すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

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・2024年もそろそろ半分終わるという事実がおそろしい。

 逆ボジョレー・ヌーヴォーって感じの思い出補正ってきらいは無きにしもですが、でもじっさいzzz_zzzzの今年の何もしてなさ具合は弊blogでも随一に思えます。

 

 

・『黄泉のツガイ』7巻

 区切りがよい巻ですね。

 スッキリしたい派はここまでまとめ買いすると良くて、トロが食べたい派はとりあえず6巻まで買っておけば良いかなぁ。

 

 ただ7巻は7巻ですごく良い。

 もちろん集団戦じたいはここまでも面白かったんですけど。

 ここにきて、ヒト1人&それと契約したツガイ2体(=二対の人外)から成るスリーマンセル/新と旧や人と妖いりまじる「現代戦」という要素がよく出た戦いが拝めてきまして。地味に興奮いたしました。

「まいったね、狩りに来たのにいつの間にか狩られる方になっちゃったな」

 行方不明の両親の消息を知っているかもしれない謎の人物をついに追い詰めた主人公たち。敵は刀タイプのツガイをじぶんで握り振るう忍者っぽいファイターひとりで、たいするこちらは5人。地理的有利も人数的有利もとって、近接格闘能力も(主人公のツガイ×2)、中距離のいやがらせも(影踏み的なことができる独立行動のツガイ)、遠距離攻撃も(弓の名手である主人公&スナイパーライフルの射手である兄貴筋)やりたい放題の状況だ……

 ……傍目には楽勝に見えるシチュエーションは、実はそうでもない。

 ツガイに対してこれまでズバズバとどデカい穴をあけてきた、頼れるスナイパーライフルの兄貴分が、こと今回の戦闘においては精彩を欠いている。

 べつに狙撃銃で狙えないほど高機動力とかそういうわけでもありません。プロなんで、標的がヒトであることに恐怖やためらいがあるわけでもありません。じゃあ一体なぜ?

 得物はツガイを無力化できるくらい高威力の武器だから、これでただのヒトを撃ってしまえばどこ当たっても致命傷になり、たとえその戦闘を勝利できたとしても、こちらが得たい情報を得るまえに死なせてしまうかもしれないからだ。

 だから頼れる兄貴分は今回は、標的をスコープの照準ど真ん中でとらえてこそいるけれど、撃たなきゃこちらの命が危ない局面にならない限りは構えているだけの威圧が精一杯の役回りになってしまうんですね。

(そして威圧であれば主人公の弓でも役目をはたせるから、潜伏要員になってもらう……つまり存在の露見をふせぐため、主人公たちとはなにか表立ったコミュニケーションをとることはしばらく出来ない)

 

 有利なようで実はそこまで圧倒的でもない状況下で、ティーンエイジャーの主人公が親の血の臭いを漂わせた百戦錬磨の殺し屋と対話する。

 とうぜん殺し屋はいちばん精神的に拙そうな若い主人公へ揺さぶりをかけ(殺し屋に自分の存在がバレているかどうか不明な兄貴分は、主人公へ助言することなどできず)……と、そういう展開になる。ゾクゾクしますね。

 

 

・『タワーダンジョン』1~2巻

 『BLAME!』などを読んで育った弐瓶勉フォロワーが、マイ・「(近)未来の廃棄された巨大都市」やら「異形」やらを描いているという、弐瓶ルネッサンスと呼ぶにふさわしい時代をむかえましたね。

 弐瓶氏の影響力はすさまじく、『NOiSE』や『BLAME!』『バイオメガ』数巻読んだだけのぼくでさえ、現実のマクドナルドから現代の都会をふつうにスケッチ(↓画像)しても友達から「お~弐瓶的~」と言われるくらい、からだが東亜重工製なんですね。おっそろしいことだ。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/z/zzz_zzzz/20210805/20210805221931.jpg

 そんなルネッサンスにあって……

comic-days.com

 ……とうの御本人は新境地を冒険している!

 しかも西洋ファンタジー世界といっても、ピラネージ(『BLAME!』を未来都市版の『牢獄』として、けっこうなひとが重ねましたよね)やらモンス・デジデリオやらベクシンスキやらあれやこれやの名匠とはまた違う、オリジナルな、それでいて弐瓶氏にしか描けないと思わせるユニークな世界を展開していて、いやはや。

「(統計的に)いちばん妥当なものを紡いでいくのが生成AIの結構である。

 であればヒトの独自性とは、意図せぬ間違いを犯せることや、妥当でないそれを正解なのだと言い張れることなのでは」

 生成AIについて、作家の小川哲さんがそんなかんじの論考を『文藝春秋』で寄稿されていましたが、今作を読んでひとびとの創作についても言えそうだな~とか思ったり。

 任意のパイオニアNに影響をうけたフォロワーのえがくものは、あくまで既存のN作品の延長線上にある変奏N´とか小文字のnでしかなく、当のNによる真の新作は、過去のじぶんにとらわれないためフォロワーよりある意味N的でない。でもそここそが、Nをパイオニアたらしめているものなのではないでしょうか。

 

 1巻も面白かったですが、2巻目からどんどん色んなパーティ・コミュニティが出てきて更に面白い。つづきもたのしみです。

(ヴィジュアルは、上に置いたスケッチのとおり僕じしんは一昔まえの弐瓶的画風が好きですけど、白い部分のふえたシンプルな今の画風もこちらはこちらで強いなと思います。

 書き込んだ時や黒の迫力は、ともすれば今の画風のほうがより際立って感じられるんじゃないでしょうか?

 そういう意味で『タワーダンジョン』を読んでいてzzz_zzzzが一番ゾクゾクして「続きも読もう」と惹かれたのは――共通理解としての弐瓶らしさが感じられる第一話終盤の見開き2ページ大ゴマの圧倒的巨大建築よりむしろ*1――第一話p.23あたりの「どうした? ついてこい」と先遣兵士が誘うさきが黒ベタ一色の濃い闇で何も見えないコマとかだったりします)

 

 

・稀代の作家がオタク趣味記事を書いたらどうなるか?;乙一先生noteのフロムゲーLv.1縛りプレイ記がおもしろかった。

note.com

 おどろいたのは多分に趣味記事だということ!

 乙一(安達寛高)だって記名がなければzzz_zzzzの節穴じゃ乙一と見抜くのは絶対無理だったろう、おまえやおれのようなタイムラインのきめぇオタクの書くような記事だということですよ。読み味としては、小説投稿SNS『小説家になろう』の男性向け異世界ファンタジー物の質感にちかい。

 未プレイヤーにむけた説明をしつつも固有名詞とか数値とかが溢れ出でて、本人は楽しく物語っているであろうあの感じ!

 「気が狂う」などの誇張表現をポンポン言っちゃって太字装飾しちゃうその感じ! 

 ああいうゲームプレイ記事やゲーム的小説やそういうインターネットオタク文章を大作家・乙一氏が書いている……。

(『「虜囚の鎖」は、生命力+5・持久力+5・体力+5という、つけるだけでレベルが15も上がったのと変わらない効果があるのです。』とか、読んでる側としては「そっ、そうなんスか。へぇ~……なんかすごいんでしょうね……」て感じだ)

 

 そうは言っても乙一先生だわ。

 とも思うわけです。

 読ませる記事だわ~、そう思うわけです。*2

「あらゆる卑怯な手を使って」

 まずタイトルのこの一言目から強いじゃないですか。

 内容がすっごい気になる文言だ。

 で、気になって本文クリックすればこれまた早々に、

「四十代半ばという年齢的なものもあり反応速度はむしろゴミです。だからこそ興味深いと思いませんか。そんなゲームの腕前で、レベル1でクリアなんてできるの?」

 ですよ。

 ググればYoutubeに縛りプレイ・魅せプレイ・神RTA動画が高解像度でいくらだってアップされている昨今にたいし、この文章記事の強みとは一体なにか? この文字ベース記事執筆者がいかにユニークであるか・風変わりな問題/対策にとりくんでいるかが提起される。

 

 そういう縛りプレイをすることで、執筆者の実人生にとってどんな意味があるのか? 『TED』や読書感想文でとりわけ話題になるタイプが帯びるドラマ性も盛り込まれています。

(しかもそうしたドラマは、自然と視界に入る場所に配されている!

 zzz_zzzzがこの記事最初に「オタクの趣味記事」性としてあげた、太字強調された誇張表現フレーズの前後にそれらが書かれてあるんスよ)

 「そのうちに、自分の人生と、死に戻りしている主人公が重なって見えるようになり、自分の精神は病みはじめているのではないかと心配になった」ので、『「ダークソウル3」を卒業しよう。このゲームばかり何十回も遊んでいたら気が狂う。』……

 ……前置きを終えた、縛りプレイ記本編の一作目『「ダークソウル3」編』のさいしょで、この記事はこう宣言します。

 立派な文章ですね。

 立派な文章だ。

 そうだと念頭に置いたうえで改めて「虜囚の鎖は、生命力+5云々」へ舞い戻ると、これを単なるオタクの趣味文章と読み捨てることこそオタクの悪いクセなのではないか? なんて思えてきます。

 直近で「初期能力値が10だ」という情報を言ったうえでの「生命力+5云々」だから、つまり当該装備がどれだけ優秀であるか具体的につたえるのに必要な情報と言える(「つまり1.5倍になったってことか~」と。)のかもしれません。

 

***

 

 有料パートでは、<ソウル>シリーズやフロムソフトウェア外で一大ジャンルとなった<ソウルライク>系の元祖である『デモンズソウル』編と、とにかく卑怯な手を染めまくったお方ならではの意識の変容(曰く「卑怯な手がつかえないなんて卑怯です。」!?!?)、ここまでの縛りプレイの経験や苦悩が総まくりされ、それでもなお変革が必要なトリにふさわしい『エルデンリング』編が描かれ、こちらもまた良かった。

 

 

 

*1:もちろんこちらも圧巻なんですけど

*2:以下、氏が意図的にやってるかどうかを確かめる方向性じゃなく、「こういう要素があるおかげで、この記事を自分はすらすら読めたんだな」(ひとさまに向けた文章を書くとき、zzz_zzzzもこういう要素を気にしていけたらよいな)というお話をしていきます。