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2008.08.11

フィナンシャルタイムズ曰く、小泉だったら日本は成長できるのに

 フィナンシャルタイムズの日本関連の記事は最近では「フィナンシャル・タイムズ - goo ニュース」(参照)にオフィシャルな翻訳が出ることが多いので、4日付けの”Japan’s recession is not a recession”(参照)もそのうち出るんじゃないかと期待したが、今日11日になってもそんな気配はないし、4日付けの記事はなんとなくスルーされた感じなので、ほいじゃ、このブログで扱いますか。
 というか、一応普通に日本の知識人ならフィナンシャルタイムズの社説くらいは読んでいるんじゃないかと思うけど、この話題、他所では特に見当たらないようだが、どう? それほど話題になるようなネタじゃないということなのかもしれない。つまんない話題は当ブログのお得意だな。
 標題の”Japan’s recession is not a recession”は、「日本の景気後退なんて景気後退じゃないよ」ということ。


Fears that Japan’s government will soon be forced to declare a “technical recession” make a fine example of how useless the technical definition of a recession really is. Japan is suffering a slowdown but it has no house price bubble or credit crunch to deal with and its export markets in Asia are still growing. What the economy needs most is robust reforming policies from the government, not an ill-designed fiscal stimulus, or an excessive response to high inflation by the Bank of Japan.
(試訳)
日本政府が近々「自律的景気後退」宣言を出さざるをえないという恐怖は、自律的景気後退という定義がいかに無意味であるかということの好例になる。日本は景気減速に苦しんでいるものの、対処すべき住宅価格バブルも貸し渋りもなく、アジア向け輸出市場は依然成長している。経済で最も必要とされることは政府が力強い改革方針であって、下手な立案の財政出動や、高インフレに対する日銀の過剰反応ではない。

 簡単にいうと、日本の景気後退なんて世界的に見ればどんだけぇ~ということだよ、と。
 ほんとかねと日本人なら疑うわけで追い打ち。

The usual definition of a recession --- two consecutive quarters of negative growth --- matters little for two reasons. First, Japan’s notoriously volatile statistics recorded 4 per cent growth in the first quarter of 2008, so negative numbers in the second and third quarters are still compatible with a strong result for the year. Second, Japan’s stagnant population means its economy cannot grow as fast as others: recession is no worse for Japan than growth of below 1 per cent is for the US.
(試訳)
四半期が二期連続してマイナス成長なら景気後退だとする通常定義がそれほど重要なことでないのは二つの理由がある。第一に、日本は2008年の第一四半期に悪名高くも4%成長の急変記録を遂げているから、第二、第三四半期がマイナスであっても依然年間通して見れば強い結果になっている。第二に、日本の人口停滞は他国ほどの経済成長が不可能であることを意味している。つまり、日本の景気後退は米国の一パーセント成長よりひどいということはない。

 つうわけで、稼ぎ時に稼ぎやがって日本人何言ってんだというのが世界の視線、ということだろう。もともとそんなに稼げる国じゃないんだよ、これからは、と。
 ということでこの先フィナンシャルタイムズ社説はまあ日本のこれからの停滞は深刻といえば深刻だよねという同情はしている。
 じゃ、どうすりゃいいの?
 そんなこと口酸っぱく言っているだろ的フィナンシャルタイムズのお怒り感が微笑ましい。こんな感じ。

That is disappointing. Japan, once again, has failed to turn export-led recovery into sustainable growth powered by consumption at home. Compared with the US, UK or Spain, however, wrestling with inflation as well as a housing slump and a gummed-up financial system, Japan’s problems are minor. Large companies are still exporting and one month of bad trade data, for June, is no cause for panic.
(試訳)
がっかりしたのなんのって。日本はまたも輸出主導型回復から国内消費に裏打ちされた持続的経済成長への転換に失敗してしまった。とはいえ、住宅需要の落ち込みやぐちゃぐちゃの経済システムに加えインフレに格闘している米国、英国、スペインといった国に比べて、日本の問題なんてたいしたことはない。大半の企業は依然輸出しているし、6月の一か月ほど貿易統計がまずくても、パニックの理由にはならない。

 いや、うらやましいんじゃないか、世界の国からすると日本の経済は、こんちきしょー、というくらい。いや、こんな時にまた日銀やってくれるなよというフィナンシャルタイムズというか世界からのハラハラ感はけっこうマジっぽい。

The Bank of Japan should keep interest rates on hold. Headline inflation may be higher than it prefers but the slowdown already in progress should create spare capacity and it will take more than expensive gasoline to persuade Japanese consumers, accustomed to deflation for so long, that they should expect further price rises.
(試訳)
日銀は低金利を維持すべきだ。消費者物価指数は想定より高いかもしれないが、すでに進行中の減速によって余剰生産能力が生まれる。また、長期のデフレに慣れきった日本の消費者が物価上昇を期待できるように説得するには、ガソリン高騰以上のものが必要になる。

 すげぇ。いや、英語で読んだときは、ふふふふ、ブログのネタになるじゃじゃないか、おいしいなこの話とか思っていたのだが、訳してみると、けっこうすごいこと言ってる感が迫ってくる。ぶっちゃけインフレ期待を形成するにはガソリン高騰にくわえて、バイキンマン許さないぞアンパーンチとメロンパンナのメロメロパーンチ的な政策が必要になるということか。すげぇな。

Japan’s government, by contrast, could do much to support growth if it revived the structural reforms of Junichiro Koizumi, the former prime minister.
(試訳)
日本政府は、これに対して、経済成長支援に多くのことができる……もし前首相である小泉純一郎の構造改革が復活するならば。

 もちろん、そんな夢を世界が持っているわけはない。絶対にない。あるわけない。EUにも中国にも米国にも第三世界にも、まさか、日本が小泉時代に戻るなんて以下略。

Political deadlock makes that unlikely but what prime minister Yasuo Fukuda can do is resist a wasteful fiscal stimulus. Fuel subsidies for the fishing fleet, already announced, are a bad idea --- but a return to building roads to nowhere would be much worse.
(試訳)
もちろん政治的なデッドロック状態の日本ではありえない。しかし現首相の福田康夫君だって無駄な財政刺激に抵抗することはできる。すでに公約された漁船のための燃料補助金は悪い考えだが、それでも行き先のない道路建設に戻るというのはさらに、ひどすぎ。

 でも、そのひどすぎの道を辿るんじゃないか。
 人生塞翁が馬、日本塞翁が馬。西洋人や世界の人からは愚かに見える日本の政治経済がよい結果にならないとは限らない。

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コメント

東大マルクス脳は小泉が嫌いなんだよね。
小泉が持ち上げた朝青龍いじめも凄いでしょ?
この国は、100年前に宗教トラップに掛かって、国を滅ぼし(敗戦革命ね。敗戦革命と敗戦直後の日本の比較は、敗戦直後の左翼にとって凄く重要だったんだよね)
今、また滅びようとしているんだよね。
この日本国は、我々マルクス主義者のモノだ!
小泉のようなやつらには断じて渡さない!
これが東大マルクス脳たちの。心の叫び

投稿: PK | 2008.08.11 20:26

>一応普通に日本の知識人ならフィナンシャルタイムズの社説くらいは読んでいるんじゃないかと思うけど、

 知 識 人 風 情 が 読 む 訳 な い って意味一点で、何ら野ぐそと変わらんのですけど。日本って馬鹿ばっかなんでしょ。ぃやっほぅ!! 馬鹿最高!!

>それほど話題になるようなネタじゃないということなのかもしれない。つまんない話題は当ブログのお得意だな。

 今どきはモリンピックと野球とアニメ映画でてんてこ舞いだから経済なんかどーでもいいんでしょ。多分。そんで思い出した頃に不景気なんだよどーしよーとか言ってんだよ。んで政治が悪い指導力が足りないってガタガタ因縁付けて溜飲下げてハイお仕舞いなんじゃねーのかと。

 今どき地方首長選挙とかも理不尽なくらい投票率低いし、流石庶民の飽きパワーってスゲーよなぁ~としか言いようが無いんですね。2,3年前の選挙ブームは何だったんだ~!? みたいぬぁ~。あと今年はクソ暑いから。すべてにやる気がなくなってるだけちゃうんかって感じ。

 んで。最近何気に漫画雑誌読んでると零細系とかそのうち潰れそう系なのが、な~んとなく野ぐそ言動にバンドルしてる臭いんだけどね。そう勝手に勘違いする私がキチガイなだけなんだけどさ。そんなんじゃ駄目なんだっつーか。
 俺の方が逆に「ウン!!凄い!!」って言うくらいじゃないと意味無いんよ。昔隔離所でやってた「好きな文章丸写しの刑」に処されるくらいの勢いが欲しいっちゅーか。今、無いよね。勢いが。みんな疲れてんだろうね。きっと。秋まで待て系の~。

 あとJR福山駅周辺うろついてたら道行く若いおねえちゃんの足元とか尻回りが異様に露出してて良かったね。良かったよ。お尻の付け根のシワが見えるくらいが丁度いいよね。山ン中のボロ家で野良猫抱っこしてのんびりしてる場合じゃないよね。んだから弁当爺ちゃんも街出て道行く若いおねえちゃんのお尻見てると吉だと思ったよ。

 経済そんなもんでしょ。

投稿: 野ぐそ | 2008.08.12 00:02

 今日は資格のがっこ逝ってお勉強タイムだなーって思いつつ福山逝ったんだけどさ。いつもは四つ足で動いてんだけど流石に原油高の影響で活動資金の目減りが著しいもんだから、電車で逝ったんよ。経済的だなーとか思いつつ。んで逝ったらば、講義の予約取り忘れてて逝っても何も無かったんよね。アイターとか思ったんだけどしょーがないからそのまま俺馬鹿だなーとか思いつつ尾道まで帰ったんだけどさ。何気に寄ったコンビニでフィリピン人と店のおばちゃんがワーワー言ってておばちゃん弱ってるっぽかったんで、買ったばっかのジュースぐびぐび飲みながら「どしたん?」とか首突っ込んじゃったんよね。「あ、ごめんごめん。買ったばっかのジュース店内で飲んじゃ駄目じゃね。ごめんね」とかおばちゃんに愛想してたら、いつの間にやらバトンタッチで俺がフィリピン人の相手することになったんよね。

 あるぇ? なんだそりゃ。

 そしたらフィリピン人が九州の友達んちに小包送りたがってんだけど漢字書けなくて送り先が分かんねーからどーすんだよ的な。そんな感じで盛り下がってたんで「おばちゃん地図ない~?」とかって探したんだけどコンビニに全国とか他県の地図は置いてないんだよねー。使えネー。
 しょーがないから直ぐ近所の本屋まで走ってって地図買って調べりゃいーじゃん俺やるよーみたいな話に勝手になって、フィリピン人待たせて勝手に買いに逝ったんよ。
 そしたら間が悪いことにレジが不調でえれー渋滞でさ。10人くらい平気で待ってて、どっかのおっさんが「なんで待たすんじゃあ!!」とか軽くキレてんのよ。こりゃ並んでたらフィリピン人キレるぞ!? とか思ったんで地図の代金800円のところ1000円置いといて店員さんに事情説明して、後で清算するからちょっと地図頂戴、とか言って走って出たんよ。

 そんでコンビニ戻ったらフィリピン人待っててさ。地図見て住所確認して、何故だか俺が小包の送り先とか記帳して、これで届くでしょ、良かったね、とか言ってんの。んでフィリピン人に地図あげてんの。だって俺要らねーもん。

 まぁ、そんだけなんだけどさ。なんでそーなったんだか意味が分かりません。俺が二足歩行やったら何でか妙なトラブルが勝手に発生してよせばいいのに首突っ込んで、いつの間にやら手ぇ貸してんですけど。どーなっとんじゃと。

 いま暑いから。無駄に頭ぼーっとしちゃってるから。経済性もへったくれも関係無いくらいの勢いじゃないと、逆に金なんて動かんのじゃないですかね? って感じですわ。経済なんか知るかバーカって感じ。

投稿: 野ぐそ | 2008.08.12 00:26

サブプライム問題にしても、金融業者が手数料収入では食っていけなくなったことがもともとの大きな原因であるみたいです。
欧米の金融業者がまともな金融ができなくなって、自己勘定取引を増大させねばならなくなった話については、ピーター・ドラッカー先生の「ネクスト・ソサエティ」と増田悦佐氏の「日本文明・世界最強の秘密」にも詳しいのだけれど、なら、金融サービス業にイノベーションはないのか、というと、わたしは、このブログで時々言及してきたけれど、交通業者と小売流通業者の電子マネーは、金融のあり方に大きな変化を迫る1つの突破口になると思っています。
もちろん、電子マネーでの小売流通と個人向けサービスの小口決済は、経済全体で動いている金額全体から見ればわずかなパーセンテージしか占めていないはずだけれど、その影響は、今後甚大なものになっていくだろうと期待してます。
電子マネーの普及の著しい日本の経済が、世界で最も早く立ち直り、世界に経済回復の模範を示せることもあるのではないかと思っています。

投稿: 金融のイノベーション | 2008.08.12 06:17

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