「このサービスは、本日GA(ジーエー)です」−−。数年前、クラウドサービスの取材をしているとき、こう言われて意味が分からず、ぽかんとしたことがある。「ジー、エー、ですか・・・?」と聞き返すと、「そうですが」と相手に怪訝な顔をされてしまった。

 GAはGeneral Availabilityの略。プレビュー(ベータ版)を終えて、一般提供(正式版)に切り替わることを意味する。あるいは、プレビューを経ずいきなり一般提供のこともある。

 もともとオープンソースソフト(OSS)で使われ始めた用語のようだが、“クラウド業界”で広く定着した。クラウドサービスの事業者、クラウド専業のシステムインテグレータ、一般的なシステムインテグレータでもクラウドに詳しいITエンジニアに話を聞くとき、一般提供や正式版などという言葉を聞くことはほぼ皆無。みな「GA」という。

 記者はすぐに慣れてしまい、自分でもGAと言うようになったが、“クラウド業界”には独特の言葉があり、それが「クラウドはよく分からない」というハードルの高さにつながる一因になっているように思う。そこでかつてクラウド初心者だった記者がつまずいたクラウド業界用語を取り上げ、解説したいと思う。なお、言葉の定義は人によって異なるうえに、生き物のようにどんどん変わる。ここで紹介するのは、現時点の記者なりの解釈であることを断っておく。

文脈で意味が変わる「スケールする」

 「スケールする」。クラウドの最大の特徴を表す言葉であり、「この程度の言葉なら知っている」と思うかもしれない。記者は、「仮想マシンなどの処理系ノードを増やして負荷分散すること、あるいはそうできること」と解釈していた(ストレージの容量を増やせることを意味するケースもある)。ところが、そう解釈して取材していると、どうも話がかみ合わないことがある。解釈が間違っているわけではない。相手に確認して分かったのは、スケールするの意味が文脈によって変わる、ということだ。

 負荷分散のために処理系ノードを増やすのは「スケールアウト」であり、処理系ノードが1個のまま性能を高めるのは「スケールアップ」と呼ぶ。その両方の意味で「スケールする」ということがある。さらにエンジニアによっては、自動的にスケールすること(オートスケーリング)を指して「スケールする」と言う。このことに気付いてからは、「スケールする」といわれたとき、何を指しているのかを逐一確認している。