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2010.11.29

2010年沖縄県知事選挙雑感

 沖縄県知事選挙が終わった。私は当初から現職の仲井真弘多さんが勝つだろうと思い、どのくらい票差が出るかなと高を括っていたのだが、地元に詳しい人の話を聞くと存外に接戦とのことだった。私が沖縄で暮らしていたのは8年も前になるのでそろそろ地元の勘が働かなくなることもあり、冷静に見ると、なるほど前宜野湾市長の伊波洋一さんが勝つ目もないわけではないなと思いなおし、なかなか読めなかった。
 伊波さんが勝つと沖縄は大きな変化になるので、そうなる趨勢ならエントリーも起こすべきだが、概ねそうはならないだろうと思いつつ、昨日、当日となり、午前中にツイッターのほうには予想を書いた(参照)。


沖縄県知事選の予想: 仲井真さんの勝ち。理由:争点が明確ではなく状況的に関心が下がっているので浮動票が伊波さんに流れにくいから。

 結果からすると予想通りの展開であり、沖縄の今後についても特に考えを変更することはないだろうということになったが、実際昨晩の選挙速報を見ながら、いろいろ思うことはあった。
 まず私にしてみると自明なのだが、今後普天間飛行場の辺野古移設はどうなるかというと、どうにもならない。つまり、移設はできない。では、現状の普天間飛行場はどうなるかだが、筋立てて考えると固定化するだろう。
 その間に、2004年8月13日にあった沖国大米軍ヘリ墜落事件(参照)のような事件があれば、普天間飛行場移設問題は再度大きな騒ぎとなり、県外移設しかありえなくなる。
 実際のところ、本土の人は記憶が薄れているかもしれないが、現地の人にとってあの事件はかなり重くのし掛かっているので、現状でも県外移設しかないと思う人が多いだろう。こうした問題は、いずれ配備されるオスプレイの騒音や危険性についての統計的な資料を見せられてもなかなか納得がいくものではないし、その次元で揉み合う話でもない。
 本土側のメディアでは仲井真さんがかつて名護市辺野古の移設を容認していたことから、条件さえ揃えば移設容認になるだろうと推測したり、また民主党政権もそれに期待している向きもあるが、それはない。
 私は沖縄少女レイプ事件から8年間現地で暮らし、この動向を見てきたが、沖縄では移設先の市町村の受け入れがないかぎり、県側は動けない。仲井真さんがかつて移設容認であったのは、当時の名護市が条件付きであれ受け入れの意向を示していたからだ。それが政権交代後の民主党特に鳩山前首相によって崩されたので、ほぼ無理な事態となった。
 その具体的な経緯は2009年5月の琉球朝日放送「検証 動かぬ基地 vol.89 次期政権狙う党の基地政策は」(参照)がわかりやすいが、ここで仲井真知事は「名護市が受け入れてを言っておられる間にきちっと移した方が現実的だということで私は県内移設やむなし」としている。つまり、辺野古移設が可能であるなら、1月の名護市長選前までの決断が必要だった。
 しかしその後、1月の名護市長選の趨勢から9月の同市議選でも移設反対の市長派が勝ち、名護市議会は10月に日米合意の撤回を求める意見書を可決し、デッドロックとなった。
 今回の選挙では、どうも本土側で勘違いをしている人もいるようだが、宜野湾市は現普天間飛行場を抱える側なので、移設自体への反対派が優れて多いわけではない。
 今回の選挙結果(参照)を見ると、宜野湾市では伊波24010票、仲井真21421と伊波さんが優勢だがずばぬけて差が開いているわけでもなく、現地としては普天間飛行場による賃貸料が途絶えることを嫌う人脈も移転反対の意向をもっていたりする。
 対する名護市だが、仲井真15213票、伊波13040票と仲井真さんが優勢になっている。率直にいえば、自民党時代のように地味に対応していけば、鳩山前首相が滅茶苦茶にしたちゃぶ台を以前に戻す下地がないわけではない。
 他の地域での得票差を見ると、大票田の那覇市で仲井真76327票、伊波68108票と大差があり、続く沖縄市、うるま市、浦添市でも仲井真さんが優勢であり、これらを見てもわかるが沖縄の都市部市民としてはいわゆる本土の反基地・反安保という考えが優勢ということはない。もっとも、伊波さんもそう差を付けられたわけでもないことは、おそらく沖縄県民は自分たちにだけ米軍基地を押しつけられたという本土への反発感があるのではないか。

 私が現地で暮らして見て思ったり、名護市にも何度か行って思ったことだが、名護市は地域的に大きいためか、住民の多い西岸と辺野古のある東岸とではかなり風景も違う。むしろ、西側は交通のせいもあるがリゾート地の多い恩納村などとつながりがある。対する東側の辺野古はすでにキャンプ・ハンセンやキャンプ・シュワブを持つ宜野座村や金武町とのつながりが深い。
 東岸の選挙結果を見ると、宜野座村で仲井真1614票、伊波1260票、金武町で仲井真3228票、伊波1778票となっており、現米軍基地を抱える小さな市町村のほうが仲井真さんの支持が高い現実がある。この傾向は嘉手納町にもあり、仲井真3887票、伊波2628票となっている。
 観点を変えると、反基地・反安保という政治的なスローガンの問題より、具体的な地域経済としての県政への期待が高いとも言えるし、その部分でのフォローが明確に見えない点が伊波さんの敗因でもあっただだろう。
 この間、現地の様子を私が見ていて一番印象的だったのは、先のツイッターでも書いたが、選挙に対する関心が本土側からの温度差で見ると、比較的低いことだった。私は前回の知事選よりも得票率は伸びないだろうと見ていた。結果は3.7ポイント減少した(参照)。
 朝日新聞による事前の調査「伊波氏と仲井真氏が競る 沖縄知事選情勢調査」(参照)でもそれは窺えた。


 投票する際に何をいちばん重視するか、四つの選択肢から選んでもらった質問では、「経済の活性化」が49%で最も多く、次いで「基地問題」の36%が多かった。「経済の活性化」を最も重視する人のなかでは仲井真氏、「基地問題」を最も重視する人のなかでは伊波氏への支持が厚い年代別にみてみると、伊波氏への支持は50代と60代が多めで、仲井真氏への支持は70歳以上でやや厚めだ。
 職業別では、伊波氏は事務・技術職層と主婦層で、仲井真氏は製造・サービス従事者層で支持が厚い。
 地域別にみると、伊波氏は沖縄本島の中部で、仲井真氏は南部で支持を広げている。

 自分も8年ほど沖縄県民であったが、実際に沖縄での住民として日々の生活にのし掛かってくるのは本土と同じく、経済の問題である。基地問題も経済の問題に包括するような形で提出されないと住民の生活の課題としてはなかなか受容しづらい。石垣市や宮古市など先島における仲井真さん優位もそうした総合的な県政の期待の延長にあるだろう。
 今回の選挙結果を見て、一点だけ意外に思えたことがあった。幸福実現党公認の金城竜郎氏が13116票も得ていることだ。500票もいくかなと思っていた。
 沖縄における各種宗教の力は他のアジア地域と似ている傾向があり、創価学会が存外に強かったり、天理教の組織などもあったりするが、さすがに幸福実現党の浸透は少ないと見られる。なので、金城さんの得票は宗教の文脈より、本土ナショナリズム的な主張への賛同票と見てよいだろう。選挙の構図でいえば、これが仲井真さんの票を食ったことになるが、そうした意図からの立候補ではないだろう。
 本土ナショナリズム的な影響は候補者三氏にそれぞれ見られ、その分析は存外に難しいが、いずれにしても沖縄は沖縄の道を行くという点では大きな変化はないことは今回の県知事選挙でもはっきりした。
 つまり、そのことが沖縄というものの依然大きな意味でありつづける。


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コメント

 「落としどころ」としては、海兵隊の海外(グアム)移転と、集団的安全保障に関する憲法解釈を変えることと引き換えにしてはどうでしょう。
 小沢が民主党代表選挙の際に「海外移転」と「内閣法制局の廃止」を公約に掲げたことは、これを目指していたのではないかと想像するのですが…。

投稿: 南の原っぱ | 2010.11.29 13:41

仲井真335,708 イハ297,082

幸福実現党が1万3千も、とか書くなら他の候補の数字も
記事のどこかに入れような。

で基地とかだけど。一義的には鳩山と民主党がくそ最悪なんだけど、
沖縄がらみの主にメディアの論調がここんとこすっかり脅迫じみてきてるのが
もうなんかなんなのこいつら説教強盗?って感じでさ。
いいかげん、あいつら北朝鮮と同じとか、瀬戸際戦術やってるだろとか
教えてやった方がいいんじゃねえの?

投稿: 通りすがり | 2010.11.30 01:28

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