2025-12-28

俺が寄生獣になって40年が過ぎた。

最初に言っておくけど、あの「寄生獣」と俺は少し違う生物だ。

あの「寄生獣」は俺達をモデルにしてどこかの誰かが描いたもんだ。

あるいは描いたのは俺達の仲間だったのかもしれない。

そのほうがわかりやすいだろうから寄生獣という名前を借りてるだけだ。

40年前、俺は「市川」の頭に入った。

いや、正確には「入った」というより「そこに居た」んだと思う。

眠くなったみたいな感覚の中で、急に「ここが俺」ってわかった。

最初の数日は、とにかく腹が減ってた。

本能とか、そういう高級な言葉じゃなくて、もっと根源的なやつ。

「何かを食わないと俺が成立しない」という、選択肢のない命令

から市川は、頭の中でどんどん変わっていった。

右手不安定になって、時々勝手に動いて、声が変わって。

本人は「病気だろうか」とか思ってたと思うけど、違う。

単に俺が、彼の身体を「使用し始めた」ってだけだ。

で、食った。

何人か。数えてない。

でも、3か月後には「これはダメだ」と気づいた。

世界人間すべてが、いつの間にか俺らを探してた。

駆除班が出来たし、「これは何か」って議論も始まってた。

他の同族も、けっこう駆除されてた。

「このままだと、俺ら全滅する」って、本能的に分かった。

その時に、俺は一つの選択肢を見つけた。

人間のふりをする」という、一番シンプルで、一番人間らしい選択

市川を完全に「動かす側」から共生する側」に切り替えた。

右手も、声も、思考パターンも。

要するに、市川人格をそのまま「宿主」として走らせて、俺は一段階深いレイヤーで、ただ「共存」することにした。

最初のうちは、すげえ苦しかった。

本能が「食え」って言うのに、それを無視して、人間と同じもの食べ物ね)を口にする。

だけど、不思議なことに、30年も続けてると、その「人間食事」でも、そこそこ満足するようになった。

多分、俺の本能進化してるんだと思う。

社会生活も始めた。

会社に行って、給料をもらって、一人暮らしして、税金を払った。

親友が出来た。恋人も出来た。結婚した。子どもも出来た。

ここが、一番ヤバいラインだった。

妻が妊娠してるのを知った時、俺はマジで「これ、詐欺じゃね?」と思った。

俺は人間じゃない。妻は知ってるけど、社会的には完全に人間だ。

その俺が子どもを作ってる。生まれ子どもは、何なのか?

妻は「それでいい」と言った。

「お前が何かは、もう関係ない。10年一緒にいて、その間お前は誰も食わなかった。それだけで十分だ」と。

子どもが生まれた時、医者は「健康男の子です」と言った。

俺も「良かった」と思った。

でも同時に「これが一番危ないな」とも思った。

今、子ども高校生だ。

見た目は完全に人間の子だし、おそらく本当に人間だと思う。

けど時々、妻が「お前の子だ」って言うことがあって、その時、俺は何を思ってるのか自分でもわかんない。

で、なんでこんなもん増田に書いてるのかって、それはさ。

40年やってて、一番気づいたのが「このままだと、誰にも知られずに死ぬ」ってことなんだよ。

市川として生まれ人間も、とっくに死んでる。

妻も、子どもも、親友も、誰も「俺が何か」を完全には知らない。

ただ「何かがおかしい」くらい。

でも「何か」のまま、人間として一生を終わるんだろう。

死後、解剖とかされても「変な脳腫瘍があった」くらいで終わるんだと思う。

から一度、匿名で「ここに、このままでは認識されない何かが、いたよ」って書いておきたかった。

駆除班に見つかることはもう多分ないと思う。

技術も上がったし、俺たちの痕跡もどんどん消えてる。

でもそれでもいい。

これを読んだ誰かが「あ、こいつのこと言ってるのかな」と思うことはあるのかもしれないし、全く思わないかもしれない。

でもどっちでもいい。

俺は、「ここに、いたよ」って書き残したかった。

それだけだ。

市川は、来月で45歳になる。

寄生獣としての俺は、40歳を超えた。

どっちも、普通に生きてる。

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