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三菱マテリアルの英断 戦後補償問題の解決の大きな第一歩 中国人強制連行事件

 戦時中に行われた中国人強制連行では4万人もの中国人が日本軍に拉致され、日本本土に連行されました。
 このたび、その被害者、遺族と加害企業三菱マテリアルとの間で和解が成立しました。とても画期的なことです。
三菱マテリアルが中国元労働者側と和解 過去最多、「謝罪」表明と1人当たり170万円」(産経新聞2016年6月1日)
「三菱マテリアルは「人権が侵害された歴史的事実を率直かつ誠実に認め、痛切なる反省の意を表する」とする謝罪文を発表。労働者側は「日本政府とほかの加害者企業も三菱マテリアルのように歴史を直視し、強制連行労働者の問題で正しい決断をするよう求める」とした声明文を発表した。」

 三菱マテリアルの声明はこちらです。
http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2016/16-0601.pdf

三菱声明

 この中国人強制連行事件では順次、国や企業を相手に訴訟が提起され、北海道でも1999年に提訴されました。しかし、2007年4月27日、最高裁は、広島西松建設の被害者である中国人側の請求を棄却する判決を下しました。
 これによって一連の訴訟が次々に棄却され、訴訟自体は終わることになりました。
 しかし、最高裁は判決の結びで次のように述べました。
「なお,前記2(3)のように,サンフランシスコ平和条約の枠組みにおいても,個別具体的な請求権について債務者側において任意の自発的な対応をすることは妨げられないところ,本件被害者らの被った精神的・肉体的苦痛が極めて大きかった一方,上告人は前述したような勤務条件で中国人労働者らを強制労働に従事させて相応の利益を受け,更に前記の補償金を取得しているなどの諸般の事情にかんがみると,上告人を含む関係者において,本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待されるところである。」

 この判決の趣旨を受けて東京の弁護団では、企業との和解の実現に向けて大きな努力をされてきました。敬意を表します。
 また三菱マテリアルの英断があったからこその和解でした。
 他の企業と横並びでなく、三菱マテリアル自身が独自に決断されたことは素晴らしいことです。
 他の企業も同様に戦後補償問題を終わらせるためにも決断してもらいたいものです。
 そして、何よりも日本政府こそ被害の救済に向けた努力をすることが期待されているというべきです。これは法的な責任という問題ではありません。
 戦後補償の問題は、従軍慰安婦問題とともにまだ終わってはいないのです。

中国人強制連行事件を風化させないために『強制連行中国人殉難労働者慰霊碑資料集』


従軍慰安婦問題に関する日韓合意 この合意が確実なものとなるために


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コメント

No title

これは個人的見解ですが、中国(中国人)に対する賠償は私はアリだと思っています。

尖閣問題でも、ロシアとの北方領土問題と同じように協調路線を模索すればよいと思う。

しかし、これを従軍慰安婦問題とくっつけて語るとこが何とも「反日」的な思想。

そっちは、元々とっくに終わった話ですから。

今回の日韓政府の合意も無視し、何としても終わらせたくないのでしょうね。

もう、恥ずかしいレベルです。

No title

 大学で受講していたクラスに現在の鹿島建設で働いていたという中国の方がお話しに来てくださったことがありました。絵がとてもお上手で黒板いっぱいに日本での労働や生活の詳細を描いてくださったのを憶えています。同行の方による「このような絵もその後の事実関係確認にとても役に立った」というご説明にその方もにっこり、私たちも思わず拍手でした。そのような方々が戦後もネットワークを大切にされ、ご経験を共有し、記録してこられたことにも敬意を表したいと思います。

日本の戦争責任は

 中国に対しては全て日中共同声明で清算されているというのに、バカなことを……
 占領期、白洲次郎は「戦争に負けても、奴隷になったわけではない。」
 と公言して抵抗したのに、70年以上も経って自分から奴隷になる愚か者がいるとは、どうにも救いようがない。

No title

 中国に対しては全て日中共同声明で清算されているというのに>

中国が自国民の賠償請求権を認めない。などと宣言したことなど、一度も無い。

皆さん、このようなネトウヨのデマに騙されないように、お気を付けください。

覧古考新:これは続報を知りたい

>この判決の趣旨を受けて東京の弁護団では、企業との和解の実現に向けて大きな努力をされてきました。敬意を表します。
>また三菱マテリアルの英断があったからこその和解でした。
>他の企業と横並びでなく、三菱マテリアル自身が独自に決断されたことは素晴らしいことです。

フム。
そういえば記憶の片隅にこの和解のニュースがあった。

なお、リンク先の産経新聞の記事にこうある。
【引用開始】
三菱マテリアルで働いた元中国人労働者は計3765人。
関係者によると、確認された元労働者や遺族のうち、「9割以上との和解が成立した」としているが、元労働者の一部は、謝罪文の文面や賠償金額などに不満があるため、和解に同意していないという。
【引用終了】
1年前だがいまはどうなっているか。
続報を検索したがわからなかった。
猪野先生が賞賛する事例だが、100%の和解成立とまでは、なかなか難しそうだ。

>戦後補償の問題は、従軍慰安婦問題とともにまだ終わってはいないのです。

このブログのコメント欄を見ても、「終わっていない」様子。
よくよく考えるべきことだと思う。

続報

>これは続報を知りたい

人民網日本語版(2016年07月01日)に記事があった。
http://j.people.com.cn/n3/2016/0701/c94475-9080459.html

引用開始----
原告が最も受入れられなかったのが、協議合意書の附則に記載されていた原告へのある要求だった。それは「元労働者は協議書に同意した後は、いかなる国家や地域においても、三菱マテリアルに対し、訴訟、仲裁、あるいは行政面での請求をしないことを承諾し、本件に関して全て完結したとみなす。また他の原告にも和解を受け入れるよう勧めなければならない。以上の承諾の証として、保証書にサインすること」というものだった」
康弁護士は「この要求が原告が思い描いていた加害者と被害者という関係を覆し、彼らが想像していたような『誠意ある謝罪』が、一転して『金に物を言わせて他人の口封じをする手口』に変わり果てたのだ」と語った。
引用終わり----

「他の原告にも和解を受け入れるよう勧めなければならない。」とは加害者の行うべき和解にむけた努力のことで、被害者に要求される筋はないだろう。

また、康弁護士は「三菱マテリアルから提起された和解協議文書の全文は一度も公表されていない」点を問題視している。和解に至るまでのプロセスが、やはり一方的で、丁寧さに欠けていたかも知れない。時間的な焦りもあったのではないだろうか。結果が評価されても、被害者との粘り強い折衝が不足していたら和解の意義も薄らいでしまう。

そして、訴訟を続ける被害者は「三菱マテリアルに公開謝罪と100万元の賠償金を支払いを求める」とのこと。

三菱マテリアルは、被害者の理解を得られるよう、被害者との丁寧な折衝の上、透明性を高めた『誠意ある謝罪』を追求する課題を負ったと言えよう。金銭的な面での合意(なお司法の判断は厳しいだろう)は難しいだろうが、三菱マテリアルの「和解」に向けた今後に注目したい。
なお、次の記事で、この和解がどう評価されるべきか、確認しておきたい。

内田雅敏弁護士が語る、中国人強制連行・強制労働問題における三菱マテリアルとの和解への道のり
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201608281552370

No title

>中国が自国民の賠償請求権を認めない。などと宣言したことなど、一度も無い。



日本は自国民の原爆被害の賠償請求権を認めない、などと宣言したことは一度も無い。

アナザーアイ

秋葉亭さん、ありがとうございます。
あなたの丁寧な解説とリンク先提示でこの問題についての理解が深まりました。

>「他の原告にも和解を受け入れるよう勧めなければならない。」とは加害者の行うべき和解にむけた努力のことで、被害者に要求される筋はないだろう。
>結果が評価されても、被害者との粘り強い折衝が不足していたら和解の意義も薄らいでしまう

もっともな話。
たしかに引っかかるのは分かる。

内田雅敏弁護士の記事で注目したのは以下の部分。
【引用開始】
<和解は安全保障にもなり得る>
日中間の戦後補償問題を解決することで、中国の人たちに対し、“日本国内にも戦後補償問題を解決しようと行動する人たちがいる”ことを示すことができます。
今日、日本政府は「安全保障のため」と言って安保関連法を成立させ、近隣諸国との緊張を高めています。私は、そのようなことをしなくても、戦後補償問題を解決していくことで日中間の安全保障環境をプラスに転じさせることにつながると思っています。
【引用終了】

なるほど。
これは「アナザーアイ」だ。
戦後補償の問題を「勝ち負け」のゼロサムゲームにしないために、この点はよくよく考え、実績あるものにしたい。
再度、秋葉亭さんにお礼を言いたい。

【追伸】
【引用開始】【引用終了】は、秋葉亭さんがオリジナルで、わたしはマネをしたに過ぎない。
秋葉亭さんのよいと思う点は、これからもどんどんマネをしていきたい。

ちなみに

秋葉亭さんじゃないよ、名前だから、一応コメントしておく。

秋葉亭は中華です。

お詫び

秋風亭さん申し訳ない。
お詫びします。
体制派さんにもフォローを感謝。

国際法は進化する

>秋風亭さん申し訳ない。

いえいえ、お気になさらずに。今後も活発なコメントをお願いしたい。

人民網の記事は、私も今回初めて知った。なごやんさんには感謝したい。
なぜ、三菱マテリアルは、あの一文を載せたのか疑問が残る。彼らの和解に対する甘さは、もっと知られていてもよいだろう。

司法における戦時下の個人補償という問題は道半ばだが、時代とともに国際法も変わってきている。歴史と責任(青弓社:2008)---『9章 紛争化の性的暴力と国際法の到達点』として、性的暴力を例に国際法がどのように変化したのかが、東澤靖氏により概観されている。
2005年に「国際人権法の重大な侵害と国際人道法の深刻な侵害に対する救済と保障の権利に関する基本原則とガイドライン」が国連にて決議されていることが触れられているが、それがどのように結実していくのか注目したい。

不平等

 慰安婦だろうが、他の戦争犠牲者だろうが、結局国家責任の被害者ということに違いはないのに、前者に「人権侵害」のレッテルを貼って特別扱いすることに、偽善以外の意味はない。
 東京大空襲の被害者や遺族は、決して渡米して、アメリカの裁判所においてアメリカ政府を被告とする損害賠償請求訴訟を起こしたりしない。何故なら、彼らははっきりとではなくても、分かっているから。いかに民間人を目標とした無差別爆撃であろうと、アメリカ政府が責任を認めることはあり得ないし、アメリカの裁判所が、戦争に負けて、しかもサンフランシスコ講和条約で請求権を放棄した日本人の請求を認めることなど、絶対にあり得ないと。
 特定のカテゴリーだけの「被害者」を、人権の名のもとに救おうとする行為は、無意味なだけでなく、偽善そのものなのだ。

戦争犯罪には違いない

それでも東京大空襲などの無差別爆撃や原爆投下が許し難い戦争犯罪であることに疑いの余地はありません。
シリアにおけるロシア軍アサド政権軍の無差別爆撃が戦争犯罪であることと同じです。

無差別爆撃を命令していたルメイに勲章を授与した自民党政権は、どうかしてたとしか言いようはありません。

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猪野 亨(いのとおる)

Author:猪野 亨(いのとおる)
1968年生まれ
1998年弁護士登録(札幌弁護士会所属)
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