上林陽治『非正規公務員』
上林陽治『非正規公務員』(日本評論社)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.nippyo.co.jp/book/5992.html
「官製ワーキングプア」の温床ともいえる臨時・非常勤の公務員は60万人をこえる。彼らの雇用と処遇の改善策を提起する。
本書のメリットは、下の目次を一瞥すれば分かるように、
第一部 「常勤」と「非常勤」の差異を問う──非正規公務員の現状
第1章 「常勤」と「非常勤」の差異を問う──増加する非正規公務員
第2章 「図書館」で働く人たちの非正規化の実態と問題点
第3章 消費生活相談員──その実情
第4章 保育サービスを支える「常勤的非常勤保育士」
第5章 非正規化が進む自治体の現実の可視化
第二部 非正規公務員に係る法適用関係と裁判例の系譜
第6章 非正規公務員に係る法適用関係
第7章 非正規公務員の雇止めをめぐる裁判例の系譜
第8章 非正規公務員の処遇等をめぐる裁判例の系譜と傾向
第9章 「非常勤」「常勤」の区分要素と給与条例主義
第10章 義務付け訴訟の可能性
第三部 基幹化する非正規公務員と処遇改善の実践
第11章 基幹化する図書館の非正規職員
第12章 非正規公務員に手当を支給する条例の定め
第13章 非正規公務員への実質的な「昇給」制度の導入
終 章 課題解決のための三つの規制
実態論と法解釈論と法政策論とがうまく組み合わさっているところでしょう。
労働法と行政法の谷間にはまりこみ、それゆえそのどちらからもあまり真剣に取りあげられてこなかったこの分野を考えるに当たっては、まず第1部で彼女・彼ら非常勤職員たちの現実の姿をしっかり見た上で、次に第2部で、公務員法が、「任用」という特別なロジックを使うことによって、非正規公務員の権利を奪うメカニズムとなっていることを丁寧に明らかにし、そして第3部で徐々にでも進められる改善の動きを紹介するという本書の構成がうまくはまっています。
最後の終章で、拙著の一節もちらりと顔を出しています。
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