IT部門は、事業部門からの要求を受けてシステム開発を行う。本来であれば両者は「パートナー」として対等な立場であるはずだが、現実には組織間のパワーバランスが崩れるケースも多い。
事業部門との関係が悪化する背景
事業部門が「日々、顧客に対しているのは我々だ」という意識が強ければ、事業部門はIT部門に対して強い立場で臨もうとする。事業部門が求める納期に間に合わなかったり、思っていた以上にコストがかさんだり、障害発生頻度が多くて品質問題があったりした場合には、その傾向がさらに強くなる。
事業部門の要件定義が頻繁に変更になる場合や、無理なスケジュールで依頼された案件の場合には、IT側は頑なな態度を取る。「頑張って無理な要求に対応してきたのに、文句を言われる筋合いはない」「原因を作ったのは事業部門のほうではないか」と主張し、事業部門の言うことを聞き入れなくなる。
「大人げない」ように見えるかもしれないが、こうなった背景には、IT部門と事業部門の間で過去から複雑なやり取りが続いてきた経緯がある。互いの信頼関係が構築されていないので、必要最低限の会話しかなくなり、どんどん関係が悪化する。
新しいビジネスやサービスを創出するのは、事業部門の役割である。しかしながら、「ITを活用した」との枕詞が付き、経営が求めるような「イノベーティブな」という形容詞が付くと、事業部門にとって難易度が高まる。ITリテラシーが欠けている場合、「何をどのように考えるべきなのか」さえ分からなくなる。
本来であればIT部門に相談すべきところだが、関係も悪化していることもあり、事業部門はIT部門を「既存のIT資産を維持・管理する組織」としか見なしておらず、相談相手としても見ていない。