2016-11-07(Mon)
石の上で三年も我慢したら過労死する
昔は「石の上にも三年」と言ったけど、イマドキは三年も我慢したら過労死する。
待てば海路で溺死するし。
この熾烈な時代の変化を、私らやそれより上のオッサンオバサン世代が、本気で分かっているかどうか。
選挙の投票率が低い原因の、過半はそこにあるんじゃないだろうか。
首都大学東京の阿部彩教授のHPを拝見したところ、厚労省のデータを使ってこんなグラフが掲載されていた。
相対貧困率が、1985年から2012年まで、どのように変化したかを、年代別に書かれている。
ひと目で分かるのは、20~24歳の山だ。
年々山ができ、どんどん高くなっている。つまり、貧困率が高くなっている。
その一方で、高齢者は貧困率が低くなっている。
良い時代にため込んだ世代がカネを持ったまま、あるいは首尾良く退職金を手にして年を取っている
若者は、就職できない、できても低賃金、親にも頼れないで貧困の山を築く。
30年前は、貧困問題と言えば老人の問題であり年金の問題だったが、今は圧倒的に若者の問題だということに、中高年は本気で気が付いているのか。
とくに、「「リベラル」を自称する中高年が。
もちろリベラルを自称するくらいだから、子どもの貧困とか、就活地獄とか、ブラック企業とか、過労死とか、知識としては知っている。
おそらく、ひと講釈ぶてるくらいに知っている。
しかし、本当の実感がどれほどあるのか。
どこかで、「若い人はこれからだ」「若いんだから大丈夫」 と思っていないか。
それどころか、「若いくせにだらしない」なんて、心の片隅で感じていないか。
■
あちこちのサイトで盗作されまくっている「席を譲らなかった若者」の逸話にも考えさせられる。
この話、どうやらこちらのブログで11年も前に書かれたものらしい。
らくだのひとりごと
要約すると、電車で若者が座っている。前に立っているハイキング帰りの老人グループが「最近の若い者は年寄りを立たせても平気なんだから」と大声で嫌みを言ったところ、その若者がこう切り返したという話。
「あんたたちさぁ、山は歩けるのに電車では立てないの? それっておかしくない? 遊んできたんだろ? こっちはこれから仕事に行くところなんだよ。だいたいさぁ、俺みたいなヤツが土曜日も働いてあんたたちの年金を作ってやってるんだって分かってる? 俺があんたみたいなジジイになったら年金なんてもらえなくて、優雅に山登りなんてやっていられないんだよ。とにかく座りたかったらシルバーシートに行けよ」
このブロガーさんのその後の記述などを見ても、作り話ではなさそう。
11年も経った今頃、散々に盗作されて世に出回るということは、この若者の言葉に共感する人が増えているからだろう。
この話への反応で、日本は真っ二つに割れるかもしれない。
そして、感情を排し、個々の事情を捨象して数字だけで判断するならば、悠々自適で山登りする老人よりも、ブラック企業やワーキングプアの若者のほうが、救わなくてはならない対象だ。
この生意気な若者の言葉遣いにムカッとくる、リベラルのオッサンオバサンも、この現実を腹の底から認めなくては。
若者が選挙に行かないのは、保守も革新もひっくるめて、なんの根拠もないのに心の中で「若者には未来がある」と信じているから。
そんなアホな連中の相手してられないからだろう。
とくにリーマンショック以降に就職期を迎えた20台の人たちにとって、職場の先輩は「既得権益」であり、それなりの給料を取っている50台社員なんて老害そのものだろう。
体力のなくなった日本の企業で、既存の社員の給料を大幅に下げることは難しい。そのしわ寄せが、新卒を採らない、派遣で間に合わす、採っても給料安い、社員教育の余裕もない、てな形で、ごっそり20台に押し寄せている。
もちろん、根本原因は新自由主義や多国籍の大企業によって、日本企業の稼ぎが日本に戻ってこないからだ。
世界一の自動車企業が税金払わない国が、成り立ちゆくわけがない。
しかし、今まさに就活地獄やブラック企業のまっただ中にいる若者の目には、新自由主義がどうのこうのよりも、既得権益として安定した職や給料を手にしている普通のオッサンのほうが、よほど憎たらしいのではないか。
その憎たらしい連中が徒党を組んで、「投票に行きましょう」なんて言っても、そりゃあ心には響かん。
投票率を上げるには、歌って踊ってカッコよくというのも大事ではあるが、それより何より、私らオッサンオバサンの心の中にある 「若者神話」にきっちり始末をつけて、現実をよくよく見つめることだ。
■
「子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃」てな本を出して、子どもの貧困対策に取り組んでいるのは、誰あろう笹川センセの日本財団だ。
貧困問題というのは、実は右とか左とかではない。
2.26事件の決起将校も、農村の貧困を嘆いていた。
むしろ、ファシズムにこそ、若者の貧困問題はすくい取られる可能性がある。
維新の会なども、教育無償化のために改憲だなどと無茶を言っていたが、これだって困っている当の本人からしたら、バカな話には聞こえない。
これまでのリベラルがやってきた、「弱者救済」の福祉(実はホドコシの福施)政策では、若者の心に届くことはないだろう。
実効性のない政策では意味がないし、あったとしても現状の生活保護のように「やってやる」福施を心から喜ぶものはいない。
社会的にごっそり富を再分配して、2~30代で大学や仕事のスキルアップや子育てなどをできるようにする、根本的な施策を打ち出す必要がある。
それを、命のナショナルミニマムとして、明確にうち出さなければ、投票率は上がらないし、政権交代はおぼつかないし、それどころか、いよいよとなったらファシズムにもっていかれる。
私らオッチャンオバチャンは、自分たちは逃げ切れるなんていうセコい考えをちょっと脇に置いて、本気で次の世代のことを知るべきだ。
にほんブログ村
応援お願いします
待てば海路で溺死するし。
この熾烈な時代の変化を、私らやそれより上のオッサンオバサン世代が、本気で分かっているかどうか。
選挙の投票率が低い原因の、過半はそこにあるんじゃないだろうか。
首都大学東京の阿部彩教授のHPを拝見したところ、厚労省のデータを使ってこんなグラフが掲載されていた。
相対貧困率が、1985年から2012年まで、どのように変化したかを、年代別に書かれている。
ひと目で分かるのは、20~24歳の山だ。
年々山ができ、どんどん高くなっている。つまり、貧困率が高くなっている。
その一方で、高齢者は貧困率が低くなっている。
良い時代にため込んだ世代がカネを持ったまま、あるいは首尾良く退職金を手にして年を取っている
若者は、就職できない、できても低賃金、親にも頼れないで貧困の山を築く。
30年前は、貧困問題と言えば老人の問題であり年金の問題だったが、今は圧倒的に若者の問題だということに、中高年は本気で気が付いているのか。
とくに、「「リベラル」を自称する中高年が。
もちろリベラルを自称するくらいだから、子どもの貧困とか、就活地獄とか、ブラック企業とか、過労死とか、知識としては知っている。
おそらく、ひと講釈ぶてるくらいに知っている。
しかし、本当の実感がどれほどあるのか。
どこかで、「若い人はこれからだ」「若いんだから大丈夫」 と思っていないか。
それどころか、「若いくせにだらしない」なんて、心の片隅で感じていないか。
■
あちこちのサイトで盗作されまくっている「席を譲らなかった若者」の逸話にも考えさせられる。
この話、どうやらこちらのブログで11年も前に書かれたものらしい。
らくだのひとりごと
要約すると、電車で若者が座っている。前に立っているハイキング帰りの老人グループが「最近の若い者は年寄りを立たせても平気なんだから」と大声で嫌みを言ったところ、その若者がこう切り返したという話。
「あんたたちさぁ、山は歩けるのに電車では立てないの? それっておかしくない? 遊んできたんだろ? こっちはこれから仕事に行くところなんだよ。だいたいさぁ、俺みたいなヤツが土曜日も働いてあんたたちの年金を作ってやってるんだって分かってる? 俺があんたみたいなジジイになったら年金なんてもらえなくて、優雅に山登りなんてやっていられないんだよ。とにかく座りたかったらシルバーシートに行けよ」
このブロガーさんのその後の記述などを見ても、作り話ではなさそう。
11年も経った今頃、散々に盗作されて世に出回るということは、この若者の言葉に共感する人が増えているからだろう。
この話への反応で、日本は真っ二つに割れるかもしれない。
そして、感情を排し、個々の事情を捨象して数字だけで判断するならば、悠々自適で山登りする老人よりも、ブラック企業やワーキングプアの若者のほうが、救わなくてはならない対象だ。
この生意気な若者の言葉遣いにムカッとくる、リベラルのオッサンオバサンも、この現実を腹の底から認めなくては。
若者が選挙に行かないのは、保守も革新もひっくるめて、なんの根拠もないのに心の中で「若者には未来がある」と信じているから。
そんなアホな連中の相手してられないからだろう。
とくにリーマンショック以降に就職期を迎えた20台の人たちにとって、職場の先輩は「既得権益」であり、それなりの給料を取っている50台社員なんて老害そのものだろう。
体力のなくなった日本の企業で、既存の社員の給料を大幅に下げることは難しい。そのしわ寄せが、新卒を採らない、派遣で間に合わす、採っても給料安い、社員教育の余裕もない、てな形で、ごっそり20台に押し寄せている。
もちろん、根本原因は新自由主義や多国籍の大企業によって、日本企業の稼ぎが日本に戻ってこないからだ。
世界一の自動車企業が税金払わない国が、成り立ちゆくわけがない。
しかし、今まさに就活地獄やブラック企業のまっただ中にいる若者の目には、新自由主義がどうのこうのよりも、既得権益として安定した職や給料を手にしている普通のオッサンのほうが、よほど憎たらしいのではないか。
その憎たらしい連中が徒党を組んで、「投票に行きましょう」なんて言っても、そりゃあ心には響かん。
投票率を上げるには、歌って踊ってカッコよくというのも大事ではあるが、それより何より、私らオッサンオバサンの心の中にある 「若者神話」にきっちり始末をつけて、現実をよくよく見つめることだ。
■
「子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃」てな本を出して、子どもの貧困対策に取り組んでいるのは、誰あろう笹川センセの日本財団だ。
貧困問題というのは、実は右とか左とかではない。
2.26事件の決起将校も、農村の貧困を嘆いていた。
むしろ、ファシズムにこそ、若者の貧困問題はすくい取られる可能性がある。
維新の会なども、教育無償化のために改憲だなどと無茶を言っていたが、これだって困っている当の本人からしたら、バカな話には聞こえない。
これまでのリベラルがやってきた、「弱者救済」の福祉(実はホドコシの福施)政策では、若者の心に届くことはないだろう。
実効性のない政策では意味がないし、あったとしても現状の生活保護のように「やってやる」福施を心から喜ぶものはいない。
社会的にごっそり富を再分配して、2~30代で大学や仕事のスキルアップや子育てなどをできるようにする、根本的な施策を打ち出す必要がある。
それを、命のナショナルミニマムとして、明確にうち出さなければ、投票率は上がらないし、政権交代はおぼつかないし、それどころか、いよいよとなったらファシズムにもっていかれる。
私らオッチャンオバチャンは、自分たちは逃げ切れるなんていうセコい考えをちょっと脇に置いて、本気で次の世代のことを知るべきだ。
にほんブログ村
応援お願いします
- 関連記事
-
- 今ほど「党」が必要なときはない (2016/11/25)
- トランプ TPP FTA (2016/11/24)
- 「空き家問題 -1000万戸の衝撃」を読んで (2016/11/21)
- カモネギ安倍晋三が貢いでくるものを予想する (2016/11/17)
- 政治はカネだ (2016/11/15)
- 「だったら米軍はお引き取り下さい」とトランプに言うために必要なこと (2016/11/10)
- トランプ時代に日本のリベラルはどう対応するのか (2016/11/09)
- 石の上で三年も我慢したら過労死する (2016/11/07)
- 今こそ自由民権運動を ~自由党の門出にむけて (2016/10/27)
- ブラック企業にならざるを得ないという現実 命のナショナルミニマムその3 (2016/10/26)
- 巧妙なトラップ (2016/10/24)
- 福祉と福施 命のナショナルミニマムその2 (2016/10/21)
- 天下三分の計 新潟県知事選挙の結果から (2016/10/18)
- 命のナショナルミニマム (2016/10/12)
- 次のステップへ (憲法フェスの総括その2) (2016/10/08)