最近筆者は、情報システムの運用管理に携わるエンジニアに取材する機会が多い。その中で、「運用は汚れ仕事だから・・・」という言葉を聞くことがある。取材後の雑談などで冗談半分にそういう話が出てくるのだが、運用の現場にそういう意識があるのは確かだろう。
しかし筆者は、「運用は決して汚れ仕事ではない」と断言したい。そして運用の仕事は、今後ますます重要度を増すと考えている。
利用部門からの問い合わせで現場に駆け付け、担当者から「早く動かしてくれ」と文句を言われながら、トラブルの発生したPCやサーバーに向かう──。重大な障害が発生したら、それが夜中であろうが呼び出され、夜を徹して復旧作業に当たる──。運用担当者の仕事というと、こうした状況を思い浮かべる人は多いだろう。
「システムは問題なく動くのが当たり前」と考える利用部門の視点で見れば、運用担当者が知恵を絞って安定稼働を実現していても、あまり感謝されることがないのも事実だ。
こうしたことが、「運用は汚れ仕事」という言葉につながっているのだろう。確かに、運用管理担当者の仕事のある側面というのは事実だが、それは一面的なものだ。
ルーチンワークではなく、絶え間ない改善業務だ
筆者が運用管理の仕事を汚れ仕事ではないと言いたいのは、これまでの運用現場への取材を通じて、それがとても生産的な仕事だと考えるようになったからだ。「日々の運用業務をそつなくこなすのが仕事」という見方をすると、運用管理は変化の乏しいルーチンワークのように思えるかもしれない。しかし実際には、絶え間ない改善活動に支えられた、変革に富む仕事である。
そのことを裏付ける数字を一つ紹介しよう。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)がユーザー企業実施した「IT企業動向調査2012」(ユーザー企業1039社が回答)によると、「役員以上が認識した障害」「事業が中断した障害」の発生件数がゼロと答えた企業の割合は、2009年度が45.7%、2010年度が45.4%、2011年度が46.7%で、ほぼ横ばいだ。システム障害の発生件数は、増えていないのである。
一方ユーザー企業のIT投資(=開発投資)は、若干の増減はあるものの、毎年着実に実行されている(JUASの調査によると2011年度は前年比1.6%増)。このことは、IT資産がIT投資に比例して増加していることを示す。一方、保守運用費については2年連続で減少している(2011年度は前年比2.5%減)。しかも同調査によれば、運用を担当するIT部門の要員数は、この3年間でほぼ横ばいの数字を示している。
つまり、運用業務の対象となるIT資産がどんどん増え続ける中、その増加に対応するだけの運用品質向上、運用生産性向上を達成し、システム障害の発生を抑えているということだ。
年々同程度の開発投資に比例する開発の仕事に対して、増加し続けるIT資産に比例して増える運用管理の仕事は、より高い生産性向上が不可欠ともいえる。これは、日々のルーチンワークだけで実現できることではない。