圧倒的な人気を誇る米Apple製「iPod」の後塵を拝すことにうんざりしている米Microsoftだが,11月第4週は大喜びできるだろう。記憶容量80Gバイトのハードディスク装置(HDD)を内蔵する携帯用メディア・プレーヤ「Zune」の新モデルが,全米のオンライン販売サイトと小売店で売り切れになっているのだから。明らかにZuneの成功を示すニュースだが,ある一つの事実で帳消しになる。80Gバイト版Zuneの製造台数が少ないうえ,そもそも1台も入荷しなかった販売店が多いのだ。

 Microsoftは「80Gバイト版Zuneに関するレビュー記事が好意的であったことに感激した」としているが,記事を書いた人たちがその時点で所有者の大半を占めていた疑いもある。製造が遅れているとうわさされているが,真実はもっと現実的な判断が理由だ。Microsoftはメディア・プレーヤ市場の状況をみて,フラッシュ・メモリーを搭載する4Gバイト版および8Gバイト版Zuneの製造を優先させたのである。4Gバイト/8Gバイト版Zuneなら,MP3プレーヤ市場の稼ぎ頭である分野で競争できる。

 4Gバイト/8Gバイト版Zuneのターゲット分野は,“偶然にも”現在はAppleの「iPod nano」が支配している。iPodも4Gバイトと8Gバイトのモデルがあり,価格も同じくらいだ。フラッシュ・メモリー内蔵Zuneは,米国内のオンライン販売サイトと実店舗で様々な色のモデルを今すぐ買える。

 一方,80Gバイト版Zuneの購入は難しい。マサチューセッツ州ボストン郊外の主な家電販売店には,80Gバイト版Zuneが1台も入荷しなかったという。オンライン販売大手の米Amazon.comは,予約注文した人への発送開始が最も早くて11月末以降で,ほとんどは12月中旬になるとしている。ただしMicrosoftは,少数であるが購入者に対する出荷を実施したという。

 ただし,Zuneのファンは奇妙な別の変化に笑みを浮かべるだろう。精彩を欠いた茶色の初代Zune(今は30Gバイト版Zuneと呼ばれている)が,現時点ではAmazon.comのベスト・セラーMP3プレーヤなのだ。「2006年で最も面白くなかったジョーク」がなぜベスト・セラーになったのだろうか。初代Zuneの価格は今や90ドルを切って,8Gバイト版Zuneや競合するiPod nanoの半値以下で買える。消費者は商品の“買い時”を知っているのだ。