
📖 科学的真実がどうであろうと、地震は来る。
「南海トラフ」にかまけすぎると、該当エリアにはあきらめの空気、非該当エリアには「地震来ない」油断が蔓延する。

『南海トラフ地震の真実』 小澤慧一 東京新聞
予知の仕組みは現在に至るまで、一度も科学的に証明されたことがない。
それでも予知研先には莫大な予算が充てられ、その差配は政府に委員として選ばれた地震学者たちに委ねられて「地震ムラ」が形成された。
取材をしていくと、南海トラフ地震が防災予算獲得の都合から「えこひいき」されて確率が高く示されるあまり、全国の他の地域の確率が低くとらえられて油断が生じ、むしろ被害を拡大させる要因になっている実態も見えてきた。
政治的要素が入ってしまった科学は、もはや科学とは言えないだろう。
政府が科学を保護することは大事だが、研究者の自律性・自立性が保てない科学に進歩は見込めない。
ロバート・ゲラー
「前兆現象はオカルトみたいなものです。確立した現象として認められたものはありません。予知が可能と言っている学者は全員『詐欺師』のようなものだと思って差し支えないでしょう」

『日本人は知らない「地震予知」の正体』 ロバート・ゲラー 双葉社
私は、今日まで「地震予知はできない」と主張し続けてきた。
こうした意見は日本では少数派かもしれないが、私の意見に賛同してくれる日本人は少しずつ増え続けていると確信している。
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『南海トラフ地震の真実』
小澤慧一 東京新聞
『日本人は知らない「地震予知」の正体』
ロバート・ゲラー 双葉社
ブルースカイのほうで Robert Geller さんからフォローいただいてしまったので慌てて『南海トラフ地震の真実』と『日本人は知らない「地震予知」の正体』に目を通したのだが扱いが難しくて 🙌
本筋は
「南海トラフだけエコヒイキしすぎ!日本はどこでも危ない!油断したら負け!」そこに
「うそつきの地震学者がいる」「行政ズルい」が貫入してくる。
▶ まず、行政と巷間の「願望/幻想」と、地震学研究者にとっての「利益」と、おそらく土建やインフラ系の「都合」が、生物都市化する勢いでスクラムしていて分かちがたい。
▶ 一介の素人が生噛りでなにか表明するにしても、なにぶん具体的な状況が不明確(どこをどう押せば効果があるのかが見えない)ゆえに立ちすくんでしまう。
▶ 加えて、いまはたいへんまずい時流にある感がある。
地震関係どころか、そもそもの「科学」自体の地位が轟音を立てて地に落ちていってる。トランプ政権がアメリカの公的科学や医療をひっくり返して阿鼻叫喚な報道が連発されて目も当てられない、この先良くなることがあるのかどうかさえ定かではない、白金さえも腐食してただれかねないほどの怒涛の劇薬荒波。
なんとか正気っぽい日本にしても、すでに
スチュアート・リッチー
『Science Fictions あなたが知らない科学の真実』 ダイヤモンド社
が出回るなど、正義としての「反科学」はまっとうなものとして成立しうる素地が出てきている。
その中で、「地震予知」だけの話をしようとしても、おそらく巷間では切り分けてもらえない。かなりの広範囲を巻き込んで地盤沈下を起こす。
┗ 本書を読んだ上で「プレート説はやっぱり嘘だった」とやらかす人が出ている。そんな動物たちをどうテイミングしていけばいいんだ。
さても。
科学的真実がどうであろうと、地震は来る。「南海トラフ」にかまけすぎると、該当エリアにはあきらめの空気、非該当エリアには「地震来ない」油断が蔓延する。
中日新聞発の
『南海トラフ地震の真実』は出版こそ2023年の夏だが元の連載は2019年。
特に2024年正月の能登半島地震以降、「南海トラフに限らずどこでも身構えて!」方向に報道が配慮するようになってきた感がある。
「予測は嘘だ」派であろうが「地震兵器だ」信者であろうが、前よりは少しは非常時のお備えレベルはアップしてきているようだ。
『南海トラフ地震の真実』については、初版の2か月後に出た第3刷を拝読したのだが、末尾に「23年に本書で「第71回菊池寛賞」受賞」と加筆されていた。第3刷が出る直前に受賞したらしい。
菊池賞受賞者|公益財団法人日本文学振興会
東京新聞・小沢慧一記者
『南海トラフ地震の真実』
「30年以内に70~80%」という南海トラフ地震の発生確率が、水増しされた数字であり、予算獲得などのために科学が歪められている実態を、非公開の議事録や古文書の調査など丹念な取材によって明らかにした
『南海トラフ地震の真実』に結実する流れの発端は、ロバート・ゲラー氏の
『日本人は知らない「地震予知」の正体』。
こちらの本はスラスラと読める日本語で記されていてスゴイなとは思ったのだけれど、実際には(本書の中でその旨明記されていたらごめん、読み飛ばしたかも)奥さんか誰かがだいぶ日本語を手直ししてくださっていたらしい。SNS上のナマ発信のほうはかなりズタズタな日本語である(通じないわけではないので意思疎通上の不自由さはないだろうけれど)。
直されていない日本語の状態でSNS上に「ダメダメ地震学」告発を流す、その姿はただの「危ないおじさん」でしかなくて扱いに困る、あまり触りたくない。
『日本人は知らない「地震予知」の正体』
目次より抜粋:
「地震予知」という幻影
マグニチュード9の地震はどこでも起こりうる!
全国55基の原子力発電所は大丈夫なのか
「予知はできない」と知っているのに知らん顔の御用学者たち
予算を生み出す「打ち出の小槌」=「東海地震」
地展発生の「周期説」には何の根拠もない
震災大国・日本の進むべき道
それにしても。
防災系の地学には、前からこう、行政との立ち回り方にハンデがあるような気がしていて、…もしかしたら、「地学」というジャンルに集まる人材の性質自体もなんかいっちょかみしてるんじゃないかとも思えてくる。地学系の学会を見物に行くと、「公的な防災マン」ファッションか、「チェックのシャツ」しかいなかったりする時点でかなりアレ。
そして、岡ちゃん先生(岡田弘)の火山防災危機表明のときもそうだったんだけど、
[
https://posfie.com/@usa_hakase/p/I1LaXWO ]
[
https://sciencebook.blog.fc2.com/blog-entry-390.html ]
制度とか構造的な問題の割り出しをなし崩しにする文化環境の構造的な問題の割り出しをなし崩しにする文化の洗い出しをなし崩しに… みたいなヤバイキッチンシンクの吸引渦っぽいのがほの見えて。
日本はどうも、研究者群や行政の実態・動向を調べる社会学が虚弱体質というか、まともに仕事できてない感があったりする。参与観察してない、肘掛け椅子研究や文献調査ばかり、実効を致せないポーズだけ声だけ? 予算もらえてない結果なのか。どうなんだい。
著者さん ↓
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おまけ
『日本人は知らない「地震予知」の正体』の中で、国内外の研究者が結集して編んだ『The Orphan Tsunami of 1700』が無料公開されているよと紹介されていたのはこちら↓
『みなしご元禄津波』日本の古記録これが146pもあるがっちりPDF。
英文メインの中、適宜日本語が交じるし、古文書の読み下しまでやってておもしろい。
巻末のレファレンスに突然カット・インするアニメはどうやら「稲むらの火」らしいんだ。
『ミニ特集:地震研究の本』
『ミニ特集:地震・火山災害研究の本 その2』
『ミニ特集:地震・火山災害研究の本 その1』
『ミニ特集:震災と建設』
『ミニ特集:震災に駆けつけた人々』
『ミニ特集:火山災害研究の本 その2』
『ミニ特集:火山災害研究の本 その1』