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ドワンゴ 研究開発本部 第二開発部 ポータル機能開発セクション セクション マネージャー
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プロトタイプ「ニワビデ」
話は2006年11月にさかのぼります。ある日,同じ会社*1で働くエンジニアの戀塚*2から,メッセンジャー*3でメッセージが届きました。内容は一つのURLです。送られてきたURLをWebブラウザで開くと,まるでYouTube*4のような,見るからに動画共有サイトという画面が表示されました。いくつかの動画がサムネイルで表示されて並んでいます。
筆者はサムネイルの中から,OK Goの「Here It Goes Again」*5をクリックして再生してみます。すると動画が再生され,その上を文字列がスルスルと流れていきます。社内のだれかが,この動画に対して入力したコメントのようです。
筆者が動画を眺めていて“面白い”と感じた瞬間にあわせて,「これはおもしろいw」「そうだね、おもしろいw」というコメントが,動画の上を流れます。当初のコメントはたわいもないものばかりで,数も少ないものでした。ところが社内に広まるにつれ,たくさんのコメントが動画につき始めました。動画の盛り上がりが,画面上を流れるコメントの量で視覚化されています。一人でPCに向かっているなのに,まるで友だちと一緒にテレビやDVDを見ているようです。
動画を見ている時間はバラバラでも,他人と時間を共有しているように感じる――筆者は,「ニワンゴビデオ(通称ニワビデ)」と名付けられたこのプロトタイプに夢中になりました。
ニコニコ動画,キックオフ
2006年11月17日,とあるモバイルサイトの立ち上げを終えたばかりの筆者は,上司の千野*6に呼ばれ「動画にコメントをつけるサービス『ニワビデ』のインフラ設計と,手配,構築をしてほしい」と依頼されました。あのプロトタイプのことです。筆者はすぐに了承しました。 2006年12月1日,ドワンゴの会議室で「ニワビデ」プロジェクトのキックオフ・ミーティングが開催されました。参加者は,会長の川上*7,ひろゆき氏*8,デザイナの中川*9,戀塚,そして筆者でした。このメンバーで,サービス・インまでに必要な企画や作業を整理,実行しながら,毎日定例会議を開くことにしました。サービス・インの目標は2006年12月12日。ほとんど時間がありません。
なにはともあれ,サービス名が必要です。プロトタイプの新感覚を表現できる名称を決めるのは難しいのではないかと思いましたが,実はあっさり決まっていました。キックオフの前に,とあるメンバーでブレスト*10していたところ,あるメンバーが「かっこいいサービス名ではなく,肩のチカラが抜けた名称がいい。たとえば『ニコニコ動画』とか」と発言。それがひろゆき氏のツボにピッタリはまったのです*11。
ここで出た「肩のチカラが抜けた」というキーワードは,ニコニコ動画のさまざまな企画において,重要な役割を果たします。サイトのデザイン,ロゴ,動画の並べ方など,そのすべてにおいて,毎日,夜遅くまで「肩のチカラが抜けたもの」を考え続けました。
図1の上は,当時ボツになったロゴのデザイン案の一つです。肩のチカラが抜けたものとして候補に残っていました。最終的には,現在のロゴに近いものになりました。現在のロゴはフリーフォントの「S2Gメモ*12」を利用しています。