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 米Google Inc.が電子書籍市場に本格参入する。2009年6月に米国で開催された出版業界向けのイベントで,同年末に電子書籍販売サービスを始める計画を明らかにしたのである。業界では,先行する米Amazon.com,Inc.の強力なライバルになる可能性があるとして,その動向に注目が集まっている。

 ただし,Google社とAmazon.com社の考え方は大きく異なる。Amazon.com社が展開する電子書籍販売サイト「Kindle Store」は,基本的に同社の端末「Kindle」向けのコンテンツを用意する。一方,Google社が始める電子書籍販売サービスでは,対象とする端末の種類を限定しない。いわゆる,“クローズド”なAmazon.com社に対し,“オープン”なGoogle社といった構図である。

 Google社は2009年3月には,電子書籍に関してソニーと提携している。Google社が電子化した50万以上のパブリック・ドメインのコンテンツを,ソニーの電子書籍端末に向けて提供することにしたのだ。この動きも,Google社が標榜する“オープン”な環境を構築するための一環と同社は位置付ける。

 電子書籍販売サービスやソニーとの提携について,Google社 Corporate Communicationsの担当者に聞いた。


――2009年6月に米国で開催された出版業界向けのイベントで,電子書籍販売サービスを始めることを明らかにしたそうだが。

 その通りだ。我々は,出版社がさまざまな方法で本を販売するための手助けをすると,一貫して主張してきた。2009年末までに,我々は,ユーザーがオンラインで電子書籍を購入できる仕組みを作ることで,出版社にとっての新たな本の販売方法を提供したいと考えている。

――Google社にとって,電子書籍市場に参入する狙いは。

 我々は,本へのアクセス,そして本を読むことに関して,オープンなプラットフォームが必要だと信じている。そのために,電子書籍に関するエコシステムを構築し,サポートしていきたい。それは,出版社が提供する電子書籍が,Webサイトにアクセス可能なあらゆる端末から購入でき,利用可能になるようなシステムだ。端末は,例えばスマートフォンでもネットブックでも,もちろん専用端末でもよい。

――電子書籍はGoogle社のWebサイトで販売するのか。販売するのはパブリック・ドメインのコンテンツか。

 オンライン上に構築した「パートナー・プログラム」に,ユーザーがアクセスして購入できるようにする。用意する電子書籍は,著作権のあるものだ。

――ソニーと提携した狙いは。

 誰でも,どこでも,いつでも,本に触れることができる環境を作るという我々のミッションに向けた,1ステップだ。ソニーとの提携により,より多くのユーザーが本を見つけて,読むことができるようになった。ソニーの電子書籍端末に向けたコンテンツは,オープンなファイル・フォーマットである「EPUB」で提供している(日経エレクトロニクス2009年6月29日号の特集記事「電子書籍 メジャーへのページをひらく」参照)。

――ほかの企業と提携する計画は。

 より本にアクセスしやすく,利用しやすくするという目的を共有するパートナーであれば,議論する用意はいつでもある。

――今後の電子書籍市場をどう見ているか。

 電子書籍市場は,既に活気付いている。我々は,オープンな環境での競争によって市場が成長し続けることを望んでいる。ユーザーが世界のどこからでも,どんな端末を使っても,本を探すことができ,アクセスできるという将来像を我々は描いている。