「Outlook 2003」の個人用フォルダ(.pstファイル)は,最大33Tバイトの容量をサポートしている。.pstファイルの用途は多く,ExchangeメールボックスのデータやWindows SharePoint Services(WSS)の連絡先リストをローカルで保存したり,メール・データをアーカイブしたりするのに使用できる。今回はこの「.pstファイル」に関するよくある疑問に答えてみよう。
質問:Outlook 2002でOutlook 2003の.pstファイルを開けますか?
残念ながら不可能である。Outlook 2003で新たに採用されたUnicode形式の.pstファイル(デフォルトの最大容量は20Gバイト)は,Outlook 2003でしか開けない。ただし,Outlook 2003を使って,新形式のファイルを過去のバージョンのOutlookと互換性のあるファイルにエクスポートすることは可能だ。
まず[ファイル]-[新規作成]-[Outlookデータファイル]コマンドを開き,[新しいOutlookデータファイル]のダイアログ・ボックスで[Outlook 97-2002個人用フォルダファイル(.pst)]という項目を選択することで,互換性のあるデータ・ファイルを作成する。そして[ファイル]-[インポートとエクスポート]で開く「インポート/エクスポートウィザード」を使って,データのエクスポート先に,作成したデータ・ファイルを選択する。
質問:使用中の.pstファイルのバージョンを調べるにはどうすればよいですか?
まず調べたい.pstファイルを,Outlook 2003の[ファイル]-[開く]-[Outlookデータファイル]コマンドで開く。その後,[ファイル]-[データファイルの管理]を選択して,[Outlookデータファイル]ダイアログ・ボックスを表示させる。この画面には,現在Outlookが開いている.pstファイルが一覧表示されているので,調べたいファイルを選択して[設定]ボタンをクリックする。
そうして表示された画面の[形式]という項目に「個人用フォルダファイル」と記されていた場合は,Outlook 2003のUnicode形式の.pstファイルである。「個人用フォルダファイル(97-2002)」と記されていた場合は,ANSI形式の従来バージョンの.pstファイルである。なおWindows SharePoint ServicesのファイルはUnicode形式である一方,IMAPアカウントのメールボックスは従来のANSI形式を使用している。
質問:Outlookプロファイル・ファイル(.prfファイル)を使って,2個の.pstファイルをOutlookのプロファイルに追加できますか?
可能である。.psfファイルを作成する際に使用する「Office Resource Kit」の中の「Custom Installation Wizard(CIW)」と「Custom Maintenance Wizard (CMW)」を用いると,複数の.pstファイルをプロファイルに追加できる。さらに,このツールを使って新規の.pstファイルを追加することによって,既存のプロファイルを修正する.prfファイルを作成することも可能だ。
ここで1つ注意しなくてはいけないのは,CIWとCMWの両方にバグがあり,新規.pstファイルをUnicode形式に設定しようとしても,無視されてしまうことである。これを解決するには,CIWあるいはCMWから先ほどの.prfファイルをエクスポートした後,メモ帳を使ってサービス一覧セクションの下にある「EncryptionType=0x40000000」という設定を「EncryptionType=0x50000000」に変更する必要がある。これによって,特定の.pstファイルが追加される。その後は,その.prfファイルをCMWあるいはCIWにインポートしなおしてもいいし,Office Resource Kitで説明されている他の方法を用いて.prfファイルを展開してもいい。
質問:メール・アカウントごとに異なるデータ・ファイルを割り当てられますか
IMAP4とExchangeのアカウントは,各自のメール・データを自動的に個別のデータ・ファイルに格納している。ただしIMAP4アカウント用に作成される.pstファイルは,ANSI形式の古いフォーマットである。POP3アカウントの場合は,[ツール]-[仕訳ルールと通知]から「仕訳ツールと通知」ウィザードを呼び出して,アカウントに届いたメールを個別の.pstファイルに自動的に移動させるよう設定する必要がある。
質問:.pstファイルに添付ファイルは含まれていますか。それともOutlookは添付ファイルをどこか別の場所に保存いるのですか
Outlookは,すべての添付ファイルを「Outlookアイテム」として保存する。メッセージだけでなく,「連絡先」や「仕事」といったその他のアイテムも同様で,すべてのアイテムが.pstファイルに保存される。
このプロセスにはメリットとデメリットの両方がある。バックアップを取ったり,他のマシンに移したりする際に,移動するファイルが1個で済むのだから,バックアップ作業は間違いなく簡略化される。しかしこの仕様だと,.pstファイルの容量が巨大に膨れ上がる可能性がある。電子メールを使って大量のPowerPointプレゼンテーションやその他の大容量ファイルをやり取りするユーザーの場合は,特にそうだ。
なお,添付ファイルを抽出して別個に保存することによって,.pstファイルとメールボックスの容量を小さくするサード・パーティ製プログラムが,エンドユーザーとシステム管理者向けにそれぞれ用意されている。Slipstick SystemsのWebサイト「Housekeeping and Message Management」には,これらにツールの一覧表が掲載されているので,参考にしてほしい。
質問:複数のユーザー間で.pstファイルを共有したり,.pstファイル内のフォルダを共有したりできますか
Outlookを使って,Outlookの管理するファイルを共有することはできない。しかし,サード・パーティ製ツールを用いることによって,Exchange Serverにメールボックスを持たないユーザーのために,共有機能を追加することが可能だ。これらのツールについては,Slipstick SystemsのWebサイト「Sharing Microsoft Outlook Calendar and Contacts」を参照してほしい。
質問:自分のプロファイルを見ると,同じ名前で同じデータを持つ2個の.pstファイルが表示されており,全アイテムが両方のファイルにコピーされています。2個のファイルのうち,1個を削除するにはどうすればいいでしょうか
恐らく,ゴーストの.pstファイルが存在しているのだろう。ゴーストとは,Outlookのフォルダ・リストには表示されるが,実際に別個のファイルとして存在しているわけではないファイルのことだ。.pstファイルのルート・フォルダを右クリックして[切断]を選択するという通常の方法では,このファイルを閉じられない。
確実に削除したいのなら,もう一度新しいメール・プロファイルを作り直すのが良いだろう。新規のプロファイルを作成するとき,Outlookはそのプロファイル用にデフォルトの.pstファイルを新たに作成する。新しいプロファイルでOutlookを立ち上げたあと,まずは[ファイル]-[開く]-[Outlookデータファイル]コマンドを選択して,利用したい既存の.psftファイルを開く。その後,[ツール]-[電子メールアカウント]-[既存の電子メール・アカウントの表示と変更]を選択し,電子メール・アカウントを変更する。[新着電子メールの配信場所]という項目で,デフォルトの.psfファイルとして使用したいファイルを選択する。Outlookを再起動すると,Outlookが新プロファイル用に作成した新しい.pstファイルは,もうデフォルトで開かれないようになっている。よって,その.pstファイルを閉じると,フォルダ・リストには移行した.pstファイルだけが表示されるようになる。