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AmlethMachina's Headoverheels
ゴシック・ノワールを標榜するAmlethMachinaによる音楽を中心にした備忘録。
雑誌「Numero HOMME(仏版)」について
しばらく前の話になるが、雑誌「Numero HOMME(仏版)」No.15を購入する。

グレッグ・キャデル(Greg Kadel)の手になる「Nomad」というタイトルのスタイリングのページがネオ・ゴシックでパンキッシュな気分全開で無茶苦茶かっこいい。

いつも思うのだが、海外のこの手の雑誌ってスタイリングのアイデアの総量が絶対的に多い。紙面の提示しているもの、表現しているものがスタイリングの本質なのだということを感じるのだ。逆に日本の雑誌の場合、スタイリングのアイデアではなく、ベタなコーディネイトの提案であってまんまハウ・トウなのだという気がしてならない。いや、それ以前にカタログ的な誌面構成だったりするのだ。要はそれに従っていれば誰からも非難されない、シーズン毎のコードを事細かに業界ぐるみで指図しているだけなのだ。

しかし、他人からイチイチ指図されるのは鬱陶しいだけだ。

別にこの点を以って内外の誌面について優劣を云々しようとは思わない。単に自分が見た範囲の印象にすぎないのかもしれない。日本の雑誌は便利で情報をチェックするためだけなら効率はいい。一見、同じようなものを扱っているにも関わらず市場の需要や性質が根本的に違うのではないかと感じるのだ。

今回の「Numero HOMME(仏版)」は必ずしも好きなタイプのページばかりが誌面を占めているわけではない。しかし、面白いしかっちょいいと思った。それだけのことだ。

ゴルチェの「Aow tou dou Zat」について
ゴルチェのCD「Aow tou dou Zat」が偶然見つかり、安価で購入。

ゴルチェが自身のインタビューをカットアップしたと思しき音源を名だたるリミクサーがよってたかってリミックスした代物。音的にはかっちょいいのだが、同一音源のリミックスを13トラックも延々聴かされるのは少々つらいものがある。リリース当時購入したCDをソッコー売っ払っちまったのは、単にオリジナル音源のボリュームが少なすぎたためだった。同時期にコム・デ・ギャルソンのショー用音源がリリースされていたが、こちらの方が音楽的なバラエティやアイデアの総量が圧倒的だったので、なおさら薄っぺらな印象を持ったのかもしれない。今聴くと全然OKなのは、当時の自分の方が聴くものに対して切迫感があったのかもしれない。

「Aow tou dou Zat」のクリップはYouTubeにアップされていたりする。かなり特殊な音源なので、あえて他人に薦める代物ではない。とりあえず、好きだということだけ言明しておきたい。


生き延びるものが一番かわいいーなぜ美人ばかりが得をするのかー

ナンシー・エトコフ著「なぜ美人ばかりが得をするのか」(草思社)の話である。

はっきり言ってこの邦題はヒドすぎる。原題は「適者生存(Survivalof the fittest)」をモジって「Survival of the prettiest」。「美しいものは生き残る」あるいは「適美生存」、はっきり「生き延びるものが一番かわいい」とした方がいいと思う。

いわゆる通俗的な脳本とは一線を画す非常に学術的な内容であり、進化心理学、行動心理学的なコンテクストから美人(美男)であるということがどういうことなのかから始まり社会学的なコンテクストにまで展開する。

この中では「生存に有利な形質を選択する行為が美しい、魅力的だと感じることの本質なのだ」という種の保存に忠実な身も蓋もない理論が展開される。一切観念的な美については議論されることはない、潔いほど。ここでは赤ちゃんでさえ無制限に可愛いとは定義されない。生き残る可能性の高い赤ちゃんを可愛いとする心理的メカニズムが展開される。

「美人だから得をする」ということではなく「生き残る可能性の高い特徴を魅力的、美しいと感じるメカニズム」についての言及なのだ。だから、「生物学的な生存競争に直接さらされることのない現在、社会的コンテクストにおいて如何なる要素が生存に有利だと判断されるのか」ということが後半で展開されていく。この著作の前半では生物学的美が敢然として存在するかのように見える。しかし、このメカニズムを字義通り解釈すると全ての環境に適応可能な遺伝形質が存在しないように観念的な理想美は否定される。単に社会を含む生存環境に最も適応する形質や象徴を魅力的だと感じるという以上の意味はない。

軽く読めるし、馬鹿バラエティ番組、何十本分のネタが詰まっており、読む人の抽斗に応じていくらでも展開できそうな内容だと思う。またタンク・ガールやらココ・シャネル、アレクサンダー・マックイーン、ガリアーノ、アントワープ6への言及ぶりがツボを押さえていて個人的にはポイント高いぞ。