【1】頼母との離別
会津城内――。
「彼岸獅子」(ひがんじし)の一行とともに入城した山川大蔵(役・玉山鉄二)が、軍議に顔を出している。
梶原平馬(役・池内博之)が、大蔵に「軍事総督」になるよう指示を出し、新政府軍に乗っ取られた小田山(おだやま)奪還を訴える。
松平容保(かたもり)(役・綾野剛)も小田山奪還を命ずる。
大蔵は、西郷頼母(役・西田敏行)が軍議の席にいないことに気づく。
佐川官兵衛(役・中村獅童)が、恭順を唱えた頼母のことを非難する。
川崎八重(役・綾瀬はるか)は、鉄砲の手入れをしながら、弾が残り少ないことに気づく。
そこへ秋月悌次郎(役・北村有起哉)が顔を出し、頼母が城から追われることになったと報せてくる。
頼母が長男の吉十郎(役・関ファイト)を連れて鶴ヶ城を去ろうとしている。秋月とともに追う八重が声をかける。
「お逃げになんのがし! ご家老様はお城を捨てんのがし!」
「人にはそれぞれ道があんだ。なじょしても譲れぬ道があんだ。臆病者とそしられようと、まっすぐにしか進めぬ、わしの道があんだ。この西郷頼母にも、たわまぬ節がある」
「たわまぬ節」――頼母の妻の千恵(役・宮崎美子)の辞世の一節、と秋月は八重に教える。
さらに秋月は「恭順=降参」と八重に教える。ひそかに親切。
恭順を唱えることが理解できない八重に、秋月が「恭順を唱えることのほうがむしろ勇気がいる」と諭す。
頼母の生き方の「毀誉褒貶」を表現するのはむずかしいですね。
会津を離れた頼母は、このあと、榎本武揚(たけあき)(役・山口馬木也)らと箱館に向かうことになる。
城内では、容保が「頼母……生きよ」とつぶやいている。
【2】娘子軍の帰城
城内の女性たちは、玄米を焚き、握り飯を作っている。
大蔵の妻の登勢(役・白羽ゆり)が、中野こう(役・中村久美)たち娘子(じょうし)軍がもどってきたことを報せてくる。
こうが、照姫(役・稲森いずみ)に、長女の竹子(役・黒木メイサ)の討死を報告。照姫は、かつて竹子が詠んだ歌「もののふの……」を諳(そらん)じ、こうが恐縮する。
竹子の死を知って愕然とする八重を、時尾(役・貫地谷しほり)が心配そうな顔つきで見つめている。
こうは、竹子が「城にもどったら八重さんに鉄砲を習おう」と言っていたと本人に伝える。
城内での八重の活躍を知らないこうは、城にもどるなり八重に「なぜ娘子軍に加わらなかったのです」と詰問した話は、これまでの流れから番組では採用しなかったようだ。
佐久(役・風吹ジュン)が、竹子はじめ、藩士とその家族の死を悼(いた)むと、八重は「戦だから前に進まないといけない」と自分に言い聞かせる。
砲弾が飛んできて、衝撃音が響きわたる。
八重は、川崎尚之助(しょうのけ)(役・長谷川博己)が大砲隊を指揮している場所まで走る。
新政府軍は、上野戦争で用いたアームストロング砲で小田山から砲撃してきている。
八重が火薬の量を増やすよう提案し、尚之助が四斤砲で発射させる。反動で大砲ごとひっくり返るが、砲弾はなんとか小田山まで届く。
様子を見に来た権八(役・松重豊)が、北出丸で鉄砲隊を指揮した八重を褒め、城内の者の恐怖心を静めるよう命じる。しぶしぶ持ち場にもどる八重の背中を見送り、権八が「ここは……危なすぎんだ」とつぶやく。娘を危ない目に遭わせたくない親心か。
梶原と大蔵が容保を連れ、見張り台から降りたところで、大砲の弾が飛んでくる。
八重は、濡らした布団に桶の水をかけて砲弾にかぶせ、火消しをする。
はじめに火消し処理をしたのは中野こうのはず。こうは、容保、喜徳(のぶのり)に呼ばれ、褒美を賜ったのだ。
だが、砲術師範の家に生まれた八重が考案したとするほうが道理に合っているか……。
八重が火消しをするのを目撃した容保に、梶原と大蔵が、八重のことを「川崎尚之助の妻」「山本覚馬(役・西島秀俊)の妹」と教える。ん~、「山本権八の娘」とも言ってほしかった。
【3】娘思う父
城内の主立った女性たちに砲弾の火消しの指導をしている八重に、容保から呼び出しがかかる。
容保が「先ほどは、見事であった」と八重に声をかけ、不発弾の仕組みを教えるよう言われる。
容保が家臣に不発弾を持ってこさせるが、たしか八重が持参したはず。
八重は不発弾を分解し、信管、火薬、鉄片について解説する。
容保も八重に「覚馬の妹か。よく似ている」と言う。権八、気の毒。
八重は、子供のころに「追鳥狩(おいとりがり)」を見学中、木の上から落ち、頼母に叱責されたが、容保が「卑怯ではない」「武士らしく名乗って出た」と咎めなかった思い出話をする。
回想シーンで、また子役の鈴木梨央ちゃんが登場。
容保に「女も子どもも、皆わが家臣。ともに力を尽くせよ」と声をかけられた八重は、はっと思いつく。
「皆で、できることがごぜいます!」
女の子たちが、城内に撃ち込まれた敵の銃弾を拾い、男の子、老人たちがその銃弾を鋳鍋(いなべ)で溶かし、弾型(たまがた)に入れてゲベール銑の弾(鉛弾)を鋳造。おとなの女性たちは、八重の指導で、火薬と鉛弾を合わせたパトロン(弾薬包)を作ることになり、山川艶(役・秋吉久美子)が率先して動く。
権八と佐久が中庭に面した回り廊下から八重を見ている。
「八重が鉄砲を学んだごどは、間違いではながったがもしんねえ」
権八が、はじめて八重の努力と成長を認める。権八、ちょっと反省モード。
八重と目が合うと、権八はうなずいて見せるが、八重はきょとん。
第28回のタイトル「自慢の娘」は、ここから。
【4】官兵衛の失態
慶応4年(1868)8月28日夜――。
軍議の結果、夜明け前に精鋭1000人を率いて出撃し、米沢藩とつなぎをとり、兵糧、火薬を搬入することになる。
指揮をとるのは佐川官兵衛。
兵たちが、出陣祝いの盃を傾けている。
「君と後会(こうかい)せむこと いづれの処とか知らむ 我が為に今朝(こんてき)一盃を尽せ」――これは唐の白居易(はっきょい)の詩。
官兵衛は別室に呼ばれ、容保から刀を拝領する。
「官兵衛、かならずもどれよ」
官兵衛は、かつて江戸で人を斬り殺し、切腹のところを、容保の情けで一命を救われた過去がある。
「かならず囲みを破り、米沢への道を開きまする。それができねえときは、生きては城にもどらぬ覚悟」
官兵衛のセリフはこれまで以上に長く、中村獅童のアップがつづく。まるで死亡フラグが立っているようだ。
容保が官兵衛に直接酒を注いでやる。
連戦の疲れか、官兵衛は容保の前で眠りこけてしまう。容保が「休ませてやれ」と言うから、朝まで誰も起こさなかったのではないか?
翌朝、朝日がのぼってから、官兵衛は部下に起こされる。
「しまった! 寝過ごした!」
もっと早く起こしてやればいいのに。
官兵衛、痛恨の失態。官兵衛は全軍を出陣させるが、好機を逸した会津軍は苦戦。外堀西から長命寺にかけて、多くの部下を失うことになってしまう。
【5】岩倉具視と山本覚馬
京都では、大垣屋清八(役・松方弘樹)が、太政官を務める岩倉具視(役・小堺一機)に追いすがり、覚馬の書いた『管見(かんけん)』を渡す。
床で眠りつづけている山本覚馬を、太政官を務める岩倉具視(役・小堺一機)が訪ねてくる。手には『管見』。
「これを書いた男に、会うてみとうなって来たんやが」
岩倉は、『管見』に、三権分立、殖産興業、学校設立……新しい国の仕組みが書いてあること、それを書いたのが会津の一藩士であることに驚いているが、佐久間象山(しょうざん)しかり、横井小楠(しょうなん)しかり、みな、地方の逸材ではないか。
朦朧とした覚馬が、踵(きびす)を返そうとする岩倉の足をつかむ。
「会津から兵を引いてくだされ。会津を助けてくだされ」
「仙台も米沢も降伏や。残るのは会津一藩だけ。奥羽全土を従えたときに初めて、堂々たる新国家が生まれるのや。――死んだらいかん。いずれまた会いまひょ」
長命寺の戦いから20日近く経ち、苦しい籠城がつづくなか、八重は姪みね(役・池田沙弥花)たちに凧あげを教えている。
「敵に見せつけでやんべ。城内は意気盛ん。凧揚げする余裕もあんのだど!」
日向(ひなた)ユキ(役・剛力彩芽)は、農家の納屋で寝込んでいる祖母を看病している。そこへ凧が揚がっているという弟、妹たちの声が聞こえてくる。凧を見て、ユキは「八重姉さまだ」と微笑み、「城は、まだまだだいじょうぶだ」とうなずき、八重の名を大声で叫び、手を振る。手を振っても八重には見えないし、かえって新政府軍に見つかるとまずいと思いますが。
そして、9月14日。新政府軍による総攻撃が始まる。
飛んできた砲弾に駆け寄った登勢が濡れ布団をかぶせる。火が消えたと思った次の瞬間、砲弾が爆発。登勢が吹き飛ぶ。
砲撃で屋根が崩れ落ち、天守閣が見えている。
ここで、第28回は幕を閉じる。
【まとめ】
先週、今週と、子役の鈴木梨央ちゃんが登場していますね。視聴率を気にしているのでしょうか。梨央ちゃん、ドラマ『Woman』でも光っていますね。
来週はいよいよ鶴ヶ城開城。「会津戦争が終わったら、『八重の桜』は、もういいや」と思わず、八重=綾瀬はるかを見守りつづけましょう。しかし、ほんとうに新島襄(役・オダギリジョー)が無視されつづけているな。
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