皆さんの前提を整理する その2
ドゥロワーの山路です。
「皆さんの前提を整理する」というエントリーに対して、多くの方からいろいろな反応をいただきました。
本当にありがとうございます。
その前回のエントリーでは長すぎたために、続編である「小売店からどのようにして消費者に商品が渡るのか」 という内容で、本日はお話したいと思います。
またまた長いですが、最後までお付き合いいただけるとうれしいです。
その多くは入荷した七部組みの状態のものに、送り状と納品書を添付して国内の物流業者(佐川急便やヤマト運輸)によって配送されます。
小売店では、到着した商品を確認し、傷や欠損、また同梱部品の有無などを確認しながら、箱から出した「七部組み」の自転車を完成車に仕上げていきます。
お客様から直接注文を受けて入荷する商品を「客注品」 、それ以外のものを「展示品」として分けさせていただくと、すでにお客様に適したサイズやモデルが事前にヒアリングできている「客注品」 に関しては、「つるし」の状態から実際にご乗車になるライダーに合わせて適宜部品を交換したり、調整を行いながら全体の最適化を行った「商品」 を創り出します。
ここで初めて本来の性能を100%引き出した「商品」が出来上がります。
それ以外の「在庫品」 に関しては、実際にお客様に販売する際の最適化を行う上で都合が良いように、調整する部分のみを残してそれ以外の場所をしっかりと組み立てて展示するという方法で、小売店は「半製品」を「商品」として作り上げていきます。
しかしながら、ここに一つ問題があるのですが、実はこの自転車を組み立てる手順やスキルというものは、旧態依然とした徒弟制度のような育成環境の中で行われる究極のOJT(on the job training)が一般的で、要は師匠が組み立てる方法を見よう見まねで仕事の中で覚えつつ、自分の技術を磨くという習慣が存在します。
例えば、自転車店に入社した若者は、まず自転車の組み立て方を学びます。
とはいえ、その方法は前述したとおりの環境ですので、入社したその店舗によって流儀や扱う商品などに左右されながら、独自の方法論を叩き込まれます。
もちろん、あくまでも機械ですので見たところは同じようなものに出来上がるのがほとんどと言えますが、実際には組みつけの際に使用する油脂類であるとか、各部品の取り付け角度であるとか、手順などが全く異なるため、極論で言えば全く違った商品が出来上がるということになります。
例えば、技術力を売りにしているプロショップと呼ばれるハイエンド店などは、どんなに安価な自転車でも、七部組みの状態をわざわざ全部分解してから、フレームの精度をチェックし、適宜修正を行ってから各部品の動作確認をして、オリジナルの油脂類を使って丁寧に組み立てを行っていくことで、1台当り3~4時間から長いところで1日かけて組み立てを行うような販売店が実際に存在します。
一方で、七部組みはあくまでも70%は組み立てができているという考え方の中で、残りの30%を取り付けて動作チェックをして終了という販売店も存在します。
どちらが正しくて、どちらが間違っているかという議論をするつもりはありませんが、唯一正しい事は、出来上がった自転車が「安全か否か?」 ということです。
前者のように組み立てても、必ず後日調整が必要になったり、メンテナンスが必要になりますので、定期的に販売店に持ち込まなければなりませんし、後者のように組み立てた場合に必ずしも事故が発生したり、不具合が出るということではないわけです。
つまり、お使いになる方のニーズによって「最適化」 されており、かつ乗車されるお客様の安全を確保できる状態で販売できるか否かのお話しになります。
ですので・・・・
ここだけの話、同じブランド、同じモデル、同じサイズ、カラーといえども、出来上がってくる商品は同じではないのですよ。
価格が安いからとか、高いから良いとか悪いの話ではなく、お客様の要望をしっかりとヒアリングしてくれた上で、それぞれに最適化してくれる自転車店こそ、その方に最もふさわしい自転車店ということができるわけです。
これってある意味、恋愛のようなものですので、一発で素晴らしい自転車店に出会える
なんて思わない方がいいですし、誰かが良いと言ったからといって、ご自身には適さないこともありますので・・・
それらの一期一会を楽しむのも、良いサイクリングライフを楽しむ醍醐味であったりもしますので、ぜひ店頭で直接店主と対話をされることをお勧めします。
ちなみに一人でサイクリングしても楽しくありませんから、そのような自転車店を中心としたコミュニティーを上手に活用するためにも自転車店に足を運ぶのは大変意味があることだと思います。
そのようにして、あくまでも「安全」をテーマとした独自の理論の中で組み立てられた商品が、お客様の手に渡り、無事それぞれの快適なサイクリングライフが始まるわけですが、ここからがスポーツ用自転車のさらに特徴的なところです。
まあ自転車だけではないのですが、必ずモノは壊れるという事実。
壊れるものを理解することができますが、何が壊れるとどうなるという危機管理というものは、一般の方でも出来る事とそうでない事が存在します。
特に機械の場合、危険な状態を察知するための「何か」があれば誰でも危機管理を容易にできるのですが、あくまでもスポーツをするために特化した乗り物がスポーツバイクですので、危機管理が容易にできるような装置や機能といったものは、原則的に取り付けることなど考えられてはいません。
例えば、ある箇所が一定の周期で消耗という理由でトラブルを起こす可能性があるとします。
その箇所がトラブルを起こすことで他の安全装置が働き、危険を回避できることがわかっているとします。
しかしながら、「他の安全装置」を取り付けることで、スポーツをする上では大変なデメリットになることが明らかであれば、機能性と安全性のバランスは必ずしも安全性が上回るということではないという事です。
もちろん、安全はすべて無視して機能を重視するということではないのですが、消耗する場所を定期的にメンテナンスしたり、部品を交換すれば安全が確保できるといった代替策を実行することで性能や機能を維持し、快適にスポーツとしてのサイクリングが楽しめるように考えられているのがスポーツバイクだという理解が必要だと思います。
今となってはですが、今回事故にあわれた方が、サスペンションフォークが「消耗によって」壊れる危険性があるため、安全装置がついたサスペンションを装備した自転車がもしも存在したとして、メンテナンスなどの面倒なことは一切しなくても良いが、そのデメリットとして重量が重く、価格の高くなった自転車を選ばれていたか?
答えはわかりませんが、もし私であれば「スポーツをするため」の自転車であるならば、重量は軽いほうがいいですし、価格もできれば安いほうがいいので、そのような自転車は選ばないという回答を出すと思うのです。
それよりも近所に安心してお任せできる自転車店とお付き合いをさせていただいて、ちょっとした不調でも、すぐに持ち込んでチェックしてもらえるお店を探す事に時間とお金をかけた方が「安全を管理する」という点では比べ物にならないくらい効果的なことだと思います。
今日も長くなってしまいましたが、後一つだけお話しなければならないこと。
「では、どのようなことにライダー自身が気をつけて自転車と付き合わねばならないか」
というテーマで、次回またお話したいと思います。
では、次の引き出しをお楽しみに。
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No title
こんにちは。
私のブログにコメント頂きありがとうございます。
ドゥロワーさんの記事を読ませていただくと、やはり物事は多角的な見方をしなければいけないと痛感させられます。
素人考えで記事にした自分が恥ずかしいです。
この続きも大変気になります。また、拝見させていただきます。
| ケント | 2010/04/10 12:20 | URL | ≫ EDIT