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2024年11月 7日 (木)

低学歴者の逆襲(又はピケティ再訪)

今回のアメリカ大統領選結果を見て、改めてピケティが語っていた「どの国も右派は低学歴、左派は高学歴に移行してしまいました」という呪いの言葉の意味深さを噛み締めている人も多いのではないでしょうか。なおこの論文の趣旨はその後大著『資本とイデオロギー』に盛り込まれています。

以下、3年前のエントリの再掲です。

バラモン左翼と商売右翼への70年

Images_20210530130701 トマ・ピケティの「バラモン左翼」は、私が紹介したころはあまり人口に膾炙していませんでしたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-83eb.html(バラモン左翼@トマ・ピケティ)

21世紀の資本で日本でも売れっ子になったトマ・ピケティのひと月ほど前の論文のタイトルが「Brahmin Left vs Merchant Right」。「バラモン左翼対商人右翼」ということですが、この「バラモン左翼」というセリフがとても気に入りました。・・・ 

その後日本でもやたらにバズるようになり、その手の本も結構並んでいます。この言葉、対句になる「商売右翼」とセットなんですが、こちらはあんまりバズってないようです。

そのピケティが、今月3人の共著という形で、「Brahmin Left versus Merchant Right:Changing Political Cleavages in 21 Western Democracies, 1948-2020」という論文を公表しています。

https://wid.world/document/brahmin-left-versus-merchant-right-changing-political-cleavages-in-21-western-democracies-1948-2020-world-inequality-lab-wp-2021-15/

これ戦後70年間にわたるバラモン左翼の形成史を追ったものですが、事態を何よりも雄弁に物語ってくれるのが、表A10から表A16までの7枚のグラフです。

縦軸に所得をとり(上の方が高所得)、横軸に学歴をとると(右のほうが高学歴)、1950年代には右派政党は高学歴で高所得、左派政党は低学歴で低所得のところに集まっていました。

A10

ところがそれから10年間ごとにみていくと、あれ不思議、右派政党はだんだん左側の低学歴のほうに、左派政党はだんだん右側の高学歴のほうにシフトしていき、

A11

A12

A13

A14

A15A15
かくして、直近の2010年代には若干の例外を除き、どの国も右派は低学歴、左派は高学歴に移行してしまいました。

A16

かくして、ピケティ言うところのバラモン左翼対商売右翼という70年前とはがらりと変わった政治イデオロギーの舞台装置が出来上がったわけです。

 

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コメント

  とりあえず、今回の上院議員選でも、圧倒的支持のもと再選された((地元ヴァーモント州は強固な民主党の地盤だから、これは当然)、左派の闘将、おなじみバーニー・サンダース御大(83歳になられました)の総括を。
 「労働者層を見捨てた民主党が労働者層に見捨てられたという結果は、さほど大きな驚きではない」
 「民主党はまず白人の労働者層の支持を失い、それからさらにラティーノ(中南米系)と黒人の労働者層の支持を失った」
 「いつしか民主党を支配するようになった富裕層や大企業、高給取りのコンサルタントたちは、この惨憺たる選挙結果から真の教訓を学ぶことができるだろうか。何千万人ものアメリカ人が感じている痛みや政治的な疎外感が、彼らに理解できるだろうか」
 「大きな経済的・政治的権力を持つ少数独裁体制に挑むには何が必要か、彼らに分かるだろうか。おそらく無理だろう」
 「草の根の民主主義や経済的公正について懸念を抱いている人々は、今後数週間から数カ月の間にきわめて真剣に政治的議論を行っていく必要がある」

(「ハリス大敗は当然の帰結」──米左派のバーニー・サンダース上院議員が吠える)(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/11/523199_1.php

 客観的には、民主党側の政策の方が、イーロン・マスク等の特権階級に支援された、共和党=トランプ陣営の政策よりも、ずっと労働者階級寄りではある(でなきゃ、バーニーがあんなに全力で支援する筈もない)のですが、インフレーション下で多くの労働者の賃金が目減りしている現状では、そのことを有権者に浸透させるには、著しく不徹底だった、ということなのでしょう。

 さらに付け加えれば、ネタニヤフ(イスラエル首相)のやりたい放題にストップをかけられなかった事は、ムスリムの有権者(激戦州の一つ、ミシガン州に多い)はもちろんのこと、本来は選挙の実働部隊となる筈の、左派寄りの大学生等(将来の民主党の幹部の予備軍)の熱意を大幅に失わせることになり、これも結構「効いた」のだろうと思います。

 アメリカ大統領選挙の投票傾向について性別、学歴で別れたとの記事が共同に出ています。

 https://nordot.app/1226854202171900863

 「白人で学位がない層は65%がトランプ氏を支持。学位を持つ白人層は54%がハリス氏を支持した。学位がある白人女性に限ると、ハリス氏への支持は59%に広がった。」

いま、低学歴低収入の人にとって、事業で成功して裕福になったり宝くじが当たってお金持ちになったりというのは想像できる世界でしょうけど、アイビーリーグを卒業するなんていうのはものすごく遠い世界なんでしょうね。そういう意味でリベラル高学歴というのは、貴族階級として大衆社会から完全に分離されているかもしれません。

>いま、低学歴低収入の人にとって、事業で成功して裕福になったり宝くじが当たってお金持ちになったりというのは想像できる世界でしょうけど、アイビーリーグを卒業するなんていうのはものすごく遠い世界なんでしょうね。

 アイビーリーグはОBの子弟を優遇していて、それが批判にさらされてもいますね。
 マイケル・サンデル教授はアイビーリーグの入試試験の一部をくじ引きにしたらいいと思う、と著書で書いてました。
 くじ引きによる選抜の方が大学授業料を無料にするよりも格差社会の是正に役立つかもしれないですね。

 アメリカの民主党がバラモン左翼の牙城になったのは、アメリカでは選挙活動で公的支援を辞退して他いくつかの条件をクリアできれば多額の政治献金を自由に企業や個人から受ける事が出来る、と言うのも理由の一つでしょう。

 だからピケティ先生は「資本とイデオロギー」で政治献金を禁止して代わりに一人一人の国民にクーポンを配布し、それを国民一人一人が自分の好みの政党の支援に充てる事が出来るようにした方が良い、と提案していますね。

ハリス陣営にガガ、ビヨンセら「大金持ち」続々→敗北
あれは逆効果でしたね
https://www.daily.co.jp/gossip/2024/11/10/0018325718.shtml

金持ちの中でも庶民の味方的な例外的な金持ちだけが支持しています、という戦略を取るべきでしたね。
セレブの多くはそのようなポジションを取りたがるものですが、実際のところ、どうなの?、って話で。
むしろ、トランプの方に、そのようなイメージを与えるオウンゴール。

 セレブはブルース・スプリングスティーンぐらいにとどめておけば良かったかも。
 ブルースは「ボーン・イン・ザ・USA」をロナルド・レーガン大統領に愛国ソングと間違えられてキャンペーンに利用されそうになって以来、ずっと反共和党、民主党支持でしたから。
 彼の歌に込められたメッセージは一貫してもいますしね。

「組合員もトランプ氏支持に? ハリス氏の巻き返しは?」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241031/k10014625341000.html
 
これは投票一週間前に掲載された記事ですが、バラモン左翼が日常生活から乖離した美しき絵空事に現を抜かしていたら、(貧困)ビジネス右翼に支持層を切り崩されたという記事に書かれたような結末になりましたね。

> トランプ氏が、2025年1月20日をもって“アルバイト先”のマクドナルドを退職する
> 選挙活動中、トランプ氏は自らフライドポテトを調理したり、ドライブスルーの窓口で接客をするなど、マクドナルドの現場で働く姿を披露
https://encount.press/archives/704159/

「セレブに囲まれてる」「マクドナルドでバイトしてる」だったらね。
Z世代の大学生同士がインスタ映えを競っているわけじゃあるまいし。

> 労働者階級の多くは、富裕層は炭素クレジットやその他の『美徳シグナリング』と呼ばれる手段を通じて、いうなればグリーンの贖宥状(免罪符)を買う行為によって、自分たちがどれだけ環境保護に熱心かを誇示する姿を見せつけられている
https://www.rodo.co.jp/column/177681/

大学生達は、そういうののお仲間に入りたいから、高額の授業料負担を
引き受けているのでしょうけどね。そんな大学を、何で、税金で支える
必要があるのか?

 地元アメリカの左翼誌の電子版が日本でも読めて、たいへん便利ですが、
 新興のJacobin(Bernie Sanders Is Right to Be Incensed at the Democrats
:https://jacobin.com/2024/11/bernie-sanders-harris-campaign-workers)も、
伝統のある、The Nation(Bernie Sanders Is Right: Democrats Have Abandoned the Working Class)
(https://www.thenation.com/article/politics/bernie-sanders-democrats-working-class/)も、
続々とバーニーへの支持を表明しています。
 さて、これからどうなる?

 米国の政府効率化省のトップに任命されたイーロン・マスク氏がこんなことを言っているそうです。

 「新設される米国の「政府効率化省」のトップに就く米実業家のイーロン・マスク氏は14日、X(旧ツイッター)上で同省の人材募集を開始した。報酬はゼロで、週80時間以上働くことなどを条件としている。」読売新聞オンラインより
 https://www.yomiuri.co.jp/world/20241115-OYT1T50151/

 マスクさんは実はキューバ革命を実行したフィデル・カストロ、チェ・ゲバラと同類の革命家であらせられたのですね(^^;
 ゲバラが唱えた「新しい人間」と言うのは主義のためならブラック労働も厭うてはならぬ!と言う事ですよね(^^;
 だからマスクさんもゲバラと同類なのだろうと思ったわけです。

 トランプさん、貴方が大嫌いなカストロやゲバラと実は同類であらせられる素敵な革命家マスクさんに支援される貴方は何と幸運で素敵な方なのでしょう、と皮肉を言っておきます(^^;

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