場所を限定しない働き方をICT(情報通信技術)で実現するテレワーク。これまで多くの企業では、育児や介護で自宅を離れることが難しい社員を対象に導入していた。そのためか制度を作っても、実際に利用する社員は数パーセントにとどまるところが多い。
「オフィスワーカーの業務生産性を高める」ことを主目的に、テレワーク制度を導入して成果を出しているのが、リクルートグループで、企業向け研修やコンサルティングを提供しているリクルート マネジメント ソリューションズ(RMS、東京・千代田)だ。
RMSはコンサルティングや営業など長時間労働になりがちな仕事の効率化を図るため、2013年10月、テレワーク制度を導入した。400人弱いる全社員の7割が利用可能で、このうち75%が利用経験を持つ。全社員の半数が利用している計算になる。
この制度では「1日在宅勤務」と「直行前・直帰後勤務」の2つの働き方のパターンを用意した。1日在宅勤務は、コンサルティングや営業以外の社員も対象だが、自律的に仕事を進めるスキルを持つ社員に利用を限定している。
1日在宅勤務ができるのは、1週間当たり2日まで。RMSでは、顧客企業ごとに研修や組織改革コンサルティングのプロジェクトを立ち上げ、営業担当者やコンサルタント、スタッフなどがチームを組み、連携して仕事を進めている。そうした仕事のやり方では、対面でのコミュニケーションが不可欠になるため、あえて1日在宅勤務の利用上限を設けている。
制度のもう1つのパターンである直行前・直帰後勤務は、顧客企業への客先訪問をする営業とコンサルティングを担当する社員向けのものだ。社員が自宅から直接顧客企業へ向かう前、もしくは顧客先からの直帰後に、メールのやり取りや企画書の作成といった業務を自宅でできるようにする。いずれのパターンも事前に上司から承認を得るといった社内手続きが必要だ。
導入後2年を経て、テレワーク制度を積極活用して、成果を出す社員も現れている。営業力強化が専門の山下健介コンサルティング部CRS室2グループシニアパフォーマンスコンサルタントがその1人。2015年10月にマネジャーに昇進した。
山下氏は「1日で複数の顧客企業を訪問するため、顧客企業へのヒアリング結果を整理したり、資料にまとめたりする時間が取れない」といった悩みを抱えていた。テレワーク制度の直行前・直帰後勤務を利用することで、自宅と会社の往復にかかる約1時間半を、個人作業に充てられるようになった。
客先訪問や社内会議の予定がなく、パソコンを使った個人作業に集中できるときは、1日在宅勤務を活用。提案内容の企画や提案資料の作成に集中できるようになり、アウトプットが質量ともに向上した。