六日の菖蒲

転落途上国・日本の、消えることのない差別の根源は……。

2023年05月22日

　このところ、坐骨神経痛が痛み出し、あるクリニックのリハビリに通っている。バス停までのわずかな歩く距離がつらいし、バスの中では立っているほうが多い。やむなく行き帰りにタクシーを使うことになる。　先日の木曜日も、いつも通りタクシーを呼び、クリニックまで送ってもらったのだが、その運ちゃんの暴言にはいささか驚いた。いや、私に対してではないのだが……。　クリニックまでの道の途中で…

シーサーブログ障害発生のお知らせとお詫び

2022年01月14日

　昨日（午後9時前後）より当ブログがつながらない状態が続いております。当ブログにお越しくださいましたお客様には大変ご迷惑をおかけしておりますことをお詫びいたします。　この状態は、シーサーブログ本部の通信障害によるものとのことですが、現在のところ、復旧の見通しは立っておりません。いずれにしても、シーサーのユーザーである当ブログにおいては、残念ながらなすすべがなく、ひたすら回復を待ち続けるしかあ…

ブログ巻頭『今日の1行』　2021下半期蔵出し大公開　part1

2021年10月26日

早いもので、今年ももう6分の5の日数(ひかず)を消化し、当ブログ「“社説”『今日の1行』大公開」も通算で第3回目となります。2021年7月～9月の分です。日々起こる政治ネタ、社会ネタは尽きることはありません。むしろ、あまりにも多すぎて、すべてに目を通すことも不可能ですが、できるだけ日本に関係するネタを中心に、当ブログのコンセプトに沿うようなものを集め、毎日わずか1行に濃縮して発信・記録し…

当ブログ巻頭『今日の1行』　2021上半期掲載分蔵出し一挙大公開！　part2

2021年08月19日

当ブログ巻頭『今日の1行』の2021年上半期分一挙大公開の第2回目です。『今日の1行』は、新聞でいえば社説にあたる、いわば当ブログの「顔」です。また、管理人ayameが新聞やネットなどの媒体から得た情報に対する感想、または政治・社会への主張を、1日1行に凝縮して記録・発信するものであり、個人的なDairyでもありますので、必ずしも読者の同調を求めるものではありません。もちろん、異…

当ブログ巻頭『今日の1行』　2021年上半期掲載分蔵出し一挙大公開！

2021年08月19日

当ブログ巻頭の『今日の1行』は、新聞でいえば「社説」。日々の出来事の中から注目ニュースを選び、1日1行に凝縮してコメントを発信しています。かつてのようにブログ記事にするほどの体力もないし、ツイッターでつぶやいて大海に埋没したくもないし……といったところで、自社ブログでの“威厳ある発信”を続けています。ことし元旦から始めて8か月目ですが、ここらで上半期分を2回に分けて「蔵出し一挙大公開」といき…

あまりにも高圧的、挑戦的なトランプと、それにヘラヘラとすり寄る無自覚・低脳のアベシンゾ。

2019年05月29日

＜海上自衛隊護衛艦「かが」の甲板から格納庫へ、巨大エレベーターで降りる安倍・トランプ夫妻ら＝毎日新聞＞もう顔を見るのも吐き気を催すトランプが、25日来日した。その見飽きたトランプを、選りによって国賓として迎えたナルヒトとアベシンゾ。そして、トランプがゴルフに出かけるときの一挙手一投足までを「報道」と称しては映像に捉えて垂れ流し、アベにすり寄るマスコミの卑屈さ。それだけでも腹立…

拝啓　院長殿。以て他山の石とすべし……と心得よ

2019年04月20日

【医療・介護】【高齢者・年金・老人社会】

　このところ、すっかり暖かくなって気温も急上昇。今日は妻とそろって脳神経外科を受診した。　私は、もう10数年前になるが脳梗塞を患っている。それが現役をリタイアした原因だが、それを境に禁煙し、必死のリハビリに務めた。その甲斐があってか、3か月ほどで日常生活にはあまり不自由はしなくなったが、元の会社に復帰することはできなかった。　そこでリハビリを兼ね、軽い作業を伴う仕事に転職したが、1年半後…

これもアベに忖度？……どこかつながりがあるような「強姦罪無罪判決」東京新聞より

2019年04月17日

レイプ裁判　なぜ無罪？　実娘と性交→「支配従属を認めず」（東京新聞2019年04月16日朝刊「こちら特報部」）　性犯罪をめぐる裁判で無罪判決が相次ぐ。父親が19歳の娘をレイプして準強制性交罪に問われた名古屋地裁岡崎支部のケースも、外国人男性がコンビニで見かけた女性に乱暴し、強制性交致傷罪に問われた事件も、被害者の抵抗のありようが指摘され無罪になった。性犯罪規定が変わった201…

「レーダー照射」問題の応酬のなか、日韓外交当局者が協議【大法院強制徴用判決後初】

2018年12月27日

金杉憲治・外務省アジア大洋州局長と韓国のキム・ヨンギル外交部東北アジア局長は24日、ソウル市内の外交部庁舎内で局長級会談を開き、日韓間の強制徴用賠償判決や「韓国海軍が日本の海上自衛隊機にレーダー照射をした」とされる件で協議を行った。ハンギョレ新聞(電子版)が伝えた記事を末尾に転載する。徴用工問題で日本側は例によって、「徴用工賠償問題は65年日韓協定で解決済み」との姿勢を崩さず、「この問題…

「徴用工判決」で見せた韓国司法の立憲主義と、独りよがりがすっかり身についてしまった安倍政権

2018年11月01日

日本の植民地統治時代に日本などで強制的に働かされた元徴用工の故ヨ・ウンテクさんら韓国人4人が、新日鉄住金（旧新日本製鉄）を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、韓国大法院（最高裁）の判決が30日、原告が勝訴することで終結した。これにより大法院が新日鉄住金側の上告を棄却し、1人当たり1億ウォン（約1千万円）を支払うよう命じた2013年のソウル高裁判決が確定した。（ソウルの中心部にある龍山駅前…

プロフィール

主な自生地・・・・・・・・・・: 東日本界隈。

年齢・・・・・・・: とうに忘れちゃいました。

生まれた日・・・・: ずいぶんと昔のことです。

性別・・・・・・: もう意味がなくなりました。

職業・・: 呑んで喰って文句垂れて屁コイて寝るのが仕事。

ブログ住所: http://6days-ayame.seesaa.net/

: 　いらっしゃいませ。
　当ブログ「六日の菖蒲」の無給管理人をしておりますayameと言います。世間知らずではありますが、決して怪しい者ではありません。
　お酒を少々嗜みながら世を過ごしております。ほとんど眠っているのですが、時々ごくまれに目覚めては、ぶつくさと文句を垂れ流す癖があります。
　やや時勢に乗り遅れたブログですので、ご来場されてもあまり役には立たないかも知れません。最近は《4行読後寸評》が中心で、個人的な読書備忘録としての記録版と化しています。
　それでも「来る者拒まず、去る者追わず」で続けています。借金の申し込み以外なら何でも受け付けています。よろしかったら時々お立ち寄りください。いっしょに一杯飲りませんか？…。
　ええ、ええ、世間に酒の肴なんてクサるほどありますから。ただし、酒は持ち寄りですよ。

　内緒で管理人に御用がある方は、下の「読者メッセージを送る」をクリックしてください。返信の必要な方は、お名前（ハンドルネーム可）、メール宛先をご記入ください。送信、返信ともにすべての内容はブログ上に表示されません。秘密厳守の上、リプライします（返信には数日かかる場合があります）。
　楽しいメッセージをお待ちしております。

: 読者メッセージを送る

　お世話になっているリンク集　　（五十音順）

4行読後寸評《ルポ・ノンフィクション》

: （画像クリック。アフィリエイト不参加です。
「4行読後寸評」へのご意見、ご感想などは「読者メッセージ」へ。）

『小国主義　――日本の近代を読み直す―』
岩倉使節団から説き起こし、明治政府が辿った「大国主義（＝帝国主義）」の道程に対し、植木枝盛、中江兆民、石橋湛山らの「小国主義」は現日本国憲法に結実したと説き、押し付け憲法論を退ける。
★★★★★

田中彰（著）1999岩波文庫 『ウクライナ危機の実相と日露関係』
ウクライナ戦争開戦以前の緊迫するウクライナ、それによって流動する日露関係と領土問題など、東アジアへ及ぼす影響とは？「プーチン＝悪魔」論とは異なった視点から日本の立ち位置を論じる良書。
★★★★★

鳩山友紀夫・下斗米伸夫・木村三浩・高野孟ほか（著）2015友愛ブックレット 『鉄路の果てに』
著者の父が抑留されたシベリア・イルクーツク。敗戦から連行、帰還までの足跡を、同じシベリア鉄道で辿るルポ。日露戦争やシベリア出兵まで遡り、日本が犯した愚行を見つめる目がその真実を捉えた。
★★★★★

清水潔（著）2020マガジンハウス（単行本） 『松平家の謎江戸時代と徳川家のルーツ』
徳川幕府開闢の祖のルーツを、三河国の人松平親氏にまで遡り、遊行僧徳阿弥（親氏）と父の長阿弥（有親）だったとする伝説（『朝野旧聞裒蒿』）を検証。また家康の六男松平忠輝の生涯も興味深い。
★★★★★

「歴史読本」編集部（編）2010新人物往来社文庫 『東電OL殺人事件』
「小堕落」だの「大堕落」だの、本書は事件とは無関係な修飾語が多すぎる。最後まで読んでも、泰子がなぜ売春をするようになったのか、よく分からない。東電内部の調査に切り込み不足で迂遠感が。
★★★☆☆

佐野眞一（著）2003新潮文庫 『明智光秀の生涯苦境と逆転の知将』
長良川合戦後の放浪旅、濃姫との血縁関係、義昭との出会いと別離、比叡山焼き討ちでの役割、明智軍団の創設、“主殺し”の黒幕と光秀の野望、光秀・天海の同一人物説など謎多い光秀を俎上に載せ解説。
★★★★☆

外川淳（著）2019三笠書房文庫 『鉄砲隊と騎馬軍団　真説・長篠合戦』
アジア侵略に向かう明治陸軍がイデオロギー操作として日本史を歪曲。その一つとして本書は「馬防柵・火縄銃三千丁・三段撃ちが武田騎馬隊を撃滅」の<長篠=戦術革命>論が成り立たないことを論証。
★★★★★

鈴木眞哉（著）2003洋泉社新書 『山川世界史小辞典』
半世紀以上前の受験勉強に使った他社の辞典に比べ、内容の進歩・充実ぶりはさすが（と、思う）。歴史記述は著者の史観がもっともよく現われるもの。Wikiに辟易していたが、これで気分が爽快。
★★★★★

世界史小辞典編集委員会（編）2004山川出版社（単行本） 『記者ハンドブック　第13版新聞用字用語集』
国語辞典の細かい字を読むのが辛くなったので購入。出版年次は2016年（13版）とやや古いが名詞の漢字・平仮名表記の仕方や送り仮名のつけ方などを調べるのに重宝。文筆業でない限り十分役立つ。
★★★★☆

2016共同通信社（新書） 『関東大震災　「朝鮮人虐殺」の真実』
先行する調査・研究書が積み重ねた事実を、検証なしで頭から無視する悪書。大震災の朝鮮人虐殺を妄想のみで否定する「怪談話」作家が一人悦に入る。「ノンフィクション」とする出版社の良識を疑う。
☆☆☆☆☆（★0）

工藤美代子（著）2009産経新聞出版（単行本） 『追及・北海道警「裏金」疑惑』
警察が組織的に税金を私物化する“反社”性、その糾明に及び腰の知事や地方議会を追及する調査報道の姿勢は高く評価したい。だが最も大事なのは、それを報道機関内部にも向けていく“双方向性”なのだ。
★★★★★

北海道新聞取材班（編）2004講談社文庫 『非米同盟』
アメリカの中道派（国務省）は、イラク占領に「意図的」に失敗。代わりに他の大国に覇権を拡大させることで「非米同盟」の強化を助長、「国際協調体制」を作ろうとしていると説くが、論理が不明確。
★★☆☆☆

田中宇（著）2004文春新書 『米中新冷戦の幕開け』
WWⅡ以降、戦争に負け続けている米国を擁護し、代弁しているうちに著者らの主張も同化。国際関係で最も注意すべき隘路に嵌った観念論には、新鮮さも具体性もない。垂れ流される「反中デジャブ」。
★☆☆☆☆

小原凡司（著）桒原響子（著）2019東洋経済新報社（単行本） 『米中貿易戦争の裏側東アジアの地殻変動を読み解く』
ファーウェイと5G周波数関連の論考が本書の読みどころ。だが、著者の中国大陸での戦後体験による反共や反韓の主観が強すぎ対中包囲網に前のめり。特定の情報源を偏重しがちな著者の姿勢に危うさ。
★★☆☆☆

遠藤誉（著）2019毎日新聞出版（単行本） 『約束してくれないか、父さん：希望、苦難、そして決意の日々』
何度読むことを放棄したか知れない、そんな本だ。自分の息子の生死には最高水準の医療を施しながら、イラクの人々の死には感情を動かさない。ウクライナではデマをまき散らしプーチンを罵るのみ。
★☆☆☆☆

ジョー・バイデンー（著）長尾莉紗、五十嵐加奈子（訳）2021早川書房（単行本） 『プーチンvs.バイデンーウクライナ戦争の危機手遅れになる前に』
本書に3代続いた外交官の縮小再生産を見る。“家業”外交をなぞる余り、米国の対ロ制覇＝一極覇権の企図に鈍感。中ロの接近に異常な警戒感を現しBRICSなどのパラダイムチェンジの動きに保守的。
★★★☆☆

東郷和彦（著）2022K&Kプレス（単行本） 『コールダー・ウォードル覇権を崩壊させるプーチンの資源戦略』
米国の一極覇権を支えてきたペトロダラーシステムが音を立てて崩れつつある。その象徴がウクライナ危機。中東産油国の7割を抑えたプーチンが、米・NATO連合と対峙する歴史的背景を探る必読の書。
★★★★★

マリン・カツサ（著）渡辺惣樹（訳）2022草思社文庫 『体育会系日本を蝕む病』
軽妙な筆致で語る「日本文明批評」。日本人の内向き志向の原点を、著者は幼稚園から始まる「体育会系」教育に見る。その到達点である社会の病弊（自殺・過労死など）に我々はもっと早く気づくべき。
★★★★★

サンドラ・ヘフェリン（著）2020光文社新書 『ニッポン原人　日本人と日本文化のナゾにせまる』
からだ、言葉、稲作文化、中国古文献など多面的に“ニッポン原人”のルーツを探る。著者の結論は江南地方と有明海沿岸の交通を起点とした南方基層の意欲作。それだけに誤字・校正ミスの多発が残念。
★★★★☆

三上喜孝（著）1993同文書院（単行本） 『原・日本人の謎―その起源を求めて』
稲作の祭祀に欠かせない銅鐸は“一世風靡”のあと、突如として土中に放棄された。著者はその謎を解く鍵を、銅製武器を持つ北方系渡来人の襲来にみる。彼らは河内王朝となって君臨、巨大古墳を築く。
★★★★★

邦光史郎（著）1989祥伝社黄金文庫 『謎の七支刀―5世紀の東アジアと日本』
東洋史学の泰斗が中国、朝鮮、倭国の古代国際関係を背景に、七支刀銘文の謎解きに挑む労作。だが、説得力ある論を前に、保守派ぞろいの国史学会は何故か完黙。その非進歩性こそが“現代倭国の謎”だ。
★★★★★

宮崎市定（著）1992中公文庫 『歴代天皇事典』
どんな民族や個人も、祖先を遡れば「万世一系」である。ことさらにそれを天皇にだけ当て嵌めて自説を張る著者解説の陳腐さはともかく、歴代天皇の名前を順序立てて整理するにはお手軽な「事典」だ。
★★★☆☆

高森明勅（著）2006PHP文庫 『海の史劇』
砲弾の命中と共に舞い上がる鉄片と肉体の破片…。本書は凄まじいまでの日露海戦の実態を余すことなく描写しつつ、戦争の詳細を知らされずに肉親の喪失と重税にあえぐ両国民の姿も見事に描いた大作。
★★★★★

吉村昭（著）1981新潮文庫 『殺人犯はそこにいる　隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』
足利冤罪事件の決め手となったDNA型鑑定に鋭く切り込んだ名著。同時にそれは、拉致被害者・横田めぐみさんの遺骨鑑定にも通底する。共通項は”科学”を標榜する科警研と日本のメディアのズサンさだ。
★★★★★

清水潔（著）2016新潮文庫 『人間使い捨て国家』
先進諸国の中でも他に類を見ない労働者使い捨て国家・日本。低賃金、長時間労働を強いられ、日々“過労死、過労うつ”の危機に直面しながらも、労働の生産性が上がらない真の原因は何なのかを問う。
★★★★★

明石順平（著）2019角川新書 『こども労働法　未来の自分を守るために知っておきたいワークルール』
高校生の孫との会話から、現代の子供に社会のワークルールの知識が乏しいことに唖然。労災・過労死事件などを専門とする気鋭の弁護士二人が、中学生でも理解できるよう最低限のルールについて啓発。
★★★★★

山下敏正、笠置裕亮（共著）2022日本法令（単行本） 『貝が語る縄文海進――南関東、＋2度の世界＜増補版＞』
横浜三殿台遺跡へは何度も訪れた。高台の竪穴住居群址を数メートル下ると貝塚があり、その辺りは海だったことがわかる。本書は南関東の貝の化石の年代測定から縄文海進のありようを探った学術良書。
★★★★☆

松島義明（著）2012有隣新書 『過労死―その仕事、命より大切ですか』
働き方が流動化しつつある現代日本の労働事情の中で、長時間労働による11人の自死・過労死のケースを綿密に取材。しかし著者（朝日新聞記者）が足元の専業新聞配達界から故意に目を逸らした印象も。
★★★☆☆

竹内昇平（著）2019ポプラ社 『地球温暖化スキャンダルー2009年秋クライメートゲート事件の激震』
地表気温観測点やデータ管理など、「科学」であるべきIPCCの裏側で跋扈した権威主義、官僚主義。日本のメディアではほとんど触れられなかったクライメート事件の実態を、流出メールとともに暴く。
★★★★★

スティーブン・モシャー、トマス・フラー（著）渡辺正（訳）2010日本評論社（単行本） 『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』
ここまで日本（人）を相対化できるジャーナリストは少ない。自国に忖度することのない二人の言説は心の琴線を強く共振させる。彼らをマスメディアから放逐しようとする動きに、日本の危機がある。
★★★★★

青木理(著)安田浩一(著)2021講談社新書 『闇の流れ　矢野絢也メモ』
”統一教会”騒ぎのいま読み返すと、やはり学会は異様なカルト集団だった。党はその政治代表部に過ぎず、逐一池田大作に忖度し、指示を仰ぐ。政権との裏工作、野党分断の仕掛け人・矢野の問わず語り。
★★☆☆☆

矢野絢也（著）2008講談社文庫 『地球温暖化説はSF小説だったーその驚くべき実態』
科学とは無縁な陰謀集団が唱える“CO2温暖化説”の裏側にあるものは？難解な物理の知識はさて置き、IPCCが言っていることが、過去の実際の気候変動とは一致していないことぐらいは誰にでも分る。
★★★★★

広瀬隆（著）2020八月書館ブックレット 『二十世紀最大の謀略―ケネディ暗殺の真実』
ケネディ大統領銃撃時の警護は？と思い、改めて本書を紐解いた。早朝8時からのパレード準備に備え前夜はアルコール禁止令が出ていたが、最側近SPたちは朝3時まで飲み歩き酩酊状態の警護だった！
★★★★★

落合信彦（著）2013小学館文庫 『アゼルバイジャンー文明が交錯する「火の国」』
旧ソ連邦15共和国の一つ、アゼルバイジャンの通史。コンパクトにまとまっているが、アリエフ大統領父子の“権威主義”と、“ナゴルノ・カラバフ紛争”は詳しい。石油・天然ガス産出国にも悩みは多い。
★★★★★

広瀬陽子（著）2016ユーラシア文庫（ブックレット） 『ロシア変動の構図―エリツィンからプーチンへ』
本書主論文「第9章」（A・ミグラニャン2000年執筆）は、時代性もありロシアの自信喪失と欧米への過大評価が過ぎる。NATOの東方拡大などに視点を移せば2022年現在の論調は大きく変わるはずだ。
★★★☆☆

下斗米伸夫（編）2001法政大学出版会（単行本） 『ウクライナ2.0－地政学・通貨・ロビイスト』
前作『ウクライナ・ゲート』に続き、2014クーデターに始まる現在のウロ戦争の原因を、「米国主導の先制攻撃」と明確に指摘し、欧米のイスラム諸国への暴力的対応も広く批判する日本で唯一の書。
★★★★★

塩原俊彦（著）2015社会評論社（単行本） 『マイダン革命はなぜ起こったか－ロシアとEUのはざまで－』
タイトルにある「ロシアとEUのはざまでマイダン革命はなぜ起こったか」の説明は最後まで見当たらない。ネオナチ・アゾフ大隊を美化し、右翼民族主義者バンデラに心を寄せる著者のプロパガンダ本。
★☆☆☆☆

岡部芳彦（著）2016ドニエプル出版（ブックレット） 『元国連大量破壊兵器査察官スコット・リッターの証言　イラク戦争――ブッシュ政権が隠したい真実』
「正義」も「国際法」もなかった米国のイラク侵略を、科学的な調査で立証したスコット・リッター。彼は今、ウロ戦争でのヒステリックなロシア非難を排し、法医学的見地からの客観的な検証を訴える。
★★★★★

リバーズピット／ウィリアム、リッター／スコット（著）星川淳（訳）2002合同出版（単行本） 『オホーツク諜報船』
オホーツク沿岸で長らく暮らした身にとって、とりわけ200海里後のソ連船による臨検の嵐は凄まじい。当時のオホーツクは米ソ両国潜水艦が水面下で跋扈する危険海域。北海道をウクライナにするな。
★★★★★

『オホーツク諜報船』西木正明（著）1992現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション社会思想社 『裏切られた民主主義――戦争とプロパガンダ＜4＞』
イスラエルのパレスチナ軍事占領と拷問・暗殺を支援する米国を徹底糾弾。同時にパレスチナ人の権利を擁護しないアラファトら幹部の堕落も告発。「許しがたい無力」「もう一つのアメリカ」など8本。
★★★★★

エドワード・W・ザイード（著）中野真紀子（訳）2003みすず書房（単行本） 『「アラブの春」の正体――欧米とメディアに踊らされた民主化革命』
レバノン生まれの著者が独自の視点で見た「アラブの春」。「チュニジア、エジプト」と「シリア、リビア」を区別、後者を欧米の思惑とメディアが仕組んだ「内戦」と総括。メディア論としても面白い。
★★★★★

重信メイ（著）2012角川新書 『空から降ってきた男』
旅客機から墜落死した黒人青年の謎を追跡した著者が、彼の出生地南部アフリカで見たものは、西欧の白人たちが搾り取るだけ搾り取った後に、アフリカに残した理不尽な住民同士の対立と貧困だった。
★★★★☆

小倉孝保（著）2016新潮社（単行本） 『未来創造としての「戦後補償」―「過去の清算」を越えて』
自国軍隊が置き去りにした毒ガス兵器が、多くの他国民を傷つけ、命を奪ってきた。その消え行く命を目前にし、責任を取ろうとしない日本政府と国民。戦後補償は、“不戦の誓い”の具体的な証しである。
★★★★★

水島朝穂（著）2003Genjinブックレット 『闇市の帝王－王長徳と封印された「戦後」』
重慶爆撃の日本軍と戦った中国軍パイロット・王長徳は戦勝国民として来日。新橋駅前に闇市を開き、開店祝いにビルの屋上から千円札をばら撒き話題に。一風変わったアウトロー商人の破天荒一代記。
★★★★☆

七尾和晃（著）2011草思社文庫

『全文リットン報告書』
他国領土内で繰り広げる日本の侵略行為を「特殊利益」と擁護する列強5カ国報告書。侵略する側とされる側の喧嘩両成敗的な結論すら否定し「満洲国」の正当性を主張する編者の「トンデモ解説」付。
★☆☆☆☆

渡部昇一（編）2006ビジネス社（単行本） 『タイワニーズ故郷喪失者の物語』
蓮舫の“二重国籍”など、タイワニーズたちが抱える問題の多くは、日本（人）の問題でもある。明治初期の台湾出兵から植民地を経て現在に至る過程で醸成されたそれらの問題を丁寧に解きほぐす労作。
★★★★☆

野嶋剛（著）2018小学館（単行本） 『大連ダンスホールの夜』
張学良と面会した男は、その部屋であることに気づき、“旗幟”の決意を察知する「張学良の抗日決意…」など、大連育ちの著者が歴史のこぼれ話を語るが、日本軍国主義ノスタルジアにやや傾きがち。
★★☆☆☆

松原一枝（著）1998中公文庫 『ポーランドを生きる　ヤルゼルスキ回想録』
ポイントは2つ。「戒厳令がなければソ連が武力介入」「『連帯』は権力奪取を計画」は、いずれも後の検証（エリツィン文書等）により事実に反する証明が。民主化要求を理解できなかった著者の限界。
★★★☆☆

ヴォイチェフ・ヤルゼルスキ（著）工藤幸雄（監訳）1994河出書房新社（単行本） 『官制ワーキングプアの女性たち――あなたを支える人たちのリアル』
コロナ検査やワクチン、休業補償等でも諸外国に大きく後れをとる日本の公共サービス。その原因は、アベ政治による労働現場破壊＝女性非正規公務員の労働条件の一方的改悪（年度任用制度）にもある。
★★★★★

竹信三恵子、戒能民江、瀬山紀子（編）2020岩波ブックレット 『家族〈5〉社会主義国・新興国―政策と法』
1970年代のソ連、東欧、中国、インドなどの家族法、家族計画、婚姻制度に関する論文集。崩壊前のソ連、カトリックと闘うポーランド、文革直後の中国、宗教によって異なるインドの婚姻法など多彩。
★★★☆☆

福島正夫（編）1976東京大学出版会 『伊藤博文と安重根』
日韓両国で“伊藤博文暗殺のテロリスト”、“独立運動の英雄”と評価が割れる安重根。だが「日本の刑法」で殺人罪を適用し処刑した日本には「乙巳条約」と「裁判管轄権」の両面で法的根拠はない。
★★★★★

佐木隆三(著)1996文春文庫 『隣人が敵国人になる日：第一次世界大戦と東中欧の諸民族』
現代世界をも揺るがす国境紛争と民族憎悪。その一つの典型を第一次大戦後のポーランド、ウクライナ、ユダヤなど諸“民族”が混在する東中欧のガリツィアに見る著者の研究成果の一端を披瀝する名著。
★★★★★

野村真理（著）2013人文書院（単行本） 『季刊　戦争責任　第55号』
日本人拉致事件では「拉致の手段」を問わず、他方の日本軍・政府機関による朝鮮人徴用工や「慰安婦」問題ではその「狭義の強制」にこだわり“連行の事実”を認めない日本政府の欺瞞性を徹底論証。
★★★★★

2007日本の戦争責任センター（雑誌） 『戦争責任と戦後責任―祖父の罪を孫が償うのか』
ナチス犯罪の時効撤廃に動いたドイツと、南京虐殺や軍「慰安婦」すらなかったことにしたい日本。戦争犯罪に向き合う両者の違いはどこから来るのか。アベ・スガら“中二”レベルでもわかる親切な解説。
★★★★★

望田幸男（著）1994かもがわブックレット 『「慰安婦」・強制・性奴隷　あなたの疑問に答えます』
軍「慰安婦」制度は、日本戦後史の出発点に突き刺さった大きな棘。積極的な事実の解明と謝罪・補償ができない日本だが、アジアでの共生を目指すならば、この問題の解決は後世に先送りはできない。
★★★★★

吉見義明、林博史、金富子、西野留美子（責任編集）、日本軍「慰安婦」問題webサイト制作委員会（編集）2014お茶の水書房ブックレット 『日本軍「慰安婦」制度とは何か』
日本社会の右傾・ネトウヨ化の端緒のひとつとなった米紙掲載の全面広告「The Facts」。その「『慰安婦』はなかった」論を著者は真っ向から否定。問題の在り処がコンパクトによくまとめられた好著。
★★★★★

吉見義明（著）2010岩波ブックレット 『韓国併合110年後の真実　条約による併合という欺瞞』
日本は韓国の条約締結権（外交主権）を奪った後に、“韓国”と併合条約を締結。国際法理無視の欺瞞によりこの条約は最初から「とうに無効」だった。日本政府や右派・マスコミもこの点には触れない。
★★★★★

和田春樹（著）2019岩波ブックレット 『「神話」の崩壊――関東軍の野望と破綻』
「天皇の軍隊は些かも国民の軍隊ではなかった…天皇を棟梁とする軍隊ですらなかった」（あとがき）。結局、天皇と軍隊を「神話」にまで押し上げたのは、国民の無抵抗かつ無責任な好戦性だった。
★★★★☆

五味川純平（著）1991文春文庫 『徴用工裁判と日韓請求権協定－韓国大法院判決を読み解く』
請求権協定で放棄されたのは国家間の賠償請求権。個人が賠償を求める権利を国家が放棄することはできない。日本政府は「国際法上ありえない判決」と繰り返し、日本国憲法の「人権」の視点すら欠く。
★★★★★

山本晴太・川上詩朗・殷勇基・張界満・金昌浩・青木有加（著）2019現代人文社（単行本） 『岩倉使節団という冒険』
廃藩置県直後、政府中枢がこぞって欧米視察へ旅立つが、国内外では数々の失態も。明治期と戦後の日本を断絶と捉える著者は、その間の侵略戦争には目を向けず“明治礼賛”と日本の“潜在力自賛”に終始。
★★☆☆☆

泉三郎（著）2004文春新書 『ドレフュス事件・詩人・地霊』
敵国への軍情報流出の冤罪で流刑に服す仏軍ユダヤ人将校ドレフュス。真犯人浮上と作家ゾラの公開弾劾状で真相は暴かれたが…。情報の改竄と隠蔽、民族差別と自国中心主義等現代日本にも通じる実話。
★★★★★

大佛次郎（著）1983朝日新聞出版局大佛次郎ノンフィクション文庫

『西太后秘録　近代中国の創始者＜上＞』
『マオ』の著者による慈禧（西太后）評伝。皇帝の側室から実子を後継に据え権力を手中にした、“中国三大悪女”の一人とされる慈禧の伝説を覆す。実子没後、再び甥を擁立し清朝の改革と延命を模索。
★★★★☆

ユン・チアン（著）川副智子（訳）2015講談社（単行本）

『西太后秘録　近代中国の創始者＜下＞』
光緒帝即位の後、慈禧は侵略を続ける日本など列強に対抗して、義和団と手を結ぶ“禁じ手”を選択。本書は、伊藤博文を顧問に迎えようとする光緒帝を、慈禧が計画的にヒ素で毒殺したとする説をとる。
★★★★☆

ユン・チアン（著）川副智子（訳）2015講談社（単行本）

『中国の旅』
日中戦争中の皇軍による蛮行の数々を、現地の証言として記録した貴重な資料。歴史改竄主義が横行する日本だけに、目を背けたい人々からの攻撃も多い。だが一度は最後まで読んでみるべき本である。
★★★★★

本田勝一（著）1981朝日文庫

『ピノチェト将軍の信じがたく終わりなき裁判―もう一つの9・11を凝視する』
世界初、選挙で実現したアジェンデ社会主義政権だが3年後の1973年、ピノチェトの軍事クーデターで崩壊。政権派は軒並み凄惨な拷問で処刑。救国のため急ぎ帰国した私の二人の学友も音信不能に…。
★★★★★

アリエル・ドルフマン（著）宮下峯夫（訳）2006現代企画室（単行本）

『クォン・デ　もう一人のラストエンペラー』
溥儀を満州皇帝に据える一方で、日本は祖国独立の希望を胸に日本へ亡命したベトナム王子クォン・デを、宗主国フランスとの取引材料として国内で飼殺す。アジア主義者への視点と“森史観”が見どころ。
★★★★☆

森達也（著）2007角川文庫

『李朝滅亡』
500年の歴史と文化を誇った朝鮮王朝は、日本による武力侵略と併合により潰えた。閔妃殺害や第二次日韓協約の欺瞞、上海臨時政府による対日宣戦布告など、日本の現代史教育と倒錯史観の転換を迫る。
★★★★★

片野次雄（著）1997新潮文庫

『アウシュヴィッツは終わらないーあるイタリア人生存者の考察』
ナチ強制収容所から生還した克明な体験記。反ユダヤ主義に見られる差別の構造は、ドイツ社会全体にも階層的に見られた。それは「別な蛮行の主体（訳者）」だった日本人にとっても他人ごとではない。
★★★★★

プリーモ・レーヴィ（著）竹山博英（訳）1980朝日選書

『海を抱いて月に眠る』
解放後のテロを逃れ日本へ密入国した李相周。彼が遺した20冊のノートには東西冷戦と差別の中に生きた苦難の人生が。日本の植民地責任と朴独裁政権を糾弾しつつ在日二世の妻との感性の齟齬に悩む。
★★★★★

深沢潮（著）2018文芸春秋（単行本）

『上海にて』
日中戦争の終わりを上海で迎えた著者は、帰国後、惨敗を「終戦」と繕い、占領軍を「進駐軍」と阿る現実逃避の日本人の陰湿さを見る。国共内戦後に再訪した上海の再建を文学者の視点で見事に捉える。
★★★★☆

堀田善衛（著）2008集英社文庫

『南京の真実』
1937年、天皇の軍隊が無抵抗の南京市民を姦し焼き殺した南京虐殺事件を、南京駐在商社員ラーベは克明な日記として記録。日本政府は調査もせず「虐殺数は諸説ある」として「数の問題」に矮小化。
★★★★★

ジョン・ラーベ（著）、エルヴィン・ヴィッケルト（編）、平野卿子（訳）2000講談社文庫

『凩の時』
日露戦争後の日本はアジア侵略へ向けて国内体制の強化に走る。本書は社会主義者弾圧と、陸軍改編直後の兵士37名の集団脱営事件を縦糸に、多彩な人物が絡む展開で「凩の時代」の接近を詳細に描く。
★★★★★

大江志乃夫（著）1992ちくま学芸文庫

『わが祖国－禹博士の運命の種』
韓国の白菜の品種改良と増産に取り組んだ日韓混血の禹長春博士。だが、その父は閔妃暗殺に関わった日本への亡命者だった。暗殺に始まり韓国併合に至る歴史の闇を、その父子の軌跡とともにたどる。
★★★★★

角田房子(著)1994新潮文庫

『検証　シベリア抑留』
根こそぎ動員で弱体化した関東軍を衝いたソ連軍の対日侵攻により発生したシベリア抑留には、近衛―朝枝の「邦人残留基地構想」による国体護持戦略が。本書は日本軍による南方捕虜虐待には触れず。
★★★★☆

白井久也（著）2010平凡社新書

『ある昭和史―自分史の試み』
戦争の直接体験を世界史の一要素とする歴史認識を獲得し、自分史を同時代史との関わりの中で捉え直そうとする試み。その中で著者は、ヒロヒトの戦争責任を問い、政治的天皇制の不可逆的廃止を主張。
★★★★★

色川大吉（著）2010中公文庫

『満州裏史―甘粕正彦と岸信介が背負ったもの』
“大杉栄殺し”の甘粕は阿片と謀略で中国人民から毟り取った巨額資金で関東軍と汪兆銘傀儡政権を支える。本書は満州経済侵略の尖兵・岸と、満州から上海、シンガポールへと続く甘粕の侵略策謀を称揚。
★★☆☆☆

太田尚樹（著）2011講談社文庫

『東条英機　暗殺の夏』
天皇と並ぶ戦争責任第一人者・東条英機を巡る解任と暗殺謀議を日録で追うセミ・ドキュメンタリー。だが日録にしたことで、東条を首相に推薦・承認した木戸、近衛、ヒロヒトらの責任が曖昧な描写に。
★★★☆☆

吉松安弘（著）1989新潮文庫

『生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後』
国家（天皇）の命令によりソ連の和平仲介への条件としてシベリアへ労務提供（抑留）された父の、復員後の生涯を通して描く戦後日本の姿。同じ運命の旧「日本兵」中国人らとともに、日本を鋭く告発。
★★★★★

小熊英二（著）2015岩波新書

『無国籍の日本人』
国民を管理する戸籍制度がある一方で、「性・暴力・貧困・差別」など国が見ぬふりをしてきた社会の狭間には、約1万人もの無戸籍日本人がいる。排外され続ける彼らに寄り添う著者渾身のリポート。
★★★★★

井戸まさえ（著）2018集英社文庫

『【大本営発表】シンガポールは陥落せり』
南京大虐殺から5年、皇軍はシンガポール陥落後に再び大量虐殺、強姦を繰り返す。著名文化人らに煽られた国民は祝賀のため宮城を埋め尽くす。白馬に跨り手を振るヒロヒトの姿が「令和」の今に蘇る。
★★★★★

櫻本富雄（著）1986青木書店（単行本）

『白鳥事件』
朝鮮戦争下の白鳥警部射殺事件。本書は“主犯”村上国治の冤罪を主張する著者に対し、別視点から長文「解説」を加え、日共の極左冒険主義にフォーカスしていくが、決定的な反証にまでは至っていない。
★★★☆☆

山田清三郎（著）、2005新風舎文庫

『アンダークラス――新たな下層階級の出現』
「下層階級」929万人の凄まじさ。うち59歳以下男性の未婚率が突出して高い日本社会。下層に落ちた人々を自己責任に追いやり、虚飾の「再チャレンジ」を掲げ自ら失政を免罪しようとする安倍政権。
★★★★★

橋本健二（著）、2018ちくま新書

『未解決の戦後補償―問われる日本の過去と未来』
10・30大法院決定に対し植民地支配の正当化に加え「戦後補償は65年協定により完全かつ最終的に解決された」と言い張る安倍政権。だが日韓協議記録には個人賠償に関する多くの踏み込んだ発言が。
★★★★★

田中宏・有光健・中山武敏（著）2012創史社（単行本）

『北朝鮮抑留　第18富士山丸事件の真相』
1983年、富士山丸船長ら2名が「スパイ容疑」で7年間にわたり朝鮮に抑留された悲劇の実相を検証する意欲作。朝鮮の人質外交に加え、日本の外務省、入管、海保らの縦割り無責任行政が浮き彫りに。
★★★★★

西村秀樹（著）2004岩波現代文庫

『検証日朝交渉』
「日本は日朝関係に対米追随を持ち込み、主体性を喪失。植民地支配と被支配の関係を清算する中で拉致問題を解決し、東アジアに残る冷戦構造を解体せよ」。現実逃避の安倍に贈る格好の日朝交渉通史。
★★★★★

高崎宗司（著）2004平凡社新書

『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』
「拉致・核・ミサイルの包括的解決」を繰り返すのみの安倍晋三を「拉致を利用してのし上がり、解決からは逃げ回っている」と指摘する本書に、安倍は国会で「事実ならバッジを外す」と逆上の醜態。
★★★★☆

蓮池透（著）2015講談社（単行本）

『鬼哭啾啾（きこくしゅうしゅう）――「楽園」に帰還した私の家族』
止まるところを知らない日本人の朝鮮民族差別意識は、植民地として抑圧した経験とリベンジへの恐怖心、北の圧制者にかつての天皇の姿が重なるところに源泉がある。著者は極右テロからの亡命を決断。
★★★★★

辛淑玉（シンスゴ）（著）2003解放出版社（単行本）

『絞首刑』
オウム死刑囚の執行が近いといわれる中で、果たして事件の“真相”や“全体像”は明らかになったのか？安易かつ無責任に死刑を肯定し、過激にそれを称揚する風潮にも、本書は一石を投じるに違いない。
★★★★★

青木理（著）2012講談社文庫

『〈増補版〉証言・樺太（サハリン）朝鮮人虐殺事件』
国家による樺太への朝鮮人強制連行と敗戦時の虐殺「上敷香事件」「瑞穂事件」を綿密な取材で掘起こした力作。差別と狂気によるこの組織的犯罪から日本人（国家）は何を学び、どう責任をとったのか。
★★★★★

林えいだい（著）1992風媒社（単行本）

『天皇の軍隊と平頂山事件』
他国侵略と虐殺を繰り返した天皇の軍隊。戦争は常に正義の旗の下に始まる。「侵略戦争反対！」では自国政府と軍の侵略を止めることは不可能。「平頂山」を繰り返さないためにも全ての戦争に反対を！
★★★★★

高尾翠（著）2005新日本出版社（単行本）

『底辺への競争格差放置社会ニッポンの末路』
アラフォーの分析には見るべきものがあるが、格差是正策を語りながらも政策批判の視点が欠落。迎合的で、審議会委員狙いが透けて見える。「ベーシックインカム」を提起するも定義・論旨が不明確。
★★☆☆☆

山田昌弘（著）2017年朝日新書

『撃墜―大韓航空機事件〈上〉』
冷戦末期の1983年、アンカレッジ発ソウル行大韓機007便が大きくコースを外れソ連領空を侵犯、サハリン上空で撃墜。なぜコースをそれたのか？ソ連機の事前警告は？269人の命が失われた謎を追跡。
★★★★☆

柳田邦男（著）1991講談社文庫

『撃墜―大韓航空機事件〈中〉』
事件当日、ミサイル発射実験を予定していたソ連は、007便は軍事情報の収集を目的とした米国が仕組んだスパイ機説を主張。一方、慣性航法装置（INS）にはある重大な盲点があることが浮上する。
★★★★★

柳田邦男（著）1991講談社文庫

『撃墜―大韓航空機事件〈下〉』
全世界に流布された「スパイ機」説はICAO報告書により沈静化へ。著者もあらゆる角度からスパイ説を検証するが…。現在の米朝「核・ミサイル危機」が彷彿させる34年前の極東危機の真相とは何か？
★★★☆☆

柳田邦男（著）1991講談社文庫

『新装版　昭和史発掘＜2＞』
報道管制により張作霖爆殺をひた隠しにし、満州侵略に国民を統合していった軍部。軍出身の田中義一首相が全く歯止めにならない「満州某重大事件」。「佐分利公使の怪死」は推理小説含みで秀逸。
★★★★★

松本清張(著)2005文春文庫

『安倍晋三と岸信介と公明党の罪』
表題部分の佐高節はヨシ。だが「日本国民=戦争被害者」としての反戦観は散見されるも、佐高には「＝加害者」としての視点が欠落する。未読だが『絶望という抵抗』を共著の辺見庸の前では如何？
★★☆☆☆

佐高信（著）2016河出書房新社（単行本）

『韓国併合』
隣国へ武力侵攻し、多くの農民や王妃を虐殺しつつ「正当な権利」を主張した明治日本は、皇帝や閣僚を脅し乙巳条約を結ぶ。著者は強制調印や国際法違反を認める一方で「形式的には適法」の愚を主張。
★★☆☆☆

海野福寿（著）1995年岩波新書

『台湾出兵―大日本帝国の開幕劇』
列強との不平等条約に悩む日清両国が初めて相互平等の修好条規を結ぶ。だがその直後、日本は裏をかいて台湾に出兵。スターリンの中立条約違反を責めるだけが能じゃない、明治日本最初の謀略戦争が。
★★★★★

毛利敏彦（著）1996中公新書

『歴史を変えた28の暗殺』
ケネディなど28の暗殺事件を解説する一方、トロッキー、アジェンデ、張作霖、インドネシア9.30虐殺等々には触れず、選択基準が恣意的。「文章・編集のプロ」を自任する著者の誤字誤記が多過ぎ。
★★☆☆☆

小田桐一（著）2009彩図社（単行本）

『昭和史発掘（1）』
陸軍大将田中義一がシベリア出兵の軍費300万円を横領し政界転出の工作資金とした「陸軍機密費問題」やその捜査を手掛けた「石田検事の怪死」、軍内の部落差別など暗い昭和史の幕開けを綴る5編。
★★★★★

松本清張（著）2005文春文庫

『蟻の兵隊―日本兵2600人山西省残留の真相』
昭和20年、ポツダム宣言受諾後の中国・山西省。自己の戦犯容疑を霧消させようと天皇の命令を騙り、部隊を軍閥・閻錫山に売り渡した帝国陸軍司令官。ポツダム宣言違反も自ら裁こうとしない日本。
★★★★★

池谷薫（著）2010新潮文庫

『戦争責任者の問題』
戦争の最高責任者を糾弾することなく死なせてしまった一方で、一人一人の加害責任を顧みることもなく、被害国に対し通り一遍の詫びを入れただけで居丈高であり続ける「騙された側」の責任を問う。
★★★★★

伊丹万作（著）青空文庫Kindle版

『「尖閣」列島―釣魚諸島の史的解明』
尖閣諸島は古来、中国の歴史文書に多く登場。日清戦争末期に条約によらず中国より窃取した事実や皇国史観に基づく先占の法理、1895年閣議決定、尖閣領有論に潜む日本の侵略性等を暴く必読の古典。
★★★★★

井上清（著）2012第三書館新書

『「尖閣問題」とは何か』 「北方」と「竹島」を「戦略的解決（≒放棄）」に導くことで中国と相対せよと説く姿勢はさておき、「1895年閣議決定」に尖閣領有の根拠を求めながら、「固有の領土」論を捨てよとする論理矛盾が。 ★★★☆☆

豊下楢彦（著）2012岩波現代文庫

『差別の民俗学』 柳田民俗学には階級的考察がないと批判。差別は天皇を頂点とし、被差別部落を基層とする重層構造の中にあるとする分析は秀逸だが、アイヌ、在日コリア、沖縄差別の深掘りや位置づけにやや不足感も。
★★★★☆

赤松啓介（著）2005ちくま学芸文庫

『大統領を殺す国韓国』歴代大統領を通して解放後の韓国を俯瞰する通史。だが、韓国の戦後を大きく規定した「朴正煕＝岸信介」の日韓深部に触れず、慰安婦、強制連行も植民地時代への視点が甘い“日本標準”。誰に「忖度」？★★★☆☆

辺真一（著）2014角川新書

『資本主義の終焉と歴史の危機』
グローバル化は世界から富の収奪の地理的空間も電子・金融空間も失わせたとし、日本こそが資本主義が終焉へ向かうソフト・ランディングの場にふさわしいと説く。「利子率低下」の後にくるものとは？
★★★★★

水野和夫（著）2014集英社新書

『沖縄　だれにも書かれたくなかった戦後史＜上＞』 沖縄の戦後史を通奏低音のように貫くアウトローと芸能に焦点を当て、「地上戦」のみをクローズアップしがちな“ヤマトンチュ沖縄史観”の転換を促す。綿密な取材から得た耳が“勃起”の上下各500頁。
★★★★☆

佐野眞一（著）2011集英社文庫

『沖縄　だれにも書かれたくなかった戦後史＜下＞』
薩摩（ヤマト）による沖縄差別と同様、沖縄人による奄美出身者への根強い差別もあった。地元紙タイムスや新報もそれに一役買った過去が。本土からだけでは見えない「今さらながら」の驚天の沖縄史。
★★★★☆

佐野眞一（著）2011集英社文庫

『ソ連が満洲に侵攻した夏』
独ソ戦の勝利から一転、スターリンは日露戦争報復のため満州へ侵攻。戦争最終盤、日本は中立条約を唯一の頼りにソ連に仲介を求める愚を犯す。百万邦人を見捨て天皇制護持に走る皇軍の姿がここにも。
★★★★☆

半藤一利（著）2002文春文庫

『ノモンハンの夏』
欧州情勢やソ連の戦力を見誤り愚劣な戦争に突き進んだ関東軍と、それを阻止できなかった大本営無能集団。敗戦を敗戦と認識できず軍の内部確執と下克上を繰り広げ、アジア太平洋戦争へと国民を扇動。 ★★★★☆

半藤一利（著）2001文春文庫

『1★9★3★7（イクミナ）』
1937年、皇軍が中国・南京で繰り広げた強姦・掠奪・放火・大虐殺の数々。一片の謝罪もしなかった天皇ヒロヒトを逝かせ、自らも忘れ去ろうとする日本人は、「次」の戦争まで口を閉ざし続けるのか？
★★★★★

辺見庸（著）2015金曜日（単行本）

『甘粕正彦乱心の曠野』
関東大震災時、軍上層部は“主義者”弾圧に乗り出す。大杉栄・伊藤野枝らの“殺害”を命じられた甘粕憲兵大尉は、出獄後満州に甘粕機関を設立し謀略の場を得る。日本の暗部と共に自死に至った真相は？ ★★★★★

佐野眞一（著）2010新潮文庫

『三浦半島の歴史』
前九年の役の功により平太夫為通が源頼義からこの地を与えられ、三浦姓を名乗り築城したのが半島中央に位置する衣笠城。頼朝挙兵の石橋山合戦に遅れた一族の立籠もりで有名。店頭ワゴン古書￥100。 ★★★★☆

田辺悟（著）1967横須賀書籍組合（古書）

『シベリア出兵近代日本の忘れられた七年戦争』
ボリシェヴィキ政権への干渉と、資源・領土への野心をむき出しにしたシベリア出兵。後年のアジア太平洋戦争の先行演習のような、犠牲のみ多く大義も何もなかった侵略戦争。学習能力を持たない日本。 ★★★★★

麻田雅文(著)2016

『日中戦争殲滅戦から消耗戦へ』小林英夫（著）2007講談社現代新書
殲滅戦(短期決戦)しか考えなかった日本と、それを消耗戦(長期戦)に持ち込んだ中国。両者の戦略の優劣と外交力の差が際立つ。視野狭窄症的な世界観から脱皮し、まともな歴史観を獲得することが必要。
★★★★★
『南京事件』笠原十九司（著）1997岩波新書
南京事件の本質は、他国領土を軍靴で踏みにじり、強姦・掠奪・虐殺を繰返したことにある。戦争という名であれ何であれ、人倫に悖ることを歴史の真実として明らかにした、“虐殺否定派”にも必読の書。
★★★★★
『関東大震災』吉村昭（著）2004文春文庫
陸軍被服廠跡の広大な広場こそが、最も焼死者が多かったという事実は常識を覆す。無政府主義者狩りの好機と捉えた官憲の暴走や朝鮮人虐殺とともに、大正期の大震災を描写し尽す近未来への警告の書。
★★★★★
『イスラム戦争中東崩壊と欧米の敗北』内藤正則（著）2015集英社新書
米国の世界戦略で最も稚拙なのは中東政策。それに無批判に追随する自民党政権。すべてを「テロリスト」として切って捨てるだけでは、解決不可能。サイクス・ピコ体制の矛盾は朝鮮半島周辺にも通底。
★★★★☆
『憲法の無意識』柄谷行人（著）2016岩波新書
選挙時に憲法改悪を真正面から提起できないのは、「必ず負ける」と解っているからだと指摘。フロイト、カントを駆使、9条と1条の結びつきから"超自我"の狡知を説き知の深層に働きかける“予言の書”。
★★★★★
『日本会議の正体』青木理（著）2016平凡社新書
米国軍産エスタブリッシュメントと並び日本政界の脳髄を侵食している日本会議。そのメンバー自身に語らせる手法で背後の巨大宗教組織を炙り出す。皇国史観と対米追従の接点を探る理性的筆致が光る。
★★★★★
『愛国と信仰の構造全体主義はよみがえるのか』中島岳志・島薗進（著）2016集英社新書
国家神道、八紘一宇は、戦前の日本を全体主義に導いたイデオロギー。それらの“熟語”が今、国会の場でフツーに飛び交う戦前回帰の状況に、「アベ教」という狂的信仰が二重写しに。“戦後”は続くのか？
★★★★☆
『拒否できない日本アメリカの日本改造が進んでいる』関岡英之（著）2004文春新書
「グローバル化・民営化・小さな政府」などを熱狂的に礼賛した小泉郵政選挙の陰で「年次改革要望書」に沿って進められてきた日本改造。建築資格の統一から論が進む"内政干渉"の裏付けは安保条約。
★★★★★
『拉致問題を考えなおす』蓮池透・和田春樹・菅沼光弘・青木理・東海林勤（著）2010青灯社（単行本）
北朝鮮の“核とミサイル”が進む中、全く進展を見せない拉致問題。アメリカに追随し北を非難するだけでは解決しない。ポピュリズムに流されず「朝鮮人強制連行」ととも国交回復過程の中で解決すべき。
★★★★★
『「憲法改正」の真実』樋口陽一・小林節（著）2016集英社新書
護憲・改憲両方の立場の憲法学者が“安倍改憲”の意図するところを解きほぐし、護憲派ばかりではなく改憲派が読んでも納得すること請け合いの一級の憲法論に。憲法条項の完全実施こそが行政府の責務。
★★★★★
『放射能汚染が未来世代に及ぼすもの　「科学」を問い、脱原発の思想を紡ぐ』綿貫礼子・吉田由布子・二神淑子・リュドミラ・サァキャン（著）2012新評論（単行本）
原発事故による子供たちへの健康影響はなぜ世界に正しく伝わらないのか。「国際原子力村」の科学者たちによる健康影響過小評価の歴史を検証、パラダイム転換を訴え、フクシマの「帰還運動」を告発。
★★★★★
『拉致と決断』蓮池薫（著）2012新潮社（単行本）
北朝鮮に拉致された24年の間に見聞し、思い悩んだ軟禁生活を語った半生記。冷静な語り口にも拘わらず、いまだ語り尽せない、語ることのできない“何か”が垣間見える。拉致時の生々しい証言も。
★★★★☆
『南京事件－虐殺の構造増補版』秦郁彦（著）2007中公新書
南京事件をなかったことにしたい勢力が力を増しているなか、事実は事実として認める態度は絶対に必要。保守派の立場からの「南京」論だが、事件を過小評価する傾向。増補版では切れ味がやや鈍いが。
★★★☆☆
『日本統治下の朝鮮』山辺健太郎（著）1971岩波新書
沖縄と朝鮮半島は近代日本の差別と侵略の対象であり、その先兵たる伊藤博文や福沢諭吉・板垣退助の肖像画を日本はこれ見よがしに紙幣に用いた。「日韓併合小史」と並ぶ不朽の書。日本現代史の原点。
★★★★★
『大日本・満州帝国の遺産』姜尚中・玄武岩（著）2010講談社学術文庫
日韓近現代史の闇部分をつなぐ岸信介と朴正煕。その接点をなしたのが、日韓癒着の揺籃となった満州帝国。日本人的な視野狭窄からは発想できない両著者の慧眼。A級戦犯のDNAがいまも日本中枢に。
★★★★★
『この経済政策が民主主義を救う: 安倍政権に勝てる対案』松尾匡（著）2016大月書店（単行本）
「緩和マネーを福祉・医療に使って雇用拡大」などとする立論は面白い。だが、バズーガ砲をぶち込んだことによって所得格差は拡大を続け、GDP伸び率は”4年目の不真実”に。アベノミクスの応援団？
★★☆☆☆
『 日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』矢部宏治（著）2016集英社インターナショナル（単行本）
朝鮮戦争を機に、冷戦をリードする目的でアメリカが日本に押し付けた様々な条約や協定。そこには憲法の上位に位置する「指揮権密約」が。「憲法押しつけ論」すら霞むが、改憲派が触れることはない。
★★★★★
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治（著）2014集英社インターナショナル（単行本）
日本の米軍基地と原発。憲法を正しく適用すれば、決して許されることがないそれらの存在。その歪みを「天皇」にまで遡って解明した問題の書。渾身で問う「憲法は機能し得るか？」「対米自立は？」
★★★★★
『沖縄の自己決定権その歴史的根拠と近未来への展望』琉球新報社・新垣毅(著) 2015高文研
戦争末期、最大の住民被害を蒙った沖縄で、いま改めて基地機能の強化と恒久化が進む。「自己決定権」とは何か。本土復帰のまやかしや“沖縄”をイデオロギーとする認識を琉球処分とともに問い直す。
★★★★★
『NHKスペシャル生活保護3兆円の衝撃』NHK取材班(著) 2013宝島SUGOI文庫
「税と社会保障の一体改革」によって変わったのは、消費増税と社会保障の切り捨てだった。そこに暴力団の介在や不正受給を合目的的に織り込む著者の作為。世論誘導を排しもっとましな議論が必要。
★☆☆☆☆
『日米開戦の正体――なぜ真珠湾攻撃という道を歩んだのか』孫崎亨（著）2015祥伝社（単行本）
真珠湾攻撃の主体的、客観的意義を未だ理解できない人たちがいる。彼らは例外なく、柳条湖事件・盧溝橋事件も中国の陰謀だと切り捨てる。だが、日清戦争に始まる日本の侵略性への著者の評価は甘い。
★★★★☆
『図解入門ビジネス経済指標の読み解き方がよ~くわかる本』小笠原誠治（著）2007秀和システム（単行本）
『フォトジャーナリストが見た世界: 地を這うのが仕事』川畑嘉文(著) 2014新評論（単行本）
★★★★☆
『里山資本主義日本経済は「安心の原理」で動く』藻谷浩介・‎ NHK広島取材班（著）2013角川oneテーマ21新書
★★★★☆
『日本の国境問題　尖閣・竹島・北方領土』孫崎亨（著）2011ちくま新書
★★★★★
『西伯利亞出兵物語―大正期、日本軍海外派兵の苦い記憶』土井全二郎 (著)2014潮書房光人社 (単行本)
★★★★★
『官僚の責任』古賀茂明（著）2011PHP新書
★★★☆☆
『消された政治家・菅原道真』平田耿二（著）2000文春新書
★★★★★
『レーニンの墓—ソ連帝国最期の日々（上）』デイヴィッド・レムニック（著）、三浦元博（翻訳）2011白水社 (単行本)
★★★★☆
『レーニンの墓—ソ連帝国最期の日々（下）』デイヴィッド・レムニック（著）、三浦元博（翻訳）2011白水社 (単行本)
★★★★★
［以下省略］

※「4行読後寸評」の《フィクション》と《ノンフィクション》のジャンル区分は管理人の主観と独断によるものです。

さて、“野暮な話”はここまでにして、ここからは音楽の時間です。私のお気に入りや懐かしい思い出の曲など、ジャンルを問わずランダムにピックアップしました。素敵な曲ばかりです。きっと心に響く何かが発見できると思います。お暇なら、いっしょにどうぞ。えっ？趣味が合わない？…フン！（怨霊、じゃなかった音量にご注意！）

Tom Jones 🎤Delilah
むかし「娘が生んだお前の子だ」と赤ん坊を連れた女性が訪ねて来て…。すぐに疑いは晴れましたが、相手の男が“トム・ジョーンズ”を名乗ってたとか。 ”Delilah”って本当は男を誘惑する女のことですよ。

ピーター・ポール＆マリー ♫ 花はどこへ行った
ロシアの自然を背景にした小説『静かなるドン』（M・ショーロホフ）の一節にあるコサック民謡にピート・シーガーが曲を付け1961年にキングストン・トリオのカバーで世界的反戦歌となりました。

アンディ・ウィリアムス♫ ある愛の詩
私が風邪で寝込んでいる時、ある女性がこのレコードを持って見舞いに来てくれました。その時の感動ったらなかったですよ。“And she'll be here…” その彼女、半世紀後のいまも私の傍にいるんですよぉ。

菅原洋一🎤今日でお別れ
切々と歌い上げる菅原洋一の『今日でお別れ』、いいですねぇー。あの日、あの時のことを想い出してしまいますね。なかにし礼さんの詩が素晴らしい。菅原洋一の深みのある声にも心をえぐられます。

Doctor Zhivago『ララのテーマ』️ モーリス・ジャール
'65、私が中学生の頃の古い映画です。3時間を超す長い映画で退屈した記憶が。ストーリーもほとんど憶えていなくて、記憶に残っているのは、雪の平原を走るトロイカと、モーリス・ジャールのこの曲。

尾崎豊 🎶 Happy Birthday きっと忘れない
Happy Birthday, to You！人には誰でも自分の誕生日があります。そしていつか死ぬ日も。彼にはそんな予感があったのでしょうか。去年の8月が、最後の誕生日になってしまった私の息子の愛唱歌です。

遥海 🎸 スナビキソウ
スナビキソウって世界中に根を下ろすコスモポリタンなんです。遥海は日本人とフィリピン人のハーフだそうですね。彼女の歌のうまさは天賦の才能なんでしょう。曲のつくりとストーリー性は抜群です。

Joan Baez ♫ Donna, Donna
’60年代にジョーン・バエズが歌い、ベトナム反戦歌に擬せられた「ドンナ・ドンナ」ですが、もともとは反ユダヤ主義への批判の歌とされ、イディッシュ語（中東欧のユダヤ人言語）で作詞されました。

Ornella Vanoni 🎶『 L'appuntamento』
BS日テレ「小さな村の物語」のテーマ曲です。「小さな村」はイタリア中部のトスカナ州にある赤ワインの世界的な名産地です。今日の番組では、家庭料理の“豚肉のオレンジ焼き”が紹介されました。

ペドロ＆カプリシャス／五番街のマリーへ
かつて一緒に暮らしたマリー。いまはどんな暮らしをしているのか気がかり…。そんなホロ苦い気持ちを気心の知れた友人に託す…”五番街”は、どこの町にもありそうですね。そして誰の心のなかにも。

ANNA SISE（アンナシセ）🎷 But beautiful
ジャズはあんまり得意じゃないんですが、シセのハスキーヴォイスにははまっちゃいます。ガンビア出身の父とスウェーデン人の母のミックスだそうですが、バックの演奏も含めて素敵なセッションです。

先週多く読まれた記事

過去ログ

2023年05月(1)
2022年01月(1)
2021年10月(1)
2021年08月(2)
2019年05月(1)
2019年04月(2)
2018年12月(1)
2018年11月(1)
2018年06月(3)
2017年05月(1)
2017年04月(2)
2017年03月(8)
2017年02月(17)
2017年01月(5)
2016年12月(3)
2016年11月(3)
2016年10月(5)
2016年09月(2)
2016年08月(2)
2016年07月(1)
2016年06月(19)
2016年05月(21)
2016年04月(20)
2016年03月(8)

コメント投稿規定

: 　当ブログはコメント大歓迎です。異論、反論、何でも構いません。お気軽にお寄せ下さい。ただし、管理人がお答えできないこともありますが、その節はご容赦ください。
　また、コメントは承認制とさせていただいております。他人への誹謗中傷やハラスメント、個人情報の暴露、差別用語を含むヘイトコメントなどは管理人のポリシーにより掲載しないこともありますのでご了承ください。
　投稿に際しては、他の投稿者との混同や無用な混乱を避ける意味で、個性あるハンドルネームをご使用ください。無記名や「通りすがり」など、区別化が困難なお名前での投稿はご遠慮ください。
　なお、コメント投稿欄に掲載される事項は、原則的にすべて公開されますので、本名での投稿やホームページアドレスなどの記載については自己責任でお願いいたします（メールアドレスは非公開です）。

メディア関連リンク集（順不同）

4行読後寸評《小説・フィクション》

: （画像クリック。アフィリエイト不参加です。
「4行読後寸評」へのご意見、ご感想などは「読者メッセージ」へ。）

『ウルトラ・ダラー』
著者の真意はどこに？朝鮮による日本人拉致と、日本軍部による半島からの拉致・強制連行はいずれも国家権力による重大犯罪。曲がりなりにも事実調査をしている朝鮮、調査すらしない日本政府、
★★★☆☆

手嶋龍一（著）2020小学館文庫 『はじまりの島』
神の存在を否定する進化論が一神教信仰を無残に打ち砕く。 “絶海の孤島” ガラパゴスで起こる準密室連続殺人事件を解くカギは、ガラパゴス到達以前の南米大陸での巨大地震と白人の優越感情にあった。
★★★★★

柳広司（著）2022幻冬舎文庫 『太平洋食堂』
明治期、豊富な海外留学経験により、大きな世界観を身につけた“毒取る”こと医師・大石誠之助。幸徳秋水・与謝野鉄幹らを通して日本の社会と政治を客観的に見つめる。仕組まれた大逆事件に連座。
★★★★★

柳広司（著）2023小学館文庫 『落日燃ゆ』
文官ながら唯一A級戦犯として処刑された広田弘毅の人物像、戦争の拡大に抵抗し続けた足跡を丹念に追う。処刑の順番待ちで、先順位者が上げる「万歳」の雄叫びを「マンザイ」と最大限に皮肉る。
★★★★☆

城山三郎（著）1986新潮文庫 『夢顔さんによろしく（上）』
「上」では奔放な「貴公子」文隆の放蕩ぶりがこれでもかと綴られる。だが、ピンルーが文隆の心の隙間に、侵略者としての父・文麿の真の姿を説いた時の文隆の狼狽ぶりが、当時の日本の真実だった。
★★★★★

西本正明（著）2002文春文庫 『夢顔さんによろしく（下』
近衛家の嫡男文隆の世評が、金太郎飴のごとく変わり映えがしないことに違和感を覚えた著者は、膨大な資料を集め、全く異なる彼のプロフィールを浮き彫りにした。「夢顔」の謎が読者を引きつける。
★★★★★

西本正明（著）2002文春文庫 『トーキョー・プリズン』
「私たちははみな、この戦争の先行きや、軍備増強や軍事行動がどういう集結を迎えるのか考えようとはしなかった。そしてテンノウの戦争責任を問わないことで自分たちも免罪されると考えている。」
★★★★★

柳広司（著）2009角川文庫 『ジョーカー・ゲーム』
軍隊内に作られた独立性の高い秘密組織“D機関”と暗躍する国際スパイ。Dの責任者・結城中佐による、神格化された天皇制への徹底批判が面白い。古来、宗教と軍が結び付くと狂信的になるのは必然。
★★★★★

柳広司（著）2011角川文庫 『ダブル・ジョーカー』
独の猛攻をアジアに逸らしたい英国は、中立を保つ米国に参戦を促す。真珠湾攻撃により、米の世論が一気に対日開戦に雪崩打つ。英国の諜報機関が仕掛けた“真珠湾”と日本のD機関との諜報戦が面白い。
★★★★★

柳広司（著）2012角川文庫 『パラダイス・ロスト』
ナチスを破竹の進撃に導いたものは戦車部隊、爆撃機、Uボートと暗号機“エニグマ”。対抗する術のない英国は植民地からの食糧調達を遮断され危機に陥る。三冊目になって漸く、“D”員に人の心が……。
★★★★★

柳広司（著）2013角川文庫 『ラスト・ワルツ』
ジョーカー・ゲーム四部作のラスト。国際間における諜報戦は、敵国より同盟国間の方が熾烈になる。ソ連を仮想敵とした日独伊防共協定を結んだナチスは、ソ連との間で不可侵条約を結ぶ「複雑怪奇」。
★★★★★

柳広司（著）2016角川文庫

『影の車』
清張初期の7話中編集。だが収録作品の中に表題作とされるものはない。その理由は後の解説で明らかに。いずれの作品も、人間の深層心理をモチーフにし、読者の共感を見事に引き出している秀作揃い。
★★★★★

松本清張（著）2024光文社文庫 『プリズンホテル（１）』
「ロビー・廊下での仁義の交換はご遠慮ください」の注意書きを掲げたこのホテルは、任侠団体御用達の別名「プリズンホテル」だった。初めてタイトルを見たときは、スガモプリズンの話かと勘違い。
★★★★★

浅田次郎（著）2001集英社文庫 『プリズンホテル（2）』
プリズンホテルに、あろうことか任侠団体と警視庁の団体が同宿、予期した通り宴会が始まると大立ち回りが。そんな中往年の大歌手真野みすずと、男に食い物にされた歌手柏木ナナが大浴場で出会う。
★★★★★

浅田次郎（著）2001集英社文庫 『プリズンホテル（3）』
救急医療に身を挺する看護師と、終末医療に携わるかつての恋人医師が登場。医師は末期がん患者の苦痛を救うべく安楽死を施した罪に問われている。作家が書きたかったモチーフを問う小説の山場だ。
★★★★★

浅田次郎（著）2001集英社文庫 『プリズンホテル（4）』
最終章では、長い懲役から放免された老博徒に作家の歴史観が凝縮されている。この初期の作品に登場するバラエティに富んだ人物たちの物語は、この後の作家の膨大な作品群の萌芽を内包する出発地点。
★★★★★

浅田次郎（著）2001集英社文庫 『クーデター』
自公政権と統一教会、創価学会、日本会議らとの宗教的つながりを早い段階から示唆した点に先見性が垣間見えるが、他方、ロシア、朝鮮などを「敵国」とする冷戦思考からの脱却ができない狭量さも。
★★★★☆

楡周平（著）1998宝島社文庫 『壬生義士伝（上）』
幕末維新期に食い詰めた最下級武士吉村喜一郎は妻や子に仕送りするために人斬り集団新撰組に入る。農本主義から商業金融主義に移行する時代に、「武士とは、人間とは何か？」を問う著者の新境地。
★★★★★

浅田次郎（著）2002文春文庫 『壬生義士伝（下）』
死にたくないから人を斬る…これは決して義でもなければ美学でもない。作家はそれを下層武士の命の遣り取りと悲哀の中で具象化し、他方で封建社会の馬鹿らしさにまで止揚。死を称揚する暇はない。
★★★★★

浅田次郎（著）2002文春文庫 『水葬の迷宮：警視庁特捜7』
辛いレビュー評価に納得。両腕が切断された死体などと奇を衒ってはいるが、A4サイズの排水溝から流すためとは、顎がはずれる。切り取られた腕の処理なども杜撰。全体に現実感がなく、こじつけ的。
★★★☆☆

浅見和史（著）2017新潮文庫 『沈黙する女たち』
初めて読む著者の作品。それなりに筋は通っているが「2時間ドラマ」的なこねくり回しに終始。警視庁上がりを配して斬新さを出そうとしているがキャラが立ち過ぎでイヤミ。著者の別作品も読みたい。
★★★☆☆

麻見和史（著）2017新潮文庫 『黒書院の六兵衛（上）』
会社の同じ課の同僚の顔や立ち居振る舞いが突然別人になっていたら？　そんなミステリーが、よりによって江戸城無血開城を目前にして起った。件の侍は一体誰なのか、宿直部屋に座ったまま動かない。
★★★☆☆

浅田次郎（著）2017文春文庫 『黒書院の六兵衛（下）』
幕府高官の説得には応じない六兵衛が、江戸入城を果たした天皇と対面し、下城するのだが、そのコンセプトがイマイチわかりにくい。著者は対外侵略に向かう新政府を称揚しているわけでもあるまい？
★★★☆☆

浅田次郎（著）2017文春文庫 『処刑前夜』
数少ない死刑存続州の合衆国テキサス。凶悪犯が死刑執行直前に翻した自供をめぐり犯罪ライターが裏付けを取るために職を賭して奔走する。凶悪犯ならば客観証拠なしで死刑を執行できるのかを問う。
★★★★★

W・ウォーカー・メアリー（著）矢沢聖子（訳）1994講談社文庫 『証拠が問題』
夫への殺人容疑を晴らそうと必死に駆けずり回る妻が、様々なトリックを仕掛けながら真犯人に迫る本格ミステリー推理小説。地元署とヤードの3刑事がその駆け引きに翻弄され、結末は容易に見えない。
★★★★★

ジェームズ・アンダースン（著）1991創元推理文庫 『罪と罰（上）』
独善主義的な主人公ラスコーリニコフは金貸しの老婆を殺害。前半の山場は酔っ払いのマルメラードフ一家とのかかわりと予審判事ポルフィーリィとの対決。この二つが全体の大きなあらすじを構成。
★★★★★

ドストエフスキー（著）1987新潮文庫 『罪と罰（下）』
インテリゲンチャが台頭する18世紀ロシア社会で、来たるべき社会革命における大量の人命損耗を予感・予知した作者は、ラスコーリニコフの老婆殺しを“些細なこと”とする見方を世に問いつつも苦悩。
★★★★★

ドストエフスキー（著）1987新潮文庫 『闇夜警視庁失踪課・高城賢吾』
『青の懺悔』の口直しに「失踪課シリーズ」を手に取る。『懺悔』よりはややマシな程度だが、この作家の著作がなぜ売れるのかがわかる。警察そのものに対する批判精神に欠け、権力迎合的だからだ。
★★★☆☆

堂場瞬一（著）2013中公文庫 『青の懺悔』
かつてのチームメイトの息子の誘拐事件に挑む県警上がりの私立探偵だが、一口で言えば、物語に深みがなく、本筋と別筋のプロット展開が容易に読め「ン？おかしいな」と思った時点で犯人が分かる。
★★★☆☆

堂場瞬一（著）2010PHP文芸文庫 『残り者』
江戸城無血明け渡しの前夜、大奥にはそれを見届けようと、出自も立ち位置も異なる5人の女中がそれぞれの思いを胸に極秘裏に潜伏した。この人選とエピソード構成、針競べの描写は小説として出色。
★★★★★

朝井まかて（著）2019双葉文庫 『人情裏長屋』
周五郎の人情話11短編集。長編とは異なるいい味を出している。表題作は秀逸。加えて亡妻への細やかな愛情を描いた「おもかげ抄」や一度住んでみたくなる面白さの「ゆうれい貸家」など盛りだくさん。
★★★★★（amazon本）

山本周五郎（著）1980新潮文庫 『正雪記（上）』
大名改易と浪人激増による社会不安の深化を背景に正雪の生涯を描く時代大作。前編では正雪の出自や様々な人物との出会いの伏線が張られていくが、島原の乱における正雪の目的意識がハッキリしない。
★★★★☆

山本周五郎（著）2009新潮文庫 『正雪記（下）』
正雪とその周りに集う同志たちとの意思の疎通が最後までしっくりとしない。幕府権力が強化される一方で、反権力なのか体制内で権力に取り入るのかを決めかねないままに、自滅していく姿は痛ましい。
★★★★☆

山本周五郎（著）2009新潮文庫 『白光』
西洋画に憧れて郷里を出奔、帝政ロシアにまで渡った日本初の女性聖像画家山下りんの生涯。信仰と芸術の狭間を揺れ動くりんの心の遍歴を描く伝記的小説。読者を引き込む文体が作家の新境地を開く。
★★★★★

朝井まかて（著）2024文春文庫 『到着時死亡』
幼児の死体が発見された家にはその母親もがいたが言動がおかしい。彼女の頭部には銃弾が入ったままだった。事件を起点に次々と殺人が。事件の背景をベトナム体験とリンクさせた方が普遍性が出た。
★★★★☆

ペノー／デイヴ（著）郷原宏（訳）山本楡美子（訳）1991ハヤカワ・ミステリ文庫 『尖閣ゲーム』
歴史的にも政治的にも議論が錯綜する尖閣の所属と琉球問題の取り上げ方が安易過ぎて、小説として扁平なものになった。中国をテロ国家として描くあまり、近現代史における沖縄差別への視点が欠落。
★★★☆☆

青木俊（著）2016幻冬舎（単行本） 『なぜ「星図」が開いていたか』
清張の初期8短編集だが、“習作”感が強い。「顔」「市長死す」「張り込み」などがお薦め。一方「靴が容易に足にはいらない」（「反射」＜3＞）にはワロタ。表題作「星図」は推理にイマイチ無理が。
★★★☆☆

松本清張（著）2022新潮文庫 『空白の意匠』
清張の初期ミステリー短編集。昭和の初めの雰囲気がよく出ている。その匂いを嗅ぎながら読み進めると、現在にも通底する人間社会の有象無象が時代を超えて甦る。表題作と「巻頭句の女」がお薦め。
★★★★☆

松本清張（著）2024新潮文庫 『信長の二十四時間』
信長暗殺に忍者を噛ませるとこうなる、という一つのシミュレーション。信長の遺骸がいまだに行方知れずの理由と、秀吉の大返しの秘密については、歴史フィクションとして「これもありか」と納得。
★★★★☆

富樫倫太郎（著）2017講談社文庫 『雲上雲下』
現代では失われてしまった昔話を、名もなき一本の草が語る民話集。聞き手は子狐、山姥、龍の子など多彩。題材の面白さと作家の筆力に引き込まれる。だが「章ノ三は“蛇足”」のレビュー意見には同感。
★★★★☆

朝井まかて（著）2021徳間文庫 『信長の棺（上）』
本能寺の変の後、信長の遺骸はどこへ消えたのか？　信長側近の太田牛一はその謎に挑み、東奔西走。信長の後を襲った秀吉は、信長の評価を己の評価以下にしようと『信長公記』の書き直しを命ずる。
★★★★★

加藤廣（著）2008文春文庫 『信長の棺（下）』
桶狭間の真実とは？　本能寺の護衛が少なかったのは？　中国大返しの真相は？　秀吉の出自は？　安土城天守の謎とは？　次々と謎は解かれるが、牛一が能登に軟禁された理由だけは読了後まで不可解。
★★★★★

加藤廣（著）2008文春文庫 『貧しき人びと』
19世紀ロシアの文豪の処女作品。下級官僚ジェーヴシキンと薄幸の少女ワーレンカの間の往復書簡集形式の小説。同時期のパリを描いたゾラの『居酒屋』とは異なり作者は人間の矜持を強く印象付けた。
★★★★★

ドストエフスキー（著）1969新潮文庫 『蒼い苗点』
話の展開は面白いが冗長さもあり、死人を多く出すことによって最後はつじつま合わせのこじつけ感が強い。清張作品としては、同時期執筆の『ゼロの焦点』『かげろう絵図』の方が無理なく楽しめる。
★★★☆☆

1972新潮文庫 『霧の旗』
社会からも法律からも拒絶されたとき、弱者はどう生きるのか。仮構としての法治主義に敢然と挑む少女の相手は法治の一方の象徴でもある高名弁護士だった。復讐譚として片づけられない彼女の苦悩。
★★★★★

松本清張（著）1972新潮文庫 『闇の穴』
人間がそれぞれ置かれた立場に抗し、あるいは抗し切れずに流され続けていく悲哀を綴った珠玉の7短編集。「小川の辺」で好演した東山紀之もその一人か。“ジャニーズ問題”ではすっかり味噌を付けた。
★★★★★

藤沢周平（著）1985新潮文庫 『かげろう絵図（上）』
子種ばらまきオヤジ・家斉の退隠後も全盛を誇る大奥で、若い寵姫が殺された。蠢く大奥内部の権力闘争を裏で操るのは、こちらも隠居したはずの石翁。これを打倒すべく水野忠邦一派が立ち上がるが…。
★★★★★

松本清張（著）2004文春文庫 『かげろう絵図（下）』
「かげろう」とは、最終章の末尾、「栄枯は常に、人事の上に繰り返されるかげろうの図の如きもの」と描写されるが、戦後80年、現代日本の保守政権は、いまだ闇資金還流システムを温存、腐敗一極。
★★★★★

松本清張（著）2004文春文庫 『山彦乙女』
武田家滅亡と再興を期して甲州の山奥に秘された莫大な財宝。それを狙う者のあることを見越して代々財宝の防衛を任とする一族の狂気が絡まる。タイトルは清純派ロマン風だが、内容はなかなか奇怪。
★★★☆☆

山本周五郎（著）1974新潮文庫 『Dの複合』
浦島伝説と羽衣伝説から始まった雑誌新連載は第2回目にして早くも打ち切りの危機に。中盤からは「35・135」という謎の数字を軸に展開。謎解き部分は錯綜し過ぎでオーソドックスさに欠ける印象。
★★★☆☆

松本清張（著）1973新潮文庫 『検察側の罪人（上）』
古い少女絞殺事件の重要参考人が時効の壁に守られて不起訴に。一方、法改正により時効撤廃後に起きた老夫婦刺殺事件の容疑者として再浮上するが、老練検事の下、後輩の若手検事は冤罪の疑いを持つ。
★★★★★

雫井脩介（著）2017文春文庫 『検察側の罪人（下）』
「疑わしきは罰せず」の刑法原則を無視し「法の正義」を振りかざす老練検事は、新たに現われた容疑者を自ら殺害、捜査方針に拘泥。「10人の真犯人を逃しても1人の冤罪を生んではならない」が当然。
★★★★★

雫井脩介（著）2017文春文庫 『冤罪』
短編集ながらいずれも読みごたえがある。文体もいいが、ストーリー性、ペーソスも兼ね備え、武士、夫婦、友人、市井の庶民など、時代と人間に寄せる作家の感性が読者にしみじみと伝わるユモレスク。
★★★★★

藤沢周平（著）1982新潮文庫 『濡れ衣の女』
三味線と常磐津をこよなく愛するお人好しでおっちょこちょいの男三人組。江戸市中で起こるさまざまな事件を斜に構えながらも解決していく江戸人情話の4連作。表題作に加え『武士の矜持』が面白い。
★★★★☆

早見俊（著）2017新潮文庫 『乱灯江戸影絵（上）』
重度の言語障害を持つ嫡男家重の廃嫡問題に心を痛める将軍吉宗は、目安箱に投じられた1通の謎の上書主の探索を御庭番に命じる。紀州家所領で起きた一村焼き討ち事件や尼僧殺害事件が次第に表面化。
★★★★★

松本清張（著）2008角川文庫 『乱灯江戸影絵（下）』
幕藩体制維持のためには長子世襲が絶対条件。“名君”と言われた吉宗も、それがために数々の無名の人間を犠牲にする。作家は大岡越前をそんな体制派の一人として描くことによりその偶像を破壊した。
★★★★★

松本清張（著）2008角川文庫 『火定（かじょう）』
8世紀寧楽の都に遣新羅使が持ち帰った天然痘が爆発。多くの人が死ぬ中で孤軍奮闘の町医者を中心に物語が進行。阿鼻叫喚の死者の群れとさまざまな人間模様が織りなし、作家のボルテージは最高潮に。
★★★★★

澤田瞳子（著）2020PHP文芸文庫 『崖っぷちにて候新・のうらく侍』
「のうらく者」とは、能力がありながらぶらぶらと遊び暮らす者のこと。剣に秀で頭脳明晰、実行力に富む桃之進が統治機構の中で鬱屈しながらも悪を追及する姿勢が爽快。笑って読むにはもってこいだ。
★★★★☆

坂岡真（著）2014詳伝社文庫 『決戦！桶狭間』
今を時めく７人の時代文学作家の顔見世興行か…各人の持ち分は適切だったのか疑問が残る。そもそも「桶狭間は戦国最大の逆転劇」とする編集方針が定説に流れ過ぎではないか？突っ込み不足の感が。
★★★☆☆

冲方丁（著）砂原幸太郎（著）花村萬月（著）富樫倫太郎（著）ほか 『無宿人別帳』
大名改易や飢饉などによって生まれた大量の無宿人たち。幕藩体制強化のための犯罪厳罰化が新しい社会矛盾を生み出す。決して掬い上げられない“犯罪者集団”が陥った無間地獄を、清張が綴る10秀作。
★★★★★

松本清張（著）1996文春文庫 『樅の木は残った（上）』
江戸の初期、東北の雄藩伊達家の政治的混乱に題材を求めた山本周五郎の傑作。多くが「原田悪人説」に傾く中で、作家の別視点からのアプローチは原田をストイックな人間として見事に描き切った。
★★★★☆

山本周五郎（著）2003新潮文庫 『樅の木は残った（中）』
幕府は大名取り潰し政策として、仙台、加賀、薩摩の三大雄藩をやり玉に挙げた。その最初の試金石として仙台藩があることを見抜いた甲斐は、首謀者の一人・一の関の内部に取り入って陰謀阻止に動く。
★★★★☆

山本周五郎（著）2003新潮文庫 『樅の木は残った（下）』
幾重にも巧妙に仕掛けられた老中酒井雅樂頭の網が次第に絞られる中で、多くの縁者、部下を失った原田甲斐に遂に勝負の時が。凛として聳える樅の木の陰には、多くの女たちが流した理不尽な涙が…。
★★★★☆

山本周五郎（著）2003新潮文庫

『尻啖え孫市（上）新装版』
安土城下に飄として現れた愉快漢。赤い羽織に「日本一」の幟を立て町の辻君を冷やかし歩くのは雑賀鉄砲集団の若き頭領孫市。本願寺派との確執の中で生涯の敵信長を追い詰め、藤吉郎をあわてさせる。
★★★★☆

司馬遼太郎（著）2008角川文庫 『尻啖え孫市（下）新装版』
いち早く鉄砲を合戦に取り入れた信長と孫市。その鉄砲戦術では孫市が一枚上手だったが「天下布武」を目指す信長に徹底反撃する孫市も、”同盟軍”本願寺派の裏切り（信長と和睦）により戦略的敗北に。
★★★★☆

司馬遼太郎（著）2008角川文庫 『村上海軍の娘（上）』
戦国時代、瀬戸内の船舶通航を取り仕切っていた能島村上海賊の娘景（きょう）が、木津砦に立てこもる石山本願寺門徒に食料と武器を差し入れようと鉄砲集団雑賀衆を味方に付け、信長の大軍に挑む。
★★★★☆

和田竜（著）2013新潮社（単行本） 『村上海軍の娘（下）』
モデル・ローラのようなエキゾチックな風貌を彷彿とさせる景を「醜女」と称し、信長方泉州海賊との死闘に読者を引き込む作者の力量は見事。11年にわたる木津砦の戦の2年後に信長は本能寺で果てる。
★★★★★

和田竜（著）2013新潮社（単行本） 『五郎治殿御始末』
分裂した国論を押して成し遂げられた維新だったが、10年を経てもなお社会の隅々には納得感を持てない人々が多い。そんな世相の断片をうまくとらえた表題作など6編。就中「柘榴坂の仇討」は秀作。
★★★★★

浅田次郎（著）2021中公文庫 『かにみそ』
カニが人を食べるモチベーションが不明。したがって、最後に自ら茹でられる意味も不可解。カニと飼い主との“友情”物語であるとすれば、ここが泣き所なのかもしれないが。「百合…」の方がまだしも。
★★☆☆☆

倉狩聡（著）2015角川ホラー文庫 『誤審死』
読み始めは良かった。このまま冤罪を正すリーガルミステリーに進むかと思いきや、どうやら楽な復讐譚へ逃げ込んでしまった。箱崎を執拗に責め立てるシーンは常軌を逸していて、大きく評価を下げた。
★★☆☆☆

麻野涼（著）2015文芸社文庫 『フェイスレス過去のない男』
交通事故を前後してパラレルワールドが不完全な形ででき上がった。両世界をつなぐチューブを通してとんでもない事件が起きる。設定は申し分ないが、アイテムをごちゃごちゃと盛り込み過ぎた感が。
★★★☆☆

黒井卓司（著）2019角川ホラー文庫 『坂の途中の家』
家庭を持ち子を育てるという人生最大のイベントを、妻・母親・女性の肩にのみ背負わせる日本社会の宿痾。それを個人レベルに落とし込められた刑事事件被告と裁判員となった女性との表裏近接性が。
★★★★★

角田光代（著）2018朝日文庫 『福袋』
大食らいがゆえに離縁された姉と、その姉を利用しながら身代を築こうと打算する弟。そこに弟の嫁が絡む展開はTV大食い番組を寄せ付けない面白さ。8短編の傑作ぞろいは、表題通り宝物満載の“福袋”。
★★★★★

朝井まかて（著）2019講談社文庫 『徳川家康』
家康が若い側近に「五字でいうは、上を見な（上を見ればきりがない）。七字でいうのは、身のほどを知れ（上を羨ましがってばかりでは身を誤る）」と諭す。封建制を確立した家康の本領発揮の言葉だ。
★★★★☆

松本清張（著）1964角川文庫 『日輪の遺産』
著者と同世代人として、戦争への視点は共有できる。日本の軍国主義に対する徹底した批判と、それを許してしまった“国家・国民の原罪”は、マッカーサーによる占領では決して雪ぎ切れないことも…。
★★★★★

浅田次郎（著）2000徳間文庫 『花の下にて春死なむ』
「願わくは花の下にて春死なむ」と西行は詠んだが、作家は「その如月の望月のころ」を待たずして1月に急逝している。北海道に香菜里屋に似た店があったのを思い出し強いノスタルジアに襲われた。
★★★★☆

北森鴻（著）2016双葉文庫 『黄砂の進撃』
本書は「義和団」「妖術」の非科学性を揶揄したものではもちろんない。列強に“瓜分”された清朝末期、西太后政権に虐げられ利用された挙句に見捨てられた農民たちの命を賭けた戦いとして描写。
★★★★☆

松岡圭祐（著）2018講談社文庫 『かばん屋の相続』
元銀行員らしい著者の6短編。現実の経済活動において中小企業主が直面する様々な苦悩、人生の機微を、銀行員の側から抉り出す質の高い佳作。かつて自分も経験した、銀行との交渉の難しさが甦った。
★★★★★

池井戸潤（著）2011文春文庫 『囚人服のメロスたち』
震災時の横浜刑務所長による“受刑者全員解放”は支持するも、著者が朝鮮人虐殺や官憲による大杉栄一家殺害に多くを語っていないのは残念。だが木村元彦による詳細な解説がそれを充分カバーしている。
★★★★☆

坂本敏夫（著）2021集英社文庫 『明智光秀』
歴史の激動期には決まって出てくる「英雄生存説」が面白い。ロシア革命期にも一家惨殺を免れたロマノフ朝皇女アナスタシアや氷のネヴァ川に沈んだ怪僧ラスプーチンの生存説などが想像力を刺激する。
★★★★★

早乙女貢（著）2018文春文庫 『光圀伝（上）』
武から文への転換期の家光治世。光圀は突然、敬愛する長兄をさし措いて水戸徳川の世子に指名された。その不条理の解決を儒教の「義」の貫徹に求める。生涯子を持たぬとする光圀に、京降嫁の姫が。
★★★★☆

冲方丁（著）2015角川文庫 『光圀伝（下）』
朝廷を詩作で唸らせ、天下を取ったはずの光圀。最終盤で、己と臣下の大義のぶつかり合いから臣下を成敗してしまうが、そこに合理性のないヒステリックな非論理性を嵌め込んでしまった著者の敗北。
★★★★☆

冲方丁（著）2015角川文庫 『まりえの客』
表題作など短編6作だが、前3篇はフツーのスリラー仕立てで、後3篇は“欧州”もの。各編単独ではおもしろいのだが、バラバラな編集が全体をまとまりのないものにしてしまった。まさに“ばらえてぃ”。
★★★☆☆

逢坂剛（著）1996講談社文庫 『山猫の夏(上)』
ブラジル東北部の町を2分する地方豪族、それぞれの当主の長女と長男が駆け落ちした。その一方から連れ戻しを依頼された日本人アウトロー「山猫」が繰り広げる活劇。全編を覆う血の匂いが凄まじい。
★★★★☆

船戸与一(著)1987講談社文庫 『山猫の夏(下)』
両家の対立は駐屯する軍隊と警察をも巻き込み、迫撃砲弾が飛び交う”内戦”状態に。山猫の前には宿敵アラブ人が立ちはだかる。ハッピーエンドとは言えない作りだが、ラストでようやく心に潤いが戻る。
★★★★☆

船戸与一(著)1987講談社文庫 『火と汐』
受験勉強そっちのけで推理小説に嵌っていた頃の4作品。表題作は当時からヨットレース開始直後に、被害者が殺害された方が面白い展開になると思っていたが、再読してみてもその考えは変わらない。
★★★★☆

松本清張（著）2019文春文庫 『遠縁の女』
武家の跡取りが学友と美貌の幼馴染を残し自ら剣の武者修行に“出たはず”だった。5年後、帰藩した彼を思いもよらない事態が待っていた。推理小説張りの展開をみせる表題作など珠玉の時代小説3中編。
★★★★★

青山文平（著）2020文春文庫 『火神被殺』
所収の「神の里事件」と表題作「火神被殺」2作は『播磨国風土記』や『古事記』に題材をとった「神話モノ」。このおどろおどろしさは『火の路』を経て遺作『神々の乱心』へ続く著者終生のモチーフ。
★★★★★

松本清張（著）2012文春文庫 『草々不一』
ふとした行きずりから人助けに追い込まれた「紛者」、落ちそうで落ちないこの世の機微を描く「落猿」など、表題作を含め8短編。胸に染入る“まかて節”は、江戸の世のみならず現代にも共感を呼ぶ。
★★★★★

朝井まかて（著）2021講談社文庫 『白村江』
廐戸皇子の遺言によって半島不介入を国是としたはずの倭国だったが律令制国家の整備のためには唐文化を学んだ多くの官僚を必要としていた。国家再興を願う百済王を手玉に取った葛城皇子の策略とは?
★★★★★

荒山徹（著）2020PHP文芸文庫 『逃げる女』
北海道、茨城県、神奈川県…と幾重もの緊急配備をかいくぐり、どこまでも逃げる女の目的は?　19年前に起きた母子2人が死亡した交通事故の真相とは?　背後に隠れた“巨悪”に焦点が絞られる、お薦め本。
★★★★★

青木俊（著）2021小学館（単行本） 『幻の古代文字』
柳生の里の資産家の娘が、解読不能な一文字を残して殺された。これだけでもおどろおどろしい事件を予見させるが、読者はその展開ととともに、次々と提示される古代文字の魅力に引き込まれていく。
★★★★☆

邦光史郎（著）1985徳間文庫 『銀の猫』
百万都市・江戸にも介護の必要な高齢者は大勢いたに違いない。現代にも通ずる人間世界の悩みを描いた本作には、虚をつかれる。そこに働く“介抱人”への社会の施策は、今も昔と変わらず貧弱のままだ。
★★★★★

朝日まかて（著）2017徳間時代小説文庫 『犬の心　怪奇な物語』
人間の睾丸と脳下垂体を移植され共産主義者として蘇えったシャリク（犬コロ）が、執刀医と繰り広げるバトル。’20年代ソ連が舞台の風刺ファンタジーにカフカ『変身』を想起。新訳版訳者解説は秀逸。
★★★★★

ミハイル・ブルガーコフ（著）石井信介（訳）2022未知谷（単行本） 『孤鷹の天（上）』
奈良時代、時の政権内の上皇と天皇、仏教と儒教の争いを背景に、大使として入唐したまま帰国できなくなった父の迎えを家人・斐麻呂に託す娘広子の願いはしかし、時代の大波に吞まれ潰えそうになる。
★★★★★

澤田瞳子（著）2013徳間文庫 『孤鷹の天（下）』
時代・歴史小説を対象とした中山義秀文学賞受賞の力作。社会動乱の一方で大学寮学生たちの学問への情熱を力強く描く。時代への知識と洞察力、中国古典からの引用など著者の深い教養が随所に見える。
★★★★★

澤田瞳子（著）2013徳間文庫 『黒い巨塔　最高裁判所』
政権への忖度から本来の職務を自ら擲ってしまった最高裁。著者はその暗部に鋭く切り込む。だが第1部前半の機構内部の説明が冗長過ぎてその後のストーリーの文体と齟齬が。小説としてはやや未熟感。
★★★☆☆

瀬木比呂志（著）2019講談社文庫 『蚕の王』
社会から隔絶されたところで蚕のように硬い繭を作り、拷問によって自白を強要、裁判官を巻き込んで“犯罪者”を作り上げる。現憲法下の警察・検察・司法で横行した自白偏重の典型“二俣事件”のリアル。
★★★★★

安東能明（著）2021中央公論新社（単行本） 『御松茸騒動』
江戸藩邸から国表の松茸同心に左遷された尾張藩士榊原小四郎。聞くこと見るものすべてが未経験。手探りで松茸の育成に没頭する彼を取り巻く人間模様が、こみ上げる笑いとともに松茸の匂いを運ぶ。
★★★★☆

朝日まかて（著）2017徳間時代小説文庫 『最悪の将軍』
「関ケ原」から80年、武断を廃し文治による統治を目指す5代将軍綱吉の奮闘を、主に妻信子の目線から描写。大地震や富士山噴火などにも見舞われた綱吉の晩年を、信子は「最悪の将軍」と逆説で説く。
★★★★☆

朝井まかて（著）2019集英社文庫 『大相撲殺人事件』
力士が爆発したり対戦相手が皆殺されたり、なんとくだらないと思いつつ、読了後の解説を読んでますます混乱。「謎解きの合理性を徹底するとナンセンスンに見える。それが本格魂だ」と。一体どこが？
★★☆☆☆

小森健太朗（著）2008文春文庫 『火怨―北の燿星アテルイ（上）』
大宝律令により中央集権体制を整えた朝廷に残された懸案は、服わぬ蝦夷（えみし）の征伐だった。朝廷の狙いは彼の地の金鉱脈。中央の迫害と侵略に抗して蝦夷の若きリーダー・アテルイが立ち上がる。
★★★★★

高橋克彦（著）2002講談社文庫 『火怨―北の燿星アテルイ（下）』
アテルイの抵抗に業を煮やした朝廷は田村麻呂を送り込み、両軍エース同士の腹の探り合いが始まる。後年の明治政府による蝦夷地（北海道）征服までの先鞭をつけた田村麻呂の美化が過ぎるきらいも…。
★★★★☆

高橋克彦（著）2002講談社文庫

『贖罪』
少女暴行殺人事件を巡り著者独特の筆致が絡みつくように進行するミステリー連作。大人の言葉の刃が人格形成期の少女たちの心に突き刺さったまま、15年の歳月が流れ、“贖罪”が殺人となって連鎖する。
★★★★★

湊かなえ（著）2012双葉文庫 『密室殺人ゲーム王手飛車取り』
「殺したい人間がいるから殺したのではなく、使いたいトリックがあるから殺してみた」（本書）が現代ミステリのメタファではなくモチーフだとするならば、譬え様のない違和感に滑落せざるを得ない。
★★★★☆

歌野晶午（著）2010講談社文庫 『コラプティオ』
本書は『売国』に次いで私が読んだ著者2作目。作品のモチーフがどこにあるかは別として、震災後の原発を取り上げていながら安全性への検証が杜撰。読者を暗に「再稼働」へ誘導する姿勢がみえる。
★★★☆☆

真山仁（著）2014文春文庫 『だましゑ歌麿』
質素・倹約を最上の価値観とした寛政の改革は、他方で政権への批判を許さない強権的な文化言論統制でもあった。稀代の絵師・歌麿の妻殺しから、南町同心仙波進一郎の命がけの反権力の戦いが始まる。
★★★★★

高橋克彦（著）2002文春文庫 『日輪の賦』
壬申の乱後の7世紀日本。大陸の強国と伍し、中央集権国家として生まれ変わろうとする女帝・讃良は、その法的基盤として大宝律令の成立にすべてを賭ける。宮廷内のスリリングな権力闘争が見もの。
★★★★★

澤田瞳子（著）2016幻冬舎文庫 『楽しい犯罪』
「おじさま」にほのかに心寄せる“鍵開け名人”暁子、新聞社にコネ入社の庶務係聡子、親友の大学生美樹の三人がのし歩く犯罪とイタズラの境界領域。その「楽しい犯罪」は論評するのもバカバカしい。
★★★★★

佐野洋（著）1990新潮社（単行本） 『政宗の遺言』
老いてなお幕府への反骨を秘めた政宗の心の内と、その今際に向け、胡散臭い語り部の話がストーリーを構成。父の代から黒脛巾組（伊達家御庭番）として運命づけられた小姓鉄五郎は自立へと向かう。
★★★★☆

岩井三四二（著）2018エイチアンドアイ（単行本） 『北越の龍　河合継之助』
戊辰戦争で中立を守り、戦いを忌避しようとした長岡藩家老・継之助。だが薩長が押し立てた錦旗に立ち向かわざるを得ない運命が。著者は妻や婚外子を顧みない奔放さを”蒼き龍”として持ち上げ過ぎも。
★★★☆☆

岳真也（著）2000学研M文庫 『歌川国芳猫づくし』
料亭の女将が殺され愛猫がその下手人を見ていたと、猫好きの絵師・国芳は主張。動物の絵を描かなかった広重は、そんな猫はいなかったと言う。国芳の観察眼がモノを言う「江の島比べ」など7連作。
★★★★☆

風野真知雄（著）2016文春文庫 『真田残党奔る』
宇都宮吊天井の策略を見破った柳生宗矩は、将軍秀忠を裏街道へと逃れさせる。さらにその裏には真田残党らを糾合した天下簒奪の企図も。佐助、才蔵らも登場、さらさら流れるような筆致の五味文学。
★★★★☆

五味康祐（著）1987文春文庫 『霧笛』
開港直後の横浜「関内」。日本人女性をめぐる下男とその英国人主人が繰り広げる“恋のさや当て”。当時の日本人の心中に鬱屈していた下男の胸のすくような無鉄砲さがいい。豊富なイラストが効果的。
★★★★★

大佛次郎（著）村上光彦（編）木村荘八（イラスト）2009未知谷（単行本） 『蒲団・一兵卒』
明治の自然派作家・田山花袋の二編。代表作『蒲団』には「蒲団」が二度出てくる。最初は喜劇として、二度目は悲劇として。『一兵卒』の主人公が脚気衝心に苦しみ死にゆくまでの描写がすさまじい。
★★★★★

田山花袋（著）2002岩波文庫 『球形の荒野（上）』
戦争中、中立国で客死した父の筆跡が、偶然、古寺の芳名帳で見つかった。そこから始まる「もしや生きている？」との、娘久美子の疑念。打ち明けられた恋人の新聞記者の前には次々と不審な事実が。
★★★★★

松本清張（著）2010文春文庫 『球形の荒野（下）』
“国体の護持”のため徹底抗戦を叫ぶ軍部の陰で、国民の命と国土を守るため、一人の外交官が極秘裏に停戦交渉を進めていた。軍部との確執のなか、なぜ久美子の父は姿を消したのか。そこには一体何が。
★★★★★

松本清張（著）2010文春文庫 『明日からは、殺人者―ミステリー傑作選26』
11人の作家による競作。ミステリーが輝いていた時代の“珠玉”の短編が勢揃いだ。本書から独断でベスト3を選ぶとすれば、①皆川博子、②小杉健治、③小池真理子、でどうよ。バイキングランチ風だ。
★★★★☆

日本推理作家協会（編）1994講談社文庫 『石の血脈』
シーア派分派“暗殺教団”、シュリーマンの伝説、アトラントローグ、古代巨石文化など前半の布石はそれなりに面白いが、吸血鬼や狼人間、際限のない官能乱交が続く後半は”伝奇物”とはいえ全く興醒め。
★★☆☆☆

半村良（著）2007集英社文庫 『ヒトラー暗殺計画』
ヒトラー暗殺未遂は「7月20日事件」の他にもあった。その4年前、1940年9月の大規模な暗殺計画の局面に、日本人通信員・御木本が絡んでしまった。『スターリン暗殺事件』に次ぐ歴史サスペンス。
★★★★☆

桧山良昭（著）1994徳間文庫 『火の路(上)』
1960年代のサイケブームで密かに流行した幻覚を呼ぶハッシッシ（ハシーシュ＝インド大麻）は、アサシン（刺客）の語源。それが原因となった傷害事件を起点にイラン拝火教へブッ飛ぶ清張の創造力。
★★★★★

松本清張(著)2009文春文庫 『火の路(下)』
作家はイランへ飛んだ主人公・通子に、飛鳥の酒舟石は7世紀のイランからの帰化人が用いた“麻薬施設”であるとする大胆な仮説を語らせる。ここから斉明天皇と拝火教との関係がミステリアスに展開。
★★★★★

松本清張(著)2009文春文庫 『階段を下りる女』
40年の時を経て再会した一葉の絵画。そこに描かれた一人の女と彼女にまつわる三人の男たちの胸に突き刺さったままだった思いが迸る。読む年代を選ぶのかもしれないが、私はちょうどその“適齢期”だ。
★★★★★

ベルンハルト・シュリンク(著)松永美穂（訳）2017新潮クレストブックス 『間諜二葉亭四迷』
ロシア皇帝爆殺未遂犯としてサハリンへ流されたピウスツキ―と、陸軍にロシア国内情勢の調査依頼を受けた文豪・四迷の交流を軸に描く歴史の一コマ。『オホーツク諜報船』と並ぶ西木ワールド秀作。
★★★★★

西木正明（著）1997講談社文庫 『亡国のイージス（上）』
「朝鮮敵視正当化」の一方、「国防を疎かにした日本」や「対米追従外交」を批判し、さらに「日本人の精神性」まで踏み込んで称賛するコメントが多い。本書読後に「覚醒」「発奮」するこの異様さ。
★☆☆☆

福井晴敏（著）2002講談社文庫 『亡国のイージス（下）』
ディテールに及ぶ不必要なオタメゴカシ記述が続き、現実にはあり得ない架空の物語に終始。そう思って読めば“それまで”の荒唐無稽なハチャメチャ漫画風。昔なら『サンデー』や『マガジン』の類。
★☆☆☆☆

福井晴敏（著）2002講談社文庫 『神曲法廷』
管理支配体制に組込まれた日本の判事、検事、法務官僚。それに馴染めずに精神症を発症した検事が「ドーム放火殺人」「判事、弁護士連続殺人」の謎ときに迫る本格推理。“ダンテ抜き”でも楽しめる。
★★★★☆

山田正紀（著）2001講談社文庫 『売国』
国産ロケットの開発を夢見る新人研究者と、幼なじみの官僚の失踪を追う気鋭の検察官のデュオストーリー。その接点から次第に浮き彫りになるロケット技術の対米横流しとそれに絡む「売国奴」の暗躍。
★★★☆☆

真山仁（著）2016文春文庫 『逃亡＜上＞』
香港で軍諜報活動に従事していた憲兵守田は、敗戦による武装解除に先立ち逃亡。偽名を使い帰国するが、しだいに戦犯捜索の追手が迫る。『笹まくら』(丸谷才一)にも似た戦前と戦後社会を繋ぐ恐怖。
★★★★★

帚木蓬生（著）2000新潮文庫 『逃亡＜下＞』
何人もの人間を殺した憲兵守田。だが敗戦を境に、長い逃亡を経てスガモに収容されるうちに、天皇は戦争責任を問うに値しない人間として見定める一方で、自分は戦犯としての責任を受容する心境に。
★★★★★

帚木蓬生（著）2000新潮文庫 『雪の階(上)』
永田鉄山暗殺や天皇機関説などで世相が暗くなる昭和10年。華族の令嬢、笹宮惟佐子の親友寿子と陸軍士官が樹海で謎の“心中”。惟佐子宛に届いた仙台消印の葉書の謎に、ドイツ人音楽家の死が重なる。
★★★★☆

奥泉光（著）2020中公文庫 『雪の階（下）』
物語は奇怪な展開を辿り、2・26事件へとつながっていくが、そのあたりは清張の『神々の乱心』によく似ている。本作はオカルト的要素が強すぎて興醒め。未完とはいえ、清張の『神々』に一日の長が。
★★☆☆☆

奥泉光（著）2020中公文庫 『ジェノサイド＜上＞』
内戦下のコンゴ。ピグミー族に生まれた異形の子を現生人類の敵と察知したアメリカが抹殺のため軍事コマンドを派遣。一方、日本には父が残した難病治療新薬の研究を引き継ぎ苦闘する大学院生が…。
★★★★★

高野和男(著)2013角川文庫 『ジェノサイド（下）』
難病の息子の治療費を稼ぐためにコマンドに応募した傭兵はしだいに本国の命令に疑問を持ち、ピグミーの子の保護とコンゴ脱出に方針を転換。コンゴ、東京、ワシントンを舞台に緊迫する”反戦”作品。
★★★★★

高野和明（著）2013角川文庫 『スターリン暗殺計画―ドキュメンタル・ミステリィ』
南進に備えて対ソ兵力が手薄になった日本は、ソ連内部分裂を誘う「熊工作」（スターリン暗殺）と後方撹乱を狙う「陸工作」（ウクライナ独立）の同時進行を企図。大物将校の対日亡命に始まる謀略戦。
★★★★★

桧山良昭（著）1978徳間書店（単行本） 『無限の山旅』
ダダイズムと佯狂の果て餓死を遂げた辻潤と「甘粕事件」の被害者・伊藤野枝の間に生まれた画家・辻まこと。4人もの女性に子を産ませたその女遍歴は母へのノスタルジアなのか、“暗い昭和”の投影か。
★★★☆☆

西木正明（著）1994中央公論社（単行本） 『鄭成功－旋風に告げよ＜上＞』
明末清初の時代（江戸幕府草創期）、海商・鄭芝竜と平戸の娘の間に生まれた福松（国姓爺鄭成功）は中国に渡り南京で修学。父の方針により明と清の双方に親子で二股をかけ、一族の生き残りを図るが。
★★★★☆

陳舜臣（著）1999中公文庫 『鄭成功―旋風に告げよ＜下＞』
二股作戦は父芝竜の投降と、子の成功が時代の流れに逆らい明朝の再興を賭け清と戦うことで失敗。台湾からオランダを追い出すところで物語は打ち切られ、中だるみもあって小説としての出来は今イチ。
★★★☆☆

陳舜臣（著）1999中公文庫 『レディ・ジョーカー（上）』
社会に倦んだ競馬仲間の5人がビール会社社長を誘拐。5日間の監禁ののち身代金を要求しながら人質を解放してしまう。その意図を巡り錯綜する警察の憶測とヤミ金社会に張りめぐらされた怪奇な伏線。
★★★★★

高村薫（著）2010新潮文庫 『レディ・ジョーカー（中）』
社長の替わりに “人質”に取られたのは夏商戦を控えたビールそのものだった。表向き6億円の要求の裏で20億円を強請された日之出ビール。裏取引を警戒する警察と、暗躍する仕手集団、追う新聞記者。
★★★★★

高村薫（著）2010新潮文庫 『レディ・ジョーカー（下）』
血色に染まったビールはついに青酸入りにかわる。他方では金融スキャンダルを追った記者が次々と姿を消す。被害企業、警察、検察、マスコミを翻弄した一大事件の着地点は？巨大な波間に霧消するLJ。
★★★★★

高村薫（著）2010新潮文庫 『高麗秘帖―朝鮮出兵異聞　李舜臣将軍を暗殺せよ』
日本では「秀吉の朝鮮出兵」とさらりと流すが、その実は一方的な朝鮮への武力侵略だった壬辰倭乱。残酷・苛烈な日本軍を迎え撃つべく英雄李舜臣がよみがえる。多彩な登場人物で描く歴史長編活劇。
★★★★★

荒山徹(著)2003祥伝社文庫 『ビブリア古書堂の事件手帖～栞子さんと奇妙な客人たち～』
北鎌倉ビブリオ古書店を舞台に展開する青春ライトノベル。「漱石と太宰」が“本をこよなく愛する店主”と“本を読めない店員”を結びつけ、「過去と現在」の謎を解きほぐす。着想は良いが空回り気味。
★★★☆☆

三上延（著）2011メディアワークス文庫 『火焔樹』
死の商人に成り下がった商社マンが、死んだ友人の息子を引き取り、その秘められた死の謎に挑むハードボイルド。戦場での体験と友人の死の謎との、およそかけ離れた展開が読者を見事に裏切るB級。
★★☆☆☆

北方健三（著）2005徳間文庫 『神と野獣の日』
清張としては異色の作品だが、核を弄ぶ人類への渾身の警告と受け止めたい。それにつけても、核兵器禁止条約を蔑ろにしつつ、パンデミック下で“戒厳令”を目論む日本政府の態度は何とかならないか。
★★★★★

松本清張（著）1982講談社文庫 『天国の罠』
恋人を事故で死なせたライターが元代議士のもとから忽然と消えた娘の捜索を頼まれるが行く先々で闇の暴力が彼に襲いかかる。この事実が暗示するものとは？堂場にしてはつじつま合わせがやや苦しい。
★★★☆☆

堂場瞬一（著）2012角川文庫 『去就－隠蔽捜査6』
「隠蔽捜査」シリーズ6作目。今作は、以前読んだ3作目よりはテンポがよくなっている。ストーカー、加害者、被害者が錯綜するスリリングな展開はよいが、事件解決後の特別監察部分はやや興ざめ。
★★★☆☆

今野敏（著）2018新潮文庫 『怒りの菩薩』
終戦直後の台湾。武装解除された日本軍部隊の引揚中に起きた3件の殺人事件。ことは、大陸での国民党と汪精衛（政権）、共産党の三つ巴の駆け引きが発端だった。トリックにやや難があるが、面白い。
★★★★☆

陳舜臣（著）1985集英社文庫 『霧が止むまで待て』
知床の大自然の中で繰り広げられる貴重植物の盗掘と覚せい剤の密造。犯罪の陰には、辺境の地に入植した開拓者の苦闘とそこで育った者たちが織りなす悲哀が…。不慣れな犯罪に挑む地元警察の苦闘。
★★★★☆

西木正明(著)1988徳間文庫 『冬のアゼリア　大正10年・裕仁皇太子拉致暗殺計画』
帝国主義的膨張を続ける日本に対し、韓国独立運動派は過激化し、訪欧の裕仁皇太子の途にテロを計画。成功していれば歴史は大きく変わったろうに。テロと国家暴力の違いは何かを問う西木ワールド。
★★★★★

西木正明（著）2005文春文庫 『凍（しば）れる瞳』
戦争中に”敵性外国人”という出自を負った大投手スタルヒンにはB級戦犯として処刑された中学時代のライバルがいた。北海道大会決勝戦で目前の完全試合を逃したスタルヒンのその後を描く表題作ほか。
★★★★★

西木正明（著）1991文春文庫 『ユダの季節』
フランコ独裁末期のスペイン。日本赤軍がバスク独立運動と結び、訪西の日本皇室をターゲットにした周到なテロ計画が進行。だが組織間と組織内の軋轢が“ユダ”を生み…。著者の時代小説より面白い。
★★★★☆

佐伯泰英（著）2008双葉文庫 『孫文の女』
辛亥革命、日露戦争、張作霖爆殺など歴史の中で名をあげた男たち。その陰には、意図することなく”歴史作り”に参加した女たちがいた。綿密な取材によりその史実を掘り起こし描いた表題作など4篇。
★★★★★

西木正明（著）2008文春文庫 『那覇心中』
企業小説、性豪小説など幅広いジャンルに加え、作家のライフワークは「朝鮮・移民・原爆」と言われる。その中から標題作など「心中モノ」ばかり5作を収録。原爆が題材の「ケロイド心中」は秀逸。 ★★★★☆

梶山李之（著）1989講談社文庫 『松本清張の「遺言」―「神々の乱心」を読み解く』
2・26事件を奇貨とし、昭和天皇退位とその弟秩父宮を擁し皇位簒奪を謀る謎の宗教団体月辰会。“万世一系”の神々がクーデター側についた“乱心”の謎解きは冒頭の入水女官携帯の「御霊示」に戻る。
★★★★★

原武史（著）2009文春新書 『神々の乱心（上）』
皇太后宮女官が郷里の谷川で謎の入水自殺。彼女が持っていた「三日月と北斗七星」が描かれた「通行証」らしきものの正体は?　それを期に相次ぐ他殺死体の発見との関係に挑む県警特高課係長の苦闘。
★★★★★

松本清張（著）2000文春文庫　

『神々の乱心（下）』
満州を支配した関東軍による麻薬政策と、そこから日本政界に大量に還流した政治資金。“令和”日本の宗教・皇室・政治のつながりを予見するかのような著者未完の遺作。巻末「編集部註」も興味深い。
★★★★★

松本清張（著）2000文春文庫

『悪貨』
オウム真理教集団がサリンなどを使わずに贋札の製造・流通に手を出していたなら…そんな“if”を想起させる一作。悪貨が良貨を駆逐するのは“貨幣”の世界に限らず、日銀“異次元の金融緩和”も同じこと。
★★★☆☆

『悪貨』島田雅彦（著）2013講談社文庫 『サラの鍵』
ナチスの手先となり1万人超の自国民（ユダヤ人）をドイツ軍の手に引き渡したパリ警察。戦後、半世紀を経てシラク大統領が事実を認めるまでに要した長い歳月。“国家の犯罪”を見事に抉り出す優秀作。
★★★★★

タチアナ・ドロネ（著）2010新潮クレスト・ブックス（単行本） 『もつれ』
東欧民主革命の先鞭をつけたポーランドだが、社会の深部にはいまだ全体主義の残滓が…。「集団セラピーと猟奇殺人事件」に挑むシャツキ検察官を、“失うもの”の多い捜査が待つ。著者三部作第一弾。
★★★★☆

ジグムント・ミウォシェフスキ（著）田口俊樹（訳）2018小学館文庫 『一抹の真実』
反ユダヤ主義と“呪われた兵士”を背景に起きる連続殺人事件。挑戦する都落ちの検事が不倫のベッドの中で不倫の謎解き。その一方、現代捜査がDNA鑑定に触れない最大の『謎』も。面白さは前作を凌駕。
★★★★☆

ジグムント・ミウォシェフスキ（著）田口俊樹（訳）2018小学館文庫 『怒り＜上＞』
地下壕で見つかった”完璧”な白骨死体。3作目でようやくDNA鑑定が用いられ骨は複数人のものと判明、連続殺人の疑いが浮上。検察官シャツキはDVの訴えを無視し、部下から告発を受けて窮地に…。
★★★★★

ジグムント・ミウォシェフスキ(著)田口俊樹(訳)2017小学館文庫 『怒り＜下＞』
“窮地”は部下の告発だけではなかった。ワルシャワから呼び寄せて一緒に暮らし始めた愛娘が誘拐される事態に…シャツキは時間との戦いの中で独自捜査に賭けるが、姿の見えない犯人との神経戦が続く。
★★★★★

ジグムント・ミウォシェフスキ(著)田口俊樹(訳)2017小学館文庫

『西部戦線異状なし』
人類最初の世界規模の戦争。若きドイツ人志願兵がその最前線で体験した戦争の実際。それがどれほど残酷で悲惨であっても、自身の死でさえも「西部戦線に異常なし。報告すべき件なし」と報告された。
★★★★★

エーリヒ・マリア・レマルク（著）秦豊吉（訳）1955新潮文庫 『屋根の上のバイオリン弾き』
「娘たちの行く末を見届けずに亡くなった女房が一番幸せ」。苦難の来し方と今を述懐し、そう独白する老主人公テヴィエ。“バイオリン”は、ユダヤ教の教えを守り、屋根から落ちずに平静を保つ喩え。
★★★★☆

ショラム・アレイヘム(著)南川貞治(訳)1973ハヤカワ文庫 『レンブラントの帽子』
いずれも捨てがたい3秀作。分けても私の目を引いたのは「引き出しの中の人間」に描かれた、ドニエプル河岸からの眺望。留学中、公園の柵にもたれ、大学教師との意見の衝突に悩んだ記憶が鮮明に…。
★★★★★

バーナード・マラマット（著）小島信夫、浜本武雄、井上謙治(訳)2010夏葉社（単行本） 『草の径』
「最後の元老」西園寺公望（清張は“凡庸”と評価）の晩年と彼を取り巻く坐漁荘の人間模様を描く「老公」他6短編。『草の径』とは、その人本来の業績とは別に、ふと見せる“踏み分け道”のようなもの。
★★★★☆

松本清張（著）1994文春文庫 『リフカの旅』
12歳のユダヤ人少女は、ウクライナでのポグロムから逃れ家族とともにアメリカへ向け旅立つ。その途中両親と引き離されてしまい、不安と希望の胸中をプーシキン詩集の余白に綴った“子供向け文学”。
★★★★★

カレン・ヘス（著）伊藤比呂美、西更（訳）2015理論社（単行本） 『安楽病棟』
認知症病棟の入院患者とそれを取り巻く家族や病院職員の苦闘と悩みを綿密に描写。文庫本600頁のぶ厚さだがその筆力が読む者を退屈させず、一つひとつのケースが伏線となる一級のミステリーを構成。
★★★★★

帚木蓬生（著）2017集英社文庫 『現代ウクライナ短編集』
スターリン圧政下で600万人の餓死者を出したウクライナ。その恐怖が覚めやらない1970年代から連邦崩壊後の90年代まで、閉塞と変転の歴史を経験した作家たち16人の短編集。巻末の編者解説も秀逸。
★★★★★

オリガ・ホメンコ、藤井悦子（編・訳）2005群像社ライブラリー（単行本） 『空白の戦記』
未曽有の強い台風により船体が二つに折れた日本の最新鋭艦。海軍省は船体の弱点を隠ぺいするため、生存兵ごと艦を砲撃し、撃沈する方策を選択する「艦首切断」など、国家の非情を描く6編を収録。
★★★★☆

吉村昭（著）1981年新潮文庫 『がん消滅の罠　完全寛解の謎』
癌寛解のトリックは面白いが、西條教授の動機と仕掛けの大きさのアンバランスが不自然。二つのプロットの整合性がいまイチ。むしろ近藤理論との対決に持ち込んだ方が著者の知識が生かせたのでは？
★★★☆☆

岩木一麻（著）2018宝島「このミス」大賞文庫 『虚ろな十字架』
“殺人”事件の被害者・加害者のそれぞれの思いをないまぜて、死刑制度とは何かを問う。極刑を求めつつも叶えられない遺族の一方で、殺人を隠し通すことで苦悩を深める者の葛藤などその意味は深い。
★★★★★

東野圭吾（著）2017光文社文庫 『凍える牙』
“過酸化ベンゾイルと狼犬”をキーワードに起こる連続殺人…音道貴子刑事シリーズの1作目。完全男社会の警察組織にあって、いつしか狼犬に惹かれてゆく貴子の心の変遷を、作家の筆致はうまく捉えた。
★★★★☆

乃南アサ（著）2000新潮文庫 『疑心―隠蔽捜査3』
隠蔽捜査シリーズの3作目(らしい)。米大統領来日の警備を巡る警察組織内部、先遣隊米シークレットサービス、女性秘書官などとの距離感に平常心を失いかける警備本部長。前半の2／3にやや退屈感が。
★★★☆☆

今野敏（著）2012新潮文庫 『笑う警官』
札幌市内の警察アジトで道警の美人巡査が殺された。実際に起きた現職警部の覚せい剤所持と警察幹部の裏金作りをモデルに、著者は警察機構の深い闇に切込む。警察は被害者の同僚警官の抹殺を謀る。
★★★★☆

佐々木譲（著）2007ハルキ文庫 『長崎ぶらぶら節』
親の手で花街へ売られた芸妓愛八の助力を得て長崎の古い地唄を発掘し歩く学者古賀。古賀への恋心を抱きつつも、愛八は病に伏す後輩お雪に自分と同じ境遇を見る。作家なかにし礼が描く人情と心性。
★★★★☆

なかにし礼（著）2003新潮文庫 『風紋（上）』
女子高生の母が教師との“不倫”の果てに殺された。被害者、加害者双方の家族が巻き込まれた突然の殺人事件により破壊される平穏な生活。それぞれの家族の圧し潰されそうになる心理描写が凄まじい。
★★★★★

乃南アサ（著）2014双葉文庫 『風紋（下）』
公判の冒頭、被告が犯行を否認することで物語は一転、サスペンスフルな展開を見せる。凶器の行方、自白調書の信ぴょう性を巡る攻防の中、“犯人”の妻と被害者の娘の対比を見つめる記者の目が…。
★★★★★

乃南アサ（著）2014双葉文庫 『晩鐘(上)』
『風紋』から7年、被害者の娘真裕子は母の喪失感を埋め切れず、事件の遠因を姉と父に求め赦せずにいる。他方、“殺人者の子”となった大輔が、母と離れて祖父母の元で暮らす長崎では従兄が殺された。
★★★★★

乃南アサ(著)2015双葉文庫 『晩鐘(中)』
真裕子の母殺害事件を取材した記者建部は、偶然にも長崎に転勤となり、二つの事件を取材することになる。真裕子、大輔、その母香織など、事件の周囲とその家族を通して見た建部の目に写ったものは。
★★★★★

乃南アサ(著)2015双葉文庫 『晩鐘(下)』
一つの殺人事件が描き出した人間模様と、彼らが翻弄された先に起きた二つ目の殺人事件。二つの家族を襲った“風紋”は、消えることのない“晩鐘”の音色となって引きずり、終わりない余韻を予見させる。
★★★★★

乃南アサ(著)2015双葉文庫 『JR上野駅公園口』
東北震災の地には足を運び被災民に語りかける天皇夫婦も、足下の上野公園に起居するフクシマ出身のホームレスの存在は歯牙にもかけない。その両者の人生の陰陽の対比から作家が感じ取ったものとは。
★★★★★

柳美里（ユウミリ）（著）2017河出文庫 『黒龍荘の惨劇』
明治政府が不平等条約改正に躍起になっていたころ“資産家”の黒龍荘当主が首なし死体で発見、それを皮切りに次々と人が死んでいく。伊藤博文の命を受けた月輪（がちりん）探偵が調査に乗出すが…。
★★★☆☆

岡田秀文（著）2017光文社文庫 『悪意』
こいつが殺ったことはわかっているが、その動機が不明だ。著者は“犯人”の手記と刑事の捜査記録を交互に提示することで、読者に“ワイダニット”を読み解かせる…。次第に具現化する殺意と悪意とは？
★★★★☆

東野圭吾（著）2001講談社文庫

『閉鎖病棟』
死刑執行が失敗して刑場から放り出された元死刑囚、幻聴に取りつかれた男、義父の凌辱を受け堕胎経験を持つ少女。彼らを収容する精神病院で起った殺人事件を通し人間の危うさと強さを優しく描く。
★★★★★

帚木蓬生（著）1997新潮文庫

『ソハの地下水道』
ナチス支配下のポーランド地方都市ルヴフ。地下水道に難を逃れた極限のユダヤ人らを、下水道職人ソハが匿う。独ソの狭間でもがく人々の詳細な描写。だが本当の不条理は、最終頁で結晶化する。名訳。
★★★★★

ロバート・マーシャル（著）、杉田七重（訳）2012集英社文庫

『阿Q正伝・狂人日記他十二編(吶喊)』
清朝崩壊後も根強く残る儒教思想が辛亥革命の前に桎梏となり立ちはだかる。魯迅の文芸熱は高まるが、自己啓発のできない民衆との乖離に悩んだ末の手段は、社会に見立てた阿Qの「銃殺」だった。
★★★★★

魯迅(著)　竹内好(訳)1983岩波文庫

『蒼穹の昴＜1＞』
極貧の「糞拾い」少年春児は兄貴分の文秀の科挙受験に従い上京。世に出るため自らの手で去勢し、宦官への道を目指す。清末の大動乱期を舞台に、西太后、宦官、張作霖らが織りなす大河歴史ドラマ。
★★★★★

浅田次郎（著）2004講談社文庫

『蒼穹の昴＜2＞』
列強による蚕食と異常気象により清の国土は荒れた。権力者西太后は病める老大国の幕を閉じ、天下を万民に返す決断をするが、東夷日本の脅威と軍事を束ねる李鴻章の心中を読み切れず、ひとり懊悩。
★★★★★

浅田次郎（著）2004講談社文庫

『蒼穹の昴＜3＞』
権力が西太后派と光緒帝派に割れる中、后派内で出世した春児は帝派の文秀と袂を分かつ。李鴻章は政権簒奪を狙う袁世凱に刺客を放つ。急進派康有為の台頭を嫌う日本は伊藤博文の帝派顧問就任を画策。
★★★★★

浅田次郎（著）2004講談社文庫

『蒼穹の昴＜4＞』
変法の改革は袁世凱の寝返りで潰えた。自らの手で夫（咸豊帝）と息子（同治帝）を殺し、甥（光緒帝）を幽閉した西太后は、歴史の掉尾を飾るべく重大な決意を固める。李鴻章に関する陳舜臣の解説。
★★★★★

浅田次郎(著)2004講談社文庫

『珍妃の井戸』
清の分割植民地化を目指す列強が義和団事件を利用して紫禁城を包囲する中、帝の側室・珍妃が古井戸に投げ込まれ殺された。英独露日の“代表”が犯人捜しを始めるが、光緒帝の証言で大ドンデン返しも。
★★★★★

浅田次郎（著）2005講談社文庫

『中原の虹＜1＞』
中原の覇王の徽・龍玉を手にした馬賊張作霖は東三省の大頭目にのし上がる。狂気を装う幽閉中の光緒帝は列強の侵略を防ぐため袁世凱の裏切りを許し後事を託す。宮廷ドラマは一転して荒々しい展開に。
★★★★★

浅田次郎（著）2010講談社文庫

『中原の虹＜2＞』
西太后は溺愛する光緒帝を清の滅びの淵から救うため自らの手で弑し、身代わりに未だ人格定まらぬ3歳の溥儀を指名。著者が描く西太后のこの“残酷さ”は、歴史を優に凌駕する。龍玉は張学良の手中に。
★★★★★

浅田次郎（著）2010講談社文庫

『中原の虹＜3＞』
第3巻冒頭、著者は清国建国時の帝権の移譲に強い疑念を呈する。その力と陰謀の交錯は、いま間近に迫った清国崩壊を暗示する。宣統帝退位を受けて袁世凱は革命派から権力を奪い臨時大総統の地位に。
★★★★★

浅田次郎（著）2010講談社文庫

『中原の虹＜4＞』
民国大総統位を巡り孫文・宋教仁・袁世凱が熾烈な三つ巴の駆け引きを演じる中、著者は袁世凱の評価を“回天のヒーロー”へと一転、西太后の相似形として描く。趙爾巽、王永江ら脇役の描写も面白い。
★★★★★

浅田次郎（著）2010講談社文庫

『マンチュリアン・リポート』
張作霖爆殺事件の調査に向かった志津邦陽の報告書と、張を乗せた機関車のモノローグの2本立てにより構成。『珍妃の井戸』とともに中国侵略の実相に迫るスピンオフが効果的。巻末に澁谷由里の解説。
★★★★★

浅田次郎（著）2013講談社文庫

『天子蒙塵　第一巻』
クーデター勃発！紫禁城から天津へ蒙塵する溥儀一家。英国亡命の夢を捨て切れない阿片中毒の王妃と、皇帝との史上初の離婚訴訟に踏み切る側妃。王朝の内外に変転する人心と国のかたちを活写する。
★★★★★

浅田次郎（著）2016講談社（単）

『天子蒙塵　第二巻』
列強の思惑が交錯するリットン調査団。溥儀を擁し傀儡国家の既成事実化を図る関東軍。張作霖亡き後、学良と袂を分かち徹底抗戦の馬占山が痛々しい。静海への思いが迸る梁文秀と玲玲の里帰り。
★★★★★

浅田次郎（著）2016講談社（単）

『天子蒙塵　第三巻』
張作霖爆殺調査に向かった志津邦陽は、石原莞爾、甘粕正彦らの登場に日本軍の深い闇と、大陸侵略に熱狂する日本国民の救い難さを見る。全シリーズ中“浅田史観”が最も鮮明に描かれた一番の読み所。
★★★★★

浅田次郎（著）2018講談社（単行本）

『天子蒙塵　第四巻』
様々な思惑のもと日本人が跋扈した蜃気楼・満洲国。主役の“皇帝”溥儀と張学良は手探りのまま国の未来に希望を託す。著者は婉容の出産と嬰児の処分で満州の転結を暗示しつつ、シリーズを手仕舞う。
★★★★★

浅田次郎（著）2018講談社（単行本）

『居酒屋』
19世紀半ばのパリ貧民窟。酒と罵り合い、他人の裏話に明け暮れる未熟な労働者たち。作家の視線は資本主義の発達の陰で激化する社会矛盾と、労働の成果から疎外されゆく人間の姿をリアルに捉えた。
★★★★★

エミール・ゾラ（著）古賀照一（訳）1971新潮文庫

『裏声で歌へ君が代』
画商・梨田が舞台を廻すことで物語が展開。台湾独立運動あり国家論あり、マルクス主義やアナーキストから右翼の大物まで登場し著者・丸谷の脳内はめまぐるしく変転。読者は“丸谷文学”に翻弄される。
★★★★☆

丸谷才一（著）1982新潮社（単行本）

『族譜・李朝残影』
「創氏改名」を描いた「族譜」。小作米1年分を日本軍へ進んで供出する親日家富豪にも、命に代えても譲れないものがあった。「強制ではなかった」とする日本人右派の主張を根底から覆す。他二秀作。
★★★★★

梶山李之（著）2007岩波現代文庫 『寒い夜』
⁬日中戦争末期、重慶空爆で生活を破壊され、肺の病を得た男の家族の物語。極貧の中から新たな自己実現を模索する妻と、それに強く反発する男の母が繰り広げる嫁姑の確執。対日戦争勝利の日、男は…。
★★★★☆

巴金（著）立間祥介（訳）2016岩波文庫

『ソーネチカ』
本好きのソーネチカと反体制芸術家の夫との家族を題材に、独ソ戦以降の数十年を生きた「女の一生」を描く。ソ連崩壊後の作家のモチーフはユダヤ人差別問題。本作はマイルドな仕上がりで読みやすい。
★★★★☆

リュドミラ・ウリツカヤ（著）沼野恭子（訳）2002新潮クレスト・ブックス

『ペンギンの憂鬱』
「人間とペンギンが織りなすユーモアとペーソスの世界」なんて思ったら大間違い。ソ連崩壊後のウクライナ・キエフ。漠としたその不安定社会が舞台のサスペンスミステリー。「ミーシャ」は“3人”いた?
★★★★★

アンドレイ・クルコフ（著）沼野恭子（訳）2004新潮クレスト・ブックス

『朗読者』
15歳年上の女性ハンナを愛したミヒャエルは、情事の後決まって本の朗読をせがまれるが、その理由は物語の最後に明かされる。「愛した者が戦争犯罪者だったら?」の問いは、今もドイツ社会に重い。
★★★★☆

ベルンハルト・シュリンク（著）松永美穂（訳）2003新潮文庫　

『父と子』
既得権益から逃れられない父の世代と、既成概念を否定し社会に新しい価値観を持ち込もうとする子の世代。農奴解放のうねりが押し寄せる革命前のロシアの農村の世代間葛藤と人間愛を重層的に描く。
★★★★☆

イワン・セルゲーエヴィッチ・ツルゲーネフ（著）工藤精一郎（訳）1998新潮文庫

『大尉の娘』
18世紀中葉、ロシア史上最大の農民反乱“プガチョフの乱”を反動の帝政側から描く。それにしても本作や『オネーギン』にも出てくるほど、プーシキンは決闘がお好き。自らも決闘により37歳で落命。
★★★☆☆

アレクサンドル・セルゲーエヴィッチ・プーシキン（著）、神西清（訳）2006岩波文庫

『停電の夜に』
人と人との関係は“すきま風”に弱い。それは夫婦、恋人、家族間でも同じこと。インド系移民の若夫婦が不安定なロウソクの炎の下で互いの過去を語り合う。辛めのスパイス風味が効いた表題作など9編。
★★★☆☆

ジュンパ・ラリヒ（著）、小川高義（訳）2003新潮文庫

『脱出』
終戦時、樺太から「脱出」を図った漁民らが時化に遭い、食料や漁具を失ってオホーツク沿岸の町に漂着。だが北海道の食糧事情は樺太より格段に厳しかった。表題作等敗戦時の「少年」を描いた5編。
★★★★☆

吉村昭（著）1988新潮文庫

『笹まくら』
わずかな風にもそよぐ笹の葉擦れ音は、徴兵忌避の逃亡者には追手が迫る恐怖を感じさせる。8月15日を境に追手は消滅したはずだったが、気が付けば戦前から切り離されることのない戦後社会の不安が。
★★★★★

丸谷才一（著）1974新潮文庫

『ロシア皇帝の密約』
米国へのアラスカ売却契約には買い戻し特約があった。だが契約書の行方が杳としてわからない。ソ連に向って配備されたアラスカのアメリカ核ミサイル撤去に向け、スターリンは“領土”奪還に動いた。
★★★★☆

ジェフリー・アーチャー（著）永井淳（訳）1986新潮文庫

『飯場女のうたー芦別事件・怒りの26年』
下山事件、松川事件、三鷹事件などGHQの関与が濃厚な一連の国鉄関連事件。類似事件が私の生まれ育った北海道根室本線の炭鉱町でも起きた。無実の夫を支え無罪判決を勝ち取った妻の壮絶な手記。
★★★★☆

井尻光子（著）1884学習の友社（単行本）

『対馬丸』
“次世代の兵士”とされた沖縄の学童は「対馬丸」で本土疎開途中、魚雷攻撃を受け沈没。783名の子供たちが犠牲に。その陰には15歳以上の男子は疎開を許されず、本土防衛の捨て石とされた事実が。
★★★★★

大城立裕（著）2015講談社文庫

『父と暮らせば』
原爆劫火の中、家の下敷きになった父を熱波で救出できなかった娘。3年後に出会った若者に胸をときめかせつつも、「自分だけ幸せになるなんて」と悩む心情を父に仮託し、演じる二人一役が面白い。
★★★★★

井上ひさし（著）2001新潮文庫

『海軍特別攻撃隊』
「体当たり特攻」の不合理を主張した美濃部正少佐の心情を描いた「われ特攻に参加せず」、特攻を忌避したため自決を強いられた弟の忘れ形見を訪ねる主人公を描く「空港へ」の2編が秀逸。ほか3編。
★★★★☆

豊田譲（著）1980集英社文庫

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
1968年チェコ事件の数十年後、プラハに学んだ著者が旧友を訪ね歩き見た“嘘”と“真っ赤な真実”。特権的各国共産党幹部とソ連共産党のドグマを告発し民族のアイデンティティを問う表題作など3秀作。
★★★★★

米原万理（著）2004角川文庫

『夏の闇』
ベトナム戦争に従軍した記者は、戦争の惨禍と苛烈さから精神の抜け殻となり戦場を離脱。ベルリンで旧知の日本人女と遭遇し、酒と女に埋没する。開高式文学は“西欧”に身を置いたまま闇に沈みゆく。
★★★★☆

開高健（著）1983新潮文庫

『朝鮮戦争（上）血流の山河』
アチソンの反共防衛ライン設定が金日成の南侵を直接的に誘発。他方、植民地支配末期に関東軍と日本軍による38度線での分割統治が米ソによる後の南北分断につながった事実はほとんど触れられず。
★★★☆☆

芝豪（著）2014講談社文庫

『朝鮮戦争（下）慟哭の曠野』
東西両陣営の面子をかけ膨大な人命の損傷と全半島の荒廃をもたらした戦争は休戦。だが日本の視点からは掃海艇の戦争派遣、日本占領軍と国連軍の法的な区別、国連軍の基地使用など超憲法的な問題が。
★★★★☆

芝豪（著）2014講談社文庫

『時をかける少女』
中2の孫のプレゼントに購入。時空移動と淡い恋愛を絡ませた1967年刊のSFライトノベル。本作自体が50年を経た今に“時空移動”したような新鮮な読後感を与える。他に「悪夢の真相」など2編も収録。
★★★★☆

筒井康隆(著)2006角川文庫

『なぞの転校生』
突然、中2の広一たちのクラスにやってきたその転校生は、核戦争を逃れ、家族とともに次元を渡り歩く“次元漂流民”だった。安住の地を地球に求めた彼らを待っていたのは？孫へのプレゼントの2冊目。
★★★★☆

眉村卓(著)2013講談社文庫

『女ざかり』
妊娠中絶の是非を問う社説を書いた論説委員・弓子に、言論封殺と新聞社への国有地払い下げを絡めた攻撃が。弓子の不倫相手哲学者が語る日本の「贈答文化」論と「憲法廃止」論を結びつける奇異さも。
★★★★☆

丸谷才一(著)1996文春文庫

『ニサッタ、ニサッタ（上）』
「ニサッタ」はアイヌ語で「明日」の意。東京の三流大学を卒業した耕平は、短い間に挫折を繰り返し、明日への目標を失う。行き着いた先の新聞販売店で、沖縄から上京した謎の女性杏奈と巡り合う。
★★★★★

乃南アサ（著）2009講談社文庫

『ニサッタ、ニサッタ（下）』
掃きだめのような新聞配達業界からもドロップアウトした耕平は、故郷・知床へＵターンするが、そこでも人生の葛藤は続く。“アイヌ”“アメラジアン”を伏流語に、失敗や挫折に不寛容な日本社会を描く。
★★★★★

乃南アサ（著）2009講談社文庫

『動物農場〔新訳版〕』
著者「序文案」によれば、本作は明らかにスターリン独裁に対する痛烈な批判である。だが、それを日本の“擬制”民主主義に君臨する現政権独裁と重ねて読めば、それはそれでストンと落ちるから面白い。
★★★★☆

ジョージ・オーウェル（著）、山形浩生(訳)　2017ハヤカワepi文庫

『火星年代記』
地球上の争いを避けて新天地を火星に求めた探検隊だが、結局は火星人との間でそれを再現したに過ぎず、自らも滅ぶ。ネイティブ・アメリカン文化を滅ぼした欧州人が核を弄ぶ“いま”を描く壮大な皮肉。
★★★★☆

レイ・ブラッドベリ（著）、小笠原豊樹(訳）2010早川文庫SF

『喪失の儀礼』
“脱血死”と“失血死”という方法で殺害された2人の医者をめぐる本格的謎解き。薬品会社プロパーと医者、患者家族の接点を探り出そうとするも、捜査は堂々巡りに。下山事件の轢断死体からヒントか？
★★★☆☆

松本清張（著）1978新潮文庫

『昭南島に蘭ありや＜上＞』
真珠湾襲撃と同時に上陸した日本軍はマレー半島を占領し、シンガポールを昭南島と改名。日中戦のさなか、反日感情が強い華僑への粛清が続く。台湾出身客家の青年・光前は中華義勇軍に身を投じる。
★★★★☆

佐々木譲（著）2008中公文庫

『昭南島に蘭ありや＜下＞』
昭南島では軍が慰安所を作る一方で、憲兵隊による中国人への拷問が続き、英国人の取り澄ました偽善が日本人のむき出しの欲望に取って代わる。東条英機暗殺計画が進み光前の心は「蘭」から「乱」へ。
★★★★☆

佐々木譲（著）2008中公文庫

『三たびの海峡』
戦時中、九州の炭鉱へ強制連行された朝鮮人・河時根。過酷な労働とリンチが続くなか脱走、日本人女性とともに解放後の故国へ。45年後、三たび海峡を渡る目的は？著者ならではの構成で描く秀作。
★★★★★

帚木蓬生（著）1995新潮文庫

『新装版　俄―浪速遊侠伝―〔上〕』
「俄」とは即興の大道ドタバタ喜劇のこと。公儀隠密の父が妻子を残し遁走。幼い万吉は家族を養うため任侠の道に入る。博打の場荒らしから大坂有数の胴元へとのし上がった男の破天荒な生涯を描く。
★★★☆☆

司馬遼太郎（著）2007講談社文庫

『新装版　俄―浪速遊侠伝―〔下〕』
大塩平八郎の乱や江戸期の拷問、堺事件、大政奉還から千日前首塚騒動など本作はシークエンスに事欠かないが、父の出奔の真相や、その後、幼い万吉を助けた芸者小左門の行く末などは明かされず終い。
★★★☆☆

司馬遼太郎（著）2007講談社文庫

『新装版　阿片戦争（一）』
産業革命を経た大英帝国は、世界に冠たる軍事力と航海術を武器に自国商品の販路をアジアへ求めた。植民地インドのベンガル湾で大量栽培した阿片を中国に持ち込み、鎖国を続ける清朝に開港を迫る。
★★★★☆

陳舜臣（著）2015講談社文庫

『新装版　阿片戦争（二）』
極刑をもって阿片を取り締まる欽差大臣林則徐に対し、阿片弛緩論の保守派が林の失脚を画策。英国は「阿片」から「頑迷な中華思想の打破」へと問題をすりかえ、大軍を派遣。広州・川鼻で両軍は激突。
★★★★★

陳舜臣（著）2015講談社文庫

『新装版　阿片戦争（三）』
林則徐による阿片大量没収を口実に、英軍は淅江省舟山島を軍事占領。さらに北上し、首都北京を窺う天津沖にまで達する。動揺した道光帝は、側近の讒言により主戦論を唱える林則徐に責任を求め解任。
★★★★☆

陳舜臣（著）2015講談社文庫

『新装版　阿片戦争（四）』
清の外交姿勢が問われる中、満州族支配に倦んだ農民らは外敵侵略に際し清朝へは非協力的。その動きは阿片戦争後「滅満興漢」を掲げる太平天国の乱へとつながる。19世紀中国の激動の時代がここに。
★★★★☆

陳舜臣（著）2015講談社文庫

『サイレント・ブレス　看取りのカルテ』
「サイレント・ブレス」とは、静けさの中で穏やかな最期を迎えることをいうが、一方で本書には医療費削減の観点から「いつまで生きるんだか」（麻生太郎）的なナチス思考（指向）への警戒感は皆無。
★★☆☆☆

南杏子（著）2018幻冬舎文庫

『地熱』
1981年に夕張で起きた炭鉱のガス突出事故。エネルギー転換によりスクラップ＆ビルトに晒された労働者を襲った悲劇。日本を貫く安全性無視の資本の論理は30年後の原発事故を経た今も連綿と続く。
★★★★☆

稲沢潤子（著）1986新日本出版社（単行本）

『冬の旅人』
西洋画『岩の上のディアーヴァル（悪魔）』に魅せられた環（たまき）は、画学生を志し帝政末期の露西亜へ。彼女の「長い旅」は、ラスプーチン生誕の秘密やニコライ一家最期の真相にまで及ぶことに。
★★★☆☆

皆川博子（著）2002講談社（単行本）

『ヒトラーの防具（上）』
日本から剣道の防具一式を贈られたヒトラーは、それを自らの「守護神」と見たて戦争に突き進む。駐ベルリン青年武官の香田は、ユダヤ人女性ヒルデを自室アパートにかくまい戦火が過ぎる日を待つが…
★★★★☆

帚木蓬生（著）1999新潮文庫

『ヒトラーの防具（下）』
三国同盟下、親ヒトラーの大島駐独大使と、一線を画そうとする東郷駐ソ大使。軍部強硬派に引きずられるまま狂気に陥った天皇制日本帝国は、国際情勢に慧眼を持たない現在の自公政権と相似形をなす。
★★★★☆

帚木蓬生（著）1999新潮文庫

『聖断　昭和天皇と鈴木貫太郎』
終戦の「聖断」に至る小説の構成には一日の長があるが、明治憲法の“立憲主義”の下、国務と統帥権の狭間を隠れ蓑に戦争責任からヒロヒトを庇う著者の姿勢に不快感が。そこに他国侵略への反省はない。
★★☆☆☆

半藤一利（著）2006PHP文庫

『靴の話―大岡昇平戦争小説集』
「これから『天皇陛下万歳』をいうから聞いていてくれ」といい残して死んだ衛生兵にとって天皇崇拝とは何だったのか。ミンドロ島でゲリラに襲われた「襲撃」や、著者代表作「捉まるまで」など6編。
★★★☆☆

大岡昇平（著）1996集英社文庫

『海と毒薬』
周囲の状況（黒い海や毒薬）に抗えずに流される人間の心理を、実際にあった米兵生体解剖事件をモデルに描く創作。キリスト教的倫理感より、日本軍による戦時捕虜大量虐殺からのリアルな視点が必要。
★★★☆☆

遠藤周作（著）1960新潮文庫

『ストックホルムの密使（上）』
駐ストックホルム海軍武官夫妻が、独自に入手した米国の原爆実験成功とソ連対日参戦情報を本国に伝えるべく密使を派遣。天皇の戦争責任と国体の護持のはざまでポツダム宣言の扱いに激震が走る日本。
★★★★★

佐々木譲（著）1997新潮文庫

『ストックホルムの密使（下）』
敗戦を認めない政府は聖断によりソ連に仲介を依頼。自ら侵略・虐殺したアジア諸国や沖縄の悲惨、被爆者の苦しみを顧みず、天皇・皇室の安泰のみの視野狭窄症・日本に果たして学習能力はあるのか。
★★★★★

佐々木譲（著）1997新潮文庫

『マタハリ』
オランダ生まれのストリッパー・マタハリは、第一次大戦中スパイ容疑でフランス軍に逮捕され銃殺刑に。前半生の描写に比して、スパイとなった経過を「金のため」と一元収束させる物足りなさが残る。
★★★☆☆

マッシモ・グリランディ（著）、秋本典子（訳）1989中公文庫

『ロマノフの十字架＜上＞』
ロシア王朝最後の皇女アナに託されたラスプーチンの十字架がアラスカの凍土から流出、疫病ウイルス復活の危機が迫る。パンデミックから人類を救いたい疫病学者と副葬品目当ての盗掘者との死闘が。
★★★☆☆

ロバート・マセロ（著）、石田亨（訳）2014竹書房文庫

『ロマノフの十字架＜下＞』
ロシア朝第4皇女は惨殺を逃れていた…この世界的都市伝説と疫病パンデミックを巧妙に搦めたミステリー娯楽作品。スペイン風邪は大正期日本でも関東大震災を約5倍も上回る45万人の死者を記録した。
★★★☆☆

ロバート・マセロ（著）、石田亨（訳）2014竹書房文庫

『14歳〈フォーティーン〉満州開拓村からの帰還』
満州での敗戦引揚体験を後世に語り継ごうとする著者が三人称で綴った“手記”。男手を戦地へ招集された日本人開拓民女性の苦労に思いを馳せつつも、農地を強奪された中国人農民の辛苦への言及はない。
★★★☆☆

澤地久枝（著）2015集英社新書

『浅草博徒一代～アウトローが見た日本の闇～』
ボブ・デュランによって脚光を浴びたといわれる、ある浅草博徒の生涯を追ったオーラルヒストリー。さまざまな挿話のなか、戦争に対しあくまで斜に構えたヤクザのアウトローぶりが何とも面白い。
★★★★☆

佐賀純一（著）2004新潮文庫

『ジョニーは戦場へ行った』
砲弾炸裂により顔と両手脚を失った兵士ジョニー。頭をベッドに打ちつけモールス信号で意志を伝えようとするが、理解できない医者は鎮静剤で彼を眠らせる。戦争が生んだ凄まじい人間の恐怖がここに。
★★★★☆

ドルトン・トランボ（著）、信太英男（訳）1971角川文庫

『大君の通貨―幕末「円ドル」戦争』
本国で食い詰め日本へ赴任した初の米総領事ハリスは日本と海外の金銀比価の差を悪用、莫大な個人資産を築く。幕府の浮沈をかけ熾烈な通貨改革に乗り出した外国奉行水野忠徳には、だが思わぬ敵が…。
★★★★★

佐藤雅美（著）2003文春文庫

『明るい夜暗い昼』
キーロフ暗殺に始まる旧ソ連スターリン統治下の大粛清。「地下テロ組織」のメンバーとして逮捕され、理不尽な裁判で受けた「10年の禁固刑」に始まる過酷な獄中を著者自ら自伝的に回顧する秀作。
★★★★★

エヴゲーニャ・ギンズブルグ（著）中田甫（訳）1990集英社文庫

『マリコ』
本書はマリ子の父・寺崎英成の描写部分がすべて。日米開戦に至る軍部と外務省との確執があったのは確かだとしても、軍部を批判する余り外交官・寺崎や外務省を美化し過ぎるNHK的眼力不足が痛い。
★★☆☆☆

柳田邦男（著）1983新潮文庫

『怪僧ラスプーチン』
ロシア・ロマノフ朝末期、「馬泥棒」から身を興し異端のキリスト教宗派で皇帝の側近にのし上がったラスプーチン。戦争と革命によって瀬戸際に立たされた帝政は孤立無援の中、怪僧の呪術に頼る。
★★★★☆

マッシモ・グリッランディ（著）米川良夫（訳）1989中公文庫

『北の逃亡者～中国人強制労働の悲劇』 たかしよいち（著）1989理論社（単行本）
中国から北海道の炭鉱へ強制連行され、過酷さのあまり逃亡、終戦を知らずに山野をさまよう主人公と日本人少女との心の交流。作品中の日本人が皆善人過ぎで強制連行が持つ歴史的な罪過を薄めている。
★★★☆☆
『妻の部屋――遺作十二編』古山高麗雄（著）2005文春文庫
『フーコン戦記』の時代錯誤“純文学者”古山高麗雄による12編。表題作には妻への一片の愛情も感じられず、他も日の丸・君が代など戦争ボケした著者の押しつけがましさが後味の悪さとして残る愚作。
★☆☆☆☆
『派兵≪第1部≫シベリア出兵』高橋治（著）1973朝日新聞社単行本
第一次大戦とロシア革命の混乱に乗じ、シベリアに傀儡政権を打ち立てようと蠢いた日本軍部。歴史の中に埋もれ行く侵略戦争「シベリア出兵」の真実を膨大な資料を読み解きつつ暴き出す、会心の長編。
★★★★★
『派兵≪第2部≫シベリアの虹』高橋治（著）1973朝日新聞社単行本
1918年3月、レーニンは革命防衛のため対独単独講和に踏み切るが、英仏米日はチェコ軍団救出を名目に派兵、革命潰しを狙う。日本は他意を秘め、地の利を生かし最大派兵でシベリア利権の独占を企む。
★★★★★
『派兵≪第3部≫雪と吹雪と』高橋治（著）1976朝日新聞社単行本
米の参戦とドイツ革命により西部戦線は終了。ソヴィエト政権はモスクワを取り巻く反革命軍との激闘を制し、オムスク政権は崩壊。窮地のコルチャックはロマノフ朝の金塊と共にイルクーツクへ逃亡。
★★★★★
『派兵≪第4部≫凍土の孤影』高橋治（著）1977朝日新聞社単行本
コルチャックを見放した列強が撤兵を急ぐ中、なおもシベリアでの傀儡政権樹立に夢を繋ぐ日本軍の飽くなき侵略主義により、起こるべくして起きた尼港“虐殺”事件。本作はその直前で謎の未完終了。
★★★★★
『ロシアについて―北方の原型』司馬遼太郎（著）1989文春文庫
日本が大正時代に行った「対華21ヶ条要求」と「シベリア出兵」は、たとえ動機が「愛国的行動」だとしても、後世から見れば愚劣な国家行為だとし、それを支持し扇動した言論人をも厳しく断罪。
★★★★☆
『小説大逆事件』佐木隆三（著）2004文春文庫
日露戦争後5年、閉塞状況を打破し次なる大陸侵略に備えるため、支配層は天皇の“不可侵性”仮構をもって、幸徳秋水ら12名を「大逆罪」で刑場へ送り込む。若き啄木の時世と冤罪に向ける目は鋭い。
★★★★★
『日本の戦歴　満州帝国の誕生―皇帝溥儀と関東軍』山川曉（著）2001学研M文庫
愛新覚羅溥儀を中心に婉容、文繡、溥傑、石原莞爾、辻政信、甘粕正彦、川島芳子、天皇ヒロヒトなど、多彩な人物とともに、謀略によって生まれた人工国家・満州の成立から終焉までを重層的に描く。
★★★★☆
『ポーツマスの旗』吉村昭（著）1983新潮文庫
日露講和交渉を「誠実さ」の小村全権と「狡猾さ」のウイッテ全権の二元対立論に矮小化。そのためロシアの東清鉄道支配を非難する小村の論理が後の満州事変で自家撞着となるさまを描き切れていない。
★★★☆☆
『テロルの決算』沢木耕太郎（著）2008文春文庫
17歳の狂信的右翼少年が演説中の浅沼稲次郎社会党委員長を刺殺！子供の頃、我が家で初めて買ったテレビ中継で目の当たりにした強烈な記憶が今も。共謀罪ではテロを防ぎえないことを歴史が証明。
★★★★☆
『大黒屋光太夫（上）』吉村昭（著）2005新潮文庫
伊勢の遭難船乗組員・光太夫らは露領アリューシャン列島に漂着。南進政策をとるエカテリーナ女帝は望郷の思いで認めた彼らの帰国嘆願書を却下、日本語話者養成のためシベリアに留め置こうと目論む。
★★★☆☆
『大黒屋光太夫（下）』吉村昭（著）2005新潮文庫
米欧との競合により、ロシアの対日政策が光太夫らを帰国させることで鎖国を突き崩す方向に転換、光太夫の女帝謁見で帰還実現へ。新資料の発見により『おろしあ国酔夢譚』から一歩突き抜けた作品に。
★★★★☆
『風濤』井上靖（著）1967新潮文庫
鎌倉期、超大国「元」に蹂躙され、日本侵攻に加担させられた属国高麗。国内に充満する元の部隊と食糧収奪、軍船建造や兵役に駆り出される高麗の民の塗炭と高麗王朝の必死の外交努力を描く歴史秀作。
★★★★★
『ベルリン飛行指令』佐々木譲(著)1993新潮文庫
「蛮行より愚行を選ぶ」として南京市民無差別掃射を敢然と拒否、解任された戦闘機乗り・安藤と乾に、零戦2機をドイツへ運ぶ新たな任務が。ドイツの思惑から危険なインド中東ルートを指示される。
★★★★☆
『江は流れず―小説日清戦争（上巻）』陳舜臣（著）1984中公文庫
朝鮮王宮内部の確執と大陸侵攻の足掛かりを得たい明治日本。加えて宗主権を守ろうとする清の李鴻章や英・米・露等の先発帝国主義の野望が渦巻く中で、次第に主体性を失っていく朝鮮半島の悲劇が。
★★★★★
『江は流れず―小説日清戦争（中巻）』陳舜臣（著）1984中公文庫
閔氏政権失脚を狙った甲申事変失敗後、日本は東学党の乱鎮圧に向かう清軍を口実に、軍部主導で半島への大軍の派兵を決定。背景には福沢諭吉の『脱亜論』など文化人による侵略の正当化と世論誘導も。
★★★★★
『江は流れず―小説日清戦争（下巻）』陳舜臣（著）1984中公文庫
莫大な戦費をつぎ込み世論操作と国民の熱狂に支えられた戦争目的は、いつしか「朝鮮の独立」から大義なき遼東半島割譲へと変質。アジア侵略初期の旅順虐殺事件は後の南京大虐殺へ向かう軍の体質に。
★★★★★
『ある革命家の回想』川合貞吉（著）1987徳間文庫
満州事変から日中全面戦争へと続く日本の中国侵略の渦中で尾崎秀実と共にゾルゲ事件に連座した共産主義者・川合貞吉。反帝国主義闘争の一方で、熊沢天皇擁立劇など右翼陣営への攪乱戦術も興味深い。
★★★★☆
『上海』横光利一（著）2008岩波文庫
1925年上海、邦人経営の紡績工場で起きた中国人労働者射殺事件。日本で食い詰め租界に屯しつつ、歴史的な反帝国主義闘争に触れながらも自己変革ができない、著者を含む日本人の退廃をママに描く。
★★★☆☆
『流氷の海―ある軍司令官の決断』相良俊輔（著）2010光人社NF文庫
シベリア出兵や南京攻略戦に携わりハルピン特務機関長を歴任した帝国主義先兵・樋口季一郎の負の軍歴を、ユダヤ難民救出の“オトポール（神話）事件”やキスカ撤退で虚飾した歴史倒錯・修正小説。
★☆☆☆☆
『韃靼疾風録＜上＞』司馬遼太郎（著）1991年中公文庫
江戸の初期は大陸では明朝から清への移行期。平戸に漂着した韃靼（女真族）の姫アビアを送り届けるため、藩主の命を受け大陸に渡った武士・庄助が見た愛新覚羅勃興の歴史ドラマ。司馬遼最後の小説。
★★★★☆
『韃靼疾風録＜下＞』司馬遼太郎（著）1991中公文庫
明の自壊が進行する中、太宗ヌルハチの第14子ドルゴンは智略で明の拠点・山海関を陥し遂に紫禁城へ。韃靼に従軍した庄助は徳川の鎖国によって窮地に。帰国したい庄助と両親を謀殺されたアビアは？
★★★★★
『大本営が震えた日』吉村昭（著）1981新潮文庫
真珠湾攻撃とマレー上陸戦の二正面同時開戦極秘指令書を乗せた機が敵地に不時着、戦時情報管理の大危機が勃発。薄氷を踏む偶然に国運を賭した大本営の無謀さを予見させる開戦セミドキュメンタリー。
★★★★★
『秋瑾火焔の女(ひと) 』山崎厚子（著）2007河出書房新社（単行本）
自らも強いられた悪習「纏足」からの女性解放に始まり清朝打倒に身を投じた浙江省の火焔の女・秋瑾。「秋風秋雨、人を愁殺す」の遺句を詠み処刑されたが彼女の闘いは1911年辛亥革命として結実。
★★★★☆
『風の盆恋歌』高橋治（著）1987新潮文庫
シベリア出兵を描いた『派兵』の著者によるおわら風の盆を舞台とした“不倫”小説。デカダンティスムに流れすぎで、アイデンティティを異にする両作のパラレル思考に違和感。『北海盆歌』の方がマシ。
★★☆☆☆
『ピコラエヴィッチ紙幣―日本人が発行したルーブル札の謎』熊谷敬太郎 (著)2009ダイヤモンド社 (単行本)
傀儡政権樹立と領土的野心をむき出しにした日本帝国主義のシベリアへの軍事侵略を一顧だにしない「日本人ってすごい」的駄作。小説としても平板で、佐高・幸田ら城山賞選者の歴史眼が問われる。
★★☆☆☆
『李香蘭私の半生』山口淑子・藤原作弥(著)1990新潮文庫
日中戦争の前後、奉天（瀋陽）、北京、上海で女優、歌手として数々のヒットを飛ばした李香蘭。だが、戦争の激化に伴い日本人であることを明せなくなる。平頂山事件の描写は歴史証言としても圧巻。
★★★★☆
『サハリンへの旅』李恢成（著）1983講談社 (単行本)
戦前のサハリンで生まれ育ち、戦後、日本へ引揚げた著者の一族には取り残された者も多い。韓国、朝鮮、日本、ソ連の政治と歴史の狭間でアイデンティティを探し求める旅が分断された者の悲劇を紡ぐ。
★★★★★
『見事な死』文芸春秋（編）2008文春文庫
昭和を生き世の中に足跡とインパクトを残して去って行った各界の著名人48人の縁（えにし）に連なる人たちが見つめてきたそれぞれの「看（見）取り」を表現。吉村昭や丹波哲郎らの意外な素顔も。
★★★☆☆
『或る女』有島武郎（著）1995(新潮文庫)
日清戦争の頃、個性を封殺する社会に反発、時代を超えて奔放に生きた「或る女」。美貌と才知が故に世を弄び、絶望の中に没落する女の情念を描く。反感を覚えつつも分厚い読み応えの有島文学最高峰。
★★★★☆
『生きている兵隊』石川達三（著）1997(中公文庫)
帝国陸軍が暴虐の限りを尽くした南京攻略戦。その実態をあるがままに描写しようとした戦争犯罪告発の書。“尖閣”や“南シナ海”にいきり立つ前に知るべきは、日本人が誰に何をしたかという侵略の事実。
★★★★★
『総員起シ』吉村昭（著）2014(文春文庫)
戦時下の潜航訓練中に沈没した「伊号第33潜水艦」。9年後引き揚げられた艦の中でカメラマンが見た驚愕の事実とは。表題作ほか樺太引揚げの悲劇が題材の『手首の記憶』など戦時ミステリ―5編。
★★★★★
『山背郷』熊谷達也（著）2004(集英社文庫)
山背（東北に冷害をもたらす北東風）が吹き付ける自然と闘いながら生きるマタギ（猟師）や、日本海難史上最悪となった洞爺丸沈没事故で遺体の収容に力を尽くす潜水夫師弟を描いた力作等珠玉の9編。★★★★☆
『大谷光瑞の生涯』津本陽（著）1993(角川文庫)
明治期、英国留学中の西本願寺第22世法主・光瑞。仏教伝来ルートを探査・研究しているのが西洋人だけであることに衝撃を受け、宗門の浮沈を賭けて中央アジア探索に乗出す。モノマニア的側面も。
★★★☆☆
『平の将門』吉川英治(著) 1989(講談社吉川英治歴史時代文庫)
中世貴族社会の末期、土地争いから叔父を殺し「反逆者」「野蛮人」と蔑まれた将門は妻子を殺され鬼神と化す。将門を語るにはやや小編過ぎ。同著者『私本太平記』がお薦め。★★★☆☆
『エトロフ発緊急電』佐々木譲(著)1994(新潮文庫)
日本海軍による真珠湾奇襲の裏にうごめくスパイたち。ルーズベルトは事前に察知していたのか？『ベルリン飛行指令』に続く戦争三部作の2作目。多彩な登場人物で描く力作。★★★☆☆
『破獄』吉村昭（著）1986(新潮文庫)
4度の逮捕と脱獄を繰返した強盗殺人犯。極寒の刑務所をたらい回しにされながらも、戦中、戦後の社会を逃亡することで生き延びたアウトローの心理描写と看守との息詰まる攻防。★★★★☆
『零式戦闘機』吉村昭（著）1978(新潮文庫)
華々しい「真珠湾」で始まった日米戦争も、米軍の圧倒的な物量に押しまくられていく。零戦開発の技術力の高さとそれを支える産業力の後進性の落差に、無謀だった戦争の真実を描く。★★★★★
『冬の鷹』吉村昭（著）1976(新潮文庫)
日本語にはその言葉すらなかった「解体新書」。刑場へ通い蘭書と腑分けを見比べながら翻訳した日本最初の西洋医学書誕生物語。前野良沢と杉田玄白が織り成す陰と陽の人間模様。★★★★☆
『破船』吉村昭（著）1985(新潮文庫)
切立つ断崖で隣村から隔絶された極貧の集落。人びとが身売りをせずに食っていけるのは「お舟様」のお陰。だが、待ち望んだそのお舟様に乗ってきた死体が着けていた“赤い布”とは。★★★★☆
『遠い日の戦争』吉村昭（著）1984(新潮文庫)
天皇の「玉音放送」直後、空襲への復讐に米軍捕虜の首を刎ね、逃亡する元兵士。戦争に携わった「個」が「個」を殺すことで国家を断罪するはずが、自らをも問うことに。
★★★★☆
『日本の黒い霧（全）』松本清張(著)1973文藝春秋 (単行本)
昭和20年代、GHQの占領を経て日本が独立していく過程で起きた下山事件、木星号事件、帝銀事件等々の「未解決事件」に、今なお新鮮な稀代の社会派作家の筆が冴える。
★★★★★
『沈まぬ太陽（1）～（5）』山崎豊子（著）2001(新潮文庫)
巨大組織から弾き飛ばされたエリート社員の苦悩と、日航ジャンボ墜落事故を題材にした著者会心の力作。事故から何年経って読み返しても、引き込まれる筆力に脱帽。
『原発ホワイトアウト』若杉冽（著）2013講談社 (単行本)
原子力マフィアの中枢に切り込み、その危険性を告発しようとする霞が関キャリア官僚の行く手に立ちはだかる仕掛けと妨害。現在進行中の電力自由化のまやかしの実態も…。
『ドナルド・キーン自伝』ドナルド・キーン（著）、角地幸雄（訳）2011(中公文庫)
『蝦夷地別件（上）（中）（下）』船戸与一（著）2012(小学館文庫)
『戦場のピアニスト』ロナルド・ハーウッド（著）、富永和子（訳）2003(新潮文庫)
『峠（上）（中）（下）』司馬遼太郎（著）2003（新潮文庫）
『アントーノフカ』イワン・アレクセーヴィッチ・ブーニン（著）、長濱友子（イラスト）、町田清朗（訳）2007未知谷 (単行本)
『カティンの森』アンジェイ・ムラルチク（著）、工藤幸雄・久山宏一（翻訳）2009(集英社文庫)
『イベリアの雷鳴』逢坂剛（著）2002(講談社文庫)
『羆嵐』吉村昭（著）1982(新潮文庫)
［以下省略］

※「4行読後寸評」の《フィクション》と《ノンフィクション》のジャンル区分は管理人の主観と独断によるものです。

QRコード

▲ページトップへ

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。

<< 2023年05月 >>
日	月	火	水	木	金	土
	1	2	3	4	5	6
7	8	9	10	11	12	13
14	15	16	17	18	19	20
21	22	23	24	25	26	27
28	29	30	31