2011-09-02(Fri)
これからの家づくり ③
野田内閣のことは、考えても良くなるワケじゃないので、しばらく頭お休み。
もうちょっと、気持ちが落ち着いてから、冷静に分析してみようと思う。
ひと言だけ印象を書いておくと、「重要な政策決定は、野田・前原ラインで行い、国会対策だけ小沢Gに責任を押しつける」というのが、野田新内閣の人事のキモだ。うまく行ってもいかなくても、野田・前原にすれば結果オーライという巧妙で狡賢い構成になっている。
仕上げはおそらく、輿石幹事長から、金庫の鍵と人事権を取り上げること。「ねじれ国会に専念して下さい」とか言って。
さて、昨日も書いた これからの家づくり② を続けたい。
前回は、コーポラティブという共住(きょうじゅう・ともすみ)の手法を使って、経済的に平均的な家庭でも郊外楽園を手に入れられる、ということを書いた。
ひとつの家計のモデルとして、世帯主年齢35歳くらい、世帯年収450万円、自己資金300万円という設定をしたのだが、35歳くらいの平均貯蓄額を調べてみると、全国平均で約600万円となっている。
(総務省 H22年度家計調査)
ところが、貯蓄額というのは、平均が必ずしも平均を意味しない。
下記のグラフを見ると分かりやすい
超金持ちがいるので、平均額は実は相当の金持ちになってしまうのである。
で、貯蓄額順に一列に並んで、真ん中の人を意味する中央値を使う。
上記の場合で中央値は平均値の約60%なので、先の30代平均600万円も中央値360万円としておく。
とすると、自己資金300万はギリギリすぎる感じがあるので、モデルケースの自己資金は200万円に修正する。
それと、借入額を1500万と書いたけれども、月に9万x20年だとフラット35の借入額はちょうど1600万になる。
こちらも訂正。
年齢35歳、夫婦と子ども1人の3人家族、世帯年収450万、自己資金200万、住宅ローンの借り入れ1600万円。
■■具体的にモデルを描いてみる
仮に上記のモデルをMさんとする。
Mさんと、ほぼ同じような条件の家族を探し、3家族で共住する土地を探す。
条件は、大阪市内の職場まで、ドアツードアで1時間ちょっと ということと、子どもが小学校に通えること が最低条件。
実際に不動産サイトで検索してみると、例えばこんな物件がある
http://www.o-uccino.jp/detail_0002169602_h/
所在地 :兵庫県三田市加茂 福知山線/広野駅 から徒歩6分
価格 :1,100万円 土地面積:376.42㎡ (約113坪)
(これは、たまたま検索にかかっただけのサンプルなので、どんな土地なのかは一切責任もちません)
JRの快速で大阪梅田まで50分だから、充分に通勤はできる。
850mくらいのところに広野小学校もある。
とにかく、ここが気に入ったとして、話を進める。
共有持ち分を3人で均等にすると、一人あたり土地代が367万円になる。
資金は200+1600=1800万円だが、消費税含めた諸費用に2割くらいかかるので、土地と建物の予算は1440万円。
土地代を払うと、残りは約1073万円と言うことになる。
1073万円で家が建つか。
もちろん、建つのは建つ。安売りで有名な○○ホームなんかなら、一切オプションを頼まなければ、充分に建つ。
だが、新建材に包まれて、郊外楽園生活ができるのか・・・
せっかくの楽園計画が、なんだか色あせてくる。
やはり、木と和紙と漆喰で、なおかつ耐震性のしっかりした家にしたい。
となると、どんなに合理化しても坪あたり50万を下回るのは難しい。
1073万だと、21.5坪だ。
う~ん。これは微妙。
21.5坪70㎡は、マンションの平均の広さなので、平屋ならば充分に暮らしていける広さが確保できるし、物置や作業小屋はあとから自力で増築したりすれば、何の問題も無い。
とは言え、平屋は建築コストがかさむし、ちょっときびしすぎる条件かもしれない。
となると、もっと土地の安いところを探すか、人数を増やして土地の分担を小さくするか。
でも、坪10万を切るとだんだん通勤がきびしくなる。
土地の分担が狭すぎては、肝心の菜園のスペースが取れない。
う~~ん どうしたらいいだろうか。
■■定期借地権という考えかた
定期借地権付きマンションは、最近ではめずらしくなくなったので、家のことを考えている人ならば、これは聞いたことがあるだろう。
略して定借 なんて言ったりする。
定期借地権というのは、50年(以上)の年限を決めて、その間だけ住居用に土地を借りること。
普通の借地の場合は、一度貸してしまうとなかなか返してもらえないことが多く、立ち退き料を取られたりするので、地主は住宅用には土地を貸したがらない。
そこで、50年以上の契約年限が来たら、建物も壊して更地にして返します、と最初から決めているのが、定期借地だ。
そもそもは、バブルで土地が高騰して、一般の人は買いたくても手が出なくなった。
そんなときに、借地と売地の中間のような位置づけで考え出されたのが、この定借。
詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ
定期借地権の解説(国土交通省)
ところが、ご多分にもれずこの制度が施行されたときにはバブルははじけた後。1992年。
急降下する地価を前にして、思ったほど利用は増えなかった。
ところが、不況が長引くなかで、2007年頃には不動産ミニバブルがあり、地価が上昇。
そこで、定借は再び脚光をあび、定借付きマンション(特に賃貸)が激増した。
が、サブプライム問題やリーマンショックでミニバブルもあっけなく崩壊。
定借もまたまた影に隠れてしまった。
で、この定借というのは、具体的にどうなるのかということを、さっきの三田市の物件を例に考えてみる。
この土地の地主が、いくら待っても売れそうにないので、いっそ定借で貸そうかと思ったとする。
そこにタイミング良く、Mさんたち3人が「定借で貸して下さい」と頼んだとする。
定借の場合は、最初にある程度の保証金を払い、その後50年間は毎月地代を払う。
事例も少ないこともあり、はっきりした相場はないけれども、全国の平均では、
保証金が地価の18%、年間の地代が地価の1.3% となっている。
なので、1100万円のあの土地ならば、保証金が約200万円。地代が14.3万円、月に1万2千円だ。
これを3人で割るから、保証金が67万円、地代が4千円となる。
50年間で地代が240万円、保証金とあわせて300万円とちょっと。
(保証金は50年後には返してもらえるけれども、ほぼそのまま建物の解体費になるから、無いものと思った方が良い。)
大事なことは、50年(以上)の契約年限が来たら、無条件で出て行かなくてはならない、ということ。
かりに35歳で50年の契約をすると、85歳で追い出される。
これはたまらないので、年限を60年にするケースもある。
また、定借の家でも売買はできるけれども、年限があと10年などと迫ってくると、難しくなる。
10年で追い出される家を買う人は、あまりいない。
そのあたりを分かった上でならば、定借は自分一代の住まいを確保する方法としては悪くない。
あらためて、この方式で予算組をしてみると、
地代の分だけ住宅ローンの返済額が減るので、借入額が100万ほど少なくなり、総予算1700万。
1700x80%-保証金67万≒1293万
だいたい25坪。
これならば、合理的な設計をすれば、3~4人家族の住まいは作れる。
■■敷地全体としては
113坪の敷地に3家族だから、1家族あたり38坪くらい。
家を建てて駐車スペースをとると、残りは10坪くらい。これでも悪くはないけれど、コーポラティブの特性を生かすと、3軒で30坪の共用スペースができる。実際は、家と家の間を調整すると、もっと広くとれる。
畑と道具置き場と子どもの遊ぶ場所が40坪もあれば、これはスゴイ。
簡単な模式図で違いを見てみると
あくまで模式図なので、細かいツッコミは勘弁願いたい。
以上、郊外楽園生活を手に入れるための、最適のスキームは、定期借地権付きの戸建てコーポラティブではないだろうか、というのがここまでのお話。
もちろん、定借は地主の意向次第なので無理なこともある。
敷地の条件も色々であり、具体的にはケースバイケースで考えていくことになる。
ここで見ておきたいことは、年収700万以上、自己資金1000万以上などというやたらと恵まれた条件じゃなくても、モデルにしたMさんのケースでも、こんな感じの郊外楽園をあまり無理なく手に入れることができる、ということ。
家づくりを仕事にしている私が言うのもオカシイのだけれども、「住む」ということは、このくらい軽やかに考えるべきだとおもう。
次回は、郊外楽園のライフスタイルについて、少々提案をしてみたい。
ちょっとお節介に過ぎるかもしれないけど。
■■参考
郊外楽園について、以前の記事を見ていない方はこちらを
郊外楽園プロジェクト
郊外楽園プロジェクト その2
今回の大災害の反省から「郊外楽園」を考える
もうちょっと、気持ちが落ち着いてから、冷静に分析してみようと思う。
ひと言だけ印象を書いておくと、「重要な政策決定は、野田・前原ラインで行い、国会対策だけ小沢Gに責任を押しつける」というのが、野田新内閣の人事のキモだ。うまく行ってもいかなくても、野田・前原にすれば結果オーライという巧妙で狡賢い構成になっている。
仕上げはおそらく、輿石幹事長から、金庫の鍵と人事権を取り上げること。「ねじれ国会に専念して下さい」とか言って。
さて、昨日も書いた これからの家づくり② を続けたい。
前回は、コーポラティブという共住(きょうじゅう・ともすみ)の手法を使って、経済的に平均的な家庭でも郊外楽園を手に入れられる、ということを書いた。
ひとつの家計のモデルとして、世帯主年齢35歳くらい、世帯年収450万円、自己資金300万円という設定をしたのだが、35歳くらいの平均貯蓄額を調べてみると、全国平均で約600万円となっている。
(総務省 H22年度家計調査)
ところが、貯蓄額というのは、平均が必ずしも平均を意味しない。
下記のグラフを見ると分かりやすい
超金持ちがいるので、平均額は実は相当の金持ちになってしまうのである。
で、貯蓄額順に一列に並んで、真ん中の人を意味する中央値を使う。
上記の場合で中央値は平均値の約60%なので、先の30代平均600万円も中央値360万円としておく。
とすると、自己資金300万はギリギリすぎる感じがあるので、モデルケースの自己資金は200万円に修正する。
それと、借入額を1500万と書いたけれども、月に9万x20年だとフラット35の借入額はちょうど1600万になる。
こちらも訂正。
年齢35歳、夫婦と子ども1人の3人家族、世帯年収450万、自己資金200万、住宅ローンの借り入れ1600万円。
■■具体的にモデルを描いてみる
仮に上記のモデルをMさんとする。
Mさんと、ほぼ同じような条件の家族を探し、3家族で共住する土地を探す。
条件は、大阪市内の職場まで、ドアツードアで1時間ちょっと ということと、子どもが小学校に通えること が最低条件。
実際に不動産サイトで検索してみると、例えばこんな物件がある
http://www.o-uccino.jp/detail_0002169602_h/
所在地 :兵庫県三田市加茂 福知山線/広野駅 から徒歩6分
価格 :1,100万円 土地面積:376.42㎡ (約113坪)
(これは、たまたま検索にかかっただけのサンプルなので、どんな土地なのかは一切責任もちません)
JRの快速で大阪梅田まで50分だから、充分に通勤はできる。
850mくらいのところに広野小学校もある。
とにかく、ここが気に入ったとして、話を進める。
共有持ち分を3人で均等にすると、一人あたり土地代が367万円になる。
資金は200+1600=1800万円だが、消費税含めた諸費用に2割くらいかかるので、土地と建物の予算は1440万円。
土地代を払うと、残りは約1073万円と言うことになる。
1073万円で家が建つか。
もちろん、建つのは建つ。安売りで有名な○○ホームなんかなら、一切オプションを頼まなければ、充分に建つ。
だが、新建材に包まれて、郊外楽園生活ができるのか・・・
せっかくの楽園計画が、なんだか色あせてくる。
やはり、木と和紙と漆喰で、なおかつ耐震性のしっかりした家にしたい。
となると、どんなに合理化しても坪あたり50万を下回るのは難しい。
1073万だと、21.5坪だ。
う~ん。これは微妙。
21.5坪70㎡は、マンションの平均の広さなので、平屋ならば充分に暮らしていける広さが確保できるし、物置や作業小屋はあとから自力で増築したりすれば、何の問題も無い。
とは言え、平屋は建築コストがかさむし、ちょっときびしすぎる条件かもしれない。
となると、もっと土地の安いところを探すか、人数を増やして土地の分担を小さくするか。
でも、坪10万を切るとだんだん通勤がきびしくなる。
土地の分担が狭すぎては、肝心の菜園のスペースが取れない。
う~~ん どうしたらいいだろうか。
■■定期借地権という考えかた
定期借地権付きマンションは、最近ではめずらしくなくなったので、家のことを考えている人ならば、これは聞いたことがあるだろう。
略して定借 なんて言ったりする。
定期借地権というのは、50年(以上)の年限を決めて、その間だけ住居用に土地を借りること。
普通の借地の場合は、一度貸してしまうとなかなか返してもらえないことが多く、立ち退き料を取られたりするので、地主は住宅用には土地を貸したがらない。
そこで、50年以上の契約年限が来たら、建物も壊して更地にして返します、と最初から決めているのが、定期借地だ。
そもそもは、バブルで土地が高騰して、一般の人は買いたくても手が出なくなった。
そんなときに、借地と売地の中間のような位置づけで考え出されたのが、この定借。
詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ
定期借地権の解説(国土交通省)
ところが、ご多分にもれずこの制度が施行されたときにはバブルははじけた後。1992年。
急降下する地価を前にして、思ったほど利用は増えなかった。
ところが、不況が長引くなかで、2007年頃には不動産ミニバブルがあり、地価が上昇。
そこで、定借は再び脚光をあび、定借付きマンション(特に賃貸)が激増した。
が、サブプライム問題やリーマンショックでミニバブルもあっけなく崩壊。
定借もまたまた影に隠れてしまった。
で、この定借というのは、具体的にどうなるのかということを、さっきの三田市の物件を例に考えてみる。
この土地の地主が、いくら待っても売れそうにないので、いっそ定借で貸そうかと思ったとする。
そこにタイミング良く、Mさんたち3人が「定借で貸して下さい」と頼んだとする。
定借の場合は、最初にある程度の保証金を払い、その後50年間は毎月地代を払う。
事例も少ないこともあり、はっきりした相場はないけれども、全国の平均では、
保証金が地価の18%、年間の地代が地価の1.3% となっている。
なので、1100万円のあの土地ならば、保証金が約200万円。地代が14.3万円、月に1万2千円だ。
これを3人で割るから、保証金が67万円、地代が4千円となる。
50年間で地代が240万円、保証金とあわせて300万円とちょっと。
(保証金は50年後には返してもらえるけれども、ほぼそのまま建物の解体費になるから、無いものと思った方が良い。)
大事なことは、50年(以上)の契約年限が来たら、無条件で出て行かなくてはならない、ということ。
かりに35歳で50年の契約をすると、85歳で追い出される。
これはたまらないので、年限を60年にするケースもある。
また、定借の家でも売買はできるけれども、年限があと10年などと迫ってくると、難しくなる。
10年で追い出される家を買う人は、あまりいない。
そのあたりを分かった上でならば、定借は自分一代の住まいを確保する方法としては悪くない。
あらためて、この方式で予算組をしてみると、
地代の分だけ住宅ローンの返済額が減るので、借入額が100万ほど少なくなり、総予算1700万。
1700x80%-保証金67万≒1293万
だいたい25坪。
これならば、合理的な設計をすれば、3~4人家族の住まいは作れる。
■■敷地全体としては
113坪の敷地に3家族だから、1家族あたり38坪くらい。
家を建てて駐車スペースをとると、残りは10坪くらい。これでも悪くはないけれど、コーポラティブの特性を生かすと、3軒で30坪の共用スペースができる。実際は、家と家の間を調整すると、もっと広くとれる。
畑と道具置き場と子どもの遊ぶ場所が40坪もあれば、これはスゴイ。
簡単な模式図で違いを見てみると
あくまで模式図なので、細かいツッコミは勘弁願いたい。
以上、郊外楽園生活を手に入れるための、最適のスキームは、定期借地権付きの戸建てコーポラティブではないだろうか、というのがここまでのお話。
もちろん、定借は地主の意向次第なので無理なこともある。
敷地の条件も色々であり、具体的にはケースバイケースで考えていくことになる。
ここで見ておきたいことは、年収700万以上、自己資金1000万以上などというやたらと恵まれた条件じゃなくても、モデルにしたMさんのケースでも、こんな感じの郊外楽園をあまり無理なく手に入れることができる、ということ。
家づくりを仕事にしている私が言うのもオカシイのだけれども、「住む」ということは、このくらい軽やかに考えるべきだとおもう。
次回は、郊外楽園のライフスタイルについて、少々提案をしてみたい。
ちょっとお節介に過ぎるかもしれないけど。
■■参考
郊外楽園について、以前の記事を見ていない方はこちらを
郊外楽園プロジェクト
郊外楽園プロジェクト その2
今回の大災害の反省から「郊外楽園」を考える
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