クリスマス・イブのある光景。
最近は、一日中、ずっと、仕事をするか、身体を動かしている。
昨日、都内を一時間くらい歩いて移動していたときのこと。
ある公園にさしかかった。前に広場があって、子どもたちが、大人たちと遊んでいる。小学校に上がるかどうかくらいの年齢。
ぱっと散らばったその配置が、ちょっとブリューゲルの絵を思わせる。
子どもたちの向こうに、トイレが見える。ちょうどいいと思って、近づいていった。
子どもたちが、突然、わーっと左側に走り始めた。それと同時に、男性の声が聞こえてくる。
「順番だよ」、などと言っている。
そうか、これは、子ども会か何かのイベントなのだなと思った。
近づくにつれて、次第に、視野が左側に開けてきて、さまざまなものが見えてくる。
目に飛び込んできたものは、にわかには信じられないものだった。
赤と白の服を着たサンタが、橇に乗って、にこにこ笑いながら、大きな鈴を振っている。トナカイもいる。子どもたちのための、プレゼントを入れた大きな白い袋もある。
まるで、クリスマス・イブの日の、夢が実体化したかのような光景。
実際には、サンタに扮装していたのはどこかのおじさんだったし、トナカイは、頭に角をつけた学生だったし、橇は、リヤカーのような四輪車だったが、一瞬、ファンタジーの世界が広がったのは確かなのだ。
「さあ、並びましょう」と、小さな子の手を引く母親がいる。二三人で、もつれて転がるようにかけつける男の子がいる。
子どもたちの目が、地上の星となる。
私の心も、ぽっと温かくなって、そのままトイレに入った。
トイレの中にも、声が届いている。
「一度には、二人ずつだよ。」
「ぐるっと回るんだよ。」
あの橇に、これから、子どもたちが乗って、公園を一周するらしい。
私が幼かった頃、町内の子ども会のクリスマスがあって、とても楽しかったことを思い出した。
大人の目から見れば簡素なつくりだが、そこに、子どもたちはキラキラとした「夢想の粉」をふりかける。
時代は、すっかり変わってしまったけれども、何かは、続いている。
ずっと隠れていた伏流が、みずみずしく地表に表れた。
私はリフレッシュされたような気持ちで、さらに歳末の東京の街を歩いていったのである。
12月 25, 2014 at 06:40 午前 | Permalink
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