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2015年2月22日 (日)

AKB48とプロレスファンのための指輪物語「シャドウオブモルドール」

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 Talion, If you smell what Talion is cookin'!

 「シャドウオブモルドール」は表向きのフックには「ロードオブザリング」「ホビット」シリーズのミッシングリンクを埋めるストーリーが描かれていることで、裏側のフックとしては洒脱なAIを構築したことが大きな評価の一つになった「F.E.A.R」を開発したMonolith Productionsの新作であることで注目された。

 ライトな有名版権ゲームのイメージとハードなデベロッパーの作り上げた「バットマン・アーカムシティ」「アサシンクリード」のメカニックを利用したオープンワールド、ということで、多くのレビューもそういうところに落ち着いている。

 が、オレはというともはやオープンワールド文脈だの指輪物語だのどうでもいい。「一体、一体なぜこうなったんだこのゲーム」という思いを格闘技レビューもやってる身だと隠し切れない日本にいて嫌でも目にするあのアイドルグループを見ている身だと隠し切れない。そう本作のハイライトである「ネメシスシステム」これはどう考えてもあの影響を受けているとしか思えない。そうAKB48、そして大相撲、そしてプロレスである。今回のエントリはMonolith Productionsの中核に松井珠理奈を上位いや軍隊長にするためにCDを買い込んだ人間が潜んでいると推測する文章である。



ネメシスシステムそれはAKB48…タリオンそれは秋元康

 一応メインストーリーには「妻と子を殺され、復讐の意志を持つ不死の男タリオンの中つ国でのサウロン軍との戦い」があるがそんなもんはMonolith Productionsが構築したネメシスシステムの前に容易く掻き消えてしまう。

 ネメシスシステムとは何か?それはAIにて自動生成される様々なオークが、広大な平原にて自分の縄張りを持っており時間が進むごとに兵の増員を行ったり、猛獣を狩ったりしながら自分のレベルを高めていき、時には他のオークとも縄張り争いを行い地位を奪っていく。

 オープンワールドというジャンルの評価という意味ではそれらすべてがランダムに発生することで、これまでのオープンワールドのような、マップに落ちてるイベントやアイテムを拾っていくようなデカい梱包材のプチプチ潰すような単調さから解き放たれ、不確定にイベントが発生し続けることで世界のうねりが生まれることに意味がある。これはUBIの「Watch Dogs」がコンセプチュアルなところを切り口にしているのと対照的だ。


 しかしである。そんなオープンワールドのネクストの可能性として不確定な世界の流れを描くことが、まさかの日本のAKB48に影響を受けているとしか思えないのである。オレがあれだけフーコーだとかデヴィッド・ライアンだとの監視・管理社会とゲームメカニクス云々を当てはめ「Watch dogs」を評価した一方で、ビデオゲームの神々が微笑むのはAKB48云々を例えたほうに違いないのだ。下の画像を見てほしい。

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 これが地方全土に君臨するオークたちの図であり、最上位には軍隊長と呼ばれるトップ5が揃っている。その軍隊長を巡り地方オークたちは力をためるために兵を増員したり宴を開いたりするのだが…もはやそれはAKB48の各々のメンバーが握手会を行いレベルを上げる、イベントに出てパワーを得ようとしていると言う風にしか見えなくなっていくのである。「神7」がどうたらとか、マジで軍隊長である。だいたいこのネメシスシステムの絵からしてすでに「恋するフォーチュンクッキー」のフォーメーションではないか。





   踊るオーク軍隊長とその下の膨大な小隊長 AKBはよく知らんがきっと今も「増員」とか「決闘」とかやってる



 恐ろしい…いったい何があったのだろう。AKBとの酷似は細かいとこまで似てて、本作は2つの地方を行き来するのだがその地方ごとにオークの軍団がヒエラルキーを作っているのである。まさにSKE48とかHKT48とかの展開と同じ!Monolith Productionsの中核には指原でおかしくなった人間がいるのだろうか。

 このゲームが恐ろしいことはそれだけではなく、まさに悪徳プロデューサーがいたいけな少女をアイドルに引き入れるなんてことに近いことすら可能だ。タリオンを倒した雑魚のオークはそのまま小隊長へと昇格し、自分の縄張りを持つことが出来るのだが、逆を取ればわざと負けることで好みのオークを小隊長へと昇格させることが可能なのである。


 最悪だ…それはまるで街でスカウトし「君には資質があるね」だとかなんとか甘ったるいことを囁きながら高い食事をおごってあげたりして説得し、そして自分の手にかかったアイドルをトップにまで育て、そして堕とすことで自分だけが利を得るなんていう気色の悪いことさえ可能だ。というか実績にマジで「自分を殺したオークを軍隊長にまで昇格させて殺す」という項目がある。制作陣にはサディスティックな変態しかいない。

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ネメシスシステムそれは大相撲…タリオンそれは横綱審議委員会

 

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                                                 日本のネメシスシステム 

  そしてネメシスシステムがプレイヤーに与える示唆はそれだけではない。AKBだけでなくプロレスや相撲を見ているならば一度は誰でもこの存在を考えたことがあるだろう。そう八百長の存在である。


 八百長、それは最初から勝敗が決まっている闘い、どうしようもない茶番だと解釈されるが、実際には八百長を仕込み本当に実行させていくのにはもの凄く力が必要になるし戦略が必要とされる。しかも確実に上手くいくとも限らない。それをネメシスシステムはいちいちわからせてくれるため、大相撲からプロレスなどを観てるオレにはビリビリ来るのだ。

 ネメシスシステムはプロデューサーや運営が仕込むだろう八百長の発生から進行までの一連の動きをプレイヤーに追体験させてくれる。八百長は一体いかなる時に生まれるのか?というオーソドックスなところでは、その選手を勝たせることによって興行的にもブランド的にも利益を見込むためであったり、単純に運営側が押し出したい選手がいるためだったりするわけだ。


 オークたちは自由に抗争を行うのだが、昇格させていくことで後で殺した時に手に入るアイテムなどの利ワードであったり、軍隊長に据えることでメインイベントが進行するなどなど膨大な利益がある。プレイヤーは殆ど確実にオークの抗争に介入し、利がある方のオークを勝たせようとしていくだろう。オークたち本人は真剣勝負をやっているのだが、その裏で最適な利を得るためのシナリオを描くことができるわけだ。


 だが意外にそれもうまくいかないものだ。プレイヤーは弓矢を使って推しのオークを勝たせて地位を上げようとしたり、やっかいなオークを消そうと画策しても、そのオークに弱点が無いくらい強い場合だったり、抗争の流れによってはにはどうしても目論見通りにはならない時もある。

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        推しの小隊長を軍隊長に勝たせようと仕込むが返り討ちに会う図(では)

 そうネメシスシステムを通せば見えるのだ。この前の白鵬が稀勢の里戦での取り直しの判断に対し、横綱審議委員会に物言いをした事態のある種の視点を。稀勢の里を推したいだろう横綱審議委員会の出した奇怪な判断これも推したいオークをまったく隙が無いレベルにまで力を持ったオークにいろいろ仕込んだうえでも返り討ちにされてしまうという構図ではないか。


 だがしかし、ジャンルによってはプロデュース側に圧倒的な資金力と戦略を秘めた人間が手を掛けたのならば、そうした八百長、というかそれをはるかに超えたオークの一連の抗争すべてを掌握したシナリオすら描くことのが出来るのである。そう、それがタリオンが成長して得る能力「ブランド」だ。

ネメシスシステムそれは新日本プロレス…タリオンそれはブシロード会長木谷高明 

 

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 ゲームが進行することで、ネメシスシステムに大きくプレイヤーが介入できる能力、それがオークを味方へと洗脳する能力「ブランド」である。洗脳したオークには幽鬼の蒼い光が目から宿り、それは牛や豚に付ける焼き印の意味の日本語訳に近いのだろう。


  しかしブランドしたオークをそのまま強くしていき抗争を仕掛け、軍隊長へと昇格させながら自分の洗脳したオークで覇権を握っていく様は、テリトリー時代のプロレスのようなガチと妥協の入り混じったそれではなく資金力と戦略による現代型のプロレス団体が生み出すスターの「ブランド」という意味に近い。そう今なら飛躍しつつあるブシロード・木谷高明によって建てなおされた新日本プロレスでオカダカズチカを生み出していく恍惚と不安である。

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      木谷高明により、新日本プロレスの「ブランド」を背負った選手オカダカズチカ  

 もはや上手くいくかわからない八百長の仕込みを超えてほとんどすべてを自分の手中に収め、軍団の動きや行動すら統御する。そうそれは現代のプロレスのトップがやっていることである。

 ブランドした軍隊長同士の一戦、それはまさにプロレスのユニット抗争そのものだ。ユニットの顔になるトップの周辺に小隊長数名が付き、大乱闘を展開させる。そしてそれを遠くから眺めているタリオンという構図…それはビンス・マクマホンや木谷高明のそれではないだろうか。そうアビリティを増やしていくと言うことはプロデューサーとしての資金力・戦略を高めるのと同義。プレイヤーは秋元康から木谷高明まで、「アイドルマスター」以上に悪徳プロデューサー気分を味わうことが可能だ。

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ネメシスシステムそれはUFC…タリオンそれはダナ・ホワイト 

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 「シャドウオブモルドール」はこんな感じ指輪物語だとは一切思えず、遊んでいるすべての時間がアイドルやらプロレスやら格闘技やら大相撲やらの記憶に絡み続けてしょうがなかった。実際、メインストーリーがどんなんだったかあんまり残ってない。というかメインストーリーはだるかった。


 もはやおかしくなってしまいタリオンとケレブリンボールのタッグも、アメリカのMMA(総合格闘技)の最大の団体であるUFCの社長ダナ・ホワイトと、その高校の同級生にして運営会社の社長であるロレンゾ・フェティータのコンビのように見えてしょうがなかった。

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  「bioshock」シリーズのディレクターであったケン・レヴィンはプロシージャルに生成される本作の特殊性に対し、「オープンナラティブゲームの開幕」と評価しているのだが、どうも本当に今のゲームデザインの命題にあるのがナラティブの気がしなくなってきている身には本作の評価軸がAKBと大相撲にある気がしてしょうがなくなっている。つまりケン・レヴィンの最新作の可能性の一つとして白鵬が主人公になる。そんな世界線がある気がしてならない。

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コメント

こ、これは面白い!
アサシンクリードやスカイリムの系譜から読み解くのかと思っていたら、まさかAKB48に大相撲とは……

つまりAmazonレビューの評価値で、日本と諸外国に開きがあったのは、これらの要素がジャパンでは飽和状態のものだったからなのか!!なるほど!!

もう新作ゲームの評価に一切Amazon見てなかったので
いま見てみたら抜けが悪い感想ばっかっすね。

リニアなレベルデザインでプレイヤーのゲームプレイをデザインする側の
オープンワールドの良い結果の一つとも思いますが…
なにせオープンワールドの自由っていっても
やることがマップに配置されたイベントや隠しアイテム
穴埋めのローテーション、お使いになりやすいというか。
自由に伴う不確定な面白さやうねりまでもないかもな、という。

「シャドウオブモルドール」もこれまでのオープンワールドのような
無暗なマップに配置されたアイテムめぐりな要素はあるんですが、
それを超えるくらいネメシスシステムの提示してる
オープンワールドのゲーム進行のうねり、ってのはデカいです。
無論、ステルスから群衆戦、そしてブランドを行っての戦略などが
超高速で行えるデザインも凄いです。

映画版指輪物語の頃からさり気にプロレスネタがありましたね。
ファイトシーンではドロップキックが良く使われてました。

さりげにハリウッドネタでプロレスムーヴはしばしばありますよ。
ジョンウーのミッションインポッシブルでは
延髄切り飛び出してたような

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