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2004.08.09

[P2P][放送と通信の融合]ビデオオンデマンド時代のP2Pの有り方

ご存知の方もいるとは思うが、あと10年もするとアナログ放送はなくなって、デジタル放送に全て切り替えられる。TVは常時ブロードバンド回線と接続され、双方向性サービスが生まれてくる。その双方向性サービスのキラーコンテンツと言われているのが、ビデオオンデマンド(VOD)だ。

VODになれば、好きなときに好きなコンテンツが見られる。見逃したTV番組という概念はもはやなくなる。しかしよく考えるとこれは大変なことだ。というのは配信側に大変大掛かりなVOD用コンテンツ配信サーバが必要となるからである。

VODで鮮明な画像でみるとすると、だいたいビットレートが4~6Mbpsぐらいいると言われる。これを数万人に対してオンデマンドで配信するのは非常にコストがかかることが考えられる。サーバだけでなくネットワークも大きな帯域を確保する必要がある。

そこで、考えられるのがコンテンツ配信をP2Pで行う事である。といっても今回提唱するのは「著作権が守られる」VOD型P2Pである。例えば、将来はビデオはHDDレコーダーに全て置き換えられるだろう。そこで、HDDレコーダーに蓄えられたコンテンツは第三者とP2Pでコンテンツ流通ができる。ただし、利用者からはコンテンツを閲覧した分だけお金を取ろうという考え方である。

システムの概要は次のとおり。(非常にざっくりベースであることをお断りしておきます。)

1)今ユーザAとBがいる。ユーザA、BはHDDレコーダーを持っていて放送コンテンツをHDDに貯めている。
今、ユーザAのコンテンツA(content_A)をユーザBが欲しいとしよう。

2)ユーザの課金等を行うにはPure-P2PよりもHybrid-P2Pの方が適している。そこで今回はNapsterのような中央サーバを立てる。ユーザA、Bは自分のコンテンツのメタデータを中央サーバに登録しておく。この時点で著作権者がP2Pでコンテンツ流通させたくない物については中央サーバにアップできないようにすることで、著作権者保護について一定の配慮がなされている。

3)ユーザBはある鍵key_BをSSLを使って中央サーバに送る。中央サーバはユーザAとSSL通信を行い、コンテンツAのリクエストと中央サーバが発行するコンテンツ鍵key_contentとkey_Bを送る。

4)ユーザAはコンテンツA(content_A)に対して Cripro_A=(content_A XOR key_content) XOR key_Bを計算し、ユーザBに送る。ユーザBはCripto_B=Cripto_A XOR key_B = Content_A XOR key_content を得る。このCripto_Bのハッシュ値hash_Bと識別子としてコンテンツIDをSSLで中央サーバに送る。

5)中央サーバはhash_Bとcontent_IDからユーザBが有しているコンテンツが正当であることを確認する。(中央サーバには事前にCripto_Bを生成し、hash_Bを格納しているデータベースがある。)これより中央サーバはkey_contentをBに送り、この時点で課金は終了する。

6)ユーザBは Cripto_B XOR key_contentを計算し、content_Aを得る。

今回HDDレコーダーは耐タンパー性があることを仮定した。また、次の有名な公式を使っている。
(A XOR B) XOR B=A

提案の方法自体は単純なので、実際にはより複雑にする必要があるのだが、概略は掴めて頂けると思う。

つまり、このようなHDDレコーダーでコンテンツ流通を行う際に気をつけることとして

1)P2Pの通信自体は暗号コンテンツ(あるいはP2P区間ではSSL等で暗号化してもよい。)が流通することにより、正当なプレイヤー以外には再生できない。
2)P2Pでもコンテンツが正当であるチェックはどうしても必要。今回の方法以外では電子署名などが挙げられる。
3)HDDレコーダーなどの再生プレイヤーの耐タンパー性は必要。

となる。

今回のシステムは「著作権を守ろうとすると」こういう方式になるという提案であった。P2Pの技術を使ってもきちっとした仕組み(特にハードを使って流通を制限する)であれば著作権は守れる。コンテンツ業界や家電メーカーは将来のコンテンツ事業においてP2Pにおけるコンテンツ流通も視野に入れて頂きたい。

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コメント

お疲れ様です。いつも勉強させて頂いております。
P2P、VOD、ということでご参考になれば嬉しいのですが、松竹様「わざアリ」サービスのコピー配布の効果は7月は”ライセンス発行数(=広告視聴数):ダウンロード数=2:1”でした。
※57名のうち、あるアイドルさんのコンテンツなどは上記の比率が10:1などという事もありました。

現在検討中ではありますが、11月までには「わざアリ」サービスの詳細な利用状況データを広く公表できればと思っております。

投稿: 小柴聡 | 2004.08.12 18:24

それも言うなら「耐Tamper性」じゃないでしょうか。

投稿: inishie | 2004.08.11 00:13

いつも疑問に思うのですが,P2Pと言ってもユニキャストによるデータ伝送である以上,Content Delivery Network 等と比べたときのメリットが微妙に見えにくいと思うんですが,いかがでしょう?

投稿: Canadian | 2004.08.10 23:33

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