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2014年8月14日 (木)

管理職が職種じゃない国だから・・・

前々から問題として論じられていたのですが、最近になって急に女性の管理職登用問題が重要政策課題として上ってきているようです。

マスコミでもネット上でも、いちいち挙げませんが山のような論考やら批評やらが汗牛充棟ですが、にもかかわらず一番肝心なことが語られていないようです。

それは、女性管理職問題だけでなく、日本の人事労務問題の全て、とりわけ中高年問題に根っこにある問題ですが、

日本では、管理職が職種じゃない

ということです。

41mvhocvlこの問題は、近著『日本の雇用と中高年』でも詳しく取り上げたのですが、あまり理解されているようではありません。

・・・ここで、宿題にしておいた「管理職」の問題に触れておきましょう。問題の焦点は、なぜ中高年労働者の問題と管理職の問題が重なって現れるのか?ということです。
 というと、そんなのは当たり前ではないか、と思われる方が多いでしょう。若いうちは平社員として働き、年をとるにつれてだんだんと昇進して、中高年になると管理職になるというのが普通の職業人生というものだろう、と。しかし、日本以外のジョブ型労働社会の諸国では、そんなことは全然当たり前でもなければ普通でもありません。むしろ、管理職は若いうちから管理職であり、非管理職は中高年になってもずっと非管理職というのが普通です。つまり、管理職の存在形態がまるで違うのです。日本における管理職をめぐるさまざまな労働問題の根源は、つまるところここに由来します。

・・・「管理的職業従事者」とは、「事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制など、経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事するもの」と定義されています。これは、専門的・技術的職業従事者や事務従事者、販売従事者等々と、まったく同じ水準で存在する職種概念ですね。
 そして、職業安定法第5条の7に定める適格紹介の原則とは、この職種単位での労働能力に着目した求人と求職者との結合の適格さを求めるものです。私は旋盤操作という「仕事」のできる人です、私は経理事務という「仕事」のできる人です、私は法務という「仕事」のできる人です、というレッテルをぶら下げているのとまったく同じ水準で、私は管理という「仕事」のできる人ですというレッテルをぶら下げているのが管理的職業従事者、つまり管理職のはずなのです。

・・・ところが、日本でそんなことをいえば笑い話になります。おそらく読者もどこかで耳にしたことがあると思いますが、大企業の部長経験者が面接に来て、「あなたは何ができますか?」と聞かれて「部長ならできます」と答えた・・・という小咄です。
 これのどこが笑い話なのか?と欧米人なら聞くでしょう。ビジネススクールを出て管理職として働いてきた人が「部長ならできます」というのは、メディカルスクールを出て医師として働いてきた人が「医者ならできます」というのと、ロースクールを出て弁護士として働いてきた人が「法務ならできます」というのと、本質的に変わりはないはずです。しかし、日本では変わりがあるのです。なぜなら、日本の労働社会では、管理職というのはいかなる意味でも職種ではないからです。
 では日本型雇用システムにおいて管理職とは何なのか?その答えは読者の方が重々ご承知ですよね。少なくとも、上の笑い話をみておかしさがわかった人は知っています。それは、長年平社員として一生懸命働いてきた人にご褒美として与えられる処遇であり、一種の社内身分なのです。だから、その会社を離れた後で、面接で「部長ならできます」というのが笑い話になるわけです。
 そして、この感覚が21世紀になってもほとんど変わっていないことは、ごく最近の2010年になっても『7割は課長にさえなれません』(城繁幸、PHP新書)などというタイトルの本が売れていることからも証明されます。少なくともこの本の読者たちにとって、課長というのが職種ではなく社内身分であることはあまりにも自明のことなのでしょう。

欧米社会だってかつては大変女性差別的だったのです。女のくせに医者だと?とか、女のくせに科学者だと?とか、女のくせに管理職だと?とか。女はアシスタントしてればいいんだ、と。

そういう差別を是正するためにどうしたらいいか。そういう(男性向けとみられていた)職種に女性を養成して送り込もうというやりかたです。女だから看護学校へ、じゃなくて、医学部へ行って医者にしようということですね。女性の科学者を育てよう(リケジョ促進)的な発想は欧米でもあります。

管理職も同じこと。女性管理職を増やすには、はじめからエグゼンプトやカードルを目指す女性を増やさないといけない。ビジネススクールやグランゼコールに行く女性を増やさないといけない。

そういうジョブ型社会を前提とした、男性ジョブへの女性の進出促進というのが、欧米の女性政策なわけです。ざっくりいうと。日本でも一部ジョブ型労働市場のある分野ではそういうこともいわれたりしてますね。

でも、労働社会の大部分を占めるメンバーシップ型の世界では、そういう管理職という職種に女性を送り込む政策というのが上手く効かない。なぜなら、トートロジー的ですが、管理職が職種じゃないから。

山のように産出されるこの問題に関する文書のどれも、この一番肝心なことをスルーしたまま、ああでもないこうでもないと議論しているように見えるのが不思議です。

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hamachan先生のブログに、「女性の管理職登用問題が昨今議論されているが、 そもそも管理職がジョブでないことが議論されていない」という趣旨の記事がありました。 おっしゃるとおり!と思いました。もっとこの点の議論を深めるべきと思います。 本気で「女性管理職3割」... [続きを読む]

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