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白内障手術、いつするの?今!…とは限らないかも

2013/10/15

 私が仕事でお会いする患者さまの約7割は高齢者です。こういった高齢の患者さまに特に多い疾患は、水晶体の加齢性の変化である白内障です。一口に白内障といっても、その進行度合いは人さまざま。白内障に対しては点眼治療が最もポピュラーですが、これはあくまでも進行予防であり、根本的な治療は今も昔も手術であることに変わりはありません。

患者の立場に立って考えたい手術のタイミング
 患者さまからは、よく「先生、ワシはもう白内障の手術をしたほうがええんか?」と尋ねられます。中には「手術するかどうか、先生が決めてください」という患者さまもおられます。内心「自分のことなのに、私に丸投げされてもなぁ…」と思うのですが、そういうときに脳裏によぎるのは私の祖母のことです。

 大正生まれの祖母は若くして結婚し、子どもを3人出産して舅・姑に仕えてきました。彼らを看取った後は、家業を手伝いながら伴侶から命じられた通りに過ごし、その祖父が亡くなれば、子どもたちの言う通りに過ごしてきたのでした。そういう祖母には、自分の意思で何かを決定するという習慣がありません。その都度、指示してくれる人に従うのです。祖母がまだ元気であったときから、「おばあちゃん何食べたい?」「あんたらが食べたいものでええよ」、「おばあちゃん行きたいところある?」「あんたらが決めてくれたら、私はついていくよ」――。そういう会話が繰り返されてきました。

 ですから高齢者の患者さまの中にも、誰かが言ったことに従っておこうという考え方をする人もいるのでしょう。こと医療の話なら「お医者さんの言うとおりにしておけば間違いない」と信じていても不思議ではありません。それならば私は、なるべく患者さまの意思を尊重し、QOLが向上するような方法を一緒に考えていこうと思って仕事をしています。

白内障の日帰り手術施行、決め手は「免許」
 さて、私の勤めるクリニックでは、白内障の日帰り手術を行っています。私が研修医だった20年前と比べ、白内障の手術方法は格段に進歩しました。まずは切開創が劇的に小さくなりました。それに伴い、切開創は自己閉鎖創となり、縫合は不要となりました(術後乱視はほとんど出なくなりました!)。術後の抗生剤の投与も、昔は朝晩2回の点滴を数日間も続けていたものですが、今は点眼薬のみ。手術は10分ほどで終了しますし、麻酔も点眼麻酔が主流になっています。

 そのためか「白内障の手術って簡単なんでしょう?」と言われることも多いのですが、中には難易度の高い症例も存在します。高齢者でたまに見かける水晶体核が硬い症例や外傷後の症例などです。

著者プロフィール

さかい あい(ペンネーム)●アラフォー、独身の女性フリー眼科医。関西在住。十数年の病院勤務後、一身上の都合でフリーに転身、町の眼科クリニックに勤務。仕事は結構忙しいが、オン/オフはっきりした生活をエンジョイ中。

連載の紹介

さかいあいの「今日はどないしはったん?」
関西在住の女性フリー眼科医、さかいあい氏によるエッセイ。日々の診療や患者さんのこと、趣味や楽しみ、気になる事件など、話題てんこ盛りです。ブログタイトルは、さかい氏が診察を始めるときの決まり文句。

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