5月17日~19日に東京ビッグサイトで開催された第58回ビジネスショウTOKYOで,XMLコンソーシアムが5月18日午後のセッションを受け持ちました。前回から引き続き,そのセッションの中で私が講演でしゃべったことをかいつまんでご紹介しましょう。
HTML Scraper(Page Scraper)も忘れてはいけない
「単なるキーワードの集まり」「最近のWeb関連のトレンドの総称」---Web 2.0をこのように評論家風に斬るのも結構です。しかし,それでは過去をフォローすることはできても,ビジョンを描き,未来を創っていくことはできません。そこで,日本にキーワードが輸入された際に意味不明とされ,落とされたかに思える"Scrapers"の意義,なぜそれが重要かについても解説しました。エグザ・バイトの量に達したHTML情報資源を一から全部作り直すのはもはや不可能です。なので,単純な認識エンジンを利用するなどしてHTMLから論理情報,構造情報を読み取る仕組みが極めて重要であるということです。
ロングテール実現の鍵はあくまで技術上のブレーク・スルー
梅田望夫さんが「ウェブ進化論」で語っておられた,ロングテールについてのロジックも確認しました。梅田さんによれば,「日本の大企業が『そろそろうちもロングテールやろうか。販促費用の原資は・・・』なんてやるのは笑止千万。」という論調でした。これが印象的な読後感となっている人も多いことでしょう。しかし,より重要なのは次のロジックです。- ロングテール部分の商品のほとんどは「売れない」もの。 ガラクタ,すなわち,値札分の価値どころか値引きしても売れない商品も多かったはず。
- その膨大な数の商品ラインアップの中からピンポイントで特定顧客に必要なものを絞り込む必要がある(対して,ベストセラー部分は少数なので絞り込みもラク)。
- しかも,本数が出ないのだから,極小のコストで,高精度かつハイタッチな(感性に訴える?)ピンポイントの絞り込み,推薦能力を自動化エンジンが持たねばならない。
- 流通経路についても,ほかの膨大なロングテール商品を扱う仕組みと一括することで徹底した低コスト化を追求しなければならない。
- 以上,劇的にコストダウンした自動化メカニズムこそがロングテールを初めて可能にするのであり,チープ革命を支えた技術こそがロングテール実現の鍵である。言い換えれば,単なるマーケティング戦略の変更だけで対応できるものではない!
こう表現すると,またぞろ日本企業を叱咤(しった)して萎縮させるような海外通の論調のように聞こえかねませんね。そこで一つの代案として私が講演中で述べたのが次のポイントです。
- チープ革命を支えた様々なソフトウエア技術を最適な形で現場の業務に組み入れることで,従来IT化が難しかった,ホワイト・カラーの不定形業務,複雑な業務を隅々までサポートすることが可能になる。
これが,Web 2.0世代のナレッジ・マネジメント支援,KM 2.0の重要なポイントです。エンタープライズの現場がWeb 2.0の技術要素や斬新なアプリケーションのイメージを知ったうえで,自分たちの業務の知的生産性を飛躍的に拡大するためのビジョンを描くことができたら---。そうすれば,日本企業の一部門であっても革新の先導役となることが十分に可能なのです。