日本一危険な国宝 三徳山投入堂
2018年4月12日(木) 晴れ
少し早いが3日間のGW休暇を貰ったので、今週も遠征へ。
肝心の行き先だが、北アルプスはまだ残雪が多く、ヘタレな私にはハードルが高過ぎるし、昨年のトラウマを晴らすべく八ヶ岳エリアも頭をよぎるも、返り討ちに遭いかねない(笑)
九州は3日じゃ足りないし、東北エリアも残雪が多そうだし、昨年結願したお遍路の2巡目などいろいろ候補に挙がるが、どれもイマイチ。
そこで消去法で残ったのが、山陰エリア。
一昨年登った伯耆大山が季節はずれの寒波で雪化粧したようだし、前回行けなかったあのスポットにもリベンジしたいし…
三徳山投入堂(みとくさんなげいれどう)
鳥取県三朝町にある断崖絶壁に建てられた懸造りの御堂で、国宝に指定されている。
一昨年の鳥取遠征の際、この投入堂にも行きたかったのだが、その2ヶ月前に発生したM6.6、最大震度6弱を記録した鳥取県中部地震の影響で、登拝禁止になっていて断念した苦い想い出がある。
いろいろ準備や計画をしていた矢先、再び衝撃の出来事が発生!
なんと出発2日前の4月9日に、島根県西部の大田市付近を震源とするM6.1、最大震度5強の島根県西部地震が発生。
また登拝中止か?と一時は意気消沈しかけたが、投入堂のHPを確認すると、
特に地震による被害はなく、登拝禁止にもなっていないようだ。
余震などまだ予断を許さない状況だが、とりあえず現地に行ってみることにする。
前日、仕事から帰宅後、北陸道から名神経由で中国道を目指す。
通常ならシタミチ(R9)で鳥取を目指すところだが、今回の3日間はあまり天気に恵まれそうにない予報で、特に最終日の14日(土)は傘マークも。
実質最初の2日間しか行動できなさそうなので、時間短縮を図るべく高速を利用。
名神に入った辺りから雨が落ち始め、愛荘町付近ではワイパーを強にしても前が見えないほどのゲリラ豪雨に見舞われる。
轍が水没していて、ハイドロプレーニング現象でハンドルが取られそうだった。
中国道に入ると雨は止んでいたが今度は一面の濃霧で、ハイビームにしても50m先が見えない有様。なんか出だしから不安いっぱいなのだが・・・
加西SAで仮眠した後、佐用JCTから鳥取道(無料)へ。
7時台だというのにまだ濃霧が残っていた。
鳥取西ICから県道21で三朝町を目指す。
右手に見えるのは湖山池と青島。
9:00 三徳山三仏寺参詣者用駐車場(標高約270m)
まだ時間が早いせいか、先客の車は3台だけだった。
早く来たのには訳があるのだが…
隣の車のナンバーを見ると、なんと福井ナンバー!
後部座席に寝袋などが見えたので、車中泊の旅をされているようだ。
この方も参拝登山者みたいで、もしかするとこれは吉兆かも…
シャクナゲ(石楠花)がキレイだった。
参道に向かう途中の売店駐車場にあった看板。
この看板を背にすると、文殊堂と地蔵堂が望める。
急な石段を登って受付案内所へ。
石段脇では八重桜が満開だった。
9:20 三仏寺受付案内所(標高約280m)
まずここで志納料(入山料)(400円)を支払う。なおこれは境内見学だけで、投入堂に参拝登山する場合、この先で別途志納料(参拝登山料)(400円)が必要となる。
受:「参拝登山されるのでしょうか?」
よ:「そうですが・・・」
受:「あちらの女性と一緒に登ってもらえませんか?」
よ:「えっ!女性と!?(ドギマギ)」
受付脇に居たのは参拝登山希望の30代ぐらいの外国人旅行客の女性で、彼女は英語しか話せず、上にもう1人登山希望の男性がいるらしいが、その方は英語は全くダメで、ここで英会話できる同行者を待っていたそうだ。
受付の方と女性に、英会話といっても単語の羅列レベルだと伝えるが、是非お願いしますとのことで、同行することになる。
彼女と一緒に、上にある登山受付所へ。
アジア系の彼女はタイから来られたそうで、なんと今回で5回目の来日だそうだ。
本堂(県指定保護文化財)
三仏寺は天台宗の寺院で、平安前期に慈覚大師(円仁)が創建したと謂われる。
なぜこのようなことになるかと言うと、参拝登山には様々なルールがあるからだ。
投入堂までの登山道には鎖場やヤセ尾根などの危険な個所が多く、これまで何人もの登拝者が不幸にも命を落とされている。
単独の場合、万一負傷や滑落等の事故が起こっても、応急処置をしたり、通報する人がいないため、最悪の結果を招く恐れがあり、必ず2人以上での登拝が義務付けられており、単独行の彼女が同行者を待っていたのもこのためなのだ。
私もこのことは承知しており、出発前に単独行ハイカーのレポを確認したところ、平日だと同行者を待つのに2時間以上かかった例もあった。
早い時間に訪れたのも同行者待ちを想定し、最悪3時間待ちは覚悟していたのだが、先ほど駐車場で吉兆かもと思ったのは、すんなり同行者が見つかりそうだったからだ。
9:29 投入堂参拝登山受付所(標高約300m)
所謂ここが参拝登山の関所で、希望者は服装や靴、装備などのチェックを受けて、志納料(400円)を納めて入山届を記入後に、登拝が可能となる。
服装は動き易い恰好で、スカートや肌が露出した短パン等は不可。
また両手が使えるリュックや、頭部や手の保護のための帽子や手袋(すべり止め付)の着用も推奨されている(軍手は100円で販売)
靴は登山靴や山用地下足袋が望ましく、サンダルや革靴は当然不可。ただし登山靴の場合でもソールがすり減って溝がなくなっているのはアウトで、ここで靴底のチェックを受ける。
さらにスパイク長靴のように金具やピンが付いている靴も、登山道を傷めるのでNG。
なお靴が不適格とされた場合、受付所で販売している草履(わらじ)を履けばOK。
上手い商売でんな(笑)
受付所で同行者を待っておられた男性は、やはり福井の方だった。
男性は同じ福井市在住の60代ぐらいの方で、あと1時間待って同行者が現れなかったら諦めるつもりだったそうだ。
無事各種チェックをクリアし、入山許可の輪袈裟(要返却)を渡される。
簡単な自己紹介をし、タイの女性と福井の男性との即席パーティーが結成され、受付の方から両者と会話できる私がリーダーに指名される。
超亀足なのでリーダーなんぞ大変おこがましく、辞退したいところだが、同行者がいないと登拝できないのでしぶしぶ引き受けることに。
なお男性は40年以上前に観光旅行でタイに行かれたことがあるそうだが、タイ語は全く話せないとのこと。
私もタイ語は離せないので、彼女からこの言葉を教えてもらう。
トイレの芳香剤じゃありません(笑)
タイ語で”こんにちは”という意味で、日中だけでなく朝や夜にも使え、”さようなら”という意味も持つオールマイティな言葉だそうだ。
なおクラッ(プ)は男性が使用する場合で、女性が使用する場合はカーとなる。
他にも禁止事項や注意事項があるので、よく読んで遵守しましょう。
三徳山HPでも詳しく説明されています。
頭部保護のため、ヘルメットを持参してきました(笑)
先頭がタイ人女性、2番目が福井の男性で、リーダーの私が最後尾。
先行の2人の状況を俯瞰的に把握し、的確な指示を出すためである(ウソ)
もし亀足の私が先頭になれば、その歩みのノロさに、きっと殺意を抱くに違いない(笑)
9:34 投入堂登拝口(標高約290m)
登拝受付時間は8:00~15:00で、時間外は閉門される。
ここから投入堂までは距離約700m、標高差約200mで、標準CTは50分。
数値上では地元福井の鬼ヶ岳(533m)を半分登るくらいだが、鬼ヶ岳以上の難所が待ち受けている。
序盤から急登の洗礼を受ける。
十一面観音堂(野際稲荷)(県指定保護文化財)
イカリソウ(碇草)
メギ科イカリソウ属の多年草。
木の根を掴んでよじ登る箇所もあり、みるみる体力が奪われていく。
この一帯はカズラ坂と呼ばれる。
予想通り、お二人の方が優脚なので、先行されて鈍足の私を待ってくれる。
すみません、これでも私のMAXスピードなんです。
依然として急坂が続く。
途中見かけた道標。
四丁とあるので、投入堂が一丁なのかな?
最大の難所、クサリ坂に差し掛かる(10:03)
直上に見えるのは文殊堂。
名前の通り、鎖場になっており、登りと下りでルートが分かれている。
長さは15mほどで、以前登った石鎚山の一の鎖より短く、傾斜も緩い感じ。
普段ハイクをされている方なら、別にどうってことないレベルだと思う。
むしろ鎖場を登り切って、文殊堂を回り込む大岩のところの方が少し大変。
足がかりとなる部分が狭く、直下は断崖のため滑落すると最悪死に至りかねない。
10:09 文殊堂(標高約450m)(国重要文化財)
室町後期の建築で、投入堂や地蔵堂と同じ懸造り(かけづくり)になっている。
内部は非公開だが、おそらく文殊菩薩を祀っていると思われる。
堂の周囲は回廊になっていて周回可能。
ただし転落防止の高欄などはなく、また床面も水はけのため外に向かって緩やかな傾斜が付けられているので、めちゃくちゃ怖く感じるらしい。
土足厳禁で、靴を脱ぐのが面倒なのでパス。本当は高所恐怖症なのは内緒(笑)
ひと息入れたのち、先へと進む(10:14)
ヤセ尾根の岩場を進んで行くが、前半から比べるとかなり緩やか。
地蔵堂の足場が見えてきた。
ここも登りと下りでルートが分かれている。
10:19 地蔵堂(標高約460m)(国重要文化財)
文殊堂と規模様式が同じで、ほぼ同時代に建てられたとされる。
10:22 鐘楼堂(標高約470m)(県指定保護文化財)
登拝記念に鐘を突かせていただく。
梵鐘は3尺5寸(約1.1m)、重さは800貫(約3トン)もあり、先ほどの難所があるなか、いったいどうやってこんな高所まで担ぎ上げたのだろう?
今度は馬ノ背、牛ノ背と呼ばれるヤセ尾根。
10:26 観音堂(標高約480m)(県指定保護文化財)
江戸時代前期に鳥取藩主池田光仲公により再建された。
参道は観音堂の右手に回り込み、裏手を進む。
ここを抜け、その先を右に曲がると、投入堂が見えてくる。
投入堂(三仏寺奥院)(国宝)(標高約490m)
登拝口から54分とほぼ標準CTだが、すっかりヘロヘロ。
遥拝スペースには我々のほかは誰もおらず、どうやらこの日の1番乗りのようだ。
修験道の開祖とされる役小角が、蔵王権現などを祀った仏堂を法力で山に投げ入れたという伝説から投入堂と呼ばれる。
平安密教建築の数少ない遺構で、木材の年代測定などから少なくとも12世紀に建てられたモノであることが判明しており、国宝に指定されている。
構造は清水寺などと同じ懸造りで、ミニ舞台のような広縁が鍵の手状に配置。
左(東)側にある小さな祠は愛染堂(国宝附属)
しかし、よくもまぁこんな場所に作ったもんだ。投入堂の正面や側面には入口となる部分はなく、崖伝いに堂の床下まで行き、背面に回り込んで縁から登るしかないそうだ。タイ人女性もこの神秘の建造物に感動されていた。
残念ながら、一般登拝者が行けるのはここまで。
かつては投入堂まで行くことができたようだが、現在は進入禁止。
遥拝する場所もそれほど広くなく、しかも斜面なので、20人もいれば一杯という感じ。
なおここまで登ってこなくても、駐車場近くにある投入堂遥拝所からも眺められる。
でもやはりここまで登ってくる方が、見た時の感動は大きい。
彼女が乗るバスの時刻があるので、下山開始(10:37)
下りは楽勝に付いていけるので、談笑しながら降りていく(笑)
彼女は昨年熊野古道を歩かれたそうで、日本人でもなかなか行かないシブいスポットが好きなようだ。
また福井の男性は今回1ヶ月間の日程で、中国地方の山城や寺院、巨木などを見て回られる計画で、奥様を誘ったが断られたそうだ。そりゃ1ヶ月の車中泊は男性でもキツいですよ(笑)
途中からようやく登ってくる後続グループとチラホラすれ違う。
中には靴底チェックでダメ出しされたのか、草鞋履きで登ってきた若者も(笑)
下りの難所でもあるクサリ坂は慎重に。
先頭の男性が降りたのを確認してから、下るように指示。
看板にあるように、身体を岩肌に近づけ過ぎないよう腕を伸ばして、フリクション(摩擦)を上手に使って降りる方がラクで安全。
宿入橋を渡って参拝登山終了(11:07)
下りは30分。
受付所に戻り、輪袈裟を返却し、リーダーの任がようやく解かれる。
特にリーダーらしきことはしておらず、逆に亀足でお二人にご迷惑をかけただけ。
登拝記念として角(つの)大師の御札をいただく。
角大師とは天台座主で、延暦寺中興の祖とされる元三大師(慈恵大師)の尊称で、魔除けの護符として古くから信仰されているそうだ。
修験者の出で立ちで登拝されようとする女性もおられた。
バスの時刻が迫っているタイ人女性とはここでお別れ。
彼女は明日関空から帰国の途に就かれるとのこと。お気をつけて!
สวัสดี ครับ サワディー クラッ(プ)
男性とは駐車場までご一緒した後、お別れする。
お二人とも本当にありがとうございました。
あなた方が居られたおかげで、待ち時間なしでしかも楽しく登ることができました。
やっぱり、山っていいね!
三徳山投入堂(490m)
標高差220m
登り 54分、下り 30分、TOTAL 1時間47分
出会った人 20人ぐらい 出会った動物 なし
2018年:21座目
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少し早いが3日間のGW休暇を貰ったので、今週も遠征へ。
肝心の行き先だが、北アルプスはまだ残雪が多く、ヘタレな私にはハードルが高過ぎるし、昨年のトラウマを晴らすべく八ヶ岳エリアも頭をよぎるも、返り討ちに遭いかねない(笑)
九州は3日じゃ足りないし、東北エリアも残雪が多そうだし、昨年結願したお遍路の2巡目などいろいろ候補に挙がるが、どれもイマイチ。
そこで消去法で残ったのが、山陰エリア。
一昨年登った伯耆大山が季節はずれの寒波で雪化粧したようだし、前回行けなかったあのスポットにもリベンジしたいし…
三徳山投入堂(みとくさんなげいれどう)
鳥取県三朝町にある断崖絶壁に建てられた懸造りの御堂で、国宝に指定されている。
一昨年の鳥取遠征の際、この投入堂にも行きたかったのだが、その2ヶ月前に発生したM6.6、最大震度6弱を記録した鳥取県中部地震の影響で、登拝禁止になっていて断念した苦い想い出がある。
いろいろ準備や計画をしていた矢先、再び衝撃の出来事が発生!
なんと出発2日前の4月9日に、島根県西部の大田市付近を震源とするM6.1、最大震度5強の島根県西部地震が発生。
また登拝中止か?と一時は意気消沈しかけたが、投入堂のHPを確認すると、
特に地震による被害はなく、登拝禁止にもなっていないようだ。
余震などまだ予断を許さない状況だが、とりあえず現地に行ってみることにする。
前日、仕事から帰宅後、北陸道から名神経由で中国道を目指す。
通常ならシタミチ(R9)で鳥取を目指すところだが、今回の3日間はあまり天気に恵まれそうにない予報で、特に最終日の14日(土)は傘マークも。
実質最初の2日間しか行動できなさそうなので、時間短縮を図るべく高速を利用。
名神に入った辺りから雨が落ち始め、愛荘町付近ではワイパーを強にしても前が見えないほどのゲリラ豪雨に見舞われる。
轍が水没していて、ハイドロプレーニング現象でハンドルが取られそうだった。
中国道に入ると雨は止んでいたが今度は一面の濃霧で、ハイビームにしても50m先が見えない有様。なんか出だしから不安いっぱいなのだが・・・
加西SAで仮眠した後、佐用JCTから鳥取道(無料)へ。
7時台だというのにまだ濃霧が残っていた。
鳥取西ICから県道21で三朝町を目指す。
右手に見えるのは湖山池と青島。
9:00 三徳山三仏寺参詣者用駐車場(標高約270m)
まだ時間が早いせいか、先客の車は3台だけだった。
早く来たのには訳があるのだが…
隣の車のナンバーを見ると、なんと福井ナンバー!
後部座席に寝袋などが見えたので、車中泊の旅をされているようだ。
この方も参拝登山者みたいで、もしかするとこれは吉兆かも…
シャクナゲ(石楠花)がキレイだった。
参道に向かう途中の売店駐車場にあった看板。
この看板を背にすると、文殊堂と地蔵堂が望める。
急な石段を登って受付案内所へ。
石段脇では八重桜が満開だった。
9:20 三仏寺受付案内所(標高約280m)
まずここで志納料(入山料)(400円)を支払う。なおこれは境内見学だけで、投入堂に参拝登山する場合、この先で別途志納料(参拝登山料)(400円)が必要となる。
受:「参拝登山されるのでしょうか?」
よ:「そうですが・・・」
受:「あちらの女性と一緒に登ってもらえませんか?」
よ:「えっ!女性と!?(ドギマギ)」
受付脇に居たのは参拝登山希望の30代ぐらいの外国人旅行客の女性で、彼女は英語しか話せず、上にもう1人登山希望の男性がいるらしいが、その方は英語は全くダメで、ここで英会話できる同行者を待っていたそうだ。
受付の方と女性に、英会話といっても単語の羅列レベルだと伝えるが、是非お願いしますとのことで、同行することになる。
彼女と一緒に、上にある登山受付所へ。
アジア系の彼女はタイから来られたそうで、なんと今回で5回目の来日だそうだ。
本堂(県指定保護文化財)
三仏寺は天台宗の寺院で、平安前期に慈覚大師(円仁)が創建したと謂われる。
なぜこのようなことになるかと言うと、参拝登山には様々なルールがあるからだ。
① 単独入山は禁止で、必ず2人以上で行動。 |
投入堂までの登山道には鎖場やヤセ尾根などの危険な個所が多く、これまで何人もの登拝者が不幸にも命を落とされている。
単独の場合、万一負傷や滑落等の事故が起こっても、応急処置をしたり、通報する人がいないため、最悪の結果を招く恐れがあり、必ず2人以上での登拝が義務付けられており、単独行の彼女が同行者を待っていたのもこのためなのだ。
私もこのことは承知しており、出発前に単独行ハイカーのレポを確認したところ、平日だと同行者を待つのに2時間以上かかった例もあった。
早い時間に訪れたのも同行者待ちを想定し、最悪3時間待ちは覚悟していたのだが、先ほど駐車場で吉兆かもと思ったのは、すんなり同行者が見つかりそうだったからだ。
9:29 投入堂参拝登山受付所(標高約300m)
所謂ここが参拝登山の関所で、希望者は服装や靴、装備などのチェックを受けて、志納料(400円)を納めて入山届を記入後に、登拝が可能となる。
② 服装や靴は登山に適したモノを使用。 |
服装は動き易い恰好で、スカートや肌が露出した短パン等は不可。
また両手が使えるリュックや、頭部や手の保護のための帽子や手袋(すべり止め付)の着用も推奨されている(軍手は100円で販売)
靴は登山靴や山用地下足袋が望ましく、サンダルや革靴は当然不可。ただし登山靴の場合でもソールがすり減って溝がなくなっているのはアウトで、ここで靴底のチェックを受ける。
さらにスパイク長靴のように金具やピンが付いている靴も、登山道を傷めるのでNG。
なお靴が不適格とされた場合、受付所で販売している草履(わらじ)を履けばOK。
上手い商売でんな(笑)
受付所で同行者を待っておられた男性は、やはり福井の方だった。
男性は同じ福井市在住の60代ぐらいの方で、あと1時間待って同行者が現れなかったら諦めるつもりだったそうだ。
③ 入山中は輪袈裟(六根清浄)をたすき掛けする。 |
無事各種チェックをクリアし、入山許可の輪袈裟(要返却)を渡される。
簡単な自己紹介をし、タイの女性と福井の男性との即席パーティーが結成され、受付の方から両者と会話できる私がリーダーに指名される。
超亀足なのでリーダーなんぞ大変おこがましく、辞退したいところだが、同行者がいないと登拝できないのでしぶしぶ引き受けることに。
なお男性は40年以上前に観光旅行でタイに行かれたことがあるそうだが、タイ語は全く話せないとのこと。
私もタイ語は離せないので、彼女からこの言葉を教えてもらう。
สวัสดี ครับ/ค่ะ サワディー クラッ(プ)/ カー |
トイレの芳香剤じゃありません(笑)
タイ語で”こんにちは”という意味で、日中だけでなく朝や夜にも使え、”さようなら”という意味も持つオールマイティな言葉だそうだ。
なおクラッ(プ)は男性が使用する場合で、女性が使用する場合はカーとなる。
④ 喫煙、ロウソク、線香など火気厳禁! ⑤ 食事禁止(飲物は可) ⑥ ストック、杖の使用禁止 |
他にも禁止事項や注意事項があるので、よく読んで遵守しましょう。
三徳山HPでも詳しく説明されています。
頭部保護のため、ヘルメットを持参してきました(笑)
先頭がタイ人女性、2番目が福井の男性で、リーダーの私が最後尾。
先行の2人の状況を俯瞰的に把握し、的確な指示を出すためである(ウソ)
もし亀足の私が先頭になれば、その歩みのノロさに、きっと殺意を抱くに違いない(笑)
9:34 投入堂登拝口(標高約290m)
登拝受付時間は8:00~15:00で、時間外は閉門される。
ここから投入堂までは距離約700m、標高差約200mで、標準CTは50分。
数値上では地元福井の鬼ヶ岳(533m)を半分登るくらいだが、鬼ヶ岳以上の難所が待ち受けている。
序盤から急登の洗礼を受ける。
十一面観音堂(野際稲荷)(県指定保護文化財)
イカリソウ(碇草)
メギ科イカリソウ属の多年草。
木の根を掴んでよじ登る箇所もあり、みるみる体力が奪われていく。
この一帯はカズラ坂と呼ばれる。
予想通り、お二人の方が優脚なので、先行されて鈍足の私を待ってくれる。
すみません、これでも私のMAXスピードなんです。
依然として急坂が続く。
途中見かけた道標。
四丁とあるので、投入堂が一丁なのかな?
最大の難所、クサリ坂に差し掛かる(10:03)
直上に見えるのは文殊堂。
名前の通り、鎖場になっており、登りと下りでルートが分かれている。
長さは15mほどで、以前登った石鎚山の一の鎖より短く、傾斜も緩い感じ。
普段ハイクをされている方なら、別にどうってことないレベルだと思う。
むしろ鎖場を登り切って、文殊堂を回り込む大岩のところの方が少し大変。
足がかりとなる部分が狭く、直下は断崖のため滑落すると最悪死に至りかねない。
10:09 文殊堂(標高約450m)(国重要文化財)
室町後期の建築で、投入堂や地蔵堂と同じ懸造り(かけづくり)になっている。
内部は非公開だが、おそらく文殊菩薩を祀っていると思われる。
堂の周囲は回廊になっていて周回可能。
ただし転落防止の高欄などはなく、また床面も水はけのため外に向かって緩やかな傾斜が付けられているので、めちゃくちゃ怖く感じるらしい。
土足厳禁で、靴を脱ぐのが面倒なのでパス。本当は高所恐怖症なのは内緒(笑)
ひと息入れたのち、先へと進む(10:14)
ヤセ尾根の岩場を進んで行くが、前半から比べるとかなり緩やか。
地蔵堂の足場が見えてきた。
ここも登りと下りでルートが分かれている。
10:19 地蔵堂(標高約460m)(国重要文化財)
文殊堂と規模様式が同じで、ほぼ同時代に建てられたとされる。
10:22 鐘楼堂(標高約470m)(県指定保護文化財)
登拝記念に鐘を突かせていただく。
梵鐘は3尺5寸(約1.1m)、重さは800貫(約3トン)もあり、先ほどの難所があるなか、いったいどうやってこんな高所まで担ぎ上げたのだろう?
今度は馬ノ背、牛ノ背と呼ばれるヤセ尾根。
10:26 観音堂(標高約480m)(県指定保護文化財)
江戸時代前期に鳥取藩主池田光仲公により再建された。
参道は観音堂の右手に回り込み、裏手を進む。
ここを抜け、その先を右に曲がると、投入堂が見えてくる。
投入堂(三仏寺奥院)(国宝)(標高約490m)
登拝口から54分とほぼ標準CTだが、すっかりヘロヘロ。
遥拝スペースには我々のほかは誰もおらず、どうやらこの日の1番乗りのようだ。
修験道の開祖とされる役小角が、蔵王権現などを祀った仏堂を法力で山に投げ入れたという伝説から投入堂と呼ばれる。
平安密教建築の数少ない遺構で、木材の年代測定などから少なくとも12世紀に建てられたモノであることが判明しており、国宝に指定されている。
構造は清水寺などと同じ懸造りで、ミニ舞台のような広縁が鍵の手状に配置。
左(東)側にある小さな祠は愛染堂(国宝附属)
しかし、よくもまぁこんな場所に作ったもんだ。投入堂の正面や側面には入口となる部分はなく、崖伝いに堂の床下まで行き、背面に回り込んで縁から登るしかないそうだ。タイ人女性もこの神秘の建造物に感動されていた。
残念ながら、一般登拝者が行けるのはここまで。
かつては投入堂まで行くことができたようだが、現在は進入禁止。
遥拝する場所もそれほど広くなく、しかも斜面なので、20人もいれば一杯という感じ。
なおここまで登ってこなくても、駐車場近くにある投入堂遥拝所からも眺められる。
でもやはりここまで登ってくる方が、見た時の感動は大きい。
彼女が乗るバスの時刻があるので、下山開始(10:37)
下りは楽勝に付いていけるので、談笑しながら降りていく(笑)
彼女は昨年熊野古道を歩かれたそうで、日本人でもなかなか行かないシブいスポットが好きなようだ。
また福井の男性は今回1ヶ月間の日程で、中国地方の山城や寺院、巨木などを見て回られる計画で、奥様を誘ったが断られたそうだ。そりゃ1ヶ月の車中泊は男性でもキツいですよ(笑)
途中からようやく登ってくる後続グループとチラホラすれ違う。
中には靴底チェックでダメ出しされたのか、草鞋履きで登ってきた若者も(笑)
下りの難所でもあるクサリ坂は慎重に。
先頭の男性が降りたのを確認してから、下るように指示。
看板にあるように、身体を岩肌に近づけ過ぎないよう腕を伸ばして、フリクション(摩擦)を上手に使って降りる方がラクで安全。
宿入橋を渡って参拝登山終了(11:07)
下りは30分。
受付所に戻り、輪袈裟を返却し、リーダーの任がようやく解かれる。
特にリーダーらしきことはしておらず、逆に亀足でお二人にご迷惑をかけただけ。
登拝記念として角(つの)大師の御札をいただく。
角大師とは天台座主で、延暦寺中興の祖とされる元三大師(慈恵大師)の尊称で、魔除けの護符として古くから信仰されているそうだ。
修験者の出で立ちで登拝されようとする女性もおられた。
バスの時刻が迫っているタイ人女性とはここでお別れ。
彼女は明日関空から帰国の途に就かれるとのこと。お気をつけて!
สวัสดี ครับ サワディー クラッ(プ)
男性とは駐車場までご一緒した後、お別れする。
お二人とも本当にありがとうございました。
あなた方が居られたおかげで、待ち時間なしでしかも楽しく登ることができました。
やっぱり、山っていいね!
三徳山投入堂(490m)
標高差220m
登り 54分、下り 30分、TOTAL 1時間47分
出会った人 20人ぐらい 出会った動物 なし
2018年:21座目
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