自浄能力の目覚め?
ウェブ進化論でいう総表現化社会が実現しつつある。その一端が今回の事件見えているのかもしれない。
個人が運営する Blog ネット証券Blog2 の調査により楽天証券が Wikipedia の自社に関するエントリを改竄していることが判明した。この不正な編集が行われたという事実は Wikipedia の「楽天証券」エントリに即座に反映されたほか、Technobahn 社、livedoor ファイナンスでも取り上げられている。8月31日付けの朝日新聞でも報道された。Internet Watch によると、楽天証券の社員個人の判断で行われたことでその社員に対しては社内処分が下されたとのこと。
削除されたのは、項目「沿革」の2005年11月16日に金融庁から業務改善命令が下されたという事実と、楽天証券が提供するリアルタイムトレーディングツール「マーケットスピード」についてのエントリで「特徴」をまとめた部分の一節だ。
この事件についてはネット上で盛んに議論が交わされている。ちょっと外れるが、ここでわたしの考えも述べておこうと思う。
マーケットスピードの使い勝手に関する記述は、まぁ・・・、削除を認めてもいい。どういった UI を使いやすいと感じるかは個人の感覚に大きく依存するからだ。明確な数値化した根拠を示すことは難しく、中立性を証明することも難しい。
しかし、「システム障害が多く、業務改善命令が下された」という事実を削除し、なかったことにするのは認めるわけにはいかない。金融庁および東京証券取引所から処罰を受けたというのは変えようのない事実である。これを「無かったことにする」というのは歴史の改竄に他ならない。
閑話休題。
わたしが今回の事件で注目したのは、楽天証券がもみ消しに奮闘したことではない。こういったことは今までに呆れるほど報道されている。
わたしが注目したこと。それは、個人が企業の不正を暴いたということだ。警察や行政機関など特別な権威を持った機関がではなかったことに驚いた。特別な権威を持った機関に頼りっきりになるのではなく、ひとりひとりが不正を見つけ正そうとすること。これこそが大昔のエントリで書いた自浄能力だ。
ネットの発展によって総表現化社会が実現しようとしているからこそ、芽生えてきたのだろう。ネットがない時代、企業対個人というのはあまりに分が悪い対図だった。ネットが未発達だった時代でも、よほど大きなサイトでない限りはほとんど注目を集めることはできなかった。集まったとしても、企業から圧力がかかってつぶされてしまうこともあった。結果として、個人の声は広まることなく消えてしまっていた。
しかし、総表現化社会が実現しつつあることで、この対図は徐々に変わりつつあると思う。Blog を使って個人でも簡単に情報を発信できるようになった。Trackback で情報の結びつきを作ることもできる。そして、ある情報が真実であるかを検証することも容易になった。情報と情報、人と人の結びつきも強くなったから、どこか1つを潰したからといって、個人の声が消えることはない。むしろ、そうした行為は別の個人によって日の光が当たる場所へと晒されるのだ。今回の事件のように。
わたしは自浄能力によって、企業や機関の不正が少なくなってよりよい社会になればな、と思う。もちろん、間違った方向へ進んでしまえば江戸時代の五人組 (帝国主義時代の隣組の方が適切かな?) のようになってしまうだろう。そうならないように我々一人ひとりが注意を払わなければならないが。
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