景気が低迷すると独身者は、減る
景気が低迷すると独身者は、減る。そんな、まさか。日本は景気の低迷が続いているが、独身者が減っていく現象なんて見られない、はず。そうこれは米国の話。とはいえ、ふと思ったのだが、日本でも人口減少部分を補正すると景気の低迷で独身者は減ると案外言えるかもしれない。
ネタ元はスレート「離婚で米国を救え」(参照)である。タイトルからわかるように景気低迷で独身者が減るのは、離婚が減るからというロジックだ。貧しいと離婚しづらいということ。米国だともっと露骨に、離婚で相手からカネがぶん取れないというのもある。だから未婚者が減るという話ではない。それだけで、なんかもうオチが見えてきたようだが、話を読んでみると二、三、へえと思うような部分もあった。余談だが、米国ではフィエスブックが原因で離婚が増えていると聞く。理由は不倫のチャンスが増えるから、というより、プライバシーだだ漏れで不倫相手ががっつりバレて訴訟がしやすいかららしい。話、戻して、と。
先日「米国の婚姻率減少の理由はなにか」(参照)というエントリを書いたが、米国と限らず先進国では婚姻率が長期的に減少している。そもそも結婚する人が少なくなっているというわけだ。理由はなぜかと考察する以前に、それはそういうものなんじゃないかという印象が強い。だが、スレートの話ではこんな理屈がついていた。
For most of us, a happy marriage is a more appealing prospect than a life alone. But the divorce-recession link appears to indicate that in many cases affluence is an opportunity to escape or avoid unhappy partnerships. Under the circumstances, we should not be surprised that the relatively affluent America of 2012 includes more single people than the poorer America of 1962.多くの人にとって幸福な結婚は独身より魅力があるものだが、離婚と景気後退の関連で見ると、豊かさはたいていの場合、不幸な夫婦関係から逃げる機会を示しているようだ。この関連からすると、貧しかった1962年の米国よりも多くの独身者が比較的豊かな2012年の米国にいるのは、驚くことでもない。
結婚はうまく行けば幸福なのだろうが、そう行かないなら解消したいものだということであり、豊かになればなるほど、解消したほうがいいと選択する人が増える。
そうだろうとは思うが、以前のエントリーを合わせてみると、結婚して幸せだという人は二人に一人くらいなもので、しかもそこに至るまでに紆余曲折ということもある。
日本の場合を思うと、「独身イコール未婚」、さらに言うと「独身者は結婚できない人」というのがなんとはなしに前提になってしまい、結婚解消して独身という話題はそれほどは見かけない。どうだろうか。
スレートの話ではその先に、景気が回復すれば、離婚者が増えて独身世帯が増え、世帯数も増加すると続く。
ちょっと意外だったのは、現在米国ではどうやら世帯数は人口増加に比して頭打ちになっているらしい。別の言い方をすれば、米国の場合、少し景気回復すれば世帯増加にともなって消費が活発になるとも見られている。日本ではちょっとありえない。
もう一点スレートの話で意外に思えたのは、貧困と独身を結びつける考え方は「保守派」とされていたことだ。日本だと「貧しいから独身が多い」「貧しいと結婚もできない」というのは保守の考え方とは言われてないように思えた。
It’s become commonplace in conservative rhetoric and writing to note that single life, especially for parents, is strongly associated with poverty and bad economic outcomes. This was the rationale for the Bush administration’s marriage promotion initiatives, it’s a frequent theme in David Brooks columns, and it’s a centerpiece of Charles Murray’s new book.独身生活者が(特に親の場合)貧困や経済状況に強く関連しているという指摘が保守派の言論によく見られるようになった。このことが、ブッシュ政権時代、結婚推進政策の理由でもあり、デイヴィッド・ブルックが頻繁に取り上げるテーマでもあり、チャールズ・マリーの新著の主張でもある。
「貧しいから結婚もできない、だから貧困を解消をせよ」という主張は、日本だと進歩派や左派によく見られる言論だが、考えてみると、それって保守派の考え方ではあるな。進歩派ならむしろ「貧困を解消し、離婚しやすい社会にせよ」だろうか。
米国の保守派的な主張が日本だとどうして左派の主張のように感じられるのだろうか。よくわからないが、日本の左派的な主張というのを冷静に取り出してみると国際的には保守派の主張になっていたというのは面白い現象ではある。
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コメント
確か日本で一番貧困な層は、離婚した子連れの女性ではなかったかと思いますが。左派の方って男性が多いのでしょうか?
投稿: Tammy | 2012.02.15 23:31