JALでCIOを務める齋藤俊一 執行役員IT戦略企画室長
JALでCIOを務める齋藤俊一 執行役員IT戦略企画室長
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 日本航空(JAL)が巨額のIT(情報技術)投資で企業再生を目指す。2010年までの5年間に1250億円を投資することをこのほど発表したが、そのうちの430億円をITにつぎこむことが分かった。430億円という投資額は、通常期の1.5~2倍の規模。2005年度の経常損益(連結)が570億円の赤字を見込む同社にとって、430億円のIT投資は小さくない。

 今回のIT投資では、430億円のうち270億円を安全対策,とりわけヒューマンエラー削減のためにつぎ込む。昨年から頻発している安全確認のし忘れや整備トラブルはコミュニケーション不足が大きな要因と指摘されていた。業務マニュアルの電子化の促進や組織の壁を越えた情報共有の仕組みを実現することで、これらの問題を解決することを目指す。CIO(最高情報責任者)である執行役員の齋藤俊一IT戦略企画室長は、「社員がゆとりを持って仕事をできるようにシステムを活用したい」と話す。

 具体的には、新整備系統合システム「e整備プロジェクト」や、この夏までに稼働予定の「安全情報データベース」などがある。e整備プロジェクトで整備情報をはじめとした業務マニュアルの電子化を進め、更新漏れを防ぐ。安全情報データベースでは、整備や客室など各部門で過去に“ひやり”とした危険体験などの情報を集めて全社で共有する。これまで部門ごとに集めていたが、安全情報データベースでほかの部門の情報も共有することで組織の壁をなくす。

 ほかにも、情報共有を強化するために情報投資を進める。IP網を活用した常時接続のテレビ会議システムがその1つで、空港と本社を常時つないでおく。「何かあったときにスイッチを入れるのではなく,いつでも話せる状態にしてコミュニケーションを深めたい」(齋藤CIO)という。一連のトラブルにより国内線を中心に全日空に日本航空の顧客が流れたと言われているが、「システムを含めた安全対策の強化により、1年以内にお客様を取り戻したい」と齋藤CIOは意気込む。