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坑口付近(概説・現地写真) - 京葉線新東京トンネル(3)
公開日:2009年12月14日00:02
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京葉線新東京トンネル全体の概要と主たる工法であるシールド工法についてのべたので、今回からはいよいよトンネル各工区の概要と現地の様子について述べることとする。ページの構成は総武・東京トンネルとほぼ同じとし、潮見駅側から順にお送りすることとしたい。(ちなみに、起点の東京駅側から書かないのはそれなりの理由があるからです…)
■U字型よう壁:4km726m52~4km910m00(L=183.48m)
塩浜トンネル:4km568m52~4km726m52(L=158.00m)
▼参考
京葉線工事誌 198・199・465~467ページ
工期:工事誌に記述なし(隣接する東越中島トンネルの工期より1987(昭和62)年前後と推測される。)
●概説
U字型よう壁と塩浜トンネルの位置 ※クリックで拡大
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(平成元年)に筆者が加筆
潮見駅を出た京葉線は半径400mのカーブを描きながら汐見運河を渡り、京葉線最急こう配である33.0パーミルで下りながら北から西へほぼ直角に進路を変える。運河を渡った先は総武線新小岩駅から分岐する小名木川貨物線の終点、越中島貨物駅構内である。京葉線はこの越中島貨物駅の機関車検修庫などがあった場所を利用して建設された。運河を渡り終えると既に線路は地平レベルとなっており、東京起点4km910m00付近からU字型よう壁の中を走る形となり地下へと降りていく。
この付近は埋立地で軟弱な沖積層が地表面下25~40mの厚さで堆積しているうえ、すぐ脇に汐見運河があるため地下水位が高い。地震の際には液状化現象でU字型よう壁全体が浮き上がる可能性があったため、よう壁の直下にはコンクリート製の杭を断面方向に5本ずつ埋め込み、地盤に固定している。
そして、そのまま33パーミルで下りながら4km726m52地点で「塩浜トンネル」(開削)に入る(坑口)。この開削トンネルは新木場(坑口)側で線路間隔が3.8m、シールドトンネル(東越中島トンネル)に接続する東京側で線路間隔が10.4mと広がることから、新木場側から中柱なし、1本、2本と順次構造が変化している。一番東京側のブロックはシールドトンネルとの境界となるため、上り線側は天井に給気ダクトを、上下線の下部には坑口側から流れてきた排水を受け止める貯水槽を設置している。また、給気ダクトの上部には送風機を置くための建屋(越中島換気所)を設置している。
この開削トンネルもU字型よう壁と同様、地下水位が高く地盤が軟弱であるため、吸水性のある生石灰を利用した地盤改良※を行い構造物の沈下を防止している。また、工事で使用した土留め壁(鋼矢板)を引き抜く際も地盤沈下が予想されたため、越中島貨物駅に隣接する北側では引き抜きと同時に薬液注入を行い、沈下量を1cmに抑えた。(汐見運河側は注入を省略したため5cm程度の沈下が発生した。)
なお、U字型よう壁、開削トンネルともに目地部からの地下水侵入を防止するため、各目地部にはゴム製の止水材を挟み込んでいる。
▼脚注
※:生石灰杭打設工法。生石灰を主成分とする粒子を円柱状に地盤へ圧入し、その吸水・膨張作用を利用して地盤の含水率低下と圧密効果を得るもの。これにより完成後の構造物がさらに沈下することを防止する。
▼参考
小野田ケミコ | ケミコパイル工法(生石灰杭工法) | 圧密促進工法 | 地盤改良
●現地写真
(すべて2009年8月16日撮影)
左:新東京トンネルを出て潮見駅を通過するE257系500番台。この面はどうにかならないのだろうか…
右:京葉線と並行する暁橋から汐見橋梁を通過中の電車を見る。かなりの急こう配であることが分かる。
※クリックで拡大
新東京トンネルへ続く33.0パーミルの下り勾配は潮見駅のすぐ先から始まっている。左写真の画面奥のカーブの途中からである。この勾配の途中で汐見運河を渡るが、この橋梁を横から見るとかなりの急こう配であることが見て取れる。京葉線に乗り入れる武蔵野線の205系電車はこの急こう配の登坂を可能にするため、設計上のMT比である4M4Tではなく、6M2Tもしくは駆動性能が高いVVVFインバータ制御に改造の上で4M4Tの編成としている。(2005(平成17)年まで走っていた103系も同じ理由で6M2Tの編成となっていた。)
坑口の上を通る「しおかぜ橋」から新木場方面へ走行中の電車を見る。右の建物は越中島変電所。
汐見運河には歩行者・自転車専用の「しおかぜ橋」という橋がかかっており、対岸は京葉線の塩浜トンネル上部を通って深川地区へ抜けることができる。橋の上からはトンネルに出入りする電車を見下ろすことができる。上の写真奥のU字型よう壁の途中からは越中島貨物駅構内へ続く保守用車両の側線が分岐しているのが見える。この線路は保守用であるため本線との分岐は横取り装置(乗り上げポイント)となっていおり、通常の電車は越中島貨物駅方向へ行くことはできない。
トンネル坑口脇には京葉線の電車に電力を供給する越中島変電所がある。この越中島変電所は、今年7月30日に京葉線の全線が7時間にわたり不通になった事故の原因として記憶に新しい。(この写真を撮影した時も事故の影響なのか、一部のケーブル類が仮のものになっていた。)事故の発端は付近を走行中の電車が電気系統の故障を起こし、その事故電流がこの越中島変電所に逆流し、火災が発生してしまったことである。通常ならば変電所のブレーカーで事故電流を遮断する構造になっているのであるが、この時はその容量をはるかにを超えるような大電流が逆流したため、ブレーカー自体が破壊してしまい火災に至った模様である。また、火災発生と同時に付近の架線が停電したが、この時点では電車の故障が原因であることが判明していなかった。そのため、何度も他の変電所から再送電を試みるといった無意味な復旧作業を繰り返すこととなり、結果的に7時間もの間全線不通の状態が続いてしまった。京葉線では2006(平成18)年9月にも東京駅の鍛冶橋変電所(本レポートで後述)で火災が発生しているが、原因は変電所内の機器のトラブルであり今回の事故とは全く異なるものである。
▼参考
asahi.com(朝日新聞社):JR京葉線停電、7時間不通 行楽客ら13万人に影響 - 社会
asahi.com(朝日新聞社):車両回路ショート、変電所ブレーカー落ちず 京葉線不通 - 社会
京葉線変電所等機器焼損について(PDF) - JR東日本(2007年1月25日発表)
同じ場所から東京方面を見る。トンネルは手前の駐車場の下を通る。右の線路は越中島貨物駅の機回し線。遠方にはかつてこの線路がつながっていた豊洲・晴海地区に建設された高層ビル群が見える。
塩浜トンネル上部は駐車場として利用されている。その右側にある線路は越中島貨物駅の機回し線である。かつてはこの右側にも貨物駅の施設が広がっていたのであるが、京葉線開通とほぼ同じくして大幅に規模が縮小されており、跡地にはご覧のように戸建て住宅が並んでいる。また、この機回し線自体も東京都の専用線として豊洲・晴海地区にあった工業地帯へ続いていたが、工場の移転などが進んだため京葉線開通と同年の1991(平成3)年に全線廃止となっている。近年、豊洲・晴海地区では急速に再開発が進んでおり、これらの廃線跡はほぼ消滅に等しい状態となっている。なお、これら貨物線の廃止により、越中島貨物駅で取り扱う貨物は駅に隣接するJR東日本の東京レールセンターで製作されたロングレールのみとなり、列車本数も1日に1~2本と激減した。
越中島換気所
駐車場の先にあるのが上り線のトンネルに外気を供給する「越中島換気所」である。下り線の排気は坑口が近いため、列車の走行を利用した自然換気となっており、換気所の建屋も上り線側に偏った配置となっている。
(つづく)
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