この前ラジオでマッキーの『もう恋なんてしない』が流れてて、この曲よく文法間違いが指摘されるけど、レトリックが複雑なだけで別におかしくないと思います。
懐メロなのに今さらって気もするんですが、気まぐれにggったら大してまとまった情報がないのと、槇原氏デビュー25周年だかなんだからしいので何となくメモ。
『もう恋なんてしない』ダイジェスト
歌詞を全部載せるのは著作権上の問題があるのでフローチャート描きました。原曲知ってれば流れは追えると思うので宜しくご査収下さい。
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もう恋なんてしないなんて言わない
…ということでさっそく1番のサビ部分を見ていきましょう。
もし君に1つだけ 強がりを言えるのなら
もう恋なんてしない なんて言わないよ絶対
二重否定
物議を醸すのは特に後半でしょうか。
「もう恋なんてしない」なんて言わない
括弧でくくると『「もう恋なんてしない」て言わない』ことが「強がり」の内容であることは明らかなのですが、二重否定構文になっていてかかりが複雑です。
二重否定の基本は「マイナスにマイナスを掛けたらプラス」なので
「もう恋はしないと言わない」=「また恋をすると言う」
…ということになるんでしょうけど、人の気持ちはそう簡単に割りきれるものではありませんしね。
条件付き仮定 もし~なら
それに前半の節「もし君に1つだけ 強がりを言えるのなら」は条件を示す仮定形でした。仮定文の解釈で一番大事なのは「現時点において結論は架空の出来事」だということです。
つまり彼は『「この恋を失ったからと言って人を好きになることを諦めたわけではない」という強がりを君に伝えられていない』わけです。
二重否定の用法
文の構造が判ったところで話を戻して二重否定の割合について考えてみましょう。
先ほど「マイナスのマイナスはプラス」だという話をしました。まずこの前提の正しさを以下に示します。
単純二重否定の証明
まず、否定の否定が単純に肯定に戻るケースを考えます。
強がりを言う=「もう恋はしない」x「言わないよ」
ここから両辺を「言う」で割ると
強がり=「もう恋はしない」x「ない」
同類項をまとめて
強がり=「また恋をする」xない2
ここで「ない」= -1 なので、「ない」2=1 を代入して
強がり=「また恋をする」x1
これが基本ですね。
二重否定の強度
自然言語における二重否定が単純な肯定を取ることはまずありません。文芸表現として無意味だからです。
つまり二重否定の用法は2つ。「基本文を強調する」か「弱めるか」のどっちかです。以下例文。
用法の違いは、前半の「ない」と後半の「ない」を比べて「どっちが強い表現か」で判断することになります。
述語を強調する副助詞「なんて」の重みについて
このとき問題になるのが副助詞「なんて」の解釈です。
「そんなことするなんてバカだ」というときの「なんて」には後ろの述語を強調する働きがあります。
つまり「もう恋なんてしない」と、「言わないよ」の大きさ(絶対値)を比べるとき以下のことが成り立ちます。
|もう恋なんてしない| < |なんて言わないよ|
両辺は正の定数「なんて」のぶんだけ違うので
⇔ |もう恋なんてしない|=|言わないよ|
ですが、本来右辺には 十分に大きな正の数「絶対」が掛かっているので
|もう恋なんてしない| <<< |言わないよ|x絶対
結論
以上より「彼の強がりの実在性」について以下に示します。
まず前項 強がりを言う=「もう恋はしない」x「言わないよ」 を変形して
⇒ もし強がりを言えるなら=もう恋なんてしないx(なんて・言わないよ・絶対)
⇔ もし強がるなら=また恋をするx 定数(なんて・絶対)
ここで仮定形「もし~なら」で両辺を割ると
⇒ 強がる=また恋をするx(定数/もし~なら)
このとき仮定形「もし~なら」の示す可能性は現時点でゼロである。よって命題はゼロ除算となり解を持たない。
ただし、この「もしなら定数」が拡張複素平面リーマン球面上に存在するとき、「また恋をする」の存在確率は時間の経過と共に正の実数を取りうる。このことより「彼が強がりを言えるようになるには十分な時間の経過が必要」であるとわかる。
証明終わり。
マッキー
Mackyのファンクラブでmackee売ってるらしく、とても良い。 |
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