このエントリはThinkpad レビューコンテストに向けて書いていたのだが、途中ですっかり忘れてしまっていた。まぁ、大和事業所見学以外は率直に言っていらないもの ( X100e も Edge も実物を触ってきたがありゃ酷かった ) なので記憶に残らなかったのだろう。しかし、今まで使い続けてきた Thinkpad が素晴らしいのは事実だし、せっかくなので公開しようと思う。
親戚や友人から「ノートPCでいいものない?」と訊かれた時、わたしは大抵の場合は Thinkpad を薦めている。もちろん、用途によって ( たとえば3Dゲームをバリバリ遊びたいとか ) は他を薦めることもあるが、大学に持っていったりしたいとか仕事でも使えるようなものがほしいという場合に薦めるのは Thinkpad だ(*1)。
最初に断わっておくと、筆者はプライベートでも仕事でも他のノート PC を使ったことがある。最初に買ったノート PC は SHARP の Mebius だし、NEC の LaVie も使ったことがある。他に、会社で Let's note や VAIO も触った。そして、今でもノート PC を買うときは、Thinkpad 以外のものも触るようにしている。
しかし、結局は Thinkpad を買っている。理由は、わたしがノート PC を選ぶときの基準にある。わたしがノート PC を選ぶうえで絶対に譲れない基準は頑丈であること、それからメンテナンスが楽であることこの2つだ。その次に重視するのがキーボードと性能だ。価格は最後だ。
なぜ頑丈で、メンテナンスが楽じゃなきゃならないのか。理由は実に単純なことで、満員電車に乗っただけで壊れたり、1 回や 2 回机から落としただけで壊れてしまうようでは仕事の道具としては役に立たないからだ。経年劣化するパーツを交換するために数カ月も修理に出さなければならないようではやはり役に立たないからだ ( その空白の数ヶ月間はどうやって生活するんだ?)。
Thinkpad は頑丈
突然だが、東京の満員電車の酷さは相当なものだ。どれくらい酷いかを少しでも知ってもらうためにちょっと例を挙げると、VAIO のディスプレイがパッキリと割れ、MacBook Pro の重厚なアルミボディでさえもまともに動作しなくなるほどゆがんでしまうほどだ。
わたしはこんなことを言われたことがある --「ノート PC は精密機械であり、精密機械は一般的に丁寧に、そっと扱う必要がある」 -- OK、確かに一理ある。しかし東京に住んでいる以上はあの世界的にも悪名高い満員電車に乗り込まなければならいのは避けられない現実であり、仕事のためにノート PC を持ちこまなければならないこともあるのだ。
先ほどの現実が全く見えていない一般論(笑)を披露してくださったインテリ様に現実に基づいた要求を上申させていただくと、ビジネスユースにも耐えうるノート PC と豪語するなら、東京の満員電車、それも通勤ラッシュの一番ひどい奴に放り込まれても問題なく動作する必要がある。
そして、今のところは通勤ラッシュ時間帯の満員電車に放り込まれても、一度も壊れていないノート PC は Thinkpad だけなのだ。
ノート PC と機材を持って移動し拠点についたらすぐ作業ということを1日に何度も繰り返す仕事に就いていたことがあるが、Thinkpad は一度も壊れなかった。一緒に運んでいた他のノート PC は壊れてしまうことがあったが、Thinkpad が動作しなくなることは一度もなかったのだ (*2)。
わたしは Thinkpad の発表会などに呼ばれることがあるが、そういうときに VAIO とか Mac を持っているユーザがいると確認させてもらうことがある。それは店頭では確認できないこと、つまりは「頑丈さ」だ。ついこの間の Thinkpad 開発責任者との会談ではタフブックを持ってきたユーザ ( 会社から支給されたものらしい ) がいた。わたしは訊いてみた「それって本当にタフなの?落としても、通勤ラッシュにもまれても大丈夫?」。彼は答えた「1回落としたらドライブの蓋が閉まらなくなったよ。全然頑丈じゃないね」
どうやら本当に頑丈で実用的な「タフブック」になるにはまだまだ時間がかかるようだ。
余談だが、Thinkpad はディスプレイ部分だけを持って歩くこともできる。
V○IO はディスプレイ部分だけを持って運ぶとひん曲がった ( もちろんディスプレイは壊れる ) が。
高いメンテナンス性
10年前、初めて買ったノート PC の HDD が壊れたときのことだ。それまで自作デスクトップしか使ったことがなかったわたしはあることに仰天した。なにに仰天したのか。壊れた HDD を自前で交換すると、なんとメーカーの保障が一切なくなるということに加えて、たかだか HDD を交換するだけで 5 万円もかかるというのだ。しかも修理期間は1か月はかかるといわれた。
10 年前とはいえ HDD は 15000 円あれば購入できた。つまり、自分で買って交換すれば修理期間は半日で費用は 15000円で済むが、その後の保障は一切なくなる。しかし、メーカーに修理を依頼すると数か月待たされさらに 5万もぼったくられる。どちらかを選ばなければならないということらしい。なんてこった。
その後も驚くことは続く。メモリが不足気味なので追加しようと思ったのだが、これもメーカーの保障が一切なくなるというのだ。
まわりに訊いてみれば、ほとんどのメーカーはこれが当たり前なのだという。
HDD 交換もメモリ増設もたいして難しいことではない ( 少なくとも液晶パネル交換に比べれば ) にも関わらず、ユーザが自分でこれらの作業を行うとメーカー保証が一切なくなるという。メーカーに依頼すればパーツの価格の3倍以上もぼったくられるという。これが当たり前?率直に言ってバカとしか思えなかった。
このときも Thinkpad には驚かされた。Thinkpad では HDD やメモリはユーザが簡単に交換できるようになっているという。交換するところを見せてもらうと、HDD はネジ1本で取り外せるようになっているし、メモリもネジ2本はずしてさっと交換できるようになっていた。HDD 交換とメモリの交換、両方を合わせても5分もかかっていなかった (*3)。
Thinkpad にはさらに驚かされた。Thinkpad ではキーボードも、CPU の冷却部品もユーザも交換できるようになっているという。Thinkpad は「解体マニュアル」と「社員が解体作業を実演した動画」が公開されているし、ネジ1本にも部品番号がつけられているのでその気になればユーザが全ての部品をメンテナンスできるということもその時に知った。IBM のサイトには本当に筐体を開けてメンテナンスしている動画があったのだ。
実際に解体マニュアルをみると、キーボードの交換も CPU の冷却部品の交換も15分かからないくらい簡単そうに見えた。実際、Thinkpad ユーザになってからは何度か部品を交換しているが、操作はそれほど難しくない(*4)。デスクトップ PC を自作したことがあるならば「簡単だ」といえるレベルだ。
もちろんメンテナンスの方法がわかろうと部品が手に入らなければ意味がないのは言うまでもないが、Thinkpad は保守部品の入手も実に簡単に行えるようになっている。バッテリ、キーボード、AC アダプタはもちろん筐体のネジに至るまで使用している部品の部品番号が公開されており、部品センターの電話番号も公開されている。部品センターに電話をかけて注文するだけで保守部品を手に入れることができるのだ。ユーザの保守作業のサポートまで視野に入れた体制が用意されているノート PC は Thinkpad だけではないだろうか。
HDD は壊れやすいし、キーボードも CPU の冷却部品も経年劣化する。長期間つかっていればメモリを増設・交換しなければならないことも出てくるだろう。これらの部品の予備をあらかじめ用意しておけば、トラブルがあったときでもすぐに復旧できる。というと、大抵のお金持ち様は「もう一台ノート PC を用意すればいい」とおっしゃる。しかしまともなスペックの予備機を用意するとなると10万円はかかるし、今流行りのネットブックとかいうブラウジングとメーリングくらいしか役に立たないクズみたいなものでも5万円位は必要になるだろう。そして、大金を出して用意した予備機は 1~2 年で陳腐化するのだ。一方で、予備の部品を賢く手に入れたなら HDD とキーボードとメモリを合わせても1万円前後にしかならない。CPU クーラーを足したところで15000円あれば十分だ。お金が有り余っていてコスト削減なんて考える必要もないなら、好きにするといい。しかしわたしにはお金がないので保守部品を賢く用意して障害に備えておくことにしよう。
キーボード
わたしが Thinkpad に初めて触れたのは大学時代だ。理由は忘れたのだが、友人から借りたのがきっかけだ。それまでは「ノート PC は何となく入力がしにくい」と感じていたが、おや、Thinkpad ではそれを感じない。なぜだろう?わたしは借りた Thinkpad と自分が使っているノート PC ( Mebius か Lavie だったと思う ) とデスクトップのキーボードを比較してみた。
すると自分が使っていたノート PC で「入力しにくい」と感じていた理由がわかった。キーの配列だった。Thinkpad では、特に T シリーズでは、標準キーボードとほとんど配列が同じになっていた(*5)。ファンクションキーも4個ずつ分かれたブロックになっているし、PageUp とか Home とかなぜか省略されてしまっていることが多いキーもちゃんと存在している!しかも Fn とかわけのわからないキーと組み合わせることなくこれらのキーが使えるようになっている。素晴らしい!
携帯性を重視したノート PC の中には一部のキーを省略してしまうか特殊なキーと組み合わせるようになっている。その結果 Ctrl、ファンクションキー、Insert、Home、End、PageUp、PageDown 等を駆使した操作に慣れているユーザは、いつものキーを探したが見つからないという失望と、キーを探した時間が無駄だったという憤りとを抱えたまま、さて別の方法ではどうやるんだっけとストレスをためながら「携帯性には優れた」ノート PC を使うことになる。
しかし熟練したユーザがキーボードを駆使することでどれだけ生産性が高くなるかを理解したうえで設計された Thinkpad では Ctrl+F10 とか Ctrl+Shift+End, Shift+PageDown, Win+PauseBreak, Win+B, Alt+PrtScn 他にもたくさんあるが、これらのキーを組み合わせた操作だって普通にできる。これはキーボードを使った操作に慣れているユーザにとって素晴らしいメリットで、Thinkpad をより魅力的なものにしている。他に Thinkpad と同じようなキーボードを採用したノート PC は無いのだから。
残念なことに Thinkpad X100e とか Edge ではダメになったようだが、これはきっと「周りとおんなじにしなきゃならない」とか大きな勘違いをした頭の中に金太郎飴がつまっている人間が騒ぎ立てたからに違いないと思うのだが、愚痴と失望はまた別の機会に述べるとしよう。
(*1) 3D ゲームを快適に走らせたいという場合はそもそもノート PC は向いていないと説得します。
(*2) X100e, Edge が満員電車に耐えうるかは不明。個人的に、堅固性には疑問をもっている。
(*3) X100e では HDD 1つ交換するためにネジを7本もはずし、さらに底面パネルを全てはずさなければならないようだ。なんてこった。
(*4) DVD ドライブはネジをはずす必要すらなく、ラッチ1個を操作するだけで取り外し・取り付けできるほど簡単。
(*5) X100e や Edge のようにレイアウト崩れたものも出てきましたが、あれを薦めることはない。標準配列から大きく外れ、キーがいくつも省略されているあんなものは Thinkpad じゃない。