もう師走。仕事納めまであと1カ月足らずだ。まとめに入るには早いかもしれないが,取材の場でも取材以外の場でも,「業務の効率化」や「コスト削減」という言葉を本当によく聞いた年だったと思う。
個人としても,効率化やコスト削減を意識させられることが多かった。筆者が個人的に気にしていたのは,電話やメールの処理,スケジュール/タスク管理といった日常業務の非効率と,出先で仕事をするための道具を納めた仕事用かばんの肥大化傾向である。どちらもビジネス・パーソンとしての基本動作に大きくかかわるところだと思う。
過去に「これはよい」と思って採用した道具や方法も,時間が経つとだんだん非効率になってくる。担当業務のパターンが変わったり,想定外の業務が入ったり,といった質的な変化のほか,メールの本数が増えるといった量的な変化もある。筆者個人の処理能力増強も,まず期待できない。とにかく道具や方法はシンプルで,軽いものにしたいものだ。
ちょうど仕事用かばんがへたり始めたので,まずはかばんの中味のスリム化に取り組んだ。条件は,コストを出来るだけかけずに道具を減らすこと。これが,世の中の進歩を実感できて,なかなか面白かった。
1キロの減量に成功
昨年末の時点では,ノート・パソコンと電源ケーブル,デジカメ,ボイスレコーダ,ケーブル,各種メモリー,携帯電話,充電器,名刺入れ,ノート数冊とペン,取材先の資料,本などが入って,重量は7キロだった。とても機動的とは言いがたい。
最初に減量対象になったのは,ボイスレコーダである。携帯電話のボイスレコーダ機能で代替できると分かったためだ。音声データの可搬性にやや不便があるものの,念のための記録としてとっておく程度の用途が多いので,携帯電話で十分だった。音声データは大きいので,MicroSDカードに数千円の投資をしたうえで切り替えた。
次に持ち歩かなくなったのは,取材先などの名刺だ。以前は,取材先や取引先の名刺数十枚を常に持ち歩いていたが,これは携帯電話の名刺リーダー機能を使うことで不要になった。2009年夏に携帯電話の機種を変更したところ,新しい端末の標準機能として搭載されていたのをたまたま発見した。
携帯電話に内蔵されているカメラで名刺を撮影し,テキスト・データとして読み取り,連絡先に登録するという一連の処理を2~3回のボタン操作で出来てしまう。しかも,文字認識が予想外に優秀で,修正入力がほとんど要らない。この点は,以前購入して3年ほど使っていた専用スキャナ付きの名刺管理ソフトよりもはるかに優秀で驚いた。
常に数冊を持ち歩いていた取材ノートは,必要なページをスキャナでPDFデータにして持ち歩くようにし,1冊にした。これもオフィスのスキャナを使うので,出費ゼロである。
こうして,充電池や周辺機器が不要になった分も考慮すると,合計1キロ程度を減量できた。減量だけでなく省力化のメリットもあった。だが次にまとまった減量ができるのは,しばらく先になるだろう。
デジタル・カメラとノート・パソコンは当面外せない。デジカメは,画素数だけ考えれば携帯電話で代替可能だが,実際にはズームやフラッシュといった機能が不足していたり,相手に与える印象があまりよくなかったりするので,踏み切れないでいる。
ノート・パソコンについては,一時スマートフォンで代替することも考えた。だが,さまざまなフォーマットの文書ファイルの受け渡しや編集,業務アプリケーションの利用といった用途を考えると,無理だった。10年以上前に,NEC製のモバイルギアという情報端末を持ち歩いていた頃は,テキスト・エディタとメールが快適に使えれば満足だったが,今は当時よりはるかに用途が増えてしまっている。
次はスケジュール/タスク管理
曲がり角に来た仕事用かばんスリム化計画はいったん置いておいて,次に着手するのは,スケジュール/タスク管理作業のスリム化である。個人の視点から言えば,仕事の予定も個人的な予定も使うリソースは同じなので,一元管理したい。だが会社のスケジューラに個人的なスケジュールをすべて入れるわけにはいかないし,別のスケジューラに一本化すると,会議の設定などで自分も周囲も困る。
現在は会社のスケジューラと個人のスケジューラ(携帯とGoogleカレンダー)を並行して使っている。平日のスケジュール/タスクはすべて仕事,休日のスケジュールはすべて個人,と決まっているわけでもなく,個人用のスケジューラに仕事の予定が,仕事用スケジューラに個人の予定が一部進出している。家族の予定もからむので,結構複雑だ。
こうなると,一覧性がないうえに,同じ予定を二つ(ひどいときは三つ)のスケジューラに登録する非効率が発生する。一覧性については,今のところ簡単な対策を思いつかないのだが,二重入力の問題だけでも何とかしたいところだ。手間もさることながら,予定情報で入力ミスがあると痛手が大きいからだ。
だが技術は日進月歩なので,数カ月から半年程度待てばよい方法が見つかるだろう。楽しいスリム化計画を再開できることを期待している。