[前編]スマートフォンと同時にiモードも磨く、個人のクリエーターに期待

Xperiaをはじめとするスマートフォンやモバイルルーターの展開、iモードのオープン化、そしてLTE(Long Term Evolution)サービス「Xi」(クロッシィ)の開始。次々に新たなカードを繰り出すNTTドコモの今後のビジネス展開について、山田社長に聞いた。

Android搭載のスマートフォン「Xperia」が好調のようだが。

 予想以上の売れ行きだ。4月の発売時には用意した端末数では足りず、品薄になって、かなりユーザーを待たせることになった。今でも入荷し次第売れるという状態が続いている。

次の手は何か。

 9月にiモードメールを使える「spモード」を開始する。iモードメールはスマートフォンで対応してほしいというニーズが高かった機能。だから、これを機に改めてキャンペーンを打つ。

 ほかにもスマートフォンに乗り換えたユーザーの多くから、iモード携帯で提供されている各種機能をスマートフォンで使いたいという声が寄せられている。実現は必ずしも簡単ではない。それでも、スマートフォンをもっと広めようと思ったら、そこは避けて通れない。iモードメールだけでなく、電車の定期券などでよく使われているおサイフケータイに対応したスマートフォンも出していく。iコンシェルやiチャネルも、来年くらいには対応したいと思っている。従来の携帯電話と同様に様々なことができるようになってこそ、スマートフォンの市場は広がっていくと考えている。

 さらに言うと、ITリテラシーの高い人ばかりではなく、それに準ずるユーザーにも買ってほしい。今はドコモショップの店員よりも、買いに来た人のほうがスマートフォンをよく知っていることが珍しくない状況。それほど今は、スマートフォンとiモード端末とでユーザー層にギャップがある。それを少しでも緩和したい。

 こうしたことを踏まえて、今年の冬モデルでは7機種ほどスマートフォンを出す。画面がきれいな有機ELディスプレーを載せたもの、FeliCaやワンセグを載せたもの、廉価版、ネットブック型、タブレット型などだ。ユーザーはこのうちから、自分に合ったものを選べる。

従来型の、いわゆるiモード端末はどうするのか。

山田 隆持(やまだ・りゅうじ)氏
写真:新関 雅士

 スマートフォンは、話題になっており、我々も積極的に取り組んでいる。とはいえ、スマートフォンの出荷台数はまだ100万台程度。iモード端末は現在、5000万台以上ある。この図式は当面変わらない。だからiモード端末もブラッシュアップしていく。

 スマートフォンのいいところはオープンアプリケーションだ。それをiモード端末にも取り入れる。そのために、「ドコモマーケット(iモード)」を作る。オープンアプリケーションは、個人のコンテンツクリエーターが次々に面白いアプリを作るところがいい。だから、iモード向けのアプリをどんどん作って飛び込んでもらえるよう、ドコモがサーバーをホスティングして、環境を整える。こうすることで、素早く面白いものを提供できる仕組みを作りたい。11月ころには店開きしたいと考えている。

 実際のところ、iモード用とスマートフォン用ではアプリケーションの開発言語の違いがある。このため同一の事業者やクリエーターが双方にコンテンツを提供するのは難しいだろう。だから、iモード用に出てきたアプリケーションで人気が出たものがあったら、ドコモが手助けしてAndroid用にする取り組みも、どこかの段階でやっていきたい。

NTTドコモ 代表取締役社長
山田 隆持(やまだ・りゅうじ)氏
1948年生まれ。73年に大阪大学大学院工学研究科通信工学専攻を修了し、日本電信電話公社(現NTT)に入社。主に設備部門を歩むが、企画室でのマルチメディア基本構想策定、再編成室での組織再編、NTT西日本での法人営業部門のけん引など、広範な業務経験を持つ。2005年、NTT代表取締役副社長に就任。2007年6月、NTTドコモ代表取締役副社長。2008年6月より現職。趣味はゴルフ(ハンデ2)、テニス(NTT硬式テニス連盟会長)、スキー(1級)、尺八、古寺巡礼、座禅、読書(「竜馬がゆく」(司馬遼太郎)などの歴史物)など。好きな言葉は「切磋琢磨、真心・感謝」。

(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2010年7月7日)