車の運転席に座ると,実にさまざまな情報が視界に入ってきます。車の速度がわかるスピードメータ,エンジンの回転数がわかるタコメータ,燃料があとどのくらいあるかを示すフェールゲージ,水温計,警告表示灯など,その多くがインストルメントパネル(インパネ)に集中しています(図1)。

図1●運転席の情報
図1●運転席の情報

 これらの情報を集約して制御しているインパネ制御はどのように行われているのでしょうか。連載第1回の「車内LANって何だろう」でも触れましたが,車の中にはECU(electronic control unit)と呼ぶ電子制御装置があちこちに搭載されています。エンジン制御用やヘッドライト制御用,ドア制御用などの各ECUと,インパネ制御用のECUが連動することにより,それらの情報が一目でわかるようにインパネに表示されます。

 エンジン制御ECUより得た情報を基にスピードメータやタコメータを動作させ,エンジンの冷却水の温度に異常があれば警告灯を点灯させます。燃料制御ECUより得た情報はフェールゲージを動作させます。ドア制御ECUからの情報では,ドアが開いている場合には警告灯を点灯,最近多く見られるスライドドアでは異物が挟まった場合,警告灯の点灯とともに警告音も鳴動させたりします(図2)。

図2●ECUの連動によるインパネ表示例
図2●ECUの連動によるインパネ表示例

 このようにインパネの情報を表示するために,多くのECUとの連動が必要となり,ECU同士を接続するワイヤの本数は増加していきます。その解決のためにネットワークが用いられます。このインパネではエンジンなどの制御系の装置と繋げるために,CAN(control area network)と呼ばれるネットワークが用いられます。

 CANはISO(International Organization for Standardization)の国際標準規格です。その仕様書はCANの普及推進団体CiA(CAN in Automation)のホームページにアクセスして,氏名やメール・アドレスなどを登録すれば,誰でも無償で入手できます。