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2014.09.01

癌についてちょっとめんどくさい話

 日本テレビ「24時間テレビ」を見なくなって久しい。というか今でも毎年やっているのかすら知らないが、この間、ツイッターを覗いていると、『はなちゃんのみそ汁』というドラマが話題だったようだ。同題の書籍もあり、関連のブログもあるらしい。当のドラマはどうかというと、該当のテレビサイトによるとこういう話らしい。
 新聞記者・安武信吾は、音大学生・松永千恵と交際。信吾は千恵から乳がん打ち明けたが、信吾は千恵と生涯をともにすると決意。千恵のがんは悪性度が高く、再発の可能性あり。抗がん剤治療後、5年間再発の兆候がなければ完全寛解(テレビのサイトでは「完治」とあるが誤植だろう)。治療を続けながら出産、はなが産まれるが、はなが9か月のときに転移が判明。玄米に味噌汁という食事療法を始め、はなが引き継ぐ……という話らしい。
 つらい話だなと思う。
 ツイッターで見かけた話題は、この食事療法を含め代替医療への批判が多いようだった。私はドラマも見てないし、本も読んでないので、どのような治療生活をしていたか知らないのでなんとも言えないのだが、ツイッターでの話題を見ていると、癌は早期発見で標準治療をすればよいのに代替医療がそれを邪魔するという枠組みで語られているものが目立った。そういう考えもあるかもしれない。
 これについては、ちょっとめんどくさい話がある。めんどくさい話はブログでするもんじゃないのだが、ちょっとだけ触れておきたい。
 まず、癌の代替補完医療について知りたいのであれば、厚生労働省がん研究助成金(課題番号:17-14)を元に「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班と独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費(課題番号:21分指-8-④)を元に「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班がまとめた無料配布の『がんの補完代替医療ガイドブック【第3版】(2012年)』(参照PDF)を読むとよい。
 この話題は同冊子に尽きていると思われるので、読後は過剰に代替医療を忌避する必要もないだろう。
 この日本の研究のさらに元になったのが、米国国立衛生研究所(NIH)の代替補完医療部門(参照)で、米国で実際代替補完医療が普及していることに対して連邦がどうあるべきかということを示した。簡単にいうと、現状があるのだから連邦としても最低限の指針を示しましょうということ。
 以上で話は尽きているといえば尽きているのだが、ツイッターやネットでよく見かける早期発見と標準医療の話はさらにめんどくさい。そのめんどくさが代替医療の普及とも関連している面もありそうなのがさらにさらにめんどくさい。
 このめんどくさい問題に、NIHはすでに着手している。
 まだNIHとして公式の指針は出していないが、すでにその研究班が医学誌JAMAに昨年、関連の論文を出した。「Overdiagnosis and Overtreatment in Cancer: An Opportunity for Improvement」(参照)。表題を見てもわかるように、癌における過剰診断と過剰検査の問題を考慮するというものである。
 この論文は基本、厚生行政の問題で癌患者に直接は関係ないとも言えるのだが、実質、ニクソン時代から始まった米国の癌戦争の総括とも言える部分があり興味深い。「[書評]病の皇帝「がん」に挑む ― 人類4000年の苦闘(シッダールタ・ムカジー )」(参照)で紹介した同書とあわせて読むと味わい深いだろう。
 内容を簡単にまとめることは難しいが、論文掲載に実質まとめとして掲載されている表がなかでも含蓄深い。


 全体はIncidence(発生率)とMortality(死亡率)で分け、1970年から2010年までの40年間の厚生行政、医学・標準医療における癌対策の成果をまとめている。
 全体は3分類の例でなりなっていて、これが実質、NIHが構想する癌のタイプに関連しているのだが、わかりやすいのがExample2のColon(結腸癌)とcervical(子宮頚癌)である。端的に発生率が低下している。つまり、スクリーニング(検診)がかなり有効であったと言える。早期発見が重要だとも言えるだろう。ちょっと微妙な余談を言うと、よって子宮頚癌については厚生行政としてはワクチン効果と早期発見体制の全体をどう見るかという問題もある。
 それを見た上で見るとわかるのが、Example1のBreast(乳癌)とProstate(前立腺癌)とLung and bronchus(肺癌・気管支癌)で、発生率は低下していない。背後に検診・早期発見があってこの状態なので、当然現状での検診・早期発見の効果をどう見るかということが問題視されることになる。現実乳癌と前立腺癌の検診や早期発見については現状諸論がある。ただ、この表から見ると全体傾向としては、早期発見は言われるほどの効果はなく、標準治療も万全の効果があるとも言いがたい。
 Example3のThyroid(甲状腺癌)とMelanoma(黒色腫)については、ごらんのとおりかなり難しい状態にある。
 以上から一つ言えることは、癌でひとくくりはできないということ。また同じことだが、早期発見と標準治療の枠組みはその癌の種類に対応しないとそれほど意味はないだろうということである。
 ネットやツイッターの世界は、信じた正義からいろいろ他者をバッシングする傾向が見られるが、信じられる正義の根拠の評価は仔細に検討するとなかなか難しいことが多い。
 
 

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コメント

協力しあえばいいのにね。じゃなければ、そのうち中国に追い抜かれる。ついでに、玄米を食べるといいとしたら、白米より、乳酸菌の死骸がついているとか、腸内環境にいいってことじゃないかなぁ。ただ、消化に悪いまま食べるなら意味ないとも思うけど。とにかく、憎悪したってよくならないのに、ネットは憎悪が大好きらしくて、困るのー。憎悪なんかしていたら、病気になるんじゃないかなぁ、いつか重く。

投稿: | 2014.09.01 12:50

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