NSAの暗号博物館を訪れる
ワシントンDCへ行くついでに、NSAに併設されている国立暗号博物館(National Cryptologic Museum)を訪れた。
暗号博物館とは、なんとも面白く無さそうなネーミングなのだが行って見るとこれが、なかなか面白い。DC市内の観光客向けの各種博物館と異なり、全くやる気がなく、来訪者を拒むかのごとき佇まいがNSAらしい。
NSA(National Security Agency)米国国家安全保障局は米国の安全保障に関わる通信の傍受や暗号処理を担当する政府機関で、アメリカで最も秘密に包まれた組織と言われている。とはいうものの、今ではgoogle mapsの衛星写真にもしっかりその姿が映し出されている(ただしこの画像は古い)。
この博物館は暗号の歴史に関する博物館であると同時にNSAの広報館の役割も果たしている。暗号の誕生から近代化にかけての歴史的資料や、第二次世界大戦時に用いられた暗号装置をはじめ、ベトナム戦争を経て冷戦から現代にいたるまでの暗号の仕組みや暗号に関する装置、NSAで使用された各種機器、スーパーコンピュータなども展示されている。
外務省JADE(97式)印字機
館内に入ると小さな机と椅子だけの質素な受付があったり、NSAをリタイアしたと思われる初老の男性や女性が机に向かってのんびりと作業をしていたり、売店は開店時間になっても誰も来なかったりと、やる気の無さが抜群である。館内はそれほど広くないが本格的な展示物がいろいろとあり、暗号やセキュリティに興味のある人であればざっと1時間半から2時間ほど楽しむことができる。
Thinking Machines社の並列コンピュータCM5
この博物館がすごいのは、国家と国家の狭間で歴史を刻んできた本物の機器等がさりげなく展示されていることであり、観光客向け博物館にはない迫力がある。エニグマ暗号機の実機を操作して実際に暗号の作成や解読を体験することもできる。
ENIGMA
見学の最後には館内にあるミュージアムショップで他では買えない各種NSAグッズを購入することができる。記念に首から下げるIDカード用のストラップを購入しようとしたが、理由は不明だがレジの機械を通すことができないとやらでその商品を購入することができなかった。他のWebサイトからの情報によるとこのショップではいくつか誰も購入できないアイテムが存在するらしい。やはり謎の多い組織だ・・・。
セキュリティや暗号に関心があり普通の観光地は飽きたという方にとっては、ここは間違いなくお勧めできる。ただしワシントンDCとボルチモアの中間あたりにあるため一般の交通機関では移動できず車が必要になるので注意が必要だ。
自宅に帰り、NSAによる監視社会を題材にした映画「Enemie of the State (邦題:エネミー・オブ・アメリカ)」のビデオをあらためて鑑賞した。もう7年も昔の映画なのに、9・11以降米国の監視強化もあってか、全く古くささを感じさせない良くできた映画だと思う。
(この映画の中で出てくるNSAのふとっちょのハッカーが、映画「スクールオブロック」の主演ジャック・ブラックだったことに今更ながら衝撃を覚えた。この2作品のギャップがあまりにも大きいので続けて見るとかなり笑えそうだ。)
(注)画像にはアマゾン・アソシエイト(アフィリエイト)のリンクを設定しています。
【参考情報】
■National Cryptologic Museum
http://www.nsa.gov/museum/index.cfm
■National Security Agency
http://www.nsa.gov/
■エネミー・オブ・アメリカ(Enemie of the State)
http://www.simpson-bruckheimer.com/enemyofthestate/
■映画スクール・オブ・ロック オフィシャルサイト
http://www.schoolofrock-movie.jp/
武田さん、今晩は。
NSAのNational Cryptlogic Musium行きましたか。
私も昨年末のIETFのときに、リムジン(!)を借りて4人ほどで見に行きました(確か$400)くらいかかった記憶があります。
来るなと言うような場所にあるので、空いていてゆっくり見れましたが、中身はすごく濃いですね。
南北戦争中の情報戦の展示とか、冷戦時代にソ連の小学校から送られたペナントの中に隠しマイクが入っていた展示とか、Cray 1とか。
エニグマも良いですが、個人的にはCrypto Diskが気に入りました。
ミュージアムショップでお土産に買ってきたりして(笑)
ryuさん。コメントありがとうございます。
本当に来るなという雰囲気ですよね。
私も行ってみるまでは、どうかと思ってたのですが、非常に興味深い内容でした。
有料のスパイミュージアムよりも無料の暗号ミュージアムの方がぜんぜん内容が深いですね。
こんにちは。
先日の5月連休を使って、ワシントンDCに行って来ました。
この博物館は、目的の第一です。
交通ですが、ワシントンDCのユニオン駅から、MARCのPenn Lineを使って、Odenton駅で下車($12)
約30分弱
そこから、Uberで、約10分($17.35 チップ$5含む)
現在は、これが一番安価で、簡単かと思います。
内容は濃く、エニグマの使い方が判らなかったので、元NSAの職員の方?
に聞いたら、丁寧に説明してくれました。
おまけに、年代をおった、解読の歴史の説明まで。
ネームプレート入れと、それ用のばね式クリップ・プレートネクタイピン・Tシャツ
等を購入してきました。
学生の団体が来ておりました。
akioさん
最新の状況をお知らせいただきありがとうございました。
最近だとUberが使えるので便利ですね。
博物館も健在のようでお楽しみいただけたようで良かったです。
ご返信、ありがとうございます。
アーカイブが2016年で止まっていたので、まさか、ご返信頂けるとは思っていませんでした。
NSAにとっては、すでに枯れた技術かも知れませんが、私が壮年期の頃の、cray 1など、実物を
見れて、非常に面白かったです。
あとは、やっぱり、エニグマの実機を操作できる点でしょうか。
NSAに関しては、スノーデンの暴露本を購入して、プライバシーは、無いなーと、感じた次第です。
でも、こういう施設がある事自体、素晴らしいし、アメリカは、国関係の博物館等の施設は、
無料と言うのが、非常に良いと感じます。
今回も、他にスミソニアン群を見学して来ました。
ワシントンD.C.は、また、訪れたい所です。