大学入試で高等学校の教科「情報」を扱うことについて討議する「情報入試フォーラム2012」が2012年3月3日、早稲田大学西早稲田キャンパスで開催された。同フォーラムは、早稲田大学理工学術院基幹理工学部の筧捷彦教授、慶応義塾大学環境情報学部長の村井純教授、筑波大学大学院ビジネス科学研究科の久野靖教授らが組織している「情報」入試研究会の準備会が開催。会場には、大学や高等学校などの関係者が集まり、大学入試での教科「情報」の位置付けなどについて議論を交わした。同準備会は今後、正式な研究会に移行し、内容や水準が適正な、教科「情報」の入試問題や試験方式を検討したり、試作した入試問題を公開したりすることを目指す。
高等学校の教科「情報」は、2003年に新設となった普通教科。「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」などの育成を目指して、コンピューターや通信などの仕組み、インターネットやアプリケーションソフトの利用方法、情報モラルなど幅広い内容を扱っている。しかし、教育現場では、「実際には授業を実施していない」「パソコンの実習などが中心で本来の内容を扱わない」といった問題が生じている。この大きな理由として、入試で教科「情報」を扱う大学が少ないことが指摘されている。大阪電気通信大学メディアコミュニケーションセンターの中野由章氏によると、2012年度に入学する学生を対象に、教科「情報」による入試を実施している大学は全国で21校にとどまっている。内訳は国立が2校、私立が19校。ほとんどが選択科目での実施だったり、一部の学部や学科での実施だったりしている。
フォーラムでは冒頭、早稲田大学の筧教授が登壇し、「2011年秋に情報処理学会が開催した教科『情報』に関するシンポジウムで、教科『情報』の入試をもっと積極的に進める必要があるという議論があった。それを受けて、具体的に動き出すための枠組み作りのために関係者が集まり話をすることとなった。入試の実施について意見交換していきたい」と挨拶した。
続いて、慶応義塾大学の村井教授が「情報入試」をテーマに講演した。教科「情報」は2013年度の新入生から、新しい学習指導要領での課程が始まる。村井教授は、新課程で学ぶ高校生を対象に、2016年2月に先行グループの大学による教科「情報」の入試を実施すべきだという考えを披露。慶応義塾大学環境情報学部では実際に、2016年度に入学する学生を対象に先行グループの一員として、入試科目に教科「情報」を採用するという。また、村井教授は「研究会の活動として2013年5月から毎年1回、教科『情報』の模擬試験を組織的に実施したい。我々は『情報』としてこういう力を要求しているというメッセージを社会にオープンに出して、その上で高校生の力を判断すべきだと思う」と述べた。
この後、筑波大学の久野教授が、「『情報』入試の検討項目と課題」と題して、大学入試での教科「情報」の取り扱いの現状や「情報」を入試に採用する狙い、具体的な問題の例などを解説した。また、明治大学情報コミュニケーション学部の石川幹人教授が、2013年に入学する学生を対象に同学部で教科「情報」による入試を実施すると発表した。「情報」で受験できるのは、同学部で募集する450人のうちの20人で、「英語」「数学」「情報総合」の3科目での試験となる。明治大学では、2012年4月に実際の試験問題に合わせた模擬問題を公表するという。