチテーゼを口にする人だ。・この映画はいわば現代社会へのアンチテーゼを作中で語っている。
・ミニマリストの生活は現代消費社会へのアンチテーゼといえるだろう。
・フリーランスという働き方が日本の労働環境に対するアンチテーゼとなり得たとは言えない。
・平家物語の序文は修辞法におけるアンチテーゼだ。
・「月とすっぽん」という表現もまたアンチテーゼの1つである。
・根拠を欠いたあなたの主張は、アンチテーゼではなくただの否定でしかない。
・風刺的な物語はアンチテーゼの特徴を帯びていることが多い。
・スカート丈の流行の変化は、規則へのアンチテーゼと考えられる。
・商業化したロックミュージックへのアンチテーゼとしてパンクロックは生まれた。
アンチテーゼ
アンチテーゼ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 11:34 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動アンチテーゼ(独: Antithese[1], 英: antithesis[1])とは、ある理論・主張を否定するために提出される反対の理論・主張である[2]。
弁証法のアンチテーゼ
弁証法のもっとも単純な説明は、テーゼ(命題、定立)、アンチテーゼ(反対命題、反定立)、ジンテーゼ(統合命題)である。たとえば、「地獄」は「天国」のアンチテーゼ、「無秩序」は「秩序」のアンチテーゼである。通常釣り合いの取れた、対照的概念の並列である。
修辞学のアンチテーゼ
修辞学では、アンチテーゼは一般的に対照法、対句法と訳される。言葉・節・文の中で、明白な対照によって、概念の対照を述べることを要件とする修辞技法である。文法的にもパラレルな構造を持っている。
- 黙っていないといけない時には君は喋り、
- 喋らないといけない時には君は黙る。
対照法は時には、構造も対照的に交錯することもある。(交錯配列法も参照)
- 黙っていないといけない時には君は喋る。
- 君が黙るのは喋らないといけない時。
対照法を豊かに使った作家には、イングランドでは、アレキサンダー・ポープ、サミュエル・ジョンソン、エドワード・ギボンらがいる。顕著な例としては、ジョン・リリーの『ユーフュイーズ』(Euphues)がある。しかし、フランスでは対照法はイングランド以上に一般的に使われた。一方ドイツでは一部の例外を除けばあまり使われなかった。
対照法の最も有名な例は、次のことわざだろう。
- Man proposes: God disposes(人が計画し、神が決める)
もし言葉が、頭韻法のようにビートが弱まるか、それに似た響きの上にあるのであれば、対照法の効果は増大し、普通の使い方よりも、要点をついた生き生きした表現になる。
フィクションのアンチテーゼ
フィクションでは、アンチテーゼは性格、道徳観などがまったく正反対のキャラクター同士を描写することに使うことができる。しかし、これは必ずしも両者が争っていることを意味しない。
キリスト教のアンチテーゼ
キリスト教のAntithesis of the LawについてはExpounding of the Lawを参照。
脚注
参考文献
- この記事にはアメリカ合衆国内で著作権が消滅した次の百科事典本文を含む: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Antithesis". Encyclopædia Britannica (英語). 2 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 146-147.
関連項目
アンチテーゼ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/31 05:10 UTC 版)
「Re:バカは世界を救えるか?」の記事における「アンチテーゼ」の解説
ネメシスの対価のようなもの。成長停止や悪夢など、何らかの形で使用者の心身に影響を及ぼす。程度や性質はさまざまだが、使用者のトラウマをえぐるようなものであることが多い。また、常時心身に影響が現れる「先払い」と能力使用後に影響が出る「後払い」の二つのタイプがあり、兎乃や明日菜のように両方を持つ者もいる。
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