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2011年8月 9日 (火)

現行法でも公務員は整理解雇できます(追記あり)

二言目には、民間労働者に適用される労働法上はあり得ないようなことを「民間では」と口走る民間出羽の守が氾濫する今日この頃ですが、こういうニュースもあるようです。

http://www.47news.jp/CN/201108/CN2011080801001248.html(公務員の「整理解雇」検討 橋下維新、3議会に提出へ)

>橋下徹大阪府知事が代表を務める「大阪維新の会」が、府と大阪、堺両市の職員を対象に免職や降任など分限処分の基準を定めた条例案を提出する方針を固め、一定の条件下で余剰人員を「整理解雇」できる規定を盛り込む方向で検討していることが8日、維新の会幹部への取材で分かった。

 早ければ月内にも堺市議会を皮切りに府議会、大阪市議会を含めた3議会へ相次いで提出する構え。人件費削減など行政スリム化を容易に実行するのが目的とみられるが、「身分保障」が前提となってきた公務員制度を抜本的に見直す内容で、職員組合や教育界などが反発するのは必至だ

いや、日本国の民法や労働基準法がジョブ型雇用契約を前提に作られているのと同様、日本国の国家公務員法や地方公務員法も、GHQ時代にフーバーが導入したジョブ型システムが根幹をなしています。実際の運用がメンバーシップ型になっているだけで、法律の建前はどこをどう読んでも立派なジョブ型なのですよ。

ですから、「オレ様の言うことをきかねえからクビだ」というような無理無体なことに対しては、きちんと身分保障がされていますが、当該ジョブがなくなったというのであれば、当然その公務員を免職(=解雇)できることが定められています。

(分限及び懲戒の基準)
第27条 すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
2 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。

(降任、免職、休職等)
第28条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる
1.勤務実績が良くない場合
2.心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
3.前2号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合
4.職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合

記事にあるように余剰人員を整理解雇できるということであれば、それは既に地方公務員法に明記されています。ジョブ型法制の当然の論理です。

もし、知事様の仰ることにくちごたえをするような生意気な職員はクビにするのや、という趣旨であるのならば、それが「その職に必要な適格性を欠く」ことを証明する必要があるとは思いますが。

(追記)

やっぱり、整理解雇とは別に、云うこと聞かないヤツはクビってのも入っているようです。

http://www.asahi.com/politics/update/0809/OSK201108090083.html(君が代不斉唱で免職も 維新の会「職員条例案」全容判明)

>大阪府の橋下徹知事が代表を務める大阪維新の会が府議会などに提出する「職員基本条例案」の全容が判明した。教員を対象に同内容の条例も作成。政治主導で地方公務員の人事評価や懲戒・分限処分の基準を明文化する全国初の条例案で、公務員の「管理」を徹底する狙いがある。

 6月に条例化された君が代の起立斉唱などの職務命令に3回違反した教職員を免職とする規定のほか、組織再編で過剰になった職員を分限免職にできるリストラ規定なども盛り込んでいる。維新の会は9月の府議会、大阪・堺両市議会に条例案を提出する方針。

 条例案は本文と詳細な処分規定を定めた別表で構成。本文では条例制定の趣旨を「硬直化した公務員制度を再構築する」とし、「職員に関する最高規範」と位置づけている

ふむ、阿久根市長さんの時も申し上げたように、国家と地方自治体はいかなる意味でも対等などではありませんから、条例は法律に反することは出来ませんから、その条例でクビにして、それが地方公務員法上適法であるかどうかを、国家の裁判所で判断してもらうといいと思います。

あっ、そういえば「独立」するんでしたっけ・・・。

(どうでもいい寝言ですが、こういう手合いにころりと逝かれるのが、市民自治とか地方分権とか麗しげな言葉が大好きな市民派なんだよな。あんたらを守るのは地方主権とやらを踏みにじることの出来る国家権力だけなんだよ)

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コメント

基本的に、公務員の身分保障は「政治的中立性や法令に基づく行政を担保するためのもの」であって、「雇用を絶対的に保証するもの」ではないですからねぇ。

制度論で言えば「戦前の官吏制度 ≠ 戦後の公務員制度」であっても、現実の制度運用の問題として、官吏制度からの流れを受け継いで見える部分もありますから、誤解されるのもやむを得ない部分があるのかも知れませんけど。

国家公務員だと、国公法第78条第4号ですね。発動された事案としては、”社保庁の解体に伴う全職員の分限免職”が直近でしょうか?

とはいえ、所謂身分保障のうち「政治的中立性や法令に基づく行政を担保する」という権能(側面)は、戦前の高等文官の登用を巡るアレコレ(とりわけ政党政治期のアレコレ)を考えると、やはり維持される必要があると思います。

いかなる制度でも、”振り子の振れすぎ(程度)の問題”は残ると思いますけど。

法律で地方公務員の整理解雇が定められていても
現行法では整理解雇は不可能だと思います
ただしこの「法」には成文法のみならず判例法も含みます

裁判所が分限免職に判例法上確立されている整理解雇4要件を適用するまたは地方公務員法28条を整理解雇4要件法理の趣旨にそって解釈するものと仮定すれば
法28条1項4号の「予算の減少」というのは増税または地方債を発行して回避できるものを含まないと裁判所は解釈しますし
法28条1項4号の「職制若しくは定数の改廃」は職員の配転新規職員採用停止を行わないでしたものを含まないと裁判所は解釈します
裁判所が整理解雇4要件法理を適用ないし法解釈の指針とする限り法28条の分限免職規定は「事実上」死文化していると言っていいでしょう

「折角」地方公務員法が分限免職規定を設けているのに判例法が「邪魔」をしているのだから
判例法を排除するために条例で法28条の解釈規定で整理解雇4要件法理を緩めた解釈規定を設けるべきでしょう
条例は判例法を破りますから
もっとも条例が憲法法律に抵触しないことが前提ですが

元の記事では「分限処分の「基準」を定めた条例案」とあります(「根拠」ではない)から
維新の会も私の提案と似たような考えで条例づくりをしているのでしょう多分

懲戒処分の基準作りもしていましたか

俺の言うこと(合法な職務命令のこと)に従わない職員には懲戒処分を科すことは地方公務員法29条1項2号で認められていますね

残る問題は懲戒処分が比例原則を満たすかどうか
比例原則に引っ掛からないように条例で基準づくりをしているのでしょう
もっとも比例原則違反の有無は最終的には裁判所で判断することです

「君が代の起立斉唱などの職務命令に3回違反した教職員を免職とする」ことが合法か違法かは興味がありますね
君が代斉唱の職務命令に違反した職員に対する懲戒処分の最高裁判例はすでにありますが免職にまですれば初の事例になるでしょう

>あいうえお様
>「君が代の起立斉唱などの職務命令に3回違反した教職員を免職とする」ことが合法か違法か

僭越な疑問ですが、貴殿の仰る「判例法」では、職務命令違反の教職員を免職とすることは「過剰な処分」ということになるでしょうから(先日の最高裁判決でも「嬌声を許容しない」とする旨の反対意見がありました)、免職処分まで盛り込んだ条例は無効と判断される可能性が高いのではありませんか?

遡れば、
>法律で地方公務員の整理解雇が定められていても現行法では整理解雇は不可能だと思います

法文上は認められており、実際に執行された例もある措置を「実質的に不可能」となさる見解も、些か腑に落ちないのです。
そもそも、公務員に対し「整理解雇」に当たる措置が許されるか否か?を巡って司法判断が下された事例というのが、思い当たらないものでして…ひとえに私の無学ゆえでしょうが。

社会保険庁がなくなったときの分限免職が訴訟になったのは、昨夏確認したのですが、1年以上経つのに、結果が出たという話をききません。国労のときもそう感じたのですが、復職判決を70歳で勝ち取っても値打ちが下がると思います。実際のところ、どういう進行なのか、ご教示いただければ幸いです。
民間出羽の守としては、社長が職員に就業規則を、「職員に関する最高規範」と説明するのはありだと思うのですが、公務員は地方公務員法とかあるので、この条例を最高規範とするのには違和感を感じます。少なくとも最後の一段はhamachan先生も同意してくださるのでは。

というより、地方自治体の条例は、企業で言えば就業規則に当たるということです。

一私企業の就業規則が法律に違反できないのとまったく同じように、一地方自治体の条令も法律に違反できません。

そこのところが分からないのが、地方主権厨という人々なんでしょうね。

ついでに、まったく余計なことを言えば、大阪府の儀式で日本国家の国旗国歌を崇めさせるということは、大阪府如きの知事如きは国家から見れば出先機関の長に過ぎないということわりを、府の職員に拳々服膺させようと趣旨なのでしょうかね。

だったら、その趣旨に添った行動をすることが望まれますな。

さっそくのご回答あrがとうございます。大阪府庁にも法務課や議会事務局調査課というのがあるのですが、内閣法制局や議院法制局みたいには機能していないんでしょうかね。

要は、整理解雇四要件中の「解雇回避努力義務の履行」を、これまでと比べてうんとゆるくやるよ、ということで、職員団体との交渉の際に、民意を反映した条例があると説得力が出てくるというぐらいの話でしょう。
そのような条例の利活用、自治体現場のいろんな場面でみられるところで、条例ポピュリズムとでも言えるのかもしれませんね。
そして、これ、意外と効果的なので、その志はともかくとして、戦略的には悪くない。

http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20120730#p2

それを公務員削減に血道を上げる
みんなの党と維新の会(とその顧問の元財務官僚)に
いってあげたらいいんじゃないでしょうか

>務員を直接増やす公的雇用の方が直接に雇用を増加させる

「ちなみに公共事業が雇用をダイレクトに増やせるから、という反論があるが、それも上記のエガートソン論文などでリジェクトされる。また(金融政策との協調が行われれば)公共事業だけではなく、減税も効果があるし、また公務員を直接増やす公的雇用の方が直接に雇用を増加させることができる。特に日本は韓国と並び異様に公的雇用のウェイトが少ない国(それだけ公共事業に傾斜しすぎている)ので、公的雇用を有用なサービス(医療、福祉、環境、治安、防衛など)で増やすことは重要だろう。この点については拙著『雇用大崩壊』でも強調した。」

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