「自分が『こころの病』だと感じたことがある人の割合は61.4%」「医師からうつ病や神経症(ノイローゼ),心身症などの『こころの病』であると診断されたことがある人の割合は28.2%」。ITpro読者に対して実施したアンケート調査から,エンジニアのメンタルヘルスに関する深刻な状況が明らかになった。
ITproは,9月26日から10月2日にかけて「ITエンジニアのメンタルヘルスに関するアンケート」と題する調査を実施。627人から回答を得た。ITエンジニアは,過重労働でストレスがたまりやすいため,他の仕事と比べて,うつ病などの「こころの病」にかかりやすいと言われている。ただ,それを裏付ける客観的なデータはなかなかないのが現状だ。そこで,IT業界で働く人のメンタルヘルスの現状を明らかにするために,今回のアンケートを企画した。
アンケートでは,まず「自分が『こころの病』だと感じたことがあるかどうか」を聞いた。その結果は,「感じたことがある」と答えた人の割合が61.4%と約6割にも上った(図1)。半数以上が,「こころの病」だと感じたことがあるのだ。
図1●「こころの病」だと感じたことがあるかどうか(数字は%) |
人によって「こころの病」の定義はさまざま。なおかつ,「こころの病」に全く関心がない“健康な”エンジニアは回答しなかったと思われるので,数字は多めに出ていると思う。それでも,極めて高い割合と言える。
では,実際に医師に「こころの病」と診断されたことがある人は,どれくらいいるのだろうか。アンケートでは,「医師からうつ病や神経症(ノイローゼ),心身症などの『こころの病』であると診断されたことがあるかどうか」も聞いた。その結果は,「『こころの病』と診断されたことがある」と答えた人が,28.2%にも上った(図2)。上で述べたように,アンケート回答者自体にフィルタリングがかかっていると思うが,それでも非常に高い数字だ。
図2●医師からうつ病や神経症(ノイローゼ),心身症などの「こころの病」であると診断されたことがあるか(数字は%) |
この割合を,職種別に見てみたのが,下の表1である。
表1●職種別に見た,「こころの病」と診断されたことがある割合(数字は%) 保守/サポート,プログラマ,マーケティング/営業,SEが平均よりも高い。
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職種別では,「保守/サポート」が最も高く48.4%。顧客とのやりとりが,ストレスになるのだろうか。次に高いのが「プログラマ」(34.7%)。以下,「マーケティング/営業」(34.5%)「SE」(30.6%)と続く。
逆に,平均の28.2%よりも低い職種は,「運用管理/管理」(25.3%)「コンサルタント」(25.0%)「プロジェクト・マネジャー」(17.6%)「管理職・経営者」(16.3%)という結果になった。
同じ結果を,システム・インテグレータ,メーカー,ディーラー,ソフト製品開発などIT関連企業(ベンダー系)と,製造,サービス,金融,流通,官公庁などITのユーザー企業に分けて比較したのが表2である。
表2●勤務先別に見た,「こころの病」と診断されたことがある割合 ユーザー企業よりもベンダーの方が高い結果となった。
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ベンダー系が30.1%,ユーザー企業が24.5%と,ユーザー企業よりもベンダー系の方が,「ここの病」と診断されたことがある人の割合は高い,という結果になった。発注企業よりも受注企業の方が苦労が多い,ということだろうか。
メンタルヘルスに関して,医師やカウンセラーに相談したことがあるかどうかも聞いた。結果は,「医師の診察を受けたことがある(カウンセラーには相談していない)」が19.8%,「診察を受けたことも,カウンセラーに相談したこともある」が12.9%,「カウンセラーに相談したことがある(医師の診察は受けていない)」が4.8%(図3)。医師の診察を受けたり,カウンセラーに相談したことがある人は37.5%と,約4割弱にも上る。
図3●メンタルヘルスに関して,医師やカウンセラーに相談したことがあるか(数字は%) |
「こころの病」で最も多いのは「うつ病」。そこで,勤務先で「うつ病」になった人を実際に知っているかどうかを,最後に聞いてみたところ,「知っている」と答えた人の割合は81.6%と約8割に上った。ほとんどの人の職場で「うつ病」の人がいるという結果になった。
図4●勤務先で,「うつ病」になった人を実際に知っているか(数字は%) |
なお,アンケートでは,「こころの病」に関する悩みや会社の体制など,ITエンジニアの「こころの病」に関する意見を自由に記入していただいた。このコメント数は,406件にも及んだ。こちらの方は,別の機会にご紹介したいと思う。
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