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ファロー根治術

1歳、12kgのファロー四徴症。ギリシャからのプライベートの患者さん。手術はH先生、僕、Iさん。肺動脈弁輪のサイズはぎりぎり正常範囲内なので、温存する方針。弁は2尖弁で、交連切開。右室流出路は三尖弁と肺動脈弁の両方から切除。心室中隔欠損はいつもどおりダクロンパッチで閉鎖。肺動脈は自己心膜で拡大して、手術終了。

手術の前から、最後のH先生名物『F○CK』が聞けるね〜とみんな言いにくるけど、さすがに、最後の日だからおだかやかに手術するんじゃないの〜と言い返していると、麻酔科の教授まで、『そりゃ、さみしいな〜』って。『F○CK』が聞けないのが寂しいのか?僕がいなくなる事が寂しいのか?訊くと凹むのでそこは曖昧のまま。

案の定、今日は抑えたH先生が淡々と手術。僕も特に大きなミスもなく、順調に進行。人工心肺も離脱して、止血をしていた。もう、さすがにないな、と思っていたら、左上大静脈のカニューレ挿入部からすこし出血。H先生は縫合して止血しようとしたけど、珍しく止まらず。周りの組織を剥離して、突っ張りをなくそうとしたら、小さな枝を切って出血。

『F○〜〜〜〜〜〜CK!!!!!』

スクラブナースの看護婦さんはガッツポーズしているし、麻酔科の先生は『でた!!』とか言うし。H先生以外は、手術室のみんなが嬉しそうに笑って、僕に目を合わせてきた。



最後に聞いた『F○CK』は、世にも幸せな『F○CK』でした、とさ。








めでたし、めでたし。
















このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
プロフィール

遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

毎日の手術の事を中心に。ドイツビールの紹介もしていきます。

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