無償のLinuxディストリビューション「Fedora Core」を開発するFedoraプロジェクトは2006年10月24日,最新バージョンである「Fedora Core 6」の正式版を公開した(写真1)。
Fedora Coreは,広く普及しているLinuxディストリビューションの一つ。年に2回の頻度でメジャー・アップグレードされる。前バージョンの「Fedora Core 5」が公開された2006年3月20日から,ほぼ7カ月ぶりの改定となった。バージョン6の公開予定は当初9月20日(米国時間)だったが,バグが発見され,何回か延期されていた(関連記事「Fedora Core 6の正式版公開が再延期に」)。
前バージョンのFedora Core 5は,それ以前のFedora Core 4に比べて「使い勝手の敷居を下げることで,幅広いユーザーを狙った」ことが最大の特徴だった。今回のバージョン6も,さまざまな改定が施されたが,特に注目すべきは,システム全体を高速化したことだ。
例えば,アプリケーションの起動スピードの向上。動的リンクを採用したアプリケーションは起動時に,ライブラリなどシステム部品の中から該当するコードを見つけ出す。この探索の仕組みを改善することで,動的リンクの速度を大幅にアップした(詳しい仕組みは,11月8日発売の日経Linux12月号特集「Fedora Core 6徹底理解」で解説)。
また,Linuxカーネルには,マルチプロセッサ対応のスケジューラを装備した「2.6.18」を採用した。マルチプロセッサ使用時に,各プロセッサの負荷を考慮してLinuxプロセスを割り振ることで,実行の優先順位を守る。
そのほか,パッケージが更新されたら自動的にデスクトップ画面に吹き出しを表示する機能が加わったほか,SELinuxの設定が原因でトラブルが生じたときに,SELinuxの正しい設定方法を提示する仕組み(写真2)なども取り入れられた。
Fedora Coreは,企業向けの「Red Hat Enterprise Linux」(以下,RHEL)の実験用ディストリビューションという位置付けである。Fedora Core 6の成果は,2006年末に出荷予定のRHEL5に取り込まれる。米Red Hat社は,RHELを企業の大規模システムでも使えるようにすることを目指しており,(1)仮想化ソフト「Xen」への対応,(2)ステートレスLinuxへの対応,(3)大型汎用機並みのリソース管理機能,などがRHEL5で強化される予定だ。今回公開されたFedora Core 6は,こうした機能を取り込んでいる。
例えば,Xen。Xenは,Linux上で異なるOSを稼働できる仮想マシン機能である。企業ユーザーが新しいサーバー・マシンで従来バージョンのRHELを使い続けられるなど,企業の運用管理面でのメリットが大きいため,Red HatはXenを企業向けの中核機能としてアピールする。従来のXenは導入や設定が面倒だったが,RHEL5からは,Xenを簡単に管理できるツール「Virtual Machine Manager」(コマンド名は「virt-manager」)が取り入れられる。もちろん,Fedora Core 6でも新たに搭載した(写真3)。
ステートレスLinuxとは,デスクトップを構成するデータ・ファイルをサーバーに置き,ネットワークのどこからでも常に同じデスクトップ環境でログインするための仕組み。ステートレスLinuxを使うと,ネットワークの混雑がデスクトップ操作感に影響するため,効率良いキャッシュの仕組みも求められる。カーネル2.6.18では,ネットワーク・ファイル・システム(NFS)使用時のデータをローカルにキャッシュできる「CashFS」が正式に取り入れられた。Fedora Core 6に2.6.18が搭載されたのも,マルチプロセッサ対応だけが目的ではなく,こうしたステートレスLinuxへの対応も視野にある。
このほか,Fedora Core 6には,メニューの透明化や立体的な画面切り替えが可能な新世代のデスクトップ「AIGLX」が組み込まれている(関連記事「画面でみる最新Linux「Fedora Core 6 test3」)。
【10月25日追記】
記事公開直後,「前バージョンの「Fedora Core 5」が公開された2005年3月20日から」とあったのを修正しました。