世界最大のSNS「Facebook」の次の一手は、企業向けのコミュニケーションやコラボレーション基盤への進化ではないか。ソーシャルメディアの専門家はこう予測する――。7億人近い利用者が集うFacebookは、消費者の日常生活や企業活動への影響力を日増しに強める「ソーシャルパワー」の中核といえる存在だ。世界中の企業がFacebookにビジネスチャンスを見いだそうと目を輝かせ、「Facebook経済圏」と呼ぶべき一大勢力を形成。日本企業の参入も相次いでいる。
中国、インドに次ぐ“人口”の多さ。Facebookの利用者数はこう表現できる。その数、6億8000万人(2011年5月初頭)。しかも今なお驚くべき勢いで成長を続ける。利用者数が1億人から2億人になるまでに8カ月かかったが、4億人から5億人には5カ月で到達した。7億人に達するのも時間の問題だ。
7億人市場は、企業にとっても魅力が大きい。利用者同士の口コミ効果を期待する一般企業、Facebookと連動して自社サービスの付加価値向上を図るネット企業、Facebookの利用者に向けて製品やサービスを提供する企業、Facebook上でのビジネスを支援する企業――これらの企業がFacebook経済圏を作り出している(図1)。
米コカ・コーラはFacebookで2600万人もの「ファン」を獲得し、新商品やイベントに関するプロモーションを展開。Facebook向けのソーシャルゲームを開発・提供する米ジンガは設立後4年で10億ドル(810億円)企業に成長した。Facebook経済圏では、こうした成功物語が珍しくない。
インターネット関連調査会社の米コムスコアによれば、米国における2011年第1四半期のオンラインディスプレー(バナー)広告のうち、3分の1にあたる3460億件がFacebookに表示された。件数は2位のYahoo!の3倍超で独走体制だ。マーケティングを手掛けるループス・コミュニケーションズの斉藤徹社長は「米フェイスブックの年間広告収入は1500億円程度」とみる。
日本でのFacebookの利用者数は約300万人。「今年に入り、国内のFacebook利用者は毎月40万人ずつ増えている。年末には600万人を超えるだろう」と斉藤社長は予測する。企業の注目度も高まっており、ローソンなどに加えて電通やリクルートもFacebook経済圏に参入した(本連載の第2回を参照)。