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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

「『ニセ医学』に騙されないために」の著者が教える「最善の健康法」

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どうせやるなら根拠のあるものを

「『ニセ医学』に騙されないために」の著者が教える「最善の健康法」

 医学のふりをしているが科学的な根拠のない医療を「ニセ医学」「インチキ医学」だと呼んで、ブログなどで鋭く批判、指摘し続けている医師の名取なとりひろむ(旧ペンネームNATROM)さんが、新著「医師が教える最善の健康法」(内外出版社)を出版した。

 ブログの内容などをまとめた前著の「『ニセ医学』に騙されないために」に続くもので、科学的な根拠のある疫学研究などを基に、「どうせやるなら根拠のあるものを」とつづっている。新著の内容や「ニセ医学」に対する考え方などについて、著者にインタビューした。

「秘密の健康法」なんてありません(笑)

 ――「ニセ医学」を一つ一つ 俎上(そじょう) に載せて「だまされるな」と呼びかけた前著と違い、今度の本はお勧めの健康法がテーマです。ねらいは何ですか?

 2014年に出版した「ニセ医学」の本は、おかげさまで評判になり、ニセ医学という言葉もだいぶ知られるようになりました。その一方で、「では、どんな医療・健康法ならいいの?」という問いかけも多くいただきました。そこで、医学論文や公的機関のガイドラインなどを参考に、科学的な根拠のある医療や健康への向き合い方をまとめたのが今回の「医師が教える最善の健康法」です。

 ――さぞや、極め付きの健康法が紹介されているのかと思いきや、「ぜひやっておきたい健康法」として並んでいるのは、禁煙や適度な運動、睡眠など、常識的なものがズラリ。

 そんな、みんなが知らないような「秘密の健康法」なんてありません(笑)。インチキ医学のような明らかな間違いを指摘するのと違って、正しいことを書くのは、実は簡単ではないのです。禁煙のように絶対正しいと言えるものも中にはありますが、多くはあいまいさや幅があり、絶対正しいと断言するには難しい面があります。

 たとえば体重ひとつとっても、かつてはBMI(体格指数)22が適正とされていたのが、現在では日本人で肥満とされる25~27程度であっても総死亡率は明確には上がらないことや、適正なBMIは点ではなく幅があることも分かってきました。 

 そんなわけで、絶対こうだというよりも、科学的な根拠があって読者の参考になるもの、役に立つものという視点でまとめました。

後を絶たない「フードファディズム」

 ――本には「ついやりがちな間違った健康法」の章を設け、健康食品などの問題や、過剰な検査などの問題にページを割かれていますね。

 食品や栄養が健康に与える影響を過大に評価したり信奉したりすることを「フードファディズム」といいます。特定の食品が「健康によい、病気が治る」、逆に「健康に悪い、病気になる」というものです。フードファディズムの問題はすでに多くの方が指摘しており、特に目新しいわけではありませんが、後を絶ちません。

 ――理由は何でしょうか?

 ビジネスになりますからね。ある食品について一過性のブームが起き、飽きたら次の食品へ、という感じで。食品なので、ものすごく害があるかと言えばそうでもないことが多いため、大目に見られている面はあると思います。

 とは言え、特定の食品によってがんが治るといった極端な例などは見過ごせません。ウソを信じたせいで標準的な治療を受けず、命を落とすといった害にもつながります。行き過ぎたフードファディズムには、きちんとくぎを刺しておく必要があります。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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