昨今、明らかにされていっている映画界の問題について映画監督有志より出された「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。」という声明にシネマ愚連隊も賛同いたしました。
私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。監督という立場は明らかに権力者であるからこそ、その権力に責任を持たねばならない。
監督がイメージを伝えれば、スタッフ、役者はそのイメージに近づけようと必死で頑張ってくれる。
それを勘違いして、その権力を使って、性暴力や殴る蹴るなどの暴行に走るのは以ての外。
権利者であるからこそ、常に自分を戒めなければならない。
しかし「あらゆる暴力」で一番難しいのが「言葉の暴力」。
このことは監督をするに際して、常に考えていることでもある。
明らかに、暴言を吐いたり、言葉で押さえつけようとするのは「暴力」ではあるが、現場がゆるゆるになったり、舐めた仕事をし出した時などは「指導」しなければならない時もある。昔はただ「怒鳴る」と言うやり方でよかったのかもしれないが、今はそれだけではダメで相手も納得させなければならない。昔より時間がタイトになってきている現場でだ。それも新たに監督に課せられた仕事なのかもしれないがなかなか難しい。
「指導」以外にも「笑い」も難しい。現場を円滑に進めるためには「笑い」の要素も一つの潤滑油になると常に思っているのだが、この「笑い」で人を傷つけてしまうこともある。
大島渚監督が怒るターゲットを決めて常にその役者やスタッフを怒鳴りつけていたと言う話があるが、自分の場合は笑えるミスをやらかしてしまった役者やスタッフを笑いのターゲットにすることも多い。そのミスを大袈裟に強調して笑いのネタにしたりする。現場でみんな笑って和んでチームワークも良くなり現場が円滑に進むことがほとんどではあるが、笑いの対象にされて傷ついていたスタッフや役者もいたかもしれない。
「笑い」「冗談」「ジョーク」も「暴力」になり得るので、こちらもなかなか難しい。
ただ、わかっていることは「監督という立場・権力を利用して、性暴力や殴る蹴るなどの暴行、怒鳴り散らすなどの暴言・威圧」は絶対に良くないと言うこと。
シネマ愚連隊もそういった映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。
髙橋 亨(B級映画監督/シネマ愚連隊代表)