■コマ大数学科192講:物理学Part3
猛暑で数学どころじゃない「たけしのコマ大数学科」
問題:図のように鉛直な側面を持った水槽が水平な床の上に置かれており、水面の高さは床から1mである。いま、側面に小さな穴をあけて水を水平方向に噴出させる。噴流が穴の真下の床上の点から最も遠くに落ちるためには穴の位置を水面から何cmにすればよいか。また噴流が落ちる点までの距離を求めよ。
※1970年 東京大学(理系)入試問題
ステッパーの矢印をクリックすると、穴の位置を変更することができる。爺が作成した、あやしげなFlashに惑わされることなく、正解を導きだしてほしい。水槽の断面積や穴の大きさ、液体の粘度、空気抵抗など、問題文に書かれていないことは、考える必要がないよ。
問題文の「鉛直」という言葉だが、「鉛をオモリとして糸で吊るしたとき、地球の重力によってそのオモリが指し示す方向、つまり、垂直ということですね」と竹内センセからの説明があった。いかにも物理学的な表現とゆーか、40年前の問題とゆーか……。
コマ大数学研究会は、高さが1mの透明なアクリル製の円筒に水を入れ、キリで穴を開けて検証。水の落下地点を予想し、戸部アナ、ポヌさんの顔写真を貼り付けた、フィギュアを置いて距離を測る。もう一体、出井由紀ディレクターのセクシーなフィギュアも用意し、いざ検証。予想が的中すれば、美女たちのシャワータイムが拝めるとゆーわけだ。いい歳をしたコマ大生が美少女フィギュアで遊ぶ、もとい、検証する様は、ひと夏の思い出、心温まる情景(?)であった^^;
●コマ大数学研究会の答え
穴の位置:50㎝
噴流の距離:50㎝
スタジオでは、マス北野が早々と「できた!」発言。「オレは工学部だからな」と、余裕とも思える、自信満々の体でボードに解答を書き込む。
●マス北野&ポヌさんの答え
穴の位置:50㎝
噴流の距離:1m
(※あまりに、完璧な解答だったので、解説は、竹内薫センセの「美しき数学の時間」で……)
いっぽう、衛藤樹さん、伊藤理恵さんの東大生チームは、とっかかりが掴めず、苦戦している模様。竹内センセから、公式が浮かばないときは「エネルギー保存の法則を使う」というヒントが出るが、完全にお手上げの状態だ。
●東大生チームの答え
穴の位置:100㎝
噴流の距離:200㎝
東大生チームがどこでつまづいたかと言うと、穴から噴出する水の「初速」が求められなかったからだ。水の初速を求めることができれば、X方向は等速度、Y方向は9.8m/s^2の等加速度運動になり、水の落下地点を計算できることは、東大生チームのおふたり共、わかっていた。
●竹内薫センセの「美しき数学の時間」
竹内センセが「エネルギー保存の法則を使う」と言ったのは、水面から穴までの距離、位置エネルギーが、そのまま、運動エネルギーに変換される。とゆーか、その両方のエネルギーが等価だっていうことなんだよね。
水圧(位置エネルギー)が、穴から噴出する水の初速(運動エネルギー)に変換される。つまり、mgh=(mv^2)/2と、ふたつの公式を等号で結べば、v(水の初速)が計算できるわけ。ただし、水は粘度がなく、摩擦抵抗もない「完全流体」の場合ね。物理学では、とくに断り書きがない限り、「水=完全流体」として考えるということらしい。
東大生チームが苦戦した「初速」さえ、求めることができれば、あとは、計算ができる。
この問題では、空気抵抗などは考えなくてよいので、X方向は、初速が決まれば、あとは、慣性の法則で等速度運動になる。Y方向の重力による、等加速度運動になるが、ガリレオがピサの斜塔から異なる重さの鉄球を落として証明したように、質量(m)の項は消えてしまう。
さらに爺を脅かせたのは、水の飛距離を求めると、重力加速度(g)の項も消えてしまっているではないか!
爺は、穴の位置と水の飛距離の関係をグラフにしてみた。なんか、キレイに楕円の半分って感じになったのら^^;
≪参考≫
●東大入試問題数学ARCHIVES
1970年 東京大学(理系)入試問題
で、この問題の出典元(?)らしいのが、1967年、ファインマンが大学で行った物理学の講義らしく。のちに、講義内容を本にしてまとめたら、ベストセラーになったとのこと。
日本でも「ファインマン物理学」は出版されていて、版を重ね、超ロングセラー本だ。今回の問題に該当するのは、「ファインマン物理学」シリーズの5冊のうち、(I)力学のようだ。
ファインマン物理学(I)力学 ファインマン/著 坪井忠二/翻訳 岩波書店 |
※たけしのコマ大数学科の「過去問題」はこちらから。
■コマ大数学科:2009年度全講義リスト
■コマ大数学科:2008年度全講義リスト
■コマネチ大学数学科:2007年度全講義リスト
■コマネチ大学数学科:2006年度全講義リスト
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コメント
水の初速はエネルギー保存の法則
(ベルヌーイの定理)から出せますが
トリチェリの定理を使うともっと簡単です。
投稿: i-dream | 2010年8月16日 (月) 19時09分
i-dreamさま、コメントありがとうございます。
トリチェリの定理って、今回の問題で水の初速を求める式、そのまんまって感じですね。
Wikipediaによると、トリチェリは晩年(といっても、亡くなったのが39歳だから、働き盛りの頃)、ガリレオ・ガリレイに師事し、一緒に研究していたんですね。
投稿: Gascon | 2010年8月24日 (火) 00時45分